C・Dラボ

「キャリア権」を社会に広め、すべての人が仕事を通じて幸せになれる社会の実現を目指す

「キャリア権」の理念を広め、すべての働く人たちがキャリア形成、キャリア展開をしやすい環境づくりを目指す認定NPO法人「キャリア権推進ネットワーク」の設立の経緯や取り組みについて、広報・事業部長の吉田修さんにうかがいました。

2018.08.01
インタビュー・対談

働く人たちが自らのキャリアを能動的に形成する重要性が高まっている

貴法人の設立経緯を教えていただけますか?

「キャリア権」とは「働く人が希望する職業を選び、その人生(ライフキャリア)に大きな位置を占める職業生活(職業キャリア)を通じて幸福を追求する権利」のことで、法政大学名誉教授の諏訪康雄先生によって提唱された、日本オリジナルの法的な概念です。当NPOは、2008年4月から2010年5月までの9回にわたって開催された「キャリア権研究会」から発展し、2013年4月に設立されました。

現在、日本の就業者に占める企業や組織で雇用されている人の割合は9割近くにのぼり、個人のキャリア形成が組織のリードによって行なわれるケースが多いのが現状かもしれません。しかしながら、産業構造の高度化や新たな産業の創出、職務の多様化など産業構造の変化と労働市場の流動化といった環境変化を背景に、働く人たちが自らの人生設計においてその職業生活を能動的に形成する重要性が高まっています。

当NPOが目指すのは、性別や年齢、障がいの有無、働き方にかかわりなく、誰もが十分な職業能力を身につけ、仕事で発揮できる社会。会社を移っても、身につけた技術、技能が正当に評価される社会です。キャリア権はそのような社会を実現するための法的支援と支援対策の根拠を提供するもの。私たちはキャリア権の理念を広く社会に普及することを通し、働く人や労働組合のみなさんにはキャリア形成の支援を、企業には納得性の高い人事や人材確保を、国や社会にはキャリア権の考え方を理解していただき、立法化や施策の推進も働きかけていきたいと考えています。

参加型のイベントでキャリア権に関するリアルな理解を促す

具体的には、どのような事業を行われていますか?

キャリア権を立法の立場の観点から調査・研究するとともに、セミナー、勉強会、シンポジウムなどさまざまなイベントを開催しています。一方的な発信ではなく、個人や企業、労働組合、学校、行政、NPOなど、働く一人ひとりのキャリア形成について同じ問題意識を持つ方々との連携した活動を大切にしており、2018年6月に開催された創設6周年総会の記念講演では、コーン・フェリー・ヘイグループ株式会社代表取締役社長の高野研一さんに日本企業の人事戦略の課題と今後」をテーマにお話しいただき、盛況でした。有識者や社会人などの参加者が少人数のグループで討論を重ねながらキャリア権についてリアルな理解を深める「ワールド・カフェ・プログラム」や「キャリア権コミュニケーションサロン」も好評です。

第5回キャリア権ワールドカフェ

「第5回キャリア権ワールドカフェ」2017年10月2日に株式会社岡村製作所ガーデンコートショールームで開催した「第5回キャリア権ワールドカフェ」の様子。第1部では、会社員として週3日広報業務を担当し、残りの4日はダンサーとして活動する「踊る広報」こと株式会社ビースタイル柴田菜々子さんと上司の川上敬太郎氏に「週3日勤務の実現と運用のポイント」について聞いた。第2部では、和やかな雰囲気の中、「会社で柔軟な働き方を実現するための課題と解決」をテーマに活発に討論が行われた。

早期のキャリア教育を重視し、小・中・高校・大学で「出前授業」を実施

学校に対するキャリア権の普及活動にも力を入れていらっしゃるようですね。

個人が生涯にわたって自律的なキャリア形成を進めるためには、学校教育においてキャリアやキャリア権について学び、考える機会を持つことが重要であり、それも小学校、中学校といった早期のキャリア教育が望ましいと当協会では考えています。そこで、大学での「出前授業」を2014年5月にスタート。現在は小学校、中学校、高校にも対象を広げ、2017年度は法政大学大学院創造研究科の石山恒貴教授をはじめ10名の専門家の方々のご協力で年間7か所で10回、合計170名に実施しました。

キャリアワークショップ

「キャリアワークショップ」2017年3月に千葉県松戸市の児童養護施設「晴香園」の小学生向けに実施した「キャリアワークショップ」。講師は法政大学大学院創造研究科・石山恒貴教授。小学2年生から6年生まで11名が参加し、「自分の好きなキャラクターを紹介しよう」をテーマにグループ内で発表し合った。自分や他者が大切にしている価値観に触れ、それを参考に自分の将来について考えてもらうことが狙いだ。

とても意義のある取り組みだと思います。

おかげさまで手作り感のある「出前授業」は好評をいただいており、当NPOの看板事業のひとつになっています。

当NPOが設立して6年目。最近では「出前授業」や「ワールドカフェ」などのイベントだけでなく、理事長の諏訪康雄先生へのキャリア権に関する取材や石山先生のキャリア教育を紹介する記事などマスコミにキャリア権について取り上げられる機会も多くなりました。2017年度のパブリシティ件数は前年度の2倍以降に増えています。しかしながら、キャリア権という概念はまだ一般に広く知られているとは言えません。すべての人が仕事を通じて成長し、より幸せになれる社会の実現を目指し、今後もさまざまな活動によってキャリア権の理念をより広く、深く、社会に普及・浸透させていきたいと考えています。

認定NPO法人キャリア権推進ネットワーク

http://www.career-ken.org/
設立:2013年03月21日
理事長:諏訪康雄(法政大学名誉教授)

活動内容
グローバル化・知識化する社会経済環境のもとにおいて、働く人及び働こうと考えている人一人ひとりが、その意欲と能力に応じて自己の望む仕事を選択し、職業生活を通じて幸福を追求する権利である「キャリア権」の理念を提唱し、社会にキャリア権の概念が広く認知され、普及するための事業を行い、キャリア権の基本法制化並びにその理念にのっとった諸法令の制定・適用及び政策の策定・運用の実現に向け活動することにより、働いているあるいは働こうと考えているすべての人達にとって納得のいく職業生活の展開、企業の活力と競争力の向上、社会の持続的発展に寄与することを目的とする。

認定NPO法人キャリア権推進ネットワーク
広報・事業部長 吉田 修さん

公益社団法人全国求人情報協会常務理事。和文化教育学会会員。ボランティアとして認定NPO法人キャリア権推進ネットワークの広報部長を務めるかたわら、築地双六館館長として双六の蒐集・研究・制作に取り組む。
公式HP:http://www.sugoroku.net/

インタビュー・対談の一覧へ戻る