シニア人材とは?活用するメリットや注意点などを解説

平均寿命が延び、いわゆる「第二の人生」に対する価値観は多様化しました。仕事一筋だった人生に区切りをつけて趣味や旅行を楽しむ人だけでなく、さらなる自己実現のため、あるいは生活のために働き続けることを希望するシニア人材が増えたのです。
こうしたシニア人材を活用することで、シニア人材の生きる意欲が高まるだけでなく、会社側にも多くをもたらします。
今回は、シニア人材の雇用が進む背景や会社経営への効果、活用する上での注意点などを解説します。

2023.05.11
コラム

1.シニア人材の雇用が進む理由

シニア人材とは、一般的に高齢者と呼ばれる65歳以上の人、あるいは多くの会社が定年に設定している60歳以上の人を指す言葉です。しかし、その定義は明確でなく、企業によっては50代以降の人材をシニア人材とする場合もあり、状況に応じてその範囲を変動させながら柔軟に活用されている言葉のようです。

近年、シニア人材の雇用が進んでいるのはなぜなのでしょうか。ここでは、シニア人材の雇用が拡大している主な理由を3つ説明します。

1)定年年齢の引き上げ

シニア人材の雇用が進む理由のひとつが、定年年齢の引き上げです。2013年に高年齢者雇用安定法が改正され、企業に対して「定年制の廃止」「定年の引き上げ」「65歳までの雇用継続制度」のいずれかを導入するよう求められるようになりました。

また、2020年には、さらなる高年齢者雇用安定法の改正がありました。これにより、企業には下記のいずれかの措置を講じる努力義務が設けられています。

<2020年の高年齢者雇用安定法の改正により定められた努力義務>

  • 70歳までの定年引き上げ
  • 定年制の廃止
  • 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
  • 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  • 70歳まで継続的に「事業主がみずから実施する社会貢献事業」「事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業」に従事できる制度の導入

2022年に厚生労働省が発表した「令和4年就労条件総合調査の概況」によれば、定年制を定めている会社のうち、定年を60歳とする会社は72.3%、65歳とする会社は21.1%となっています。その5年前の2017年に、厚生労働省が発表した同調査 「平成29年就労条件総合調査の概況」では、60歳定年が79.3%、65歳定年が16.4%だったことから、少しずつ定年年齢の引き上げが進んでいるといえるでしょう。
実際のところも、総務省統計局が発表している「令和3年 労働力調査年報」を見ると、65歳以上の就業者数は2011年の約571万人から2021年の約912万人へと大幅に増加していることがわかります。

再雇用制度の詳細については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
→再雇用制度の基礎知識、企業の課題や再雇用に向けてできることを解説!

2)働く意欲があるシニア層の増加

働く意欲があるシニア層が増えたことも、シニア人材の雇用が盛んになった理由のひとつです。
内閣府が発表した「令和2年版高齢社会白書」のアンケートによると、働く理由として「収入がほしいから」と回答した方が45.4%で最も多く、次いで「働くのは体によいから、老化を防ぐから」、「仕事そのものが面白いから、自分の知識・能力を生かせるから」が挙がりました。

「収入がほしいから」と答えた人は男性の60歳から64歳の層に最も多く、60歳での定年後、老齢年金の受給開始時期にあたる65歳までの空白期間をなくしたいと考える人が多いようです。一方で、このアンケートでは、年齢が上がるにつれて働く理由は多様化しているという傾向も見られ、シニア層の働く意欲の高さがうかがえます。

3)少子高齢化による人材不足

少子高齢化に伴う人材不足も、シニア人材の雇用を盛んにした理由のひとつです。
総務省が発表している「人口推計」によると、全人口に占める65歳以上の割合は1950年では5%でしたが、2023年3月時点では29.1%まで上昇しています。総人口も2008年の1億2,808万人をピークとして減少の一途をたどっており、労働市場における人材不足はさらに深刻化する見込みです。

2.シニア人材を活用するメリット

シニア人材を活用することは、会社にとってどのようなメリットをもたらすのでしょうか。
ここでは、シニア人材を活用する主なメリットを2つ説明します。

1)人材不足の解消につながる

前述したとおり、多くの会社が少子高齢化による人材不足に悩まされています。シニア人材を活用することで、人材不足の解消につながるでしょう。若手の採用がますます難化していくことを考慮すると、人材不足を補う労働力となるシニア層の確保は、これからの時代において各会社が存続していくための重要なポイントとなるはずです。

