65歳定年制導入に向け、生じうる課題をワークショップで洗い出し

65歳定年制導入に向けた検討を始めたが、課題整理の道筋をつけられない

数万人規模のメーカーであるM社は、近い将来、生産ラインで人手不足が起こりうることや、従業員の老後の安心の保障を求める労働組合の声などから、65歳定年制の導入を真剣に考えなければならないフェーズに入っていました。同時に、事業環境の変化により、今後、ビジネスモデルの転換や新規事業の創出などが求められる可能性が出てきており、従業員一人ひとりが自律的にキャリアの方向性を考えられる土壌をつくる必要性がありました。

しかし、M社はこれまで従業員のキャリア開発に関する施策に取り組んだことがなく、多くの従業員は、「キャリア自律」はもちろん「キャリア」というものに対する意識自体が希薄でした。この状況で何の施策も伴わずに65歳定年制を導入した場合、いわゆる「ぶら下がり社員」が多数生まれる可能性があること、また、技術開発職、生産ライン職、工場の管理職、本社の事務系職など多様な職種の従業員がいるため、定年を延長するにあたって生じる問題・課題も職種ごとに異なることなどが予見されました。

ただ、具体的にどこにどんな課題があるのかについては、組織が巨大なこと、また、人事部門が多忙でじっくりと考える機会も、皆ですり合わせる機会も持てないことなどから、複雑すぎて整理・検討の道筋が立てられない状態にあると、人事部門からライフワークスに相談をいただきました。

人事・総務部門の管理職総出で、課題抽出のためのワークショップを実施

そこで、まずは課題を見つけて整理することから始めましょう、と、本社および全国の事業所の人事・総務部門の管理職が一堂に会して課題の洗い出しと整理を行うワークショップを実施することを提案しました。加えて、今後キャリア研修をはじめとした従業員のキャリア開発支援施策を導入することになれば、人事部門の従業員に推進役になってほしいという人事部門の担当者の意向を受け、キャリア研修の体験も付加。1日目にキャリア研修体験を、2日目に課題抽出のためのワークショップを行い、さらに後日、キャリアコンサルティング面談を体験的に受けていただくという取り組みを行いました。

課題の洗い出しと整理という目標に向けてワークショップを的確に進めるためにライフワークスが支援させていただいたポイントは大きく3つあります。

1つめは、的確な課題抽出のためのフレームワークづくりです。「どこにどんな課題があるかわからない」という状況を整理し、課題抽出に至るには、検討の枠組みをあらかじめ整理しておく必要があります。そこで、M社の人事部門の担当の方へのヒアリングとすり合わせを丁寧に行い、「管理職」「技術開発職」「生産ライン職」「それ以外(事務系職種等)」の4つの職種に分けて課題の洗い出しを行うという枠組みを用意しました。

2つめは、ワークショップの設計についてです。ワークショップに参加する人事・総務部門の管理職は、研修、採用、人事企画、福利厚生など、各々異なる分野を担当しているため、それぞれに問題意識や関心が異なります。そこで、制度をはじめとしたハード面も、研修をはじめとしたソフト面も考えられる内容にすることで、異なる問題意識に満遍なく触れられるようにしました。

3つめは、他社事例などの情報提供です。課題の抽出・整理の助けとなるよう、ソフト面のアプローチ例や制度を検討・導入にあたって踏むべき段階の例、従業員が年代ごとに抱えがちな課題の典型例、シニアのキャリア開発を考えるにあたって必要な観点など、これまでライフワークスがキャリア研修やキャリア開発サービスに取り組んできた中から、M社の状況に合った情報を整理し、提供しました。

職種別の課題と打ち手のアイデアが整理できた

こうした準備と情報提供の結果、ワークショップでは職種ごとの課題と、それに対する打ち手のアイデアを整理することができました。現在は、具体的な施策を検討するプロセスに入っています。

M社からは、M社の状況に合ったワークショップを設計したこと、それにより課題の可視化ができたことを評価いただきました。加えて、研修などのソフト面だけでなく、制度などハード面に関する情報もライフワークスの提携先企業と連携して提供したこと、さらに、キャリアの専門家集団として、キャリア開発・キャリア自律の知識やこれらについて考える際に必要な観点を提供したことについても評価していただきました。

職種ごとの課題に対する施策の検討には、まだ着手したばかりですが、M社の課題を1つずつ解決できるよう、実施に向けた調整の支援なども含めて、今後も継続的に支援していく予定です。

この事例のまとめ

課題 65歳定年制の導入に向けて解決すべき課題を洗い出したい
65歳定年制の導入や、従業員のキャリア自律意識を醸成する施策について検討したいが、多数の従業員と多様な職種を抱えた組織であることなどから、課題を整理する道筋が立てづらかった。
方法 人事・総務部門の管理職によるワークショップを行い、職種別に課題を抽出・整理
人事・総務部門の管理職が一堂に介し、65歳定年制を導入した場合に起こりうる問題や、従業員のキャリア開発に関する課題を職種ごとに抽出・整理するワークショップを設計・実施した。
成果 職種別の課題と打ち手のアイデアを整理できた
事前に用意した4つの職種の分類ごとに、課題とそれに対する打ち手のアイデアを整理することができた。

研修導入企業情報

メーカー M社

年代
20代 30代 40代 50代
業界
メーカー(toB)

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