キャリア面談とは?進め方、上司が押さえておきたいポイントや有効性を解説

キャリア面談とは、社員の中長期的なキャリア形成とその実現に向けて話し合い、自律的な成長を促進する貴重な機会です。キャリア面談は、社員一人ひとりに気づきをあたえ、主体的にキャリア形成ができるように支援するための方法として注目が集まる施策の一つ。その多くは上司によって行われているという状況がある一方で、それほど多くの上司が対応できていないという課題もあります。
このコラムでは、上司がうまくキャリア面談を行うためのポイントや方法などについて考えてみたいと思います。

2020.09.25
コラム

キャリア面談とは

キャリア面談とは、社員の中長期的なキャリア形成とその実現に向けて話し合い、自律的な成長を促進する貴重な機会です。面談では社員に気づきを促し、自身が課題を認識し受け止めることを支援します。解決策は与えるのではなく考えを引き出し、その実現に向けた支援に繋げます。

テレワーク導入など、急速に働き方が変わったことで、社員一人ひとりがキャリア自律するための意識醸成の重要性が以前に増して高まっています(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査より)。また、人事制度改革だけではなく、その実効性を高めるために、組織の風土醸成や社員の意識改革を進める企業が増えてきました。こうしたことが背景・理由となり、それらを進める方法の一つとして、キャリア面談が注目されています。

ところが、実際にキャリア面談をキャリア支援の施策の一つとして実施している企業はそれほど多くありません。職場において多くの場合、キャリアの相談は上司が受けているという調査結果があります(産労総合研究所調査より)。しかし、テレワークを導入する企業が増えつつある今日では、上司が部下一人ひとりの状況を以前より把握しにくくなっている場合もあります。メンバーにとって上司は身近な存在ですが、現場任せだけでは社員のキャリア開発を支援していくことは困難ともいえるかもしれません。

キャリア面談のメリットは、個人がキャリアの明確なイメージを持つことで、長期的な目標に向けた行動に繋がりやすいことです。また、そうした社員が増えることで、企業の生産性が向上することが期待されます。

そこで、このコラムでは、企業が上司によるキャリア面談を活用し、社員のキャリア開発と生産性向上に繋げるための具体的なポイントについてご紹介します。

【参考資料】上司と部下のキャリア面談を成功させるポイント(面談サンプルシート付)
上司と部下のキャリア面談を成功させるポイント_イメージ_1上司と部下のキャリア面談を成功させるポイント_イメージ_2
このコラムでお知らせしているキャリア面談を上司が成功させるためのポイントを簡単にまとめた資料です。面談で使うシートのサンプルもございますので、合わせてご活用ください。資料はこちらからダウンロードしてください。

上司によるキャリア面談の進め方

1.面談の準備をする

面談を受ける人は、事前に、自身の仕事やキャリアの課題、展望などについて明確に話せるように面談用紙などに明記して話す内容を整理しておくと良いでしょう。また、面談相手となる上司に事前に相談内容を共有しておくことも有効です。受ける人がキャリアを考えることに慣れていない場合には、面談前にキャリア研修を実施するなど、キャリアの考え方を知り、自分自身の棚卸を進める機会を設けておくという方法もあります。

2.面談の実施

30分~1時間程度の面談時間を確保します。できれば自席と少し離れた個室で、面談を受ける人が安心して自分のことを話せるような環境づくりに心がけましょう。また、上司は面談開始からいきなり本題に入るのではなく、その場を和ませるような対話から入ることをおすすめします。

3.フォローアップ

面談を受けた人が面談を通して持ったキャリア形成のイメージや目標、今後の行動計画を実現できるように、面談の後に、上司は直接フォローアップすることが重要です。目を配るべき部下が多い場合は、第三者(メンターやキャリアカウンセラーなど)の支援を活用しながらフォローアップを行う方法もあります。

キャリア面談を行う上司がおさえておきたいポイント

キャリア面談を行う上で、上司の方がおさえておきたい3つのポイントをご紹介します。このポイントは人事部門の方がキャリア面談の導入を検討される場合にもぜひ押さえておいてください。

1.上司自身がキャリア形成のイメージを持つ

そもそも上司が自身のキャリアについて考えたことがない場合、部下のキャリアを一緒に考えるのは困難です。そのため、上司がキャリアを考える意義を理解し、自身のキャリア形成のイメージを持てるようにしておくことが求められます。

2.上司が部下のキャリア形成支援の役割と重要性を理解する

部下のキャリア形成の支援者として、上司の役割が重要であることを明確化し、それを上司が理解することが重要です。もし、上司の役割を短期的な業績向上への貢献だと捉えているのであれば、部下のキャリア支援への配慮がおろそかになる懸念があります。

3.キャリア面談の方法やスキルを習得する

部下のキャリア支援施策としてのキャリア面談の意義や具体的な方法について、上司に資料などを用いて情報提供したり、面談のロールプレイングができるような機会を設けたりするとよいでしょう。上司が2つ目に上げた自身の役割などを十分に心得た上で、評価面談とキャリア面談の違いについても理解を促します。

