キャリア面談を核に「転機型」のキャリア研修を実施
自律的なキャリア開発を多面的に支援(後編)

10年間での業容倍増を目標に掲げた「長期ビジョン2030」のもと、従業員と会社双方の成長スピードの加速を目指し、キャリア教育体系を再構築した積水化学グループ。後編では、2022年度よりスタートした新キャリア教育体系の内容や施策の意図、現時点での成果などについてお話しいただきます。

従業員が継続的、かつ連続的にキャリア開発に取り組む仕組み

2022年度から新たにスタートしたキャリア開発支援体制のキーワードは「キャリア自律」。上司によるキャリア面談制度を核に、キャリア教育体系は面談に対する理解を促すための「eラーニング」、キャリアを描くためのサポートを必要とする従業員のための「キャリアプラン基礎研修」、入社や昇格、定年延長選択といった役割の変化や転機に合わせたキャリアプラン研修で構成されています(表1)。

上司によるキャリア面談は積水化学工業単体から2022年4月より実施しています。年代別キャリアプラン研修をメインに組み立てた従来のキャリア開発支援体制では、従業員にキャリアを振り返る場を提供できるのが概ね10年に1度と限られ、継続的なキャリア開発にはつながりにくいという問題がありました。そこで、新キャリア教育体系では、毎年、年度の始まりの時期に従業員と上司で行うキャリア面談を制度化し、1年単位で振り返りと計画を行うことにより、従業員が継続的、かつ連続的に自らのキャリア開発を考える仕組みとしました。

上司によるキャリア面談制度を設けたのは、従業員本人・上司・制度などの仕組みが一体となった施策により、従業員のキャリア自律を促して成長スピードを高めることが狙いです。そのためには、個人が取り組んだキャリア開発を現場での業務に存分に生かせる環境づくりが必要です。キャリアに関する話ができるスタンスを持ち、現場業務と組織の目標の両方を理解する上司によるキャリア支援は、それを進める上で非常に重要だと考えています。

しかし、上司と部下の関係は永続的ではなく、上司が変われば新たな相互理解に一定の時間を要するという問題があります。また、上司はキャリアコンサルティングの専門家ではありませんから、できる支援に限りがあります。そうした点があっても、面談で上司とすり合わせたキャリアプラン、およびそのプランに対する上司の支援施策が未来に向けて蓄積されていくように、人材管理システムに登録する仕組みを設けました。それによって、上司が変わっても、継続的にキャリア開発に取り組めるようにしました。

キャリア面談制度の実施に先駆けて、部下を持つ基幹職を対象に、部下のキャリア自律支援の考え方や面談ポイントについて学ぶ「キャリア自律 上司研修」も実施しました。この研修は年に数回、継続的に行っています。また、従業員全員が自身のキャリア開発や、部下のキャリア支援について相談できるキャリアコンサルティグの体制も設けています。

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表1 積水化学グループ 2022年度キャリアプラン研修体系

役割の変化や転機に対応した研修体系を幅広い従業員に

新しいキャリア教育体系は、このキャリア面談制度の実効性を高めるものとして組み立てました。「キャリア自律 eラーニング」はキャリアやキャリア自律、キャリア面談の流れを理解し、キャリア面談で上司との話し合いに用いるキャリアインタビューシートを作成できるようになることをゴールとした内容です。

役割や転機に合わせて実施するキャリアプラン研修(転機教育)は参加を必須とし、このほかに全従業員を対象とした希望制の「キャリアプラン基礎研修」を用意することで、幅広い従業員に継続的、かつ柔軟に機会を提供できる体制を整えました。キャリアプラン研修はグループ全体の従業員に対して実施しています。

転機教育の実施のタイミングは入社時、上級(一般企業では係長クラスに相当)昇格時、基幹職(管理職)昇格時、定年延長選択前(50歳〜57歳を対象とし、受講年次は人事部が調整を行う)、定年延長選択後です。定年延長制度(65歳までの選択制)は2021年度10月に積水化学工業単体で導入し、2025年度までにグループ全体で実施することが決定しています。

新任基幹職を対象としたキャリアコンサルティングも実施

2023年1月には新任基幹職約70名に対し、外部の専門家によるキャリアコンサルティングも実施しました。対象は前年10月の「新任基幹職キャリアプラン研修」参加者(約200名)で、研修後に作成したキャリアプランシートをもとにコンサルティングを受けるという流れでした。

