シニアとキャリア研修

シニア(50代)の人材の活躍を推進するために、各社で様々なキャリア研修などの施策が取り入れられています。その現場ではどのようなことが行われているのでしょうか。研修を担当している岡田トレーナーにお話をうかがいました。

2016.05.09
インタビュー・対談

早速ですが、経歴を簡単にお願いします。

岡田:36歳まで会社員をしていたのですが、夫の転勤のタイミングで、会社を辞めました。その後1年ほどは専業主婦をしながら、趣味やボランティアを楽しんだのですが、「何か違う」という想いが積み重なっていきました。そこで、会社員のときに取ったファイナンシャル・プランナーの資格を活かして、マネー雑誌の読者相談解説や、金融機関の学習用テキストなどを書く仕事を始めました。見えない相手に対して、いかに分かりやすく書くかということが身についた期間でした。その後、夫の転勤で東京に戻ることになり、知人が勤める会社から声を掛けていただいたので、会社勤めを復活させました。外資系企業でハードな環境に身を置いてみて、結果を出す面白さは感じました。でも、自分がやりたかった人事系の仕事への想いが断ち切れず、退職してキャリアカウンセラーの講座を受けに行きました。
その時に同じクラスにいたのが、ライフワークスの松田さんで、その縁から今の講師生活が始まっています。

講師の職へ至る、一本の道が見えたような気がしますね。

岡田:繋がった線は一本のように見えますが、私の中では「種を蒔いてきた」という感じです。
蒔いた種はとにかくたくさんありましたし、結果に繋がらないことも多かったです。
キャリアカウンセラー資格取得の学習中から、「私、カウンセラーになりたいです」と繰り返し周囲に伝えていて、職務経歴書は常に持ち歩いていました。
それが、結果として今の講師の仕事に繋がったと思っています。

講師になって、どんな分野を担当されることが多いですか。

岡田:講師を始めた頃は、定年前の方に話をすることが多かったです。メイン講師をサポートしながら、マネーの部分のみを担当することから始まりました。その後キャリアデザイン研修という、仕事・お金・プライベートを広く網羅する内容で一日から二日かけてじっくり対話を重ねるものを担当する機会が増えていきました。今では50代の研修を担当することが多いですね。
私自身も50代なのですが、50代は40代と比べ、プライベートが「重くなる」と思います。特に健康面では、不調ではないことがないくらい、常に身体に関する不安があるのが50代の特徴です。さらに家族の問題も重くなりますので、子どもの進学や自立、親の介護の問題も50代になると圧倒的に増えています。

キャリアデザイン研修について、もう少し説明をお願いします。

岡田:会社の研修では、あまりプライベートは取り扱わないと思います。でも、キャリアを広く捉えると、プライベートを抜きにすることはできません。キャリアデザイン研修では、受講者のキャリアを振り返るだけでなく、生活を支えるマネープランの立て方の学習や、プライベートの課題についても向き合うキッカケを作り出します。日常に漠然とある不安を認識することで、課題として捉え、手を打つことができるようになると思います。

そういった研修が受講者にもたらすものは何だと思いますか。

岡田:私の中では、「種火をともす」ことだと思っています。
長い人生の中のたった一日や二日で行っている研修で、人が変わるということは難しいかもしれません。それでも、自分と向き合い、誰かと話すことで少しでも意識が変わり、自分にもやれるかもしれないと思える、たったそれだけのことかもしれませんが、それが大事だと思うのです。そういう小さくても消えないような種火を心にともすのが、キャリア研修なのではないかと思います。
他人が無理やり外から火をつけたところで、その火が燃え続けることは難しいでしょう。自分で自分の中につけたものなら、消えずに燃え続けるはずです。小さくてもいいから火がついたら、その火をまずは自分自身で、そして企業の施策や周囲の人の協力で、大きく燃え上がる炎にしてもらう。一人でも多く活き活きと働く人が増えたらと願っています。

変化のきっかけは様々かと思いますが、特にそういったことが起きる"印象に残っているセッション"はありますか。

岡田:受講者に火がともる瞬間を見るのが好きなので、「キャリアを振り返る」セッションが印象的です。過去を振り返ることがどうして未来に繋がるのか、不思議に思う人も多いと思います。実際に受講者から、「過去を振り返ることにどんな意味があるかと思っていたが、実際にやってみて、過去を振り返ったことで自然と未来が見えて来た」と言われた時はうれしかったですね。自分の過去を振り返った時、その当時は失敗だったことでも、今の自分に繋がっている実感が、未来にも繋がるイメージになるのだと思います。
もう一つ、「キャリアビジョンインタビュー」という、相互にインタビューするセッションもいいですね。グループ内でお互いのことをインタビューするのですが、それまでに続いてきたセッションを通してキャリアを共有しあっているので、「相手のことが知りたい」「自分のことを知って欲しい」という想いがあって話が進んでいきます。想いが話し手の顔を引き締めるのがよく分かります。

最後に、ご自身のこだわりや好きなことを教えてください。

岡田:人の生き様がすべて出るのがキャリア研修ですので、私自身が本音で語れるようでなくてはと思っています。
研修講師は繁閑の差が激しい仕事ですので、一区切りついた時には旅行に出掛けるようにして、リフレッシュしています。忙しい時には次の休みの旅のプランを考えて、それをエネルギーに頑張ることもあります。旅行のプランは常に考えていますので、国内・海外問わず、日帰りから長期までストックはたくさんあります。実際には忙しくてお蔵入りするものも多いですが、考えること自体が好きですね。


取材を終えて...
「今は自分も50代半ばになりました。この先、受講者とあまりに年齢が離れてしまったら講師を辞めるしかないかしら。その時は、旅のアドバイザーでも始めようかな」そう言って笑っていらっしゃった岡田トレーナー。北風と太陽の話を出しながら、「50代には50代のプライドがあるので、それに対するリスペクトを忘れずに、ひとりひとりの良さを引き出す研修を作りたい」と熱く語るシーンもありました。

トレーナー紹介

岡田 保美
研修・セミナーを通じて「なりたい自分になるために一歩前に進んでみよう!」という気持ちになり、実際に行動を起こせる自分になっていただくことがトレーナーとしての私の願いです。
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