「役割創造project」とは、キャリア支援・キャリア開発の観点から、
日本のミドル・シニア人材の「働き方改革」をライフワークスらしく実現していく取り組みです。

2018.01.18 支援者の取り組み

社会人が学び直し、学術的な基礎を基に社会課題に取り組む「法政大学大学院政策創造研究科」

社会人が学び直し、学術的な基礎を基に社会課題に取り組む「法政大学大学院政策創造研究科」

法政大学が、「地域づくりを知識創造で」をコンセプトに掲げ、政策学という知識の枠組みを基に社会課題や地域課題の解決にあたる人材を養成する「政策創造研究科」という大学院を設置しています。社会人の学び直しに重点を置いているというこの研究科について、研究科長の上山肇教授(文化・都市・観光創造群 都市空間プログラム)と専任教員の石山恒貴教授(経済・社会・雇用創造群 雇用プログラム)にうかがいました。

政策を幅広い分野から研究し、社会課題を解決できる人材を育成

---まず、研究科の目的や目指すものについて教えていただけますか?

上山先生: 政策創造研究科は、「豊かで持続可能な地域社会を実現する革新的な政策を研究・デザインし、その実現にリーダーシップを発揮する人材を育成する」という目的で2008年に設立されました。学部を持たない社会人対象の独立研究科で、社会人の学び直しに重点を置いています。

石山先生: 修了時には「政策学」の学位が取得できますが、その過程では、政策学以外の何らかの学問領域に関連付けながら、政策研究に不可欠な知識・スキルや、政策を形成する能力、実務を進める能力が培われます。例えば、私の専門領域は経営学の中のキャリア論や人的資源管理、雇用政策ですので、私のゼミに入った学生は、これらの学問分野を軸に、興味に応じて都市空間論やソーシャルキャピタル論などまちづくりや地域づくり、社会課題の解決にかかわる学術分野を幅広く横断して学んでいきます。

---「地域づくりを知識創造で」というコンセプトには、どのような思いが込められているのでしょうか?

上山先生: 学術的な基礎をしっかりと築いた上で、それを基にまちづくり・地域づくりに生かして欲しいという思いが込められています。

rc_s_180115_02.jpg石山先生: 地域における社会課題の解決に向けた取り組みに携わっていらっしゃる方の多くは、実務における専門的な知識をお持ちです。ただ、その専門的知識だけでは、従来型の解決策しか出てこず、状況を打開できないこともあるのが現状ではないでしょうか。そこで、実務で培った知識や経験を大事にしつつ、この研究科で社会課題に対応する幅広い分野の知識を得ることで、課題に対してまったく新しい、革新的なアプローチができるようになることを期待しています。

上山先生: ここで学んだことをそれぞれの職場で発揮していただけるようなリーダーを育成するということは重視していることの一つです。


キャリア形成、まちづくり、介護政策...学生の研究テーマは多岐にわたる

---受講生には、どのような方がいらっしゃいますか?

上山先生: 2017年度は修士課程と博士課程を合わせて43人が入学しましたが、男女比は半々、年齢構成は20代から70代まで幅広く、半数強の24人が40代〜50代です。

石山先生: 在籍者の職業は、会社員、NPOなどの団体職員、中小企業経営者、公務員など、こちらも幅広いです。フリーのコンサルタントや市議会議員といった方もいらっしゃいます。

上山先生: 年齢も職業も幅広いので、授業でグループ討議を行うと、さまざまな意見が出て互いに学ぶことが多いようです。修了生に感想を聞くと、「教授陣から学ぶだけでなく、学生同士で学び合える点がよかった」とおっしゃる方もいるほどです。

石山先生: あと、最近増えてきているのは、アジア圏からの留学生です。私のゼミには、日本の人事制度に関心を持ち、研究したいという留学生が来ています。また、研究科全体を見ると、「日本型介護が中国にも適用可能か」をテーマに研究している人や、「日本の環境政策について学び、中国の自分の故郷の街に政策提言をしたい」という人などがこれまでにいました。

---国内の入学者の方は、どのようなテーマで学んでいらっしゃっていますか?

