キャリア自律とは?定義や必要性、企業が支援するメリットを解説

キャリア自律は、テクノロジーの発展によるビジネス環境の変化や、企業の組織や制度の変革に伴い、今日では注目の高い概念のひとつとなりました。また、ここ数年テレワークを導入する企業が増えたことで、企業と働く個人の関係性が変化しており、そうした観点でもキャリア自律はより重要な概念になってきています。
今回は、キャリア自律の定義、キャリア自律が注目される理由、企業がキャリア自律を推進するにあたっての課題、キャリア自律の方法、といったことを皆さんと考えてみたいと思います。

2026.03.20
コラム

1.キャリア自律とは

キャリア自律(Career Self-reliance)とは、自分の価値観を理解し、仕事の意味を見出したうえで、キャリア開発の目標と計画を描き、社会のニーズや変化を捉えながら学び続け、主体的にキャリアを築いていくことです。

この概念は、1990年代に米カリフォルニアのCAC(Career Action Center)が定義とモデルを提唱したことをきっかけに、働く人のキャリアを捉え支援するための考え方として広まりました。従来のキャリア開発(Career Development)と比べて、自己理解による気づきや自己変容に焦点を当てている点が特徴とされています(例:花田ら2003)。

また、マーク・サビカスの「キャリア・アダプタービリティ」(関心・統制・好奇心・自信)を踏まえると、キャリア自律には行動面だけでなく心理的側面も重要だといえます。例えば、自分のキャリアに関心を持つこと、主体的に進めようとする統制感、変化への好奇心、そして前に進めるという自信などです。

なお、「自律」と似た言葉に「自立」があります。自律は、外部から指示されなくても自分をコントロールして行動できることを指します。一方で自立は、外部の助けに頼らず自分の力で行動することを意味します。

社員に当てはめると、自律した社員とは、自分の意思を持ちながら行動を調整でき、周囲のニーズや期待も踏まえて自己実現を図れる人です。自立した社員は、自分の意見を持ち、自分の力で行動できる人を指します。両者は似ていますが、自律には「周囲がいる環境の中で、期待や状況を捉えながら自分をコントロールする」という視点が含まれる点が異なります。

【参考資料】特別講演「普通の人がイキイキする人事・キャリア支援のありかた」講演録
慶應義塾大学名誉教授 花田光世先生に登壇いただいたセミナーの講演録です。ダイバーシティ時代における普通とは、キャリア支援における個人の能力開発の重要性、などの話題のほかに、これからの人事のあり方やキャリアコンサルタントの役割などについてもお話しいただきました。講演録はこちらからダウンロードしてください。

2.キャリア自律が注目される背景

日本においてキャリア自律に注目が集まっている理由としては、どのようなことが挙げられるのでしょうか。ここでは、代表的な3つの背景についてそれぞれご説明します。

1)労働人口の減少に伴い、生産性の向上が必要になったこと

1998年に労働人口がピークを迎えた日本は、人口オーナスともいえる状況にあります。そのため、成長し続けるには、生産性を上げることが課題といわれるようになりました(総務省「労働力調査」を参照)。

日本生産性本部の調査研究(2025)によると、1970年以降、先進7ヵ国の中で日本の労働生産性は最下位のままになっています。このようなことも、生産性に注目が集まる理由の一つといえます。

生産性向上に寄与すると考えられる一つの方法が、キャリア自律です。なぜなら、働く一人ひとりが自ら考え、主体的に行動することが、仕事で高いパフォーマンスを発揮することにつながると期待されるからです。

2)年齢や勤務年数に応じた活躍から、あらゆる世代の活躍が必要になったこと

2015〜2020年にかけて、働くことをめぐる社会のテーマは「女性活躍推進」から、女性・高年齢人材・障害者・就職氷河期世代などを含む誰もが活躍できる社会を目指す「ダイバーシティ推進」へと広がってきました。

こうした流れの中で、日本型雇用の特徴とされてきた年功序列にも見直しが進んでいます。たとえば、新卒でも専門性の高い人材に高い初任給を設定する企業が出てきたり、ジョブ型雇用を導入する企業が増えたりしています。これは、勤続年数に応じた処遇から、仕事内容や役割に応じた処遇へ切り替える動きの表れといえます。

