「役割創造project」とは、キャリア発達・キャリア開発とその支援という観点から、日本のミドル・シニア人材の「働き方改革」をライフワークスらしく実現していく取り組みです。

2019.04.22 個人の活躍

定年後は「会社に恩返しをしたい」と考え、自ら手を挙げて人財育成の仕事にキャリアチェンジ

定年後は「会社に恩返しをしたい」と考え、自ら手を挙げて人財育成の仕事にキャリアチェンジ

2017年に株式会社ジュピターテレコム(J:COM)が設立した企業内大学「J:COMユニバーシティ」において、キャリアデザイン学部長として人財育成に携わっている岩本郁子さん。定年(60歳)再雇用以前は他ジャンルで活躍していた岩本さんが現在の役割を担うまでの経緯や、新たな役割によるご自身の変化などをうかがいました。

常に新たなことに挑戦し、学んでいたい

―現在担当していらっしゃるお仕事の内容について教えていただけますか?

当社の企業内大学「J:COMユニバーシティ」のキャリアデザイン学部(社員それぞれの自律的なキャリア開発をサポートする学部)学部長として、学部で実施するプログラムの企画・実施を担当するほか、課長クラスに向けた戦略思考研修などの講師や次世代女性リーダー研修のアドバイザーを務めています。

―2018年度の公開講座一覧を拝見しました。自らのキャリアプランを考える講座のほか、働くパパママ討論会、介護経験者同士の交流会、専門家による管理職・同僚向けメンタルヘルス対策講座、他社との女性社員交流会と多彩な内容ですね。

年間10企画ほどあり、私自身がこれまで働いてきた経験も踏まえ、「こんな学びの機会があったら、みんなに役立つかな」と思うものを実施しています。私や社員が講師を務める企画のほか、仕事やプライベートを通しておつきあいのある社外の知人に講師をお願いしたり、私が外部の講演などでお話を聞いて「みんなにも聞いてもらいたい」と感じた講師の方にお越しいただいたりもしています。

メンタルヘルス対策講座は今年度からの新企画なのですが、実は年度始めにはまだ講師が決まっていませんでした。「どうしようかな」と思案していた時に、私が社外で受講していたキャリアコンサルタント講座の先生がEAPメンタルヘルスカウンセラーの資格も持っていらっしゃる方で、お話も大変わかりやすかったので講師をお願いしたんです。とても好評でしたし、私自身も専門家のお話を聞けて勉強になりました。

―これだけの講座をひとりで企画するのは大変では?

いろいろな方からアイデアをもらったり、人財開発部のサポートもあるので、大変とは思っていません。やりたいことがどんどん出てきて忙しくはありますが(笑)。私はもともと「知りたがり」で、いろいろなことに興味があるタイプなんですよ。常に新たなことに挑戦し、学んでいたいという気持ちがすごくあるので、それを実現できる機会を会社から与えてもらえてありがたいなと思っています。

定年を機に、「私が後輩たちに役立てることは何だろう」と考えた

―「J:COMユニバーシティ」の学部長に就任された経緯を教えていただけますか?

2015年の定年再雇用時に、ダイバーシティ推進をしたくて、自ら手を挙げた結果、人事部に異動したことがきっかけです。

―なぜそのようなお仕事を希望されたのですか?

定年を迎えるにあたり、今後は会社に恩返しをしたいと思いましてね。「私が後輩たちに役立てることは何だろう」と考えた時に頭に浮かんだのがダイバーシティ推進でした。そのことを定年前のキャリア面談で話したところ、人事部に配属されました。

背景をお話ししますと、私は新卒でダンロップに入社してプロゴルフトーナメントの企画・運営などに携わった後、41歳の時、に日本唯一のゴルフ専門テレビ局「ジュピターゴルフネットワーク」を立ち上げ、当初は出向として、その後、転籍しました。社長を務めた後、親会社であるJ:COMに異動し、当社初のコンセプトショップ「J:COM Wonder Studio」の立ち上げをしたりと会社からさまざまな機会をいただきました。一方、私が社会に出たのは1986年の男女雇用均等法施行前。「女性は結婚したら会社を辞めるのが当たり前」という時代にキャリアをスタートし、女性が「少数派」であるがゆえの働きにくさも経験してきました。

今は「女性の活躍」がうたわれる時代になり、以前よりは女性が働きやすい時代になりましたが、それでも「ジュピターゴルフネットワーク」の社長時代に幹部会議に出席すると、女性は私ひとりだったりするんですよ。当社のサービスは性別、年齢、国籍などさまざまな属性を持つお客さまに利用していただいているのですから、女性の管理職登用を含め、女性の意見がもっと企業の意思決定に反映されるような環境を整えるお手伝いができたらと思って、「ダイバーシティをやりたい」と会社に伝えたというわけです。

それで、再雇用2年目まではダイバーシティ研修の企画・実施と講師を担当していたのですが、一緒に仕事をしていた人財開発部長が「J:COMユニバーシティ」を立ち上げることになり、「キャリアデザイン学部の学部長をやりませんか」と声をかけられたんです。

「指示」が求められる立場から、「サポート」する立場に

―学部長就任のお話をどのように受け止めましたか?

