シニア人材課題へのアプローチ ~30年間蓄積された"内部特殊能力"の転換~

60歳定年制から65歳雇用の時代に変わりゆく中、その手前にいる50代のシニア人材のキャリア意識と企業が持つこの年代への期待には、ギャップが生まれてきています。このような中でシニア人材を今後活用していくためのヒントをこのコラムではご紹介します。

2014.07.29
コラム

こんにちは、コンサルタントの野村です。

日々、人事担当の方々とお話をしているなかで、『60歳定年制から65歳雇用時代へのシフト』と『企業の人事構成における50代層の割合増大』を背景に、シニア人材を対象とした人事課題が浮き彫りになってきたことを実感しています。

企業の期待とシニア社員の意識のギャップ

企業側が、「意欲的に会社に貢献して欲しい」とシニア社員に期待するものの、シニア社員側の心情としては役職定年や再雇用によって役割や報酬が大きく変化する中で意欲的になれない。このギャップに悩んでいるというご相談をよくいただきます。
最近では、シニア社員に対して、労働市場価値ベースで成果に応じたメリハリのある評価・報酬制度を導入する企業が出てきていますが、シニア社員側の意識が追いついていないという状況もあるようです。

シニア人材には、30年間の"内部特殊能力"が蓄積されている

キャリア研修を企画・提案するなかで、50代の研修受講者をイメージしてみると、新卒で入社し、今の会社で教育訓練機会や仕事を通じた経験を体系的に積み重ねてきた方々であると察することができます。これは、いわば『約30年間の"内部特殊能力"が蓄積された人材群』と言えます。

内部特殊能力とは、「勤めてきた会社において、組織風土や人間関係などのコンテキストの中で、優れた成果を発揮する能力」のこと

シニア人材は、企業内のコンテキストの中で問題解決やエネルギーを編集できる有為の存在であり、ノウハウなどの知的資源を継承させていくためにも不可欠です。

"こうした能力をいかに発揮してもらい、企業の力を高めていくか?"

人事とシニア社員に求められる、"内部特殊能力"の転換と活用

このシニア人材の課題にアプローチするなかで見えてきたのは、『キャリアに対する意識と保有能力の認知におけるパラダイムシフト』の必要性です。

具体的には、会社で30年間蓄積してきた内部特殊能力を棚卸し、ポータブルスキル<仕事・職場が変わっても汎用的に活かせる能力>化、コア・コンピタンス化を促し、50代における役割を明確にしながら能力開発を促進することです。

役職定年や定年退職により役職から離れ、保有する能力を言語化しないまま、自己有用感が低下してしまったシニア社員の方々とキャリア研修を通して接してきました。今の会社で働き続ける場合ですらキャリアを構築していくことが求められる今日においては、キャリアは主体的に自分でプランし、プロデュースしていくことが前提となっています。

『内部特殊能力の変換』によって企業の期待に応えながら、またシニア社員自身が望む『ありたい姿に近づくための能力開発テーマを発見』し、両者を統合させていくことが、人事課題の解決のヒントであると信じて、日々、シニア人材のキャリア自律支援、キャリア研修に取り組んでいます。

記事を書いた人

コンサルタント/野村 圭司
人がキャリア(仕事人生・全人生)においてイキイキできることをサポートする場やプログラムを、ライフワークスのユニークなタレント陣と協働して創り上げ、常に期待以上の価値を提供します。

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