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定年延長とは。データで見る企業の雇用の動向や課題と、取り組み事例。

定年延長とは、わかりやすくいえば、「定年を65歳未満に定める企業が、「高年齢者雇用確保措置」(雇用確保措置)に従い、60歳以降に65歳に到達するまで、希望者全員の雇用を確保すること」。「高年齢者雇用安定法」の改正にともない、企業(民間)は義務あるいは努力義務事項への対応が必要になります。それでは「70歳定年時代」を見据えて、企業はいつから(いつまでに)、何ついて検討しておくことが大切なのでしょうか。このコラムを通して皆さんと考えてみたいと思います。

2020.04.22
コラム

定年延長とは

定年延長とは、2013年4月に施行された「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(「高齢者雇用安定法」)の定めをもとに、わかりやすくいえば、「定年を65歳未満に定める企業が、「高年齢者雇用確保措置」(雇用確保措置)に従い、60歳以降に65歳に到達するまで、希望者全員の雇用を確保すること」といえます。

同法では、「雇用確保措置」を企業に義務付けしており、その具体的内容として、次の3つを示しています。

  • 定年の引き上げ
  • 継続雇用制度の導入
  • 定年の定めの廃止(定年制の廃止)

つまり、この3つが「定年延長」の方法といるでしょう。

さらに、2020年3月に、「改正高齢者雇用安定法」(いわゆる「70歳定年法」)が参議院議員本会議で可決、成立したことにより、2021年の4月から、企業は「70歳までの働く機会の確保」が努力義務になるになりました。したがって、このタイミングで65歳は義務となり、70歳は努力義務の年齢となります。

また、この改正法では、「定年の引き上げ」、「継続雇用制度の導入」、「定年の定めの廃止」の3つに、次の4つが努力義務として加えられました。

  • 他企業への再就職支援
  • フリーランス契約への資金提供
  • 起業支援
  • 社会貢献活動参加への資金提供

今後、この努力義務とされる3つが義務化される場合、定年を引き上げる場合も継続雇用制度を導入する場合も「70歳まで」というようになる可能性もありますが、まずは現在、何歳までが義務付けされているのか、いつから70歳が努力義務として追加されるのか、といったことはおさえておいてください。

高齢者雇用安定法に基づく定年延長などの現在とこれから。2020年4月以降、努力義務として70歳までとなり、さらに「他企業への再就職支援」「フリーランス契約への資金提供」「起業支援」「社会貢献活動参加への資金提供」が追加される。

なお、定年とは、わかりやすくいえば企業が定めることができる退職の期限のことで、定年制を設ける場合「60歳」を下回ることができないと法律で定められています。したがって、企業が定年延長を考えるには、60歳以降65歳まで、あるいは70歳までという期限を見据えて、労働者をいつまで、どのように雇用するのかということを念頭に置いて考えなければいけないということになります。

定年延長が必要となってきた理由

理由1:少子高齢化への対応

定年延長が必要になってきた理由の一つは、少子高齢化による労働力人口の減少といえるでしょう。

総務省「労働力調査」によると、日本の労働人口はかつて右肩上がりに推移してきましたが、1998年の6804万人をピークに以降減少傾向にあります。また、労働力人口に占める高年齢者の割合は年々増してきており、2019年12月現在で労働者人口総数に占める65歳以上の割合は13.7%、55~64歳と65歳以上の割合を合わせると31%となっています(総務省「労働力調査」)。

こういった背景のもとで、人手不足の解消、働き方改革、あるいは社会保障の財源確保といった様々な文脈で「高年齢人材の活用」、「生涯現役で活躍できる社会」の実現という、シニア人材の活躍というテーマが注目されるようになりました。

理由2:日本型雇用の見直し

もう一つの理由は、日本型雇用の特徴でもある、終身雇用の崩壊が始まったことといえるでしょう。2019年4月に経団連の中西宏明会長が、終身雇用制度の見直しに言及したことが象徴的な出来事です。