岩本 郁子さん「私でよければ、ぜひ」と思いました。というのも、当初担当していた「ダイバーシティ研修」は管理職や女性社員を対象に実施していました。2年目から女性社員向けには、いわゆる「キャリアアップ研修」の要素も取り入れて「活躍するには、与えられた仕事をするだけでなく、主体的にキャリア開発をしていくことが大切」ということを伝えていたんですね。結果的に男性社員にも当てはまる内容が増えてきたので、女性以外にも聞いてもらえるといいのではという思いがあり、キャリアデザイン学部でそれを実現できるのは願ってもないことでした。

―定年再雇用を機に人財育成の仕事に携わられて、ご自身に変化はありましたか?

「J:COMユニバーシティ」でキャリア研修の講師も担当していることもあり、より説得力のある話ができるようにとキャリアコンサルタント資格を取得したのですが、そのための勉強を通して、現役世代をサポートするという今の自分の役割を果たすために大切なスタンスを学びました。

キャリアコンサルタントにとって重要なスキルのひとつに「傾聴」があり、講座でロールプレイをやったんですね。その時に私を含め管理職経験のある人ほど戸惑ったんですよ。管理職をやっていると部下が相談に来たときに求められるのは「指示」ですが、キャリアコンサルタントにクライアントが求めるのは「サポート」。例えば、ロールプレイングで私はクライアント役の「先週は仕事が忙しくてすごく大変だったのですが、頑張って今は落ち着きました」という言葉に「よくやったわね、よかったわね」と答えたのですが、それもNGと言われました。自分の意見は前に出さず、まずは相手を受け入れて、本人が答えを見つけられるようサポートする。これはまさにシニア社員にも求められる姿勢だと思っています。頭ではわかっていてもいざ実践となると簡単ではありませんが、その大切さを常に意識するようになったのは大きな変化だと思います。

謙虚に学び続ける姿勢が、シニア社員の活躍につながる

―年齢にかかわらず、いきいきと働くために大切なことは何だと思われますか?

自ら考え、自ら行動する。これに尽きると思います。従来の日本企業では企業主導のキャリア開発が主流で、自ら目標を立てて、そのために何を学び、何をしなければいけないのかを意識し、実際に社外の勉強会や大学院などで学ぶという人は少ないように感じます。でも、今は日本企業特有の「終身雇用」も崩壊しつつあり、自分で自分のキャリアを作っていかなければいけない時代が確実にやってきています。周囲を見ていますと、そういう時代にいきいきと輝いているのは、会社に言われたことだけを素直にやってきた人ではなく、自ら考え、自ら学んで、行動してきた人です。

だから、キャリアデザイン学部の学部方針も「自ら考え、自ら行動できる人財育成を目標とします」と定めました。研修でもよく「会社が求めることにきちんと応えることももちろん大事だけど、それ以外にもいろいろなことを勉強したり、様々な職業の人に会ったり、自分で自分を成長させるための努力を忘れないでくださいね」と後輩世代に伝えています。そして、謙虚に学ぶ姿勢はシニアが活躍するためにも欠かせないものだと思っています。

プロフィール

株式会社ジュピターテレコム
人事本部人財開発部担当部長
キャリアデザイン学部 学部長

岩本 郁子さん 新卒で株式会社ダンロップスポーツエンタープライズ入社後、プロゴルフトーナメントの企画・運営を経て、1996年ジュピターゴルフネットワーク株式会社設立に携わり、2004年代表取締役社長就任。2010年、株式会社ジュピターテレコムプロモーション本部副本部長に就任。J:COM初のコンセプトショップ「J:COM Wonder Studio」設立に携わり、支配人を兼務。2015年、人事部グループ人財開発センターに異動。ダイバーシティ研修の企画や講師を担当する。2017年、企業内大学「J:COMユニバーシティ」キャリアデザイン学部学部長に就任。2019年、キャリアアドバイザー兼務。国家資格「キャリアコンサルタント」

この記事をシェアする


個人の活躍の記事一覧へ戻る