「役割創造project」とは、キャリア発達・キャリア開発とその支援という観点から、日本のミドル・シニア人材の「働き方改革」をライフワークスらしく実現していく取り組みです。

2017.08.08 個人の活躍

ライフの充実で、キャリアをしなやかに考えられるようになった

ライフの充実で、キャリアをしなやかに考えられるようになった

NLP(Neuro Linguistic Programing/神経言語プログラミング)やマインドマップといったコミュニケーションを促すための知識やスキルを生かし、社外でも活躍する早川賢一さん。充実したライフを送ることで、キャリアにもいい影響が生まれたと言います。その理由は?

社外で学び始めたきっかけは「夫婦の絆を取り戻すため」

---早川さんは積極的に自己啓発をされていて、米国NLP協会認定トレーナーや英ThinkBuzan公認マインドマップ・アドバイザーの資格をお持ちとか。お仕事との関連で学ばれたのですか?

会社の外で学ぶのはNLPのスクールに通ったのが始まりで、当時の業務との関連もあったのですが、実は...。もともとは夫婦の絆を取り戻すために勉強を始めたんですよ。いきなりこんな話でいいんでしょうか(笑)。

---夫婦の絆、ですか。

はい。当時、僕は40代前半で、会社では人材育成部門に所属していました。階層別研修を担当して仕事が面白くてたまらない時期だったんです。

---早川さんはずっと人事畑でお仕事をされてきたのですか?

それが、違いました。僕は印刷会社の情報システム部門で働いた後、30代になったばかりの頃に今の会社に転職してCS(Customer Satisfaction)部門や監査部門を経て、2008年に人材育成部門に異動しました。恥ずかしながら、その時に初めて「会社は社員のためにこんなにいろいろなことをやっているんだ」と感じたほど人事の業務内容に関心がなかったんです。ところが、階層別研修の企画・運営をやるうちに、社員が成長していく姿を見るのが楽しくなりましてね。研修を受けた社員とそうでない社員に成長の差も見られ、人材育成の仕事の面白さにのめりこみました。

---なるほど。その結果、もしかして家庭がお留守に...

お留守にしたつもりはなかったのですが、忙しくて妻の話をきちんと聞けていませんでした。そのうちに会話が少なくなり、どうしたものかと思っていた時に、娘のピアノの先生との会話でたまたまNLPのことを知ったんです。NLPというのは心理学のひとつで、学べばコミュニケーションスキルも高まると聞き、夫婦の絆を取り戻す手だてになるかもと。そこで、スクールの体験に行ったところ、「あいづちを打つ」「自分の聞きたいことを聞くのではなく、相手の話したいことをきちんと聞く」など傾聴スキルについて教わったんですね。で、習ったことを妻に実践したところ、1週間ほどで妻の笑顔が多くなったんです。

---なんと。

妻に「最近、機嫌がいいよね。何かあったの?」と聞いたら、「あなたが変わったからよ」と。こんなに効果があるのなら、もっと学びたいと思ったのですが、スクールの費用もかかります。思い切って妻に相談したところ賛成してくれ、「私も興味があるから、習ったことはレクチャーしてね」と言ってくれました。

---ごちそうさまです。

いえ、あの、のろけているわけでは...(笑)。


「勢い」に身を任せた方が、良い結果ができることもある

---米国NLP協会の認定資格には3段階があって、トレーナーが最もハイレベルとか。トレーナーコースを受講するには倍率数倍の審査をパスし、渡米が必要だそうですね。どのくらいの期間でトレーナー資格を取得したんですか?

2009年1月にスクールに通い始めて、2010年3月に取得したので1年ちょっとでしょうか。比較的スピード取得だったようです。勢いづいて、その年の終わりにはマインドマップ・アドバイザーの資格も取りました。マインドマップというのはトニー・ブザンが提唱した自分の考えを絵で整理する表現方法で、NLPを一緒に勉強していた仲間にマインドマップをやっている人が多く、興味を持ったんです。

---「夫婦の絆問題」は解決したのにもかかわらず、NLPについてとことん学び、マインドマップのスキルまで身につけたのはどうしてなのでしょう?

