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定年延長のメリット・デメリットとは?2021年4月の高年齢者雇用安定法改正で企業に必要な対応とは?

厚生労働白書によると、2040年時点で65歳の人が90歳まで生きる確率は男性42%、女性68%と、日本はまさに人生100年時代を迎えています。企業にも長寿化を意識した雇用制度への取り組みが求められています。
2021年4月施行の「高年齢者雇用安定法」の改正法では、65歳までの雇用確保から70歳までの就業確保措置が企業の努力義務となりました。
本記事では、高年齢者雇用安定法の改正によって、あらためて検討が必要な定年の引き上げによるメリットやデメリット、対策を解説します。

2021.04.14
コラム

定年延長とは?企業に求められる選択

2013年4月の改正で雇用確保措置として「65歳までの定年延長」「定年廃止」「65歳までの再雇用」がすべての企業に義務づけられたことに加え、2021年4月の改正では「70歳までの就業機会の確保(努力義務)」が加わったことが今回のポイントです。

【参考資料】定年延長とは
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「定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主」「65歳までの継続雇用制度を導入している事業主」に対して、以下の措置が努力義務となりました。

  1. 70歳までの定年引上げ
  2. 定年制の廃止
  3. 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
  4. 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  5. 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
    a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
    b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

企業はどう変わる?定年延長制度の背景

国が定年延長を奨励する背景には、労働力人口の減少によって高年齢者にも労働を推進してもらう必要性が高まったことがあります。経済活性化のためにも労働力不足を補うことは必須の課題です。

また、従業員にとっても高年齢期における収入確保のために、定年延長を含めた多様な雇用の選択肢を増やす目的もあるでしょう。年金は2013年度から支給開始年齢が段階的に上がり、65歳へと引き上げられています。年金支給までの空白期間を埋めるために定年延長を行う必要があったと考えられます。

社会保障制度を支える生産年齢人口は減少していく一方、高年齢者への年金や医療給付費が増加していくと、財政的に社会保障システムの維持が困難になります。こうした背景から、企業には、高年齢者の働く意欲や希望を尊重しながら、社会のニーズに応じた措置を講ずることが求められるようになりました。

図表1-1-1-1 我が国の人口の推移
出典元:総務省 第1部 特集 IoT・ビッグデータ・AI~ネットワークとデータが創造する新たな価値~

定年延長の選択肢を取った場合に、企業と従業員に生じるメリット・デメリット

2021年4月施行の改正高年齢者雇用安定法に「70歳までの就業機会の確保」が努力義務として追加され、雇用の上限年齢、施策の選択肢が大きく変化しました。ここでは定年延長という選択をした場合にフォーカスして、企業と従業員のそれぞれのメリット・デメリットをまとめました。

企業側のメリット

定年延長によって安定した労働力を確保できます。これまで多様な経験を積んだ従業員を引き続き雇用するため、人材育成にかかる時間や費用を抑えられるメリットもあります。

従業員側のメリット

定年延長で社員としての期待が得られることで、社会に参加していると実感できることが大きなメリットといえます。働く意欲が「生きがい」につながることも考えられます。

企業側のデメリット

まず、人件費の増加が挙げられます。また、定年延長でも役職や仕事内容がかわる場合、賃金が下がることもありますが、その制定時にトラブルが起きる可能性もあります。従業員と話し合いをしながら慎重に進めていきましょう。

さらに、従業員の年齢層が上がることで「組織の若返りができない点」があります。ここについては高齢社員の割合が増える場合に、対象層だけではなく若手から定年後の社員まで全体の活性化を視野に入れて施策を検討することが重要です。
あわせて年下上司が年上部下をマネジメントするケースへの対応も検討する必要があります。「若手の萎縮」が起きないように上司・部下の関係性にも気を配りながら、働きやすい環境をいかに創るかが課題です。時には高年齢者(ここではシニア層と表記します)の体力面での変化にも配慮しながら、どのように活躍してもらうのかを、組織全体として捉えた上での制度づくりが必要です。

従業員側のデメリット

働く意欲やモチベーションを維持していく難しさが挙げられます。双方の話し合いで仕事内容や役割に変化があった場合は、定年延長によりこれまでより低い賃金での労働となる可能性があります。従業員本人が、無意識にも自らのキャリア形成を企業に任せていると、賃金が低くなったことだけに目が向き、「いつまで働かなくてはならないのか」といった不満として捉えてしまうことが考えられます。

また、加齢により疲れやすくなる、体に負担がかかるなど、健康上の問題と仕事をうまく両立させなければならないケースが増えてきます。定年延長後は、稼働時間に問題はないかなど、雇用形態の定期的な見直しが必要になるでしょう。

【参考資料】定年延長のお客様事例「三井不動産様」

「70歳就業時代」を見据え、ミドル・シニア世代のキャリア開発支援を強化された三井不動産様。
社員の皆さんが自らの「持ち味」を活かし、年齢を問わず戦力として最前線で活躍できる組織づくりを推進されています。
詳細にご関心のある方は、こちらをご覧ください。

デメリットを乗り越える?企業に求められる新・人事戦略とは

「従業員が70歳まで働ける仕組みの整備(努力義務)」が必要となった今、定年延長のみならず複数の選択肢をふまえて自社の方針や施策を検討する必要があります。その際に企業はどのような観点を人事戦略に盛り込む必要があるでしょうか?

高齢化社会で企業が成長し続けるには、役職定年や定年を迎える社員に、変わらず現役として貢献する意識を持ち、生産性を高め貢献し続けてもらうことが鍵となります。

シニア層には経験に応じた役割を与え、担ってほしい役割と期待を明確に伝えることを心掛けましょう。シニア層がモチベーション高く役割を発揮することは、現役世代にも好影響を与えます。年齢だけによらず、すべての従業員が力を発揮しやすい環境を生み出すという視点を持つことが重要です。

同等規模の企業の成功事例を参考にしながら、外部コンサルタントや専門家にも相談し、デメリットを解消できる新・人事戦略を立てていきましょう。

まとめ

2020年3月に改正され、2021年4月施行の「改正高年齢者雇用安定法」で、企業の努力義務として追加された「70歳までの就業機会の確保」。
企業は各選択肢のメリットやデメリットを理解しながら、自社に合う多様な働き方の選択肢を提示できるように検討する必要があります。
70歳就労時代の人事戦略は、シニア層だけを念頭において考えるのではなく、全従業員の活性化を目指して進めることが重要です。

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