「役割創造project」とは、キャリア発達・キャリア開発とその支援という観点から、日本のミドル・シニア人材の「働き方改革」をライフワークスらしく実現していく取り組みです。

2018.06.13 企業の取り組み

ミドルシニアが環境変化に戸惑うのは当然のこと。
社員がロングスパンのキャリアを考えるきっかけ作りを

ミドルシニアが環境変化に戸惑うのは当然のこと。 社員がロングスパンのキャリアを考えるきっかけ作りを

社員の平均年齢が比較的若い企業でも、近年は高齢化の影響で社員のボリュームゾーンが40代以降にシフト。ミドル以降の社員の役割創造をサポートする必要性が高まり、支援の取り組みをスタートする企業が増えています。社員が年齢を問わず「自律的に」活躍するための支援をどのように考えればいいのか。ソフトバンク株式会社人事本部にお話をうかがいました。

年齢を問わず挑戦の機会を与える

---御社では、自律的にキャリアを築こうとする人にはさまざまなチャンスを提供されているイメージがあります。社員が持つ知恵や知識を仲間と共有する「知恵マルシェ」や、一定のスキルを持つ従業員をグループの人材育成の講師に認定する「ソフトバンクユニバーシティ認定講師制度」といった取り組みはメディアにもよく取り上げられていますね。

井上さん: 人事ポリシーのひとつに「『挑戦する人』にチャンスを」という言葉を掲げていまして、自らの意思で成長していこうとする社員には挑戦の機会をどんどん活用してもらおうという方針です。例に挙げてくださったような自己啓発の場もありますし、選考を経た後、希望する部門やグループ会社に異動できる「全社フリーエージェント制度」、新規事業立ち上げの際の「ジョブポスティング(社内公募)制度」といった新たな仕事にチャレンジするきっかけも用意しています。

---ミドルシニア世代のキャリア開発支援については、これまでどのような取り組みをされてきましたか?

井上さん: rc_c_180413_02.jpg当社の場合、最近まで年齢層別の人事施策はほとんど行っておらず、ミドルシニアに関しては、定年間近のセカンドライフセミナーを実施しているくらいでした。というのも、当社はこれまで社員の平均年齢が比較的若く、ミドルシニア層の社員が多くはなかったことに加え、トップの強いリーダーシップのもと大きな目的に向かって全社員が全力疾走するような時期が長く続いていました。そのため、社員一人ひとりがキャリアを立ち止まって考える機会の必要性が顕在化していなかったというのが実情です。また、ソフトバンクには自ら手を挙げた人に機会を与える「手挙げ制」のカルチャーが根づいており、社員に対して強制的に何らかの施策を行うという概念がないことも年齢層別の施策をあまり実施してこなかった理由のひとつです。

岩月さん: 逆に言えば、「全社フリーエージェント制度」や「ジョブポスティング(社内公募)制度」も年齢による縛りはありません。制度を活用している50代以上の社員もいますよ。

井上さん: 例外的に、長年のキャリアを活かした仕事をしてほしいという意図で50代以上を対象としたジョブポスティングの公募を行い、活躍しているケースもあります。

---そういった制度を利用して活躍しているミドルシニア社員に共通する要素はありますか?

井上さん: 正しい回答かは分かりませんが、個人的な所感を申し上げると、「修羅場経験」があり、それを乗り越えてきた社員が多いように思います。「変化対応力」がカギなのかもしれませんね。


「40代向けキャリア施策」に大きな反応。ミドルシニアのキャリアサポートの必要性を感じた

---先ほど、年齢層別の人事施策は基本的に行っていなかったとうかがいましたが、2017年には希望者を対象に40代社員のキャリア研修を実施されましたね。なぜ実施をお考えになったのでしょう?

井上さん: 当社には変化を楽しみ、自分でキャリアを切り開く力を持った社員もたくさんいますが、M&Aで人材の多様化が進み、近年は「キャリア」に対する意識にも個人差が大きく感じられるようになりました。中でも40代社員キャリア上の大きな変化が視野に入る時期でもあり他世代に比べて個人差が多かったため、2017年は希望者へのキャリア研修やキャリアプランセミナーなど40代社員のキャリア自律を促す取り組みに力を入れました。

---研修の反応はいかがでしたか?

岩月さん: rc_c_180413_03.jpg募集と同時に多数の応募をいただきました。社内の反応から、ミドルシニアのキャリア自律を会社がサポートしていく必要性を実感しました。受講動機のアンケートから浮かび上がってきたのは、40代以降のキャリアに対する漠然とした不安感。「何かを変えたいけれど、どうしていいのかがわからない」という声が多かったのが印象的でした。また、「50代からの環境変化を見据え、前向きに働き続けるためのヒントがほしい」という声も目立ちました。


社員が前に進むためのきっかけ作りをしていきたい

---ミドルシニア社員が自律的にキャリアを切り開き、活躍し続けるために、今後実施したいと考えていらっしゃることはありますか?

井上さん: 40代社員を対象としたキャリア施策が好評でしたので、今後は30代や50代にも広げていくことを検討しています。いくらチャレンジ精神のある社風とは言っても、60から70歳まで働く姿を入社時から想像していた人はあまりいないと思います。環境変化に戸惑うのは当然のことです。これまでソフトバンクには高いハードルにチャレンジするためのきっかけはたくさん用意されていましたが、それぞれの社員が今、自分が取り組んでいる仕事をどう今後のキャリアにつなげていくかを自律的に考えるような機会はあまり提供できていませんでした。

今後について具体的に決定している施策はまだありませんが、例えば、「ソフトバンクユニバーシティ」のプログラムにキャリアをテーマとしたものをこれまでよりも充実させていくことや、外部の専門家による講演会、ワークショップを実施するといったことを検討しています。ミドルシニア社員が職業人としてどう生きるかを内省するためのきっかけ作りとなるような施策を幅広く提供していきたいと思います。


取材にご協力いただいた方

ソフトバンク株式会社 人事本部 戦略企画統括部 人材戦略部 部長 井上 允之さん
同 人材戦略2課 課長 岩月 優さん

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