一生懸命やっていれば、誰かが見ていてくれる―一つひとつの縁をつないで築いた「わらしべ長者的」キャリア

株式会社電通で、事業開発を推進しているビジネス共創ユニットに所属し、メディカル・ヘルスケア領域を担当している山内明子さん。東京・汐留地区の企業に勤務する有志によって運営されている女性のためのヘルスケアプロジェクト「コンコン」の主宰者でもあります。入社当時は「まさか自分が医療や健康関連の仕事をすると思っていなかった」と話す山内さんが専門性を培い、現在に至るまでの道のりは?

2019.06.13
働く人の事例

C・Dパーソン FILE #001

山内 明子さん

株式会社電通 ビジネス共創ユニット
シニア・事業開発・プランナー/プロデューサー 
メディカル・ヘルスケア担当

山内 明子 さん

2005年電通入社。営業局に配属され、医薬品/食品メーカーを2年間担当した後、新規開拓チームに。医薬・健康関連企業のコミュニケーション戦略およびメディア戦略の立案、プロモーション企画などを担当。2013年メディカル・ヘルスケア専門チームに配属。2018年より現職。プライベートでは6歳と3歳の男の子の母でもある。

企業の枠を超えたメンバーによる、女性のためのヘルスケアプロジェクトを主宰

2019年3月6日夜。東京・日比谷のコワーキングスペースで、働く女性のヘルスケアイベント「コンコン」が開催され、約50名の女性でにぎわった。その場で簡単にできるエクセサイズを教わったり、好きな飲み物を飲んでリラックスしながら、産婦人科の医師や、女性専用ヨガサロンのインストラクター、管理栄養士といった専門家から健康になるヒントを聞いたり、自分の健康課題を見つけるという内容。「気軽に健康について知る機会を持ててよかった」と参加者から好評で、今後も継続的に開催していく予定だ。

イベントを運営する「コンコン事務局」は、働く女性たちが心やからだのコンディションをコントロールするための意識と行動をサポートする汐留発のプロジェクト。発起人は電通でメディカル・ヘルスケア関連の事業開発に携わる山内明子さんだ。

株式会社電通 ビジネス共創ユニット シニア・事業開発・プランナー/プロデューサー メディカル・ヘルスケア担当 山内 明子 さん「2007年から毎年行っている『電通ウェルネス1万人調査』によると、ここ3年間日本人の健康意識は下がっており、なかでも20代女性の意識が最も低いんです。一方、男性よりも女性の方が疲れを感じているという調査結果が出ています。働く女性は増えていて、女性は疲れやすくなっているのに、日々忙しくて、健康について考えたり、知る機会を持ちにくい。私自身も当事者であることや、メディカル・ヘルスケア関連の仕事をしてきたことから、働く女性の健康意識に課題を感じていました」

2018年8月に汐留エリアの企業が共同で開催したイベントで、「女性のヘルスケアに関するリテラシー向上とアクションをサポートするような活動を皆さんと一緒に考えたいです」と呼びかけたところ賛同を得てプロジェクトが立ち上がり、電通、ソフトバンク、全日空などさまざまな企業に勤務する女性約20名がメンバーとして集まった。

「当時、具体的なことは何も決まっていなくて。メンバーでそれぞれの課題意識を共有するところからスタートし、2019年3月の第1回イベントが形になりました。私ひとりでは成し遂げられないことも、みなさんと一緒にやることで実現できる。やはり一人では何もできないなと改めて感じました。振り返れば、仕事でも常に人と人のつながりに助けられてきたように思います」

自分になじみのない業界を担当し、戸惑うばかりの新人時代

大学の文学部で民族考古学を学び、新卒で電通に入社。当時は社会課題をクリエイティビティで解決することに興味があり、文化やアート関連のプロジェクトに携わりたいと思っていた。

株式会社電通 ビジネス共創ユニット シニア・事業開発・プランナー/プロデューサー メディカル・ヘルスケア担当 山内 明子 さん「入社後の配属先は営業。クライアントは製薬メーカーで、初めてメインで任されたのは水虫薬の広告。ゴルフトーナメントの立ち合いもありました。業界も商品も、これまでの自分にほとんど馴染みのない世界で...。色々なことに、最初は戸惑うばかりでした。大きな失敗も沢山しましたし、入社前に思い描いていた夢とのギャップに内心ショックを受けていたのを覚えています。」

下がりそうになるモチベーションを支えたのは「人」だったと言う。

「クライアントの担当者がとてもいい方たちでしたし、チームの先輩方も厳しいけれど心意気のある方たちでした。だから、まずは皆さんと一緒にやってみることで先に何かが見えてくるかもしれないと前向きに考えることができたんです。仕事もわからないことばかりで大変ではありましたが、だんだん経験を積み重ねているという感覚を得ることができましたし、仕事への姿勢や基本的なルールといった、社会人としての基礎みたいなものも、この時期にしっかり学ばせてもらった気がします」

新規開拓営業を担当。自分ができることは何かという問いを突きつけられた

仕事に慣れ、クライアントとの信頼関係も深まった一方で、新たなチャレンジをしたいという思いも芽生え、社内で開かれる勉強会やプレゼン演習に積極的に参加。「そんなにやる気があるなら」と見込まれ、入社3年目に新規開拓チームに移った。この時の「修羅場体験」によってさまざまな力が培われていったと振り返る。

「当社では、大きいクライアントは分業で担当するんです。営業もテレビや雑誌など媒体ごとに担当者がいますし、マーケティングや企画も専門の担当者がつく。ところが、新規のクライアントの場合はどうしても小規模のお取り引きになるので社内のスタッフがなかなか動きにくいんです。仕方がないから、自分でやるしかない。そのうちにマーケティングのためのリサーチから企画書作成、プレゼンまで、お客さまへの提案に必要なことを、自分自身でもある程度はできるようになりました」

