仕事と育児の両立期とキャリア

仕事と子育ての両立は女性のキャリア形成の課題の一つといえます。そこで、このコラムでは自身も両立をしながら、女性向けのキャリア研修を担当している中島トレーナーに両方の視点から両立期のキャリアについてお話をうかがいました。

2016.10.03
インタビュー・対談

早速ですが、ご自身の略歴を簡単にお願いします。

中嶋:labo_161003_02.jpg新卒で今のリクルートキャリアに入社しました。まさにdog year、変化が激しい会社でしたので、最初は大阪本社配属でしたが、入社5年目の時に大阪と東京本社が合併をして、東京に転勤になりました。その後も出向があったので、一つの企業に所属していたのですが、転職と同じような体験を何度か経験しています。
一番長かったのは転職支援の仕事でした。転職を考える人たちに寄り添って、キャリアの棚卸や履歴書・職歴書の添削、面接アドバイス、退職交渉をやりました。のべ3,000人くらいの転職の相談にのってきたので、対個人の仕事も好きです。

その後、研修業務に変わったということですね。

中嶋:エージェント業務の最後の方に、「ちゑや」という経営直下の部署で組織活性の仕事に携わりました。そこで「女将」として、中心的に活動しました。対話や研修のような場面を通じ、人が変化する様子を目の当たりすることが多くて感動がありました。
そのうちに、組織の活性に関わりたいと強く思うようになったので、エージェントを退職して個人で仕事を始めました。自分が組織の中でというのではなく、個として組織を活性化することがやりたかったのです。
個人で活動する中で、ライフワークスの研修講師の募集を知りました。組織を活性化するための研修の講師ですから、「私がやりたいのはこれだ」と強く思いました。ちょうど知り合いの鈴木トレーナーが、研修講師として活躍していましたので、ライフワークスでの講師業がどんなものかを綿密にリサーチしました。そこからは、熱意で縁を引き寄せた感じですね。

仕事と育児、両立のコツはありますか。

中嶋:子どもを持つ前と同じペースでは働けないと、割り切るとラクだと思います。
世の中には、仕事も育児も100%と言い切れる強い女性もいます。私も子どもを産む前は、その通りだろうと思っていました。ところが、実際に子どもを育てながら仕事をしていると、大変なことがいろいろ分かりました。
子どもを保育園に預けられるようになった時、うれしくてあれもこれもと仕事の予定を入れました。そのうちに、私のオーバーワークが、子どもの病気へとつながってしまいました。その時は病児保育の保育園にも預けられない状態になって、それを看病しているうちに自分も感染して、病人が病人を看病する状況を体験しました。それでも仕事はやり通したのですが、これではダメだと思ったのです。
自分が弱っているときは特に、仕事と育児の両立なんて考えられるはずがありません。子どもを育てながら働けるペースってあると思うんです。
それでも、子どもは成長して身体も丈夫になりますから、両立期には段階があります。少し落ち着いて周りを見回すことができて、同じような境遇の仲間ができたり、頼れる関係ができたりすると頑張れることが増えてきます。その時その時で、いい状態を保てればいいかなと思います。
私の両立期のテーマは、「楽しく発展途上中」。すごく大変な経験だとしても、時間が経てば笑い話のネタにもなります。多少いい加減でも手を抜いても、楽しくやっていきたいなと思っています。

両立期の女性に向けた研修での登壇が増えていますが、どのような研修ですか。

中嶋:子どもを育てている女性の一日は、やることがたくさんあります。仕事が終わってからがスタートで、保育園に迎えに行って、食事の支度をして、子どもにご飯を食べさせて、歯を磨いて、お風呂に入れて着替えさせて、寝かしつけて......と、どれだけのタスクがあるのよ!というくらい、やるべきことがたくさんあります。そんな彼女たちにとって、自分の時間と呼べる物は本当に少ないんです。
研修の中で自分自身と向き合う時間を作ることで、この先どんな風に生きていきたいか考えることができますし、同じ境遇の人と語り合うことで仲間が出来て、頑張ろうと思う気力が湧いてきます。子どものためとか家族のためとか、他人の軸で考えることが多い女性たちが自分の軸で考える機会ですので、女性の活躍推進を後押しできる場だと思います。

両立期の部下を持つ管理職向けの研修もありますよね。

中嶋:私も管理職を経験していますから、管理職向けの研修では、「管理職に武器を持たせてあげたい」と思いながら話しをしています。
両立期の部下のことは、分からなくて当たり前です。管理職が男性であれば、性差もありますから。でも、分からないをそのままにすれば、セクハラだ、マタハラだと言われてしまいます。
今は育児と仕事を両立している部下が話題になっていますが、大介護時代の到来を考えると、介護と仕事を両立する部下への対応が課題になる日も近いと思います。頼りにしていた40代の部下が、明日から突然介護休暇取得なんてことも起こり得る訳です。そこで管理職向けの研修では、多様な人材の活躍について考える機会を提供し、マネジメントの本質を理解してもらうような内容になっています。

本人も管理職も、まさにダブルアプローチですね。

中嶋:両立期の女性も、そんな部下を持つ管理職もみんな不安を抱えているんです。むしろ管理職の方が、不安は大きいかもしれませんよ。
そんな不安を減らす意味でも、部下の側から自己開示をすることが大事だと思います。両立期の女性向けの研修の中でもお伝えしていますが、今の自分の仕事の状況や家族のことを周囲や上司に伝えておくとことで、何か困った時に協力を得やすいような環境を作っておくのです。それは企業側(管理職側)にとっても有効で、不測の事態に備えることが可能になります。
その際、相手が受け入れやすい言葉を選ぶことが大事です。
研修の中では名称を出すことはしていませんが、「アサーティブ」というコミュニケーションの技法があります。相手を思いやりながらもきちんと自己主張をするWin-winの関係を目指すやり取りの方法ですから、ご本人も管理職の方にも役立つと思いますよ。

盛りだくさんのお話しをありがとうございます。中嶋トレーナーの最近の楽しみは、どんなことですか。

中嶋:labo_161003_01.jpg研修が楽しいです。講師を始めた頃に比べて慣れてきましたから、プログラムの一つ一つが自分のものになりつつあります。でも、研修は私が盛り上げるというよりは、受講者の皆さんがお互いの気づきで変化していくんですけど。そんな変化の瞬間を見届ける余裕が出てきたので、私がやりたかったのはこれだって思える毎日です。
両立期の女性の中には、自分を追い込んで頑張っている人もいるようです。「お母さんとはこうあるべき」という想いが強いと、すべてが辛くなってしまいます。手作りの夕食も大切ですが、子どもの夕食がレトルトカレーの日があっても、「保育園でバランスの取れた食事を食べているから大丈夫」と開き直っていいと思います。世の中のワーキングマザーたちが、自分を追い込み過ぎずに楽しく働けるよう、その手助けをしていきたいですね。
そして、子どもの成長もあって、私自身が勉強できる時間を確保できるようになりました。もっともっと学びたいと思っているところです。

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トレーナー紹介

中嶋 由美
忙しい日常の中で、自分自身の夢や目標、今までのキャリア、そして将来の生き方について立ち止まって考え、仲間と語り合うことは、自走するための大きなエネルギーになると思います。自分らしくキャリアを考え、楽しみながら半歩前に歩き出せるようなお手伝いが出来ればと思います。
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