その結果、年齢に合わせた"決まったキャリアのレール"が用意されにくくなりました。これからは、一人ひとりが自分の強みを発揮できる道を探し、主体的にキャリアを選び取っていくことが求められます。

3)個人の価値観や働き方が多様化し、企業と個人の関係性が変わりつつあること

「VUCA時代」(Volatility:変動、Uncertainty:不確実、Complexity:複雑、Ambiguity:不透明)という言葉に代表されるように、世の中の変化が激しく、将来の予測がつきにくくなり、企業は過去の成功体験にもとづくだけでは社員のキャリア開発の推進が難しくなりました。

そして、働く人たちの価値観は「仕事を通した成長」だけではなく、「家族との時間を大切にする」、「余暇を楽しむ」、「ボランティアで人の役に立つ」というように、人生の中の様々な役割を通して自己実現をしたいといったものに多様化してきています。

また、副業や兼業といった働き方の選択肢が増えた現在では、個人は所属する組織、雇用形態だけではなく、誰とどのように働きたいか、それはなぜかを考えながら、一人ひとりのキャリアをみずからが選び、決断し、行動することができるようになりつつあります。

このような状況において、企業は個人ができること、成し遂げたいことについてよりアンテナを張り、個人とどのようにつきあい、対等な関係を築くことで互いに成長を遂げることが重要なテーマになっているといえます。

例えば、法政大学の諏訪名誉教授による「キャリア権」(「働く人が自分の意欲と能力に応じて希望する仕事を選択し、職業生活を通じて幸福を追求する権利」)に関する議論も、このような世相を捉えたものの一つだといえます。

3.社員のキャリア自律支援による企業側のメリットとは?

社員のキャリア自律支援を行うことで、企業はどのようなメリットが得られるのでしょうか。
ここでは代表的な4つのメリットについて、それぞれ説明します。

career_self-reliance_merit2.png

1)生産性の向上

生産性の向上は、キャリア自律によるメリットのひとつです。
キャリア自律支援を通して自律的な社員が増えれば、従業員が主体的に学習・経験を積んで成長を目指すようになります。それによって、社員一人ひとりがスキルアップやキャリアアップへ向けて何をすべきかを考えるようになるため、生産性の向上も期待できるでしょう。

2)個人のスキル・能力の向上

キャリア自律支援は、社員一人ひとりのスキルや能力を向上させることにもつながります。業務上必要なスキルを一律に取得させる人材育成とは異なり、キャリアを自律的に考えることができるようになると、社員自らが目的を設定して行動するようになると見込まれるためです。
社員が個人で目標を設定するにあたって重要となるのは、自身の成長イメージや目指すキャリアを描けていることです。企業がキャリア自律を支援することで成長イメージやキャリアを自発的に描けるようになり、その結果、個人のスキル・能力の向上にもつながるでしょう。

3)エンゲージメントの向上

キャリア自律支援という形でキャリア構築を支援・応援してくれる企業に対して魅力を感じる社員も一定数いるでしょう。従業員のキャリア構築に理解がある企業だと社員が理解し、その組織で働く意義が高まることでエンゲージメントが向上し、リテンションにつながる可能性があります。

また、社員のキャリアビジョンを企業が把握・理解できる環境があり、企業の方向性と重なってチャレンジする機会を得られるのであれば、社員と企業の双方にメリットのある関係性を構築できます。

4)優秀な人材獲得

キャリア自律が進んでいる人材は、自ら課題を見つけて学び、成果につなげる行動が取りやすいため、組織としても高いパフォーマンスを期待できます。
そうした人材に対して企業がキャリア面談や学習機会の提供などを通じて成長を後押しすると、「ここなら成長できる」という魅力が明確になり、採用市場での競争力が高まります。
結果として、優秀な人材の応募・定着につながり、将来を見据えた人材確保にも効果を発揮します。