日本型雇用の特徴として挙げられる終身雇用や年功賃金を背景に、次第に労働者が高齢化していくに従って、総人件費が膨らんでいく中で、賃金カーブを寝かせていくためには、終身雇用をあきらめる企業も増えてきています。ですが、若手人材の獲得が思うように進まない中、やはり労働意欲の高いベテラン社員に60歳以降も活躍してもらいたいと考えるのは、必然的なことではないでしょうか。

【参考資料】特別講演「これからのミドル・シニア人材の人事管理と戦力化マネジメント」講演録
学習院大学名誉教授 今野浩一郎先生に登壇いただいたセミナーの講演録です。少子高齢化による労働力人口の減少への対応方法の1つとして考えられるのが、シニア人材の活用です。講演ではシニア人材の活性化、戦力化のための考え方などについてお話しいただきました。講演録はこちらからダウンロードしてください。

定年延長に対応する企業動向

厚生労働省「令和元年「高齢者の雇用状況」集計結果」をもとに、現在の定年延長に関する企業の動向も見ていきたいと思います。

集計結果によると、調査対象企業のうち、高年齢者雇用確保措置(「雇用確保措置」)を実施している企業(「実施企業」)の割合は、99.8%(161,117社)となっています。この「実施企業」の全体で見た場合、下表のとおり「継続雇用制度の導入」としている企業の割合は77.9%、次いで「定年の引き上げ」が19.4%、「定年の廃止」(無期雇用)が2.7%というようになっています。

雇用確保措置の内訳
出典:厚生労働省「令和元年「高年齢者の雇用状況」集計結果」発表資料、p.4をもとに作成。

いずれ来るであろう70歳定年時代を見据えているのか、「実施企業」のうち、66歳以上が働くことができる制度を設けている企業は、実施企業の30.8%(49,638社)となっています。この30.8%の構成をみると、下表のとおり「定年の廃止」の企業の割合は2.7%、「66歳以上定年」は2.2%、「継続雇用制度の導入」(希望者全員ないし基準該当者66歳以上の継続雇用制度の導入企業*)は17.1%、「その他制度で66歳以上まで雇用」は8.8%となっており、ここでも「継続雇用制度」が多くの企業で選択されている様子がうかがわれます。

*高年齢者雇用安定法一部改正法の経過措置に基づく継続雇用制度の対象者を限定する基準がある継続雇用制度を導入している企業(経過措置適用企業)

66歳以上働ける制度のある企業の状況
出典:厚生労働省「令和元年「高年齢者の雇用状況」集計結果」発表資料、p.7をもとに作成。

また、これらの集計結果から、現状では、大企業(この調査では従業員301人以上)と中小企業(同従業員31~300人)は「継続雇用」を選択する傾向が強く、とりわけ大企業の方がその傾向が強いように見えます。

【参考情報】厚生労働省「令和元年 高齢者の雇用状況」集計結果

以上に確認した内容を含め、高齢者の雇用状況については、厚生労働省の調査結果に詳細が紹介されています。企業の動向をより詳しく確認したい方は厚生労働省のWEBサイトを参照ください。詳細はこちらからご確認いただけます。

さらに、この厚生労働省による調査をさかのぼってみてみると、「定年の引き上げ」を行う企業も少しづつ増える傾向にあるようですので、今後定年を63歳、65歳、さらには70歳へ引き上げていく企業も増えてくるかもしれません。

皆様の企業ではいかがでしょうか?