メディカル・ヘルスケア関連の知識もこの時期に培われた。

株式会社電通 ビジネス共創ユニット シニア・事業開発・プランナー/プロデューサー メディカル・ヘルスケア担当 山内 明子 さん「たまたま、新規のクライアントに、製薬メーカーや生命保険会社など医薬や健康関連の企業が多かったんですね。中でも大きなクライアントに医療用医薬品のメーカーがあったのですが、当時の電通には、医療用医薬品の製品プロモーションに関するお取り引きの実績がほとんどありませんでした。医療用医薬品の知識を教えてもらおうにも社内に詳しい人が少ない。そこで、クライアントの担当者に教えていただいたり、外部の方にお話をうかがったりと自分で調べるうちに、少しずつ詳しくなっていきました。」

専門性を磨くことの必要性は、ゼロからお客さまと信頼関係を構築していく新規開拓営業を担当したからこそ強く感じるようになったと言う。

「新規開拓のためにお客さまのところにうかがうと、電通だからできることは何なのか、それ以前に私がお客さまの役に立てることは何なのかという問いをどうしても突きつけられることになります。そういう環境に置かれたからこそ、自分のここだけは強いというところを作っていかなければというのを意識させられました」

培ってきた専門性を核に「事業開発」という新たな領域に挑戦

山内さんのメディカル・ヘルスケア関連の実績が買われ、入社から7年後の2012年にメディカル・ヘルスケア専門チームのメンバーのひとりとしてアサインされた。

「新規開拓チーム時代の後半にはメディカル・ヘルスケア関連が自分の強みなのかなという自覚が生まれていましたが、専門チームに移ってからは完全に意識が変わりました。スペシャリストとして自分の強みを研ぎ澄ませていかなければ...と思うようになって、目標ややるべきことが以前よりも明確になったところがあります」

メディカル・ヘルスケア専門チームに異動した当初は従来の広告ビジネスに携わっていたが、2017年からは、事業開発に携わることに。現在はスタートアップ企業などと共同でメディカル・ヘルスケアをテーマとした事業創造に取り組んでいる。

「次男の育児休暇中に私のミッションが変わっていて、職場復帰したタイミングで『事業開発を推進せよ』と。事業環境の変化に伴い、会社のビジネスも変化しているなか、私自身もこれまでと違うことをやってみたいという思いがあったので、ミッションの変化は自然なこととして受け止めました」

とはいえ、変化に戸惑わなかったわけではない。

「広告ビジネスがメインで、事業という視点で物事を計画したことがなかったので、事業計画書の書き方から何からわからないことばかりで...。新規開拓営業を始めたころと同じように周囲に助けていただきながら、何とかやってきました。自分に何の知識もないことを恥じずにいろいろな方のところに聞きに行って、本当に一つずつ教えていただいて。こんなこと、前にもあったなあなんて思いながら(笑)」

物事は思い通りにいかないことも多い。だからこそ、ポジティブでありたい

山内さんは自身のキャリアを振り返り、「まるで『わらしべ長者』のよう」と笑う。

「最初は何も持っていなかったのに、『とにかくこの人たちと一緒にやっていこう』と一つの仕事を自分なりに頑張っていたら、次が見えてきて、その一つがまた次につながって...。一つひとつの縁がわらしべのようにつながって、気がついたら、できることが増えていました。

実は、これまでには仕事がうまくいかなくて、逃げていた時期もあります。趣味の世界で現実逃避をしたりして。そんな時も私を仕事につなぎとめていたのは『人』だった気がします。人と関わると大変なこともあるけど、素敵なこともたくさんありますよね。仕事を通して人との関係が深まると、ご縁がつながっていくのが面白いなと思っていて。社外活動の『コンコン』も、もともとは以前所属していた部署の部長さんに働く女性のヘルスケアに対する私の思いを話したところ、汐留エリアの企業が共同で開催するイベントを運営する社外の方を紹介してくださり、プレゼンの機会をいただいたんです。

人と人との関係というのは、一旦はその場限りのご縁かもしれないんですけど、その時々のご縁を大切に仕事をしていたら、チャンスをいただけたり、何か新たなことをやる時に応援してくださったり。一生懸命やっていれば、誰かが見ていてくれて、ご縁がつながっていくんだなと感じています」

今後の展望についてうかがうと、「開発中の事業を着地させ、ビジネスとして定着させていくということに責任を持って臨んでいきたい」と凛とした表情になった。

株式会社電通 ビジネス共創ユニット シニア・事業開発・プランナー/プロデューサー メディカル・ヘルスケア担当 山内 明子 さん「健康意識の大切さというのは個人的な課題として持ち続けていて、それが『コンコン』の活動にもつながっているのですが、それだけに、人の意識というのは簡単には変わらないと感じていまして。意識を高めずに健康になれる手段はないかなと考えた時に、結局、テクノロジーが鍵だなと。海外の展示会で最先端のテクノロジーをリサーチしたりしながら、例えば、眠るだけで体調が整うというような、頑張らなくても、時間がなくても健康になれるサービスの開発にパートナー企業さんと一緒に取り組んでいます。

現在は電通の子会社の社外取締役もやらせていただくという新たなレイヤーでの仕事もさせていただいていて、個人的なキャリアとしては今後、事業開発や経営の領域を深めていきたいと考えています。事業を生み出したり、マネジメントするというのは仕事に限らず、人間としての成長という意味でも自分の骨になると思うので、失敗やうまくいかないことを含めてしっかりと受け止めていきたいです。物事というのはうまくいかないこともたくさんありますが、だからこそ、なるべくポジティブでありたいなと思っています」

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