63歳定年制導入に伴い、社員の不安を意欲に変える50代のキャリア研修を充実化

63歳定年延長に伴い、50歳研修のコンセプトを見直した

弊社の事業領域は広がっており、調味料、タマゴ、サラダ・惣菜、加工食品、ファインケミカル、物流システム事業を展開しています。中国や東南アジアなどを中心に海外展開へさらに力を入れており、人材の充実化が急務となっています。2000年に経験による知識や知見を生かして退職後も継続して働いて頂くため再雇用制度(65歳まで1年更新の契約制度)を導入しました。この制度は、時給での就労のため、仕事の内容に関わらず一律の時給でお仕事をして頂いておりました。その後2013年に業務内容の難易度により異なる賃金とする「シニア社員制度」へ変更しました。そして、今までの経験や知見を活かして頂く事と、将来の労働力不足を予測し安定した制度のもとで、存分に力を発揮して頂くため2015年12月から60歳から63歳へ定年延長をしました。
定年延長により、弊社において、50代後半からのキャリア集大成期の社員に期待することは、個人が培ってきた専門性を発揮して活躍・貢献して頂くことです。定年延長の実施前の制度であるシニア社員制度は、「60歳以降は一線を引く」というイメージでした。しかし、63歳まで正社員として就労して頂くには、以前のシニア社員のイメージでは、周囲の期待に応えられません。そこで、2015年からライフワークスさんの協力を得て、以前より実施してきた50歳時研修「ライフプラン研修50」のコンセプトを見直しました。「ライフプラン研修50」は60歳定年を前提に、マネープランなど定年後の生活を充実させるための情報提供をメインとした福利厚生的な要素が多くを占めていました。これをキャリアプラン中心の内容に変え、50代からの活躍に向けて意識を高める「キャリアプラン50」をスタートしました。

50代からのキャリアを具体的に描けるような仕掛けづくり

「キャリアプラン50」のプログラムは2日間。1日目の午前中に定年延長を中心とした会社の諸制度や、年金、保険についての説明の後、自己理解検査(SAI)の結果やこれまでの振り返りをもとに自分の強みや持ち味をじっくりと理解してもらいます。2日目は多彩なワークを通して自分のキャリアを多角的に見つめ直し、今後の目標と行動計画を立ててもらいます。研修の企画にあたって特に工夫したのは、受講者が50代からのキャリアイメージをできるだけ具体的に描けるような仕掛けづくりです。ロールモデルとなる先輩社員を各自が見つけてキャリアについてインタビューする事前課題を出し、メンバー間で情報交換をしてもらうなど、ライフワークスさんにはアイデアを積極的に頂きました。研修終了後、受講者からは「キャリアを振り返るよい機会になった」「具体的な将来イメージを持てるようになった」という声が多く、社員が50代以降のキャリアを主体的に考えるきっかけを提供できたと感じています。
弊社ではこれまでミドル・シニア社員を対象としたキャリア研修を行っていませんでしたが、「キャリアプラン50」をきっかけに社員が自分のキャリアを振り返る機会の重要性を認識することができました。現在は40歳の社員を対象としたキャリア研修も実施しています。

プログラムの概要1

プログラム名 キャリアプラン50
日程 2日間(通い研修)
対象 50歳の社員(管理職・非管理職合同)
研修1日目
  • マネープランを考える
  • 自分の強み・持ち味を知る
  • 職場生活を振り返る
  • 2日目に向けた課題の案内
研修2日目
  • 仕事の価値観を探る
  • 職場からの要望を知り、今後の課題を把握
  • キャリアインタビュー(事前課題)の共有
  • 今後のキャリアを考える