基幹職は当社グループ約26,000名以上の従業員の中でも、基幹職(約5,000名)は中核となって活躍することが求められています。基幹職昇格は大きな役割転換であり、キャリア研修とキャリアコンサルティングを組み合わせることにより、期待される役割に向き合うためのマインドセットを形成するとともに、その役割を果たすための「挑戦」を通してどのように成長していくのかをじっくりと考える機会を提供することが施策の目的でした。

キャリアプランニング研修、キャリアコンサルティングともに株式会社ライフワークスに依頼しており、女性基幹職に対してはジェンダー特有のキャリア課題にも対応できるよう同性のコンサルタントを配置するなどきめ細やかな対応をしていただきました。

面談は守秘義務のもとで実施しており、個別の内容については関知していませんが、全体報告書によると、キャリアコンサルティングを受けた従業員は総じてキャリア自律度が高かったことがわかっています。また、新任基幹職を対象としたキャリアプラン以外の研修の効果もあって、組織への貢献意識も高まっていました。

全体報告書からは、女性の活躍に関わる課題や、マネジメント専任ではない基幹職が力を発揮しやすい環境づくりなどの組織課題も読み取れました。こうした課題への気づきも、長期ビジョンのもとで私たちが目指す「従業員が挑戦したくなる活力あるいい会社」の実現に向けての一歩となると考えています。

明確なビジョンにもとづいた人事施策が、会社と従業員の結びつきを強くする

現在はまだ新キャリア教育体系の成果を語れる段階にはありませんが、研修実施後のアンケートなどから従業員に自律的にキャリアを考えることの大切さが伝わりはじめていることがうかがえます。加えて、「長期ビジョン2030」とリンクしてキャリア教育体系の枠組みを役割・職務軸に大きく転換したことにより、経営陣のビジョンに対する従業員の理解が進み、エンゲージメントの向上にもつながっていると感じています。

2020年5月に策定された積水化学グループの「長期ビジョン2030」のもとでキャリア教育体系の再構築をするにあたり、私たちは従業員のキャリア自律促進とともにエンゲージメント向上を目指して取り組みを進めてきました。従業員がやりたいことを明確にし、主体的に行動することは非常に重要ですが、同時に、自分がやりたいことだけではなく、会社の成長のために自分に何ができるかを考える視点を持たなければ、組織と個人の関係性がアンバランスになり、おたがいの成長を支え合うことができなくなってしまうからです。

積水化学工業グループでは、全従業員を対象にエンゲージメント調査を実施しており、2022年度の調査結果は「長期ビジョン2030」策定前の2019年度から14ポイント上昇しています。また、会社のミッションや価値観への共感が従業員の「挑戦」につながっていることも、同じ調査の結果として報告されています。

この調査結果は、社内のさまざまな取り組みによる複合的なものですが、会社のトップ層が明確なビジョンを伝えることが従業員の会社への共感や、「挑戦」につながるということを示しています。キャリア開発支援においても同様で、単体の施策の効果だけを考えるのではなく、会社の人材マネジメント方針に基づいたビジョンのもとに各施策を位置づけて実施することにより、会社と従業員の結びつきが強まり、双方の成長にもつながると一連の取り組みを通して実感しています。

この事例のまとめ

課題 年功型の人事制度から、役割軸の人事制度への転換に伴い、年代別研修を軸とした従来のキャリア教育体系を役割・転機軸の枠組みに再構築する必要性が生じた。実効性が高く、持続的なキャリア開発支援体制を整えることを目指した。
方法 キャリア面談制度を核に、面談に対する理解を促すための「eラーニング」、役割の変化や転機に対応したキャリアプラン研修体系を構築。部下のキャリア支援を行う上司をサポートするための研修や、新任基幹職を対象とした希望制のキャリアコンサルティングも実施した。
成果 従業員が継続的にキャリア開発に取り組みやすい環境が整ったことにより、キャリアについて自主的、自律的に考える気運が高まった。また、長期ビジョンとリンクした体系構築により、経営陣のビジョンに対する従業員の理解が進み、エンゲージメントの向上にもつながった。

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研修導入企業情報

積水化学工業株式会社 様

目的
ミドル・シニアの活性化 管理職の育成力強化 若手の成長支援・リテンション
年代
20代 30代 40代 50代 60代
業界
メーカー(toB)

企業のご担当者様

積水化学工業株式会社 人事部 人材マネジメントグループ 人材開発チームリーダー 岡村裕之様

積水化学工業株式会社 人事部
人材マネジメントグループ
人材開発チームリーダー
岡村裕之様

積水化学工業株式会社 人事部 組織開発・労働政策グループ 勤労チーム 菊池好洋様

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組織開発・労働政策グループ
勤労チーム
菊池好洋様

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