人生100年時代。日本型雇用慣行を超えて、成熟層がさらに輝く社会・企業へ―社会課題の解決を通して、個人と企業の活性化を実現

人生100年時代、個人と組織の在り方は、大きな変化の必要性に迫られています。しかし、何から始めてよいか迷ってしまい、手が付けられていない企業・個人も多いのが現状です。次世代リーダー向けの異業種混合型リーダーシップ開発プロジェクトを運営する一般社団法人ALIVEで、成熟層(50~55歳)向けの新たな実験プロジェクトが始まった。その意味合いについて、代表理事庄司弥寿彦さんにお話をうかがいました。

2019.04.08
インタビュー・対談

人に眠る才能を呼び起こし、社会の課題を解決する

「一般社団法人ALIVE」はどのような団体なのでしょうか?

「社会的団体の想いに、ビジネスのリソースをつなげ個人・企業・世の中に変化を巻き起こしたい」との想いで2017年に始めた団体です。「人に眠る可能性を呼び起こし、社会の課題を解決する」という企画コンセプトに基づき、企業人が社会団体の想いに共感し、企業の枠を超えて本気で課題解決に取り組むことを通して、彼らの眠っている力を呼び醒ますことを目指しています。

具体的には、主に、次世代リーダー向けの「ALIVE」というプログラムを実施しています。「ALIVE」は様々な会社から次世代リーダー層が総勢60名ほど集まり、4回のセッション(計7日間)で答えの出ない社会課題に対しての解決策を考え、課題を抱える団体や自治体から採否もいただく、それと並行してその中でリフレクションを繰り返しながら自分自身のリーダーシップを見つめなおすというものです。

リーダーシップ開発にかける想い~45歳の決心~

「ALIVE」の設立経緯を教えてください。

一般社団法人ALIVE 代表 庄司 弥寿彦 氏そもそもの始まりは2013年までさかのぼります。前職であるサントリー食品が上場するタイミングでグローバル化推進の流れになり、グローバル人事の立ち上げマネジャーになったことがきっかけです。その後、多様性の中でのリーダーシップが必要だという話になり、1年間のリーダーシッププログラムを作ったんです。それがALIVEのプログラムの原型です。

参加者は多様性を重視し、サントリーがマイノリティになるよう、業界がばらばらの他社から40名、サントリー食品から20名の計60名で、5人ずつのチームを編成しました。そして、社会的団体が抱えている、答えのない社会課題をテーマに選び、取り組んでもらいました。答えがないというのがミソで、彼らは賢いので、答えがあるものだとスマートに解決策を出してしまいます。あえて答えのない課題に取り組んでもらうことで、仲間同士で夢中になって不器用な内容も含みながらリーダーシップが育まれる。参加各社の人事の方とこのプロセスが本物のリーダーシップ開発につながるという話になり、自分自身とても面白かったこともあり続けたいと思ったんです。しかしながら、社内の事務局の形ですと異動もあるため活動の継続性に不安があり、会社に属しながら、賛同してくれる仲間に声をかけ自分もボランティアで取り組む形で、事務局機能を一般社団法人化しました。仲間も他に仕事があるので、みな複業もしくはボランティアでやってくれていました。実際立ち上げと同時に私は、ニューヨークに異動になったのですが、2週間に1回のミーティングもニューヨークから無報酬ですが、参加していました。しかし、いてもたってもいられなくなり、2018年の3月に会社を辞めて日本に帰ってきて現在に至ります。

会社をやめることに迷いはなかったのでしょうか?

迷いはありましたが、タイミングが合った、という感じです。以前から、45歳くらいでちょっと違う人生も歩みたいという気持ちがありました。会社人生での半分でもあり、人生での半分でもあり、ALIVEの立ち上げとかがちょうどそのタイミングだったんです。

社会的団体・企業・企業人のトリプルWinプログラム

「ALIVE」の取り組みを教えていただけますでしょうか?

様々な地域課題や社会団体の課題計3つに対して、約3ヶ月の期間で全4回(計7日間)のセッションを実施し、 「チームビルディング⇒フィールドワーク⇒提案⇒リフレクション(内省)」を毎回のセッションで行います。毎回、7~10社 計60名程度の参加者で、各社の次世代リーダーの方にお越しいただくというプロジェクトを年間3回転しています。

プログラムで得てもらいたいことは以下の3つです。

  1. 自らのリーダーシップに対し、内省およびフィードバックを通じたメタ認知
  2. 自分の当たり前が通じない状況のなかで影響を与えるというダイバーシティーマネージメント
  3. 課題から設定して、それを解決していくというイノベーション

最終日は、社会課題を提示してくださった団体などから、「採用・一部採用・不採用」の採否を全チームに対して行います。また、個人の側面で見ると、周りからフィードバックをもらったことを、自分でも内省して、7日間の中で、今後、自分がどういうリーダーシップを発揮できるのかということをまとめてもらいます。

参加者の方も大きく変化されると思いますが、どのような変化を感じられますか?

まず、「自分主導で何かをやりたい」という自発性が芽生えることが大きいです。また、見てわかる変化として、セッション4では、感極まる人が多くいて、その人本来のすばらしい表情が見えます。それは、本来持っているその人のよさが表に出てきている状況のように感じています。過去の経緯からとらわれてしまっているいろんな壁がどんな人にもあると思いますが、その壁に気づき、自分のあるがままの良さを活かし、主導的に何かを実現したいというリーダーシップが表れているんだとも思っています。

ALIVEの様子
ALIVEの様子

個人も組織も遠のく社会との接点

キャリアについて現在起こっている、組織・個人の課題はなんでしょうか?