4.キャリア自律を促進する要素

企業がキャリア自律を促進するには、社員が自分の意思で学び、挑戦し、成長を積み重ねられる環境を整えることが欠かせません。
具体的には、上司との定期的な1on1やキャリア面談で方向性を言語化できる機会をつくること、必要なスキルを学べる研修・リスキリング制度を用意することが土台になります。

加えて、社内公募やジョブローテーションなど「挑戦の選択肢」を可視化し、挑戦が評価される仕組みを整えることで、社員は自分のキャリアを自分ごととして捉えやすくなります。こうした支援が揃うほど、社員の主体性が引き出され、キャリア自律が組織全体に根づいていきます。

1)キャリア教育の実施

キャリア自律を育てるには、社員一人ひとりの意思や志向を尊重しながら、成長につながる学びの機会を継続的に提供することが重要です。
例えば、キャリア研修、定期的な1on1やキャリア面談で「どんな仕事に挑戦したいか」「何を伸ばしたいか」を言語化できる場をつくることで、本人の主体性を引き出しやすくなります。

さらに、階層別研修やリスキリング、OJTなどを適切に組み合わせ、必要なスキルを身につけられる環境を整えることで、社員は自分の成長を実感しやすくなります。
こうした支援が積み重なることで、働きがいの向上やエンゲージメントの強化にもつながっていきます。

2)キャリアパスの明確化

キャリア自律を後押しするうえで、キャリアパスと評価制度を明確化することは大きな効果があります。
どのような経験やスキルを積めば次の役割に進めるのか、評価では何が重視されるのかが明確になると、社員は将来像を描きやすくなり、成長への意欲も高まりやすくなります。

あわせて、短期・中期の目標設定を支援し、達成までのプロセスを上司とすり合わせることで、日々の行動が具体化します。
方向性が定まった状態で挑戦と振り返りを繰り返せる環境を整えることが、目標達成に向けた主体的な行動を促し、組織全体の成果にもつながっていきます。

3)評価制度の整備

評価制度を整備するうえでは、目標と評価基準を明確にし、社員が「何を達成すれば評価されるのか」を理解できる状態をつくることが重要です。
評価の軸が具体的になるほど、日々の優先順位や行動が定まりやすくなり、成果につながる取り組みに集中できます。

あわせて、評価結果だけでなくプロセスや挑戦も適切にフィードバックすることで、改善と成長のサイクルが回りやすくなります。
こうした透明性の高い評価運用は、納得感を高め、主体的な行動を促し、生産性の向上と企業の持続的な成長につながっていきます。

4)社員のキャリア自律の支援

キャリア自律を根づかせるためには、マネジメント層が果たす役割が大きくなります。
管理職が日常的に適切なフィードバックを行い、部下の目標設定や振り返りを支援できるようにすることで、社員は自分の成長課題や次の行動を具体化しやすくなります。

そのためには、1on1の進め方やコーチング、評価面談のスキルなどを学べる管理職向け研修を実施し、現場で実践できる体制を整えることが欠かせません。
部下の強みや志向を引き出し、挑戦を後押しする関わりが増えるほど、個人の成長が加速し、それが組織全体の成果や成長にもつながっていきます。

5.企業における社員のキャリア自律支援の3つの課題

これまで述べてきた背景を企業の視点で整理すると、今日の企業には「多様なキャリア観を持つ社員一人ひとりの生産性を高め、個人と企業がともに成長できる関係性を築くこと」が求められているといえます。一方で、働く個人にも、自らのキャリアに関心と責任を持ち、主体的にキャリアを築き続ける姿勢が求められています。

しかし、これまで会社主導の人事制度のもとでキャリアを重ねてきた人の中には、自身の将来を企業に委ねてきたケースも少なくありません。社会人になるまで十分なキャリア教育を受ける機会がなく、入社後もジョブローテーションや異動に沿って経験を積んできた人にとって、「これからは自らキャリアを形成せよ」と言われても、戸惑いや不安を感じるのは自然なことです。実際に行動へ移すまでには、いくつかのハードルが存在します。