【参考資料】継続雇用から定年引上げへ移行のためのヒント
継続雇用から定年引上げへ移行のためのヒントサンプル1継続雇用から定年引上げへ移行のためのヒントサンプル2
今後、定年を63歳/65歳/70歳へ引き上げることを検討されている企業も多くなることを見据え、定年の引き上げを行うことを検討するためのヒントなるような資料をご用意しました。制度変更に伴い、社員への期待は変わります。その期待をどのように社内に浸透させたらよいのか、具体的な進め方のポイントをまとめた資料です。 資料はこちらからダウンロードしてください。

「継続雇用」を選択する企業における課題や問題点

上記の厚労省の調査では多くの企業が「継続雇用制度」を導入しているという動向が見えてきました。では、この「継続雇用制度」を導入する場合、どのような課題や問題点が考えられるのでしょうか。

継続雇用(再雇用)における仕事のやりがいや働きがい

継続雇用の場合、定年に達したときに、ほとんどの企業では契約社員や嘱託社員といったように雇用形態が変わって働くことになります。雇用形態の変更で定年後に再雇用となった場合、給与や賞与が下がったり、あるいは手当などなくなったりといったように、報酬や処遇が変化することがあります。

また、これまでとは違った仕事上の役割を担うことや周囲の人間との関係性に変化があることで、不安、違和感や不満、あるいは疎外感を持ち、モチベーション、やりがい、働きがいといったものが失われてしまう可能性があります。そうならないように、継続雇用制度と合わせて、再雇用者の給与体系や評価といったことを含めた人事制度の設計が必要だといえるでしょう。

老いや健康上の問題による長く働くことの難しさ

年齢が上がるにつれて、疲れやすくなり、フルタイムで働くことが難しくなったり、あるいは、健康上の問題から、今まで通りに働くことが難しくなったりする場合があります。健康上の問題については、自身の問題だけではなく、パートナーや親といった周りの人たちにも起きることも十分に考えられます。また、仕事と親の介護の両立といったことが必要になってくることもあります。

そういったことがありながらも働き続けることができるように、多様な働き方が実現できる就業規則などの見直しや環境づくり、仕組みづくりが必要になる場合があることも継続雇用制度を考える上では欠かせない観点になるでしょう。

他の世代への影響

1つ目に、再雇用したシニア人材のモチベーションが低いと、現役世代にもそれが影響して組織全体のモチベーションの低下につながる、ということが懸念されます。場合により、再雇用人材が邪魔な存在と思われてしまうこともありえます。2つ目に、大量のシニア人材を再雇用することで、若手が「仕事が失われる」と考えてしまう可能性があることです。シニア人材の中にはまだまだ活躍を望んでいる人が少なくはありません。そういったやる気のあるシニア人材を目の当たりにして、若手がしり込みしてしまい新しい仕事にチャレンジしにくくなるかもしれません。

ある50代向けのキャリア研修の現場で、再雇用後の役割について考えた受講者の多くの答えが「後進の育成」だったことがあります。この役割はつい思い付きがちではありますが、若手よりもシニア人材の方がそもそも多いことを考えると、後進育成者の供給過剰ともいえるかもしれません。こういったギャップが生まれないようにするためにも、企業はシニア人材に対して何を期待し、どのような役割を担ってもらうのか、明確にしておくことが重要だといえるでしょう。

もちろん、企業には様々な年齢の人材がいるため、自社で活躍を期待されるのはシニア人材に限ったことではありません。企業が持続的に成長し続けるためには、シニア人材も含め、あらゆる年代の社員が活躍できることを考慮し、従業員全体に期待や役割をメッセージとして伝えていくことだといえます。

以上の課題や問題点をまとめると、「継続雇用制度」を運用するにあたっては、シニア人材の活躍が期待できるというメリットだけではなく、デメリット(リスク)があることを考慮して各種の制度設計をする必要があるということになります。皆さんの企業ではいかがでしょうか?

定年延長を行う企業の事例

最後に、定年延長に対応している企業の事例をいくつか紹介します。これから定年延長制度を見直そうとしている企業の人事の方や制度設計を担当されている方など、ぜひ参考にしてみてください。

【参考資料】キャリア開発事例集
キャリア開発事例集タイトルキャリア開発事例集サンプル1
キャリア開発の事例集です。キャリア研修や、キャリア開発のための仕組みづくりや体制の構築といったものをご紹介しています。定年延長への対応やシニアの職域開発といったことにご関心がある方も、ぜひ参考にしてください。 事例集はこちらからダウンロードしてください。
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