上山先生: 働きながら親の介護をした経験から「今後の介護政策のあり方を考えてみたい」など、仕事とは直接関係のないような研究をしていらっしゃる方もいますが、やはり多いのは、仕事上で課題を感じ、一度外に出て学んで、それを所属組織に生かしたい、という考えの方です。

石山先生: 例えば、私のゼミ生には看護師の方がいて、看護師の実務に密着した内容をテーマに研究をされています。このように、仕事上のちょっとした課題を解決したいということでいらっしゃっている方は多いですね。仕事上の課題も、社会課題の一つですから。

---ここで学ばれたことを職場に還元された例を具体的に教えていただけますか?

rc_s_180115_03.jpg上山先生: 私自身の話になりますが、私はここの1期生でして、もともと、大学で建築学を学び、働きながら工学博士をとりました。2012年度まで自治体でまちづくりに携わっていましたが、そこで感じたのは、工学だけではまちづくりは成立しないということ。そこで改めて、まちづくりの制度という観点から法律学を、まちづくりの評価という観点で経済学を大学院でまなびました。そして、そうしたさまざまな学術領域を組み合わせた政策学という観点で、まちづくりを学び直そうとこの研究科に入学しました。

働きながら研究を続けていた自治体では、自治体を国際的に表彰する制度(LivCom)に研究成果をまとめた論文を応募し、自治体として国際賞を受賞することができました。公務員って、自分たちの取り組みを外部にアピールする機会が少なく、どの自治体も良い政策にたくさん取り組んでいるにもかかわらず、なかなか外部に知ってもらえない。それを誰かが研究することで知ってもらうことができるということを経験することができ、とても貴重な機会でした。こうした自身の経歴をご覧になって「自分も何かに挑戦したい」と思われて、実際にこの研究科に入学してこられる人もいました。

石山先生: 他にも、研究成果を学会で発表される方や、書籍を出版される方などもいらっしゃいます。あとは、授業や研究を通して学んだ研究上の手法を活用して実務の顧客分析を行ったり、コンサルティングを行ったりする方もいらっしゃいます。


少し視野を広げて情報収集を始めることが、パラレル・キャリアに1歩踏み出すコツ

---学べる分野が幅広く、学び直しの場としておおいに活用できそうですね。最後に、ミドル・シニアが越境学習やパラレル・キャリアを実現する上で意識したいことや、そもそもそこに一歩踏み出すためのコツなどがあれば、アドバイスをお願いいたします。

上山先生: いきなり何かを始めるというのはご本人にとっても勇気がいるでしょうから、自分自身の中で、数年後を見据えてやってみたいことなどを思い描いて、そのために今から準備できることを考えたり、情報収集を少しずつ進めたりしていくのがいいのではないでしょうか。今、学び直しの環境はどんどん整ってきていますから、日々の仕事もしっかりとやりながら情報収集をしていれば、自分に合った学び直しの場にも出会えるのではないかと思います。

石山先生: 例えば、日ごろ接しない情報源に触れてみるとか。少し視野を広げて「プロボノ募集」といった募集を見てみたり、うちの研究科をはじめ学び直しの機関のオープンキャンパスやゼミ見学に行ってみたり。ちょっとしたきっかけで変われるものです。

うちの研究科にもぜひ挑戦していただきたいですね。うちは修了要件として論文が必須なんですが、論文って、一見、社会課題や実務、高度職業人といったことと関係ないようにみえますよね? ところが、論文を書く行為こそが、仕事にも役立つんですよ。

---どういうことでしょうか?

石山先生: まず、論文を書くには、まずは自分で課題設定をしないといけません。リサーチクエスチョンという研究上の問いを見つけることはすごく大変なことで、その場その場で授業を受けるよりも課題設定力が身につきます。それに、先行研究を鵜呑みにして「すごいな」と思っていても論文にはならなくて、何かしら先行研究の矛盾点や足りないところを見つけなければなりませんから、批判的に見る思考、クリティカルシンキングも身につきます。

さらに、調査・研究を進めるにあたってはさまざまな関係者と信頼関係をつくり、協力を仰いでいかなければならないので、多様な人々とのコミュニケーション能力が培われるんです。そして、実際に書くときには論理的に文章を構成しなければならないので、ロジカルシンキングも身につきます。ただし、ロジックだけをつなげていっても論文は浅くなってしいます。ロジックを細かく虫の目でつなげる前に、鳥の目で有機的な関係性を見ないといけない。すると、システムシンキングも身につくんですね。このように、論文を書くことはまさに実務に役に立つんですよ。

大学院は一見ハードルが高く見えるかもしれませんが、学び直しに熱意がある方なら誰でも大歓迎ですから、興味を持たれた方にはぜひ挑戦してほしいと思います。

rc_s_180115_04.jpg

プロフィール

法政大学大学院政策創造研究科政策づくり、地域づくり、産業創出を担う地域イノベーションのリーダーの養成を目指し、2008年に社会人を対象に設立された修士課程と博士後期課程を持つ独立研究科。授業は平日夜間と土曜日に開かれ、「人口・経済・社会・生活プログラム」「雇用プログラム」「地域社会プログラム」「都市空間プログラム」「都市文化プログラム」「観光メディアプログラム」「地域産業プログラム」「中小企業経営革新プログラム」「CSRプログラム」の9プログラムの中から総合的・具体的に学習することができる。
法政大学大学院政策創造研究科のWEBサイトはこちら

この記事をシェアする


役割創造の事例の記事一覧へ戻る