そのため、社員の意識を「キャリアは自ら切り開くもの」という方向へ転換し、自律的に行動できるよう支援していくことが、企業にとって重要な課題となります。さらに、社員のキャリア自律を後押しするには、個人の意識改革だけでなく、制度や風土など組織側の課題にも目を向ける必要があります。企業がキャリア自律を支援する難しさは、こうした複数の要因が絡み合っている点にあるといえるでしょう。

1)キャリア自律を促すことへの、企業側の懸念

人材育成の施策の一環として、選抜した社員を国内外のビジネススクールに派遣する、あるいは副業・兼業、ボランティアなどを通じて社員に多様な経験をする機会を設ける企業が増えています。一方で、こうした施策の導入をためらう企業も少なくありません。

ためらう理由として多いのが、「社外での交流や経験をきっかけに転職してしまうのではないか」という人材流出への懸念です。加えて近年は、情報管理や利益相反・競業の回避、健康管理など、運用面のリスクをどうコントロールするかが課題として挙がりやすくなっています。実際に、副業・兼業人材を受け入れる企業では「本業側の許可の確認(76.5%)」「利益相反・競業関係の確認(61.4%)」「労働時間や体調管理の確認(58.8%)」といったルール整備が進んでいます。(厚生労働省「副業・兼業を通じたキャリア形成及び企業内での活躍に関する調査研究」報告書を参照)

しかし、社外経験=離職とは限りません。副業・兼業に関しては、制度として容認する企業が拡大傾向にあり、2025年調査では企業の副業容認率が64.3%まで上昇しています。また、副業社員に対して何らかのサポートを行う企業も36.3%と伸びており、副業・兼業が「例外的な取り組み」から「一般的な人材施策」へ広がりつつある状況があります。(パーソル総合研究所「第四回 副業の実態・意識に関する定量調査」を参照)

つまり、キャリア自律を支援する施策は、設計次第で人材流出リスクだけでなく、エンゲージメントや成長機会の拡大を通じて「社内活躍」につなげることも可能です。そのため、キャリア自律に不安がある場合ほど、禁止・抑制で対応するのではなく、利益相反・守秘義務の明確化や健康・労働時間管理の仕組み、学びや経験を本業へ還元する場をセットで整備したうえで、段階的に導入を検討することが重要だといえます。

【関連情報】「ロート製薬の兼業解禁の事例」
政府が副業や兼業の議論を始めるよりも先に、兼業制度を開始したロート製薬で、施策の検討から実行までを担った方への取材記事です。当時は、副業・兼業に何を期待し、どのような工夫をしたのかを伺いました。詳細にご関心のある方は、こちらをご覧ください。

2)キャリア自律支援への上司の理解不足

キャリア研修などの施策により、本人のキャリア自律への意識が高まったものの、日常の業務に戻ったら上司の理解が得られず、思うように行動に移せないという課題があります。

望ましい姿は、上司が部下のキャリアに関心を持ち、キャリア自律に向けた行動を支援することですが、上司の役割自体が部下の業績向上の支援になっていることもよくあります。そのため、定期面談は上司から部下への短期的な目標達成に対するフィードバックや実績評価に終始しがちになります。場合により、そもそも上司本人がキャリア自律やその必要性について理解していないこともあります。

こうした状況を解決するために必要なのは、まず上司自らがキャリアを描ける状況をつくること。そして、長期的なキャリアを考えることの重要性を理解した上で、部下のキャリア自律を支援するための意識を持ったりノウハウを習得したりすることです。

3)すべての社員への期待役割を明確化し浸透させることの困難さ

「30代社員には、企業の期待を正しく理解し、主体的に行動しながら専門性を高めてほしい」「40代社員には、専門性を発揮し、事業の中核として推進役を担ってほしい」など多くの企業がこのような期待を抱いています。

しかし、組織がいくら期待を示しても、社員がそれを正しく理解し、自律的に行動できるとは限りません。この課題は、上司と部下の関係だけで解決できるものではなく、評価制度や役割定義の曖昧さなど、組織全体の構造が影響している場合もあります。