キャリア面談を成功に導くための方法とポイント

上司がキャリア面談を行う時に最も忘れてはならないのは、キャリア面談の主役はあくまでも部下だということです。そこを理解しつつも、実際にキャリア面談を行う際には次のようなコツもおさえておく必要があります。なぜなら、適切な対応をすることが、面談の場で上司と部下が信頼関係を築くことにつながるからです。

1.姿勢・態度

最も重要なことは部下の話を傾聴することです。質問攻めにしてしまうと、部下が困ってしまうこともあります。また、相槌を打つだけではなく、相手の話に興味を持つことやその姿勢を示すことも大切です。そのほかに、腕を組んだり、足を組んだり、部下が高圧的と感じてしまうような態度をとらないように注意が必要です。

2.問いかけ・対話の方法

面談の対話の中からわかってきた状況を言語化し、部下に投げかけるような質問をします。部下の置かれている状況を言語化し共有することで、本人の気づきに繋がることがあります。対話の中で気になるキーワードが出てきた場合は、少し掘り下げていくことも重要です。また、対話では、部下が振り返りの中で話した内容について「それはあなたが原因では?」というような問いは避けます。

3.解決策の検討

部下のキャリアの課題が明確になっても、それを解決するような提案にすぐ移らないようにします。また、上司が自らの成功体験による解決策を示したりせず、面談の中では、部下自身が課題を受け止めて、自らどう進むか、進みたいかを見出すための役割に徹することがポイントです。

4.専門性が必要なときの対応

本人の病気や疾患、親の介護、マネープランに関連する課題といったように、課題解決のために専門的な支援が必要な場合は、無理にその場で解決しようとせず、人事部に相談することが望ましいといえます。

***

多くの職場で、上司がキャリア面談を行うケースが多いことは先にご紹介した通りです。昨今、上司には様々な役割が期待されがちなため、日頃の業務の忙しさなどを理由に、定期的なキャリア面談の実施自体に無理が生じてしまうこともあるかもしれません。

また、上司と部下の日ごろのコミュニケーション自体が不足しており、キャリアの相談自体が難しい場合もあります。キャリア自律支援の施策としてキャリア面談を自社に導入しようとする企業の人事部門は、このようなことも念頭に置きながら、キャリア面談の仕組を設計することも重要だといえるでしょう。

【関連情報】「キャリア自律とは。キャリア自律が求められる理由、企業における課題と推進方法。」
キャリア面談も含め、企業がキャリア自律を推進する方法などを簡単に紹介しているコラムです。キャリア自律そのものにもご関心がある方は参考にしみてください。詳細にご関心のある方は、こちらをご覧ください。

おわりに ~キャリア面談のさらなる可能性となる事例

キャリア面談には、社員一人ひとりのキャリア形成を支援するということの他にも、設計次第では次のような活用の可能性があります。具体的な事例も併せてご紹介しておきます。

1.シニア人材の活用

シニア人材の中には、様々な経験を積み、キャリアの課題を乗り越えてきた人も多くいます。そうした人材を募り、社内のキャリアコンサルタントとして育成し、キャリア相談の役割を担ってもらうという方法も考えられます。こうしたアドバイザーが、上司だけではカバーしきれない部分を補うことができる可能性があります。また、結果的にシニア人材の職域開発につながることも期待できます。

2.組織全体での仕組づくりへの活用

キャリア面談を通じて明確になったキャリアの課題を基にして、組織全体としてその課題を解決するための仕組づくりに発展させることもできます。課題を抽出するにあたり、全社員をキャリア面談の対象とすれば最も広く自社のキャリアの課題を捉えることができますが、キャリア面談を実施するリソースが不足する場合には、社員の中からサンプリングした対象のみにキャリア面談を行うことも有効です。

また、予めキャリアの課題を明確化するための質問を決めた上で面談を設計し、結果を分析することで、自社の社員のキャリアの課題の傾向をつかみやすくなることもあります。

以上のような活用をする前提としては、自社にとってのキャリア自律の意義を明確にし、言語化しておくことが重要です。

キャリア面談に取り組み始め、面談を担うキャリア支援室を設置し、人事と連携して進めることは、セルフ・キャリアドックのような体系的なキャリア自律支援の仕組みへと至る可能性を持っています。そのようなことも視野に入れつつ、段階的に組織的に社員のキャリア自律を推進できるような実行力のある仕組みを作り上げていくことは、いずれ活力にあふれた企業をつくることにつながっていくのではないでしょうか。

【関連情報】「サントリーのセルフ・キャリアドックの事例」
サントリーホールディングスでキャリア支援室の設立と運営に取組まれた山田昇氏に登壇いただいた講演の資料です。同社でのキャリア自律支援の仕組みづくりの事例としてご確認ください。講演ではセルフ・キャリアドックの導入のポイントなどについてもお話しいただいています。詳細にご関心のある方は、こちらをご覧ください。

参考文献・資料:

この記事の編集担当

黄瀬 真理

黄瀬 真理

大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。

国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定

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