根本の考え方に共感したのがひとつの理由です。例えば、NLPではコーチングに似た手法も学びます。仕事柄コーチングについては少し勉強していましたが、コーチングがどちらかというと相手のポジティブな面を引き出すのに対し、NLPではネガティブなことも含めたありのままの相手を受容します。そういった点が自分の肌に合ったので、もっと学びたいなと思ったんです。

それが結果的に会社の仕事にも生き、さらに意欲が湧いたところもありました。傾聴スキルなどNLPについて学んだことをプログラムに取り入れたところ好評で、自分の学んだことが社員の成長に役立っているのかなと感じてうれしかったですね。若手社員研修の講師を一部務めることがあったのですが、その際も「早川さんは一方的に話すのではなく、和やかにやりとりをしながら話してくれるので良かった」と言ってもらえて、学習の効果かなとひとり悦に入りました。

ただ、一番の理由は性格かもしれません。僕は考えて行動するよりも、行動してから考えるタイプ。実は妻にはそれでよく叱られますが、これまでの経験から、時には「勢い」に身を任せた方が良い結果が出ると感じています。キャリアを重ねると、新しいことに挑戦しようにも腰が重くなってしまったりしますから。NLPもマインドマップも学ぶには投資が必要でしたが、今思えばその価値は十分ありました。会社以外でも役立ったんですよ。

---「会社以外」とおっしゃると?

スクールに通っていろいろな人と知り合い、会社以外の世界の面白さを感じたこともあって、また少し勢いづきましてね(笑)。地元で開催された地域活動を考えるセミナーに参加し、そこで意気投合した仲間と3人でコミュニケーション講座を企画し、埼玉県の自治体で実施したんです。僕が主に担当したのは、受講者が話し合った内容の「見える化」とファシリテーションのサポート。マインドマップの簡単な書き方を知ってもらったり、話し合いが少し滞っている時に質問を投げかけたりと、自分では特別なことをしたとは思っていなかったのですが...。「おかげで話し合いがうまくいった」と思った以上に皆さんに喜んでいただけて、手ごたえを感じました。


50代からのキャリアについてあれやこれや考えるのが楽しい

---現在も会社では人材育成に携わっていらっしゃるんですか?

rc_p_170802_hayakawa_02.jpgそれが、2014年にCS部門に戻りまして、2015年4月からは北海道で業務運営を担当しています。人材育成の仕事にやりがいを感じていたので、正直なところ、最初は戸惑いました。「このままでいいのだろうか」と焦ったりもしました。でも、見方を変えると、こんなに豊かな自然の中で生活を楽しめるのはラッキーなことですし、そう思えると視野が広がった感じはありますね。僕自身も以前より時間の余裕ができたので、北海道でもNLPを通じた活動にボランティアとして参加しています。

また、これまでは目の前の仕事のことしか見えていませんでしたが、48歳という年齢もあって、今後のキャリアについても落ち着いて考えるいい機会だったように思います。以前は漠然と「定年まで何となく働くんだろうな」と考えていて、それ以外の選択肢を考えたことがありませんでした。でも、今はキャリアの方向性みたいなものが見えてきたので、「色々な選択肢があるな」とフラットに考えられるようになりました。

---やはり人材育成にじっくり携わりたいという気持ちが強いのでしょうか?

人の成長や学びをサポートすることには携わり続けたいですし、社外活動で実績ができつつあるので、地域活性化のために人と人をつなげるような仕事もしてみたいです。地域の人と人をつなげるために自分ができることは、NLPやマインドマップといったコミュニケーションを促進する知識やスキルを提供するほかにもあるんじゃないかなと思っていましてね。僕はマラソンが趣味で、健康と食にも関心があるので、予防医学の知識も学べるランニングでの交流会やウォーキング教室の企画など「健康」をテーマに地域とつながれたら面白そうだなとアイデアを膨らませています。

具体的な次の一歩が何か、まだはっきりと見えてはいませんが、50代からのキャリアについてあれやこれやと考えるのが楽しいというのはありがたいことだと思います。社外で知識やスキルを学びはじめたのをきっかけにさまざまな人と出会い、多様な価値観を知ったおかげで、僕には「一つの業務に固執する」という発想がありません。だから、変化があまり怖くないのかもしれません。ライフが充実することで、キャリアをしなやかに考えられるようになったと感じています。


プロフィール

早川 賢一さん 1969年生まれ。東海大学工学部経営工学科でマーケティングを専攻。1991年に卒業後、大手印刷会社に入社。1999年、情報関連機器の会社に転職し、監査部門や人事部での人材育成を経験。2014年よりCSに関わる業務を担当している。プライベートでは2009年よりNLP(Neuro Linguistic Programing/神経言語プログラミング)を学び、2010年に米国NLP協会認定トレーナーの資格を取得している。同年、英ThinkBuzan公認マインドマップ・アドバイザーの資格も取得。学んだスキルを生かし、東京都府中市で仲間とコミュニケーション講座を企画・開催するなどボランティアで地域活性のための活動も行なっている。

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