59歳時研修を新設。役職定年後のトランジションをサポート

2015年12月の定年延長に伴い、役職定年は60歳と定めました。定年延長により、60歳以降も職場は変わらない場合もあり、管理職から外れミッションのある仕事を担当して頂くこととなります。また報酬体系のテーブルが変更となりますので、60歳より報酬が下がる場合もあります。現在のところ、60歳時点で9割以上の社員が何らかの役職に就いていますので、役職定年は大きな環境の変化です。63歳定年延長への社員の反応は前向きでしたが、第一世代となるシニア社員の中には「60歳以降の働き方はどう変わるのか」「会社はもう自分に期待をしていないのではないか」と不安を感じている人も少なくありません。特に管理職として現場の業務から離れていた期間が長い社員ほど戸惑いが大きいと思っています。
60歳以降もモチベーションを維持して働けるようにと、2016年度から実施しているのが59歳の社員全員を対象とした「セカンドキャリア研修」です。社内外の環境変化を理解してもらうことと、自分の経験を棚卸し、「今後自分がどう働き、何をもって会社で貢献できるのか」を考えてもらうことが大きな目的です。受講者は40代、50代のキャリア研修を受ける機会がなかった世代でしたので、多少の警戒心もあったようですが、新鮮な気持ちで参加できたようで、多くの受講者が「自分の強みを再発見できた」「やりたかったことを思い出した」と研修を高く評価していました。

プログラムの概要2

プログラム名 役職定年前研修
日程 1日間(8時間)
対象 59歳の社員(管理職・非管理職合同)
プログラム概要
  • 役職定年制度説明
  • 仕事の価値観を探る
  • これまでのキャリアを振り返る
  • これからの活躍を語り合う

創始者の精神を受け継ぎ、年齢を問わず全社員に活躍してほしい

キユーピーの創始者・中島董一郎は88歳で当社の社長を退くまで、新しい事業を次々と興し続けた人物です。創始者の精神を受け継ぎ、社員には年齢を問わず活躍して頂きたいと思いっています。研修でもこのメッセージを強く打ち出し、受講者にも会社からの期待は伝わっていると感じています。「キャリアプラン50」「役職定年前研修」ともに社員が自分のキャリアを主体的に考える良いきっかけになっていますので、今後も継続していく予定です。
ただ、60歳以降の社員が職場で本当に活き活きと働き、貢献できる環境は、研修だけでは実現できません。会社がどんな役割を提供できるのか、もっと具体的にデザインし、提示していくことも課題のひとつです。そのためには、例えば、育児で時短勤務中の管理職をシニア社員がサポートするなどの柔軟な発想を取り入れる必要性を感じています。また、組織のフラット化は進んでおり、今後は60歳時点で管理職に就いている社員の割合が減少していきます。60歳以降の社員の働く環境の多様化に伴い、人事施策も状況にフィットしたものにしていかなければなりません。一方、ケアが手厚すぎると社員が依存的になる傾向もあります。社員の自律的なキャリア開発を促しつつ、会社全体が活性化するようなサポートをしていければと思います。

この事例のまとめ

課題 63歳定年制導入に伴い、60歳以降のモチベーション向上が課題に
1年契約の再雇用制度から63歳定年制に移行。60歳での役職定年も定められ、50代から退職までを意欲的に働き続けるためのサポートの必要性が出てきた。
方法 50歳と59歳の社員を対象に、キャリア研修を実施
定年後のライフプランがメインだった50歳時研修を、50代からのキャリア形成をテーマとした研修に。60歳以降の環境変化に対する適応を促すために59歳時研修も新設。
成果 「自分の持ち味を生かし、会社に貢献し続けたい」という意欲を醸成できた
50歳時研修では、今後10数年働き続けることへの覚悟と意欲を醸成できた。59歳時研修では、環境変化を不安に思うのではなく前向きに捉え、「自分の強みや持ち味を生かして会社に貢献し続けたい」という意欲を醸成できた。

取材日: 2017年4月27日

研修導入企業情報

キユーピー株式会社 様

目的
ミドル・シニアの活性化
年代
50代
業界
メーカー(toC)

企業のご担当者様

キユーピー株式会社 人事本部 人事部 人事チーム 田中 秀樹 様

キユーピー株式会社
人事本部 人事部 人事チーム
田中 秀樹 様

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