社員一人ひとりがキャリア自律の意識を持ち、主体的に行動し続けるためには、個人任せにするのではなく、組織としてそれを後押しする環境づくりが不可欠です。

そのためには、まず自社にとっての「キャリア自律」とは何かを明確に定義すること。そして、各階層・各個人に期待する役割を具体的に示し、丁寧に伝え、継続的にフィードバックすることが重要です。さらに、キャリア自律が自然に浸透していくようなプロセスを仕組みとして構築することが、企業にとって大きな課題となります。

6.社員のキャリア自律を支援する方法

キャリア自律の促進は、社員がモチベーション高く、働きがいを感じながら働くようになったり、自ら新しいことに挑戦したりといったことにつながると期待されます。また、キャリア自律によって離職を防いだり、優秀な人材を社内外から獲得できたりするなどのメリットも考えられます。さらに、キャリア自律した社員が増えることで、組織全体は活力にあふれ、高い成果を生み出すことが期待されます。

ですが、即効性のあるキャリア自律支援の施策はほとんどないといっても過言ではありません。つまり、キャリア自律支援の施策は、短期ではなく、中長期の人材への投資と考えることが重要です。

下記に、キャリア自律を支援する方法をご紹介します。

<キャリア自律を支援する主な方法>

1)キャリア研修

自身の価値観や強みを把握するのに有効な方法としては、自己理解のためのアセスメントやそれを活用したキャリア研修などが例として挙げられます。

アセスメントの結果は客観的な視点から自身の強みや価値観の再認、あるいは発見につながりやすく、個人の価値観の整理に役立ちます。キャリア研修は、講師による介入もさることながら、参加者同士のグループダイナミクスによる気づきを多く得られる場として有効です。

アセスメントとキャリア研修を組み合わせることで、概ね1年~5年ぐらい先のキャリア形成のイメージを明確にすることが可能ですが、参加者自らが決めたキャリアに関心を持ち、行動に移し、実行し続けるようになるためには、30代、40代、50代と、世代ごとにキャリア研修を実施するなど、継続的な支援が必要です。

2)キャリアカウンセリング/コーチング/キャリア面談/メンター制度

行動を促したい場合、キャリア研修だけでは不十分なことがあります。スポット的に実施された研修は、その場では意欲が高まっても、日常業務に戻ると忙しさに追われたり、「思い描いていた姿と違う」と感じたりして、学びが薄れてしまう可能性があるからです。

そのため、研修後も継続的に状況を振り返る機会を設けることが重要です。定期的でも不定期でも構いませんが、自身の行動や課題を確認できる場があることで、軌道修正がしやすくなります。

例えば、キャリアカウンセリングを活用すれば、「なぜ思うように進まないのか」「どうすれば前に進めるのか」を整理できます。コーチングを通じて次に取るべき行動を明確にすることで、一歩ずつ着実に前進できるようになります。

また、上司とのキャリア面談やメンター制度も有効です。これらは、組織内でどのように活躍したいのかを具体化し、実際の行動へとつなげるための重要な機会となります。

【参考資料】上司と部下のキャリア面談を成功させるポイント(面談サンプルシート付)
このコラムでお知らせしているキャリア面談を上司が成功させるためのポイントを簡単にまとめた資料です。面談で使うシートのサンプルもございますので、併せてご活用ください。資料はこちらからダウンロードしてください。

3)副業・兼業などの越境学習

将来のニーズを知ったり、そこに向かって自らのキャリアを不断に形成したりするためには、自身の能力にどれだけの市場価値があって通用するのか、どれくらいのコミュニケーションスキルがあるのか、他者との協働を図ることができるのかといった、いわゆるエンプロイアビリティスキル(雇用される能力)を知る必要があります。

エンプロイアビリティスキルを自覚するには、社内では通用するスキルが通用しない経験ができる副業や兼業、越境的学習といった、いわゆる他流試合の場が有効です。そういった場を活用することで、社員は自らが発揮できる現在の価値や能力を確認できるだけではなく、先を見据えて不足部分を補足するきっかけを得ることにも期待できます。

あるいは、社外の人との交流で得られた新たなネットワークが、普段とは違った視点を養い、仕事上の工夫につながることや、仕事で不足するリソースの獲得に至ることもあります。

