女性管理職育成のジレンマ

2016年の女性活躍推進法の施行に向けて、様々な動きがあった2014年度が終わり、さらに女性活躍のための取り組みを活発化させる企業も多くなってきました。行動目標の中でも特に各社が注目しているものの1つのが「女性管理職の育成」ですが、そこにはいくつかのジレンマが挙げられます。

2015.06.04
コラム

こんにちは。研修プログラムの開発を担当している武井です。

女性活躍推進の指標は女性管理職の増加

2014年度は官民ともに女性活躍推進に関する動きが活発な一年でした。アベノミクス成長戦略に続き国際シンポジウムが日本で開催、政府・経済界の本気度が改めて世界に向けて発信されました。
さらに2015年度に入り『女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案』が国会で審議中、法案が成立すれば企業にも様々な義務が付与されます。2016年4月1日施行、あと1年を切っています。

法律による義務化を意識してというだけでなく、経営課題として女性活躍推進を重点項目として本格的に取り組んでいる企業様も多く見られます。とりわけ、女性管理職比率は目に見える指標としてわかりやすいため、目標値として公表されている傾向が高いです。

厚生労働省HP 「女性の活躍推進宣言コーナー」における各社の宣言内容でも半数以上の企業様が「女性管理職の増加」を宣言しています。

女性管理職育成のジレンマ

女性の管理職登用に続く課題として、ここでは「女性管理職育成のジレンマ」として以下の2点を取り上げます。

ジレンマ① 管理職に登用したものの、管理職としての役割を充分に発揮できない
ジレンマ② 依然、長時間労働が当たり前の職場でライフイベントとの両立が困難になる

ジレンマ① 管理職に登用したものの、管理職としての役割を充分に発揮できない

充分な仕事経験とそれによる能力開発を積み重ねていないうちに管理職に登用されてしまったケースが当たります。

仕事の専門性が多様化・細分化している中で、一つの領域の仕事について精通している、スペシャリストとしての仕事が認められて昇進した場合、管理職として把握しなければならない領域はこれまでの自分の仕事領域を超えるものになります。部下の業務に関する知識を持っていない。そのような状況下では、どんな仕事にも転用可能な基礎力を伸ばすことにより対応の幅が広がってくるでしょう。

また、部下一人ひとりの働き方も多様化している。加えて、プレイングマネージャーとしての仕事の成果も期待されている。管理職に昇進したばかりの人は日々、実に多くのプレッシャーと悩みを抱えることになります。「私にはやはり無理でした。」と管理職登用後に退職や降格といった事態を招いた事例も度々耳にします。管理職に登用したところで手放すのではなく、上司やメンターなどが丁寧にフォロー・育成していくしくみや初級管理職向けの研修などで、自己効力感醸成とスキル向上まで視野に入れた長いスパンでの育成計画で登用からの離脱者が防げると考えます。

さらには、女性管理職のパイプライン構築として、将来の管理職候補として期待される次世代期待層(入社7~8年目ごろ)が男性との差が生じてくるこの時期にいかに成長へのチャレンジを意識できるか。ライフイベントによる働き方の制約が生じるまでに、多くのストレッチ経験が重ねられるかが成長のカギとなってきます。

ライフワークスでは、この層への働きかけが重要であると考え、この度「次世代期待層向け研修」を開発しました。
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ジレンマ② 依然、長時間労働が当たり前の職場でライフイベントとの両立が困難になる

「昇進・昇格と降格の最新実態調査」によると役職への昇進年齢は
課長昇進年齢 標準40.2歳 実在者の年齢 平均46.3歳 となっています。
女性のライフステージでは、この年齢は子育て、配偶者のキャリアイベント、親の介護など様々な出来事にも向き合わなければならない時期です。管理職本人自身が時間の制約の中で役割を果たさなければならない。それが負担になり、退職してしまう。
縦・横・斜めの関係の周囲の協力を得ながら、仕事を進めていく。そんな能力が求められます。
ここでも基礎力の発揮が壁を超えるポイントになるでしょう。

さらには組織としての長時間労働改善への抜本的な取り組みが必要でしょう。
労務行政研究所の「2014年度 労働時間総合調査」では年間総実労働時間の水準は下記の数値で、
1日当たりの所定労働時間  7.77時間(規模計) 7.81時間(1,000人以上)
時間外労働の実績(1人一カ月当たり) 平均17.7時間(規模計) 21.9時間(1,000人以上)
経年推移を見ても2011年度以降は横ばいです。
働く個人、組織がどれだけ本気になり、この問題を解決していけるか。女性管理職が増加し、その状態を維持していく上での大きな課題です。

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