企業が大きくなりすぎた結果、個人と組織の距離が遠くなったことがあると思います。企業も元は社会課題に解決するために存在してきたはずなんです。例えば、モノが足りないというひとつの大きな課題があり、より品質が良く大量のモノを提供するために、大企業になっていきました。これまでは、それが一番効率よくモノを作って流す仕組みだった。ただ、組織としてみると、分担されてきて、個人は階層のなかの一部になってしまい、社会に貢献している実感が得られにくくなってきたという側面もあったと思います。

ただし、企業という組織も個人が社会の課題から遠くなっていることをよいとは思っていないと感じています。モノが充足された現代において、企業は分散化された社会の課題にも対応をする方向で動いていると思いますが、対応できる人が育つためにも社外に出ていって、社内以外の人と触れ合ったり、社会の課題に本気で取り組む機会というのは必要だと考えているのではないでしょうか。

一般社団法人ALIVE 代表 庄司 弥寿彦 氏また、その次世代リーダー向けの「ALIVE」に加えて、現在成熟層(ミドルシニア・50~55歳)向けにALIVEのフォーマットをベースにした「REVIVE」という新たな実験も行っています。企業の中において、成熟層の人材育成に大きな課題意識があって始めたものです。現在の日本型雇用慣行では、多くの企業の人材育成はだいたい40歳前後で終わります。すなわち、新人として会社に慣れる段階の育成およびマネジャーとしてチームを引っ張るための育成のふたつがメインだと思います。過去においては、60歳定年で、40代後半から緩やかにパフォーマンスも落ちながらも、役職定年になって5年くらいで終わっていたからよかったと思います。また高度成長期には会社もどんどん大きくなってそれ相応にポジションも提供できた。でも近い将来に、70歳定年になり、40後半以降層に新たに供給できるポジションはほとんどない、ということが起こるかもしれない。そういう状況の中で、ヒトは40後半から70までの25年間という会社人生の半分を占める長い期間において、成長を期待されずに自分の役割を見つけられるのだろうか、というところに大きな課題意識があります。

もちろん企業もそこに対して手は打ってきていると思います。キャリアの棚卸でご自身の強みを自覚するなどの多くの意義あるメニューがあるのは知っています。ただ、50代の方のお話を聞くと、自分が培ってきた強みがわかったとしても、どんな環境でもその強みが発揮できるという新たな役割を見つける、というのはなかなか大変なんです。今まで、多くのヒトはひとつの企業の中で過ごしてきて、会社から与えられた部署で課長などの役割を全うしてこられた。そこを、自分でどんな環境でも使える強みにしていくためには、一歩踏み出して試行錯誤する経験が必要です。だから、強みをわかったとしても今まで知っている場所や役職を自らなしにして、社内の立場に関わらず、社内外のどんな環境でもその強みを発揮する、ということはなかなか難しい。その点、ALIVEのフォーマットというのは、今までと全く違う環境だけど安全な場で、自分の強みを試す場になるんじゃないかな、というのがきっかけですね。

年齢に関係なく、個人が持っている強みを発揮できる社会へ

「REVIVE」の活動を通して難しいと感じられていることはありますか?

まずは、成熟層が今までと違う環境において自分の強みを発揮しようと思う安心安全な場になるプログラム作りが難しいですね。やはり培ってきたものが多い分、その人が本来持っている強みをそのまま出してもらうことには、次世代リーダーに比べてなかなか壁を突き崩すのが難しい人もいらっしゃいます。また、企業の中では人材育成として成熟層への投資をためらう空気も感じたりしています。

今後の活動について教えてください。

社会の課題と企業のリソースをつなげることで、いろんなインパクトを世の中に与えたいというのが私の思いなので、「ALIVE」のプログラムを多くの方に受けていただくということと、そこで出た解決策を実際に実行していくフェーズまで関わるという活動を広げていきたいですね。あとは、成熟層50代~60代の企業のボリュームゾーン向けに、元から持っている強みをプロジェクトの中で発揮してもらって、社内外で使える形に磨き上げる、「REVIVE」のプログラムを作り上げ、意義を広く伝えていきたいです。

ライフワークスさんとは、今後、どんどん協業していきたいです。例えば、ライフワークスさんの研修でキャリアの自律意識を醸成すると、自分のキャリアについて考え始めると思うんですね。その後、越境体験として「ALIVE」「REVIVE」に参加し、行動促進につなげていくなど、可能性は拡がっていくと思います。

一般社団法人ALIVE

http://alive0309.org/
設立:2017年3月

事業内容
「人に眠る可能性を呼び起こし、社会の課題を解決する」という企画コンセプトに基づき、異業種混合型リーダーシップ育成プロジェクトを運営。企業人が社会団体の課題に対し、企業の枠を超えて本気で課題解決に取り組むことを通じリーダーシップを育む。次世代リーダー向けの「ALIVE」を年間3回実施。成熟層向けの「REVIVE」という新プログラムを実験中。

一般社団法人ALIVE 代表
庄司 弥寿彦

1995年サントリー株式会社入社。人事課長時に、ALIVEの前身となる次世代リーダー研修「モルツ・プロジェクト」を企画。その際、「社会的団体の想いに、ビジネスのリソースをつなぎ、変化を巻き起こす」ことをライフワークとして強く認識する。2017年ALIVEを発起人として立ち上げ、ボランティアながら駐在中のNYから参画。2018年4月サントリーを退社しALIVEの代表理事に就任。5月社会課題解決等のプロジェクトマネジメントの受け皿として合同会社CONNECTIVE創立。

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