2)会社の競争力を高める

シニア人材の活用によって、会社は競争力を高めることができるでしょう。シニア人材には、長年の経験の中で培ってきたスキルや知識、人脈があります。これらは、一朝一夕には獲得できない強みであり、ビジネスの発展や向上につながる可能性が高いものです。
また、みずから望んで就労するシニア人材は長期的に力を発揮し貢献してくれる点もメリットです。

3.シニア人材を活用する時の留意点

シニア人材の活用にはさまざまなメリットがありますが、シニア人材ならではの注意点もあります。
ここでは、シニア人材を活用する際の3つの留意点をご紹介します。

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1)健康状態に配慮する

シニア人材を活用する場合は、一人ひとりの健康状態に配慮することが大切です。
長く第一線で活躍してきたシニア人材の中には、若い頃と同じように仕事ができると自負している人も多く、自分の変化に気づかないまま働き続けて健康を害してしまうことがあります。年齢を重ねると、疾病に罹患する確率が高まるため、会社側が配慮するようにしましょう。
シニア人材自身がみずからの健康状態を理解できるよう、健康診断を実施して受診を推奨するほか、体調チェックシートを導入するなどして日常的な健康状態の可視化を図ることが大切です。
また、昼夜を問わず猛烈に働いてきた世代の中には、休むことが苦手な人もいます。適度な休憩と休暇は仕事の効率を高めるためにも重要であることを説明し、適切に休憩を取らせるようにするとよいでしょう。

2)体力に応じた仕事を割り振る

一人ひとりの体力に応じた仕事を割り振ることも、シニア人材を活用する上で大切です。
最近では、歳を重ねても継続的に体を鍛え、いきいきと働く人が増えてきました。しかし、若い頃に比べれば誰でも体力は低下するものです。本人の希望を踏まえて、身体的な負担が少ない業務を割り振るなど工夫をすることが重要です。
特に工場などの現場勤務では、シフトの組み方によって負担が増えがちです。夜勤を減らす、時短勤務にするなどして、無理をさせない環境を作りましょう。

3)あらかじめ労働条件を伝えて合意を得ておく

シニア人材を活用する際は、必要に応じて所得の調整を行うことが大切です。
例えば、定年退職したシニア人材を再雇用する場合、一般的に勤務時間が短くなったり、労働条件や仕事内容が変わったりします。そのため、多くの場合は、現役時代に比べて給与額が下がります。
給与はシニア人材の生活やモチベーションに直結するため、再雇用の話が出た時点で条件を明示し、丁寧に説明するようにしましょう。後々のトラブルを防ぐため、合意を得てから再雇用することが重要です。

4)キャリアの自律を促す

社会やビジネスの不確実性が高まったことで、現代は将来の予測が難しく、今までの常識を覆す変化が次々と起こる「VUCAの時代」といわれています。そのため、近年の社会においては、会社任せのキャリア形成ではなく、従業員一人ひとりによるキャリア自律が求められるようになりました。社会に求められ続ける人材であるためには、みずからのキャリアについて主体的に考え、社会のニーズや変化を捉えて学び続けながら、継続して自分をアップデートしていく姿勢が欠かせません。もちろん、シニア人材も同様です。

しかし、シニア世代のキャリア全盛期は、終身雇用と年功序列を基本とする日本型雇用が当たり前だった時期でもあり、定年までの雇用を前提として会社がキャリア形成を担い、個人はそれに従うのが一般的でした。こうした世代にとって、考え方の切り替えは容易ではありません。研修でメッセージを伝え、面談で個々に向き合うなどを通して、5年後、10年後を見据えた自律的なキャリア形成をサポートしていきましょう。

シニア人材が、みずからの知見や経験を活かしたキャリアの自律に取り組むようになれば、シニア人材自身はもちろん、ともに働く人の生産性も高まります。また、働き方や生き方などの内的キャリアに目が向けば、定年や役職定年といったシニア特有の転機を乗り越える手掛かりにもなるはずです。

4.シニア人材を活用し、会社の競争力を高めよう

シニア人材の活用には、人材不足を補うだけでなく、組織の活性化や若手人材のモチベーションアップなどの効果があります。シニア人材に能力を十分に発揮してもらえるよう、環境と制度の整備を進めましょう。

株式会社ライフワークスでは、ミドル・シニア人材に関する様々な課題に適した方法で、人事制度と連携しながら、組織力強化に貢献する「ミドル・シニア活性化支援サービス」をご提供しています。ミドル・シニア人材のキャリアや役職定年への対応などに課題を持つ方は、是非ライフワークスのミドル・シニア活性化支援サービスをご覧ください。

この記事の編集担当

黄瀬 真理

黄瀬 真理

大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。

国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定

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