4)学習機会の提供や支援

社会人が継続的に学習したり、学びなおし(アンラーニング)をしたりする場所の代表的なものとしては、社会人大学院やビジネススクールなどが挙げられます。ですが、こういった場に身を置くことで、時間的にも経済的にも負荷がかかることは否めません。そのため、学びなおしの場については、目的や経済的環境などを加味して、自身のキャリア形成につなげるために選択可能なものを候補に挙げる必要があります。

学習・学びなおしの場所としては下記が挙げられます。

<学習・学びなおしの主な場所>

  • 社内スクールやE-ラーニング
  • 社内の公式・非公式のワーキンググループ
  • 特定のビジネステーマに関心のあるメンバーが集まるコミュニティ
  • NPO法人などの団体が主催する勉強会

このように、私たちの身の回りには様々な興味・関心のあることについて学ぶ場が多数存在しますので、足を運ぶ機会さえあれば誰しも学びなおしが可能です。そして、学びなおしをうまく行うためには、本人がこれまでのやり方に固執せず、変化を受け入れる柔軟な姿勢を持つことが欠かせません。

5)状況の明確化

キャリア自律を促す方法は実に多様です。まずは社内にどのような課題があるのかを明確化する方法もあります。その代表的なものがリサーチです。

リサーチにも実に様々なアプローチ方法が存在していますが、代表的なものは下記のとおりです。

<リサーチするための主な方法>

  • 従業員エンゲージメントを測定するもの
  • 従業員満足度を測定するもの
  • キャリア意識やキャリア自律の度合いを測定するもの

それぞれのリサーチで用いられる尺度については、学術的に検証されながらビジネスの現場にも応用されているものが多くありますので、できる限り信頼のおける尺度を用いたものの活用が好ましいでしょう。

そのほかに状況を明確化する方法としては、例えばタレントマネジメントのシステムなどを用いて社員情報をデータベース化することなども有効です。

キャリア自律を促すために、自己申告制度、社内公募制度、ジョブローテーションといった様々な制度を用いることもあります。こういった制度が実行力のあるものにするためにも、社員一人ひとりのキャリア自律促進をどのように進めるかということを並行して検討し、全体的にどのようなキャリア開発の仕組みを作り上げていくのかという設計図を作ることが、何よりも大切だといえるでしょう。

【参考資料】キャリア開発事例集
キャリア開発の事例集です。キャリア研修や、キャリア開発のための仕組みづくりや体制の構築といったものをご紹介しています。定年延長への対応やシニアの職域開発といったことにご関心がある方も、ぜひ参考にしてください(上記の【事例2】の要約版も収録)。事例集はこちらからダウンロードしてください。

【参考資料】キャリア自律調査
この調査では、社員のキャリア自律の現状とそれに影響を与える要因を詳細に分析します。具体的には、キャリア自律の状況、仕事の充実感、キャリア展望、職場での居場所感、組織へのコミットメントといった項目を調査し、これらを数値化して自社の課題を明らかにします。これにより、人事や教育担当者はキャリア開発支援のための研修や体制構築、既存の取り組みの改善策を検討しやすくなります。
調査の詳細はこちらをご覧ください。

参考文献・資料:
Byster, D. (1998). A Critique of Career Self-Reliance. Career Planning and Adult Development Journal, 14(2), 17-28.
Collard, B. A., Epperheimer, J. W., & Saign, D. (1996). Career resilience in a changing workplace. ERIC Clearinghouse on Adult, Career, and Vocational Education, Center on Education and Training for Employment, College of Education, the Ohio State University.
花田光世, & 宮地夕紀子. (2003). キャリア自律を考える: 日本におけるキャリア自律の展開. CRL レポート.
リクルートキャリア(2020)「「兼業・副業に対する企業の意識調査(2019)」
Waterman Jr, R. H. (1994). Toward a career-resilient workforce. Harvard Business Review, 72(4), 87-95.

7.キャリア自律に取り組んでいる企業事例

キャリア自律を効果的に支援するためには、企業側の方針を一方的に当てはめるのではなく、社員自身の「こうありたい」「挑戦したい」といった内発的な志向を引き出すことが欠かせません。
本人の意思を起点に、学び・経験・対話の機会を設計することで、主体性が行動につながりやすくなり、結果として組織の成長にも波及していきます。ここでは、社員の主体性を生かした支援策を展開している6社の取り組み事例を紹介します。

1)事例①:KDDI株式会社

https://www.lifeworks.co.jp/case/case002272.html

KDDI株式会社では、メンバー本人への支援に加えて、上司(ライン長)がキャリア面談を適切に実施できるよう、管理職向けの「キャリアマネジメント研修」を必須参加で展開しています。
研修では「キャリア自律とは何か」といった基礎から、キャリア面談の目的、進め方のフレームワークまでを体系的に学び、現場で起こりがちな悩みの傾向を踏まえたケース演習を通じて実践力を高めています。

結果として、研修後アンケートではキャリア支援に関する「理解度」「役立ち度」がともに97%と高水準となり、エンゲージメントサーベイでも「上司からのアドバイスや支援が有効」とする回答が15%増えるなど、定量・定性の両面で成果が確認されています。

2)事例②:東急建設株式会社

https://www.lifeworks.co.jp/case/case002332.html

東急建設株式会社では、シニア社員の活躍を支える制度基盤として、賃金体系を含む人事制度の見直しを進めるとともに、後進育成を担う職を新設してシニア層の役割を明確化しました。
こうした制度改定を「より効果的に機能させる施策」として、「50歳/59歳キャリア研修」を実施している点が特徴です。

研修では、会社がシニア社員に期待する役割を伝えたうえで、これまでの経験を振り返り、内的キャリアの再確認や自己効力感の向上を促し、今後どのように価値発揮していくかを考える機会を提供しています。
受講後アンケートでも「キャリアや強みの棚卸しができた」などの声が挙がっており、制度改定との相乗効果により、シニア層の前向きな活躍を後押ししています。

3)事例③:ライオン株式会社

ライオン株式会社では、社員のキャリア自律を後押しする取り組みとして「ライオン・キャリアビレッジ」を導入し、自律的な学びの促進に力を入れています。
Web研修に加え、少人数での討議の場を組み合わせることで、知識のインプットだけでなく、学びを深めて行動につなげる機会を提供している点が特徴です。
その結果、受講率は70%を超え、受講者の約9割が「業務に活用したい」と前向きに回答するなど、学習が実務に結びつく成果も見られています。

4)事例④:株式会社デンソー

株式会社デンソーでは、技術領域の変化に対応できる人材づくりを目的に、リスキリングを軸とした施策でキャリア自律を推進しています。
キャリア研修やワークシートを活用して本人の志向や強みを整理し、上司との対話を通じて次の方向性を具体化していく点が特徴です。
さらに、転換期にある社員に対しては丁寧なフォローを重ね、学びと業務の接続を支援することで、安心して挑戦できる環境づくりにつなげています。

5)事例⑤:サントリーシステムテクノロジー株式会社

サントリーシステムテクノロジー株式会社では、年代ごとの課題に合わせたキャリア支援を進めています。
なかでも50代向けのワークショップでは、これまでの経験を棚卸しして自己理解を深めるとともに、今後の働き方や役割を具体的に描けるよう将来設計を支援しています。
さらに、ワークショップ後も個別フォローを行い、継続的に伴走する体制を整備し、シニア層が抱えやすい不安を和らげつつ、前向きにキャリアを築けるよう後押ししています。

6)事例⑥:株式会社ニトリホールディングス

株式会社ニトリホールディングスでは、半年ごとにキャリアプランを作成する仕組みと、定期的な配置転換を組み合わせることで、自律型人材の育成を進めています。
自分の目標や伸ばしたい力を言語化し、次の経験につなげるサイクルを回すことで、社員が主体的にキャリアを捉えやすくなる点が特徴です。
さらに、学習データなどを活用し、適材適所の配置を推進することで、意欲の向上と生産性の向上を両立しています。
結果として、将来の展望を持てている社員が8割を超えるなど、前向きなキャリア形成を後押しする成果につながっています。

8.キャリア自律が企業成長を加速する

企業がキャリア自律を支援することは、社員の「やらされ感」を減らし、挑戦や学びへの意欲を引き出すうえで大きな効果があります。
意欲が高まれば、成果に向けた行動が増え、組織全体の成長にもつながっていきます。

その実現には、キャリア面談や社内公募などのキャリア形成機会を用意するだけでなく、管理職が適切に対話・フィードバックできる支援体制を整えることが欠かせません。
加えて、職務内容や求められるスキル・評価基準を見える化し、学び直し(リスキリング)を継続的に支援することで、社員は将来像を描きやすくなり、必要な行動を取りやすくなります。

こうした取り組みを積み重ねることで、生産性の向上にとどまらず、新たな価値創出を生む組織文化の醸成にもつながります。

9.よくある質問

1)キャリア自律とはどういう意味ですか?

キャリア自律とは、自ら価値観を理解して仕事の意味を見出し、キャリア開発の目標と計画を描き、現在や将来の社会のニーズや変化を捉え、主体的に周囲の資源などを活用しながら学びつつキャリア開発することを意味します。
1990年代までに主に使われていた「キャリア開発」と比べて、自己理解による気づきや自己変容に焦点を当てていることが特徴とされています。

2)キャリア自律の重要性とは?

企業がキャリア自律支援を行うことで、従業員が主体的に学習・経験を積んで成長を目指すようになり、生産性の向上につながります。また、キャリア自律が促進され、社員自らが目的を設定して行動するようになることで、個人のスキル・能力の向上も期待できます。
さらに、社員は自分のキャリア構築を支援・応援してくれる企業に魅力を感じるため、キャリア自律支援をすることで、エンゲージメントの向上にも効果を発揮するでしょう。

3)キャリア自律が求められる背景は?

キャリア自律が求められる背景として、労働人口の減少に伴い、生産性の向上が必要となったことが挙げられます。また、ダイバーシティの推進によって、従来の「年齢や勤務年数に応じた活躍」から「あらゆる世代の活躍」が重視されるようになったことや、個人の価値観や働き方が多様化し、企業と個人の関係性が変化しつつあることもキャリア自律が必要とされる理由といえるでしょう。

10.【補足】キャリア自律の定義について

CACによって1995年に示されたキャリア自律の定義は、「めまぐるしく変化する環境の中で、自らのキャリア構築と継続的な学習に積極的に取り組む、生涯にわたるコミットメント」というものでした。

また、このCACによる定義は、次の6つの特徴を持つものとされています。

1)自己理解(Self-Aware)

自分が誰で、どこでどのように働くのが最良かを知る。自らが付加する価値を理解し、明確にすることができる。

2)価値主導(Value-Driven)

自らの仕事を方向づけ、意味づける価値にもとづいている。

3)継続的学習(Dedicated to Continuous Learning)

定期的にスキルのベンチマークを行い、個人的および専門的な開発計画を作成して、スキルを最新の状態に保つ。

4)未来志向(Future-Focused)

先を見据えて、顧客のニーズとビジネスの傾向を見積もる。自身の仕事および開発計画におけるそれらの傾向の影響について考慮する。

5)ネットワーキング(Connected)

アイディアを学んだり、共有したりするための連絡先のネットワークを維持する。互いの目標に向かい、他の人と協働する。

6)柔軟性(Flexible)

変化を予測し、すぐに適応する準備ができている。

以上の定義などを踏まえると、キャリア自律とは、自ら主体的に価値観を理解し、仕事の意味を見出し、キャリア開発の目標と計画を描き、現在や将来の社会のニーズや変化を捉え、主体的に周囲の資源などを活用しながら学び続け、不断にキャリア開発することだと理解できます。

株式会社ライフワークスでは、従業員が自律の意識と行動を高めて自ら成長できる企業へと変革していく「キャリア開発の仕組み・体制構築支援サービス」をご提供しています。セルフ・キャリアドック導入や、社員のキャリア自律に課題を持つ方は、是非ライフワークスのキャリア開発の仕組み・体制構築支援サービスをご覧ください。

おすすめ記事

コラムの一覧へ戻る