ミドル期以降における、これからの"あるべきキャリア開発"の方向性とは

バブル期入社の第1号が50歳に達した2015年。『次世代シニア』という新たな区分が生まれました。こういった潮流の中で、私たちは改めてミドル期以降のキャリアの在り方について考えていく必要があるともいえます。そのための方向性のヒントをこのコラムでは紹介します。

2015.07.03
コラム

こんにちは、コンサルタントの野村です。
団塊ジュニア世代の私にとって、2015年は、ミドルシニア世代の新たな潮流の始まりを予感させる年となりました。

ミドルシニアにおける新潮流

人材関連業界でビジネスをしている者にとって、ミドルシニアの区分は大きく3つと捉えられてきました。「シニア後半=50代後半」「シニア前半=50代前半」「ミドル=40代」という区分です。それが今年、いわゆる"バブル期入社"の第1号が50歳に達したことを機に、『次世代シニア』という新たな区分が誕生したのです。

65歳就業時代(今や、70歳でしょうか?)に突入した現在、大手企業を中心として、組織は未だシニア社員の活用を模索している状況が続いています。役職定年制の拡大や再雇用制度対象者の増加とは裏腹に、シニアの職域開発や評価体系のあり方(そもそも業績を評価対象にしていないケースもある)等、多くの人事担当者は試行錯誤の中にいます。貢献意識を求めながら、会社として彼らに明確な期待値を示せていないというジレンマを、私は数多くの現場で見てきました。こうした混沌の中で、組織のボリュームゾーンを占める「次世代シニア」が誕生したこと、さらに団塊ジュニア(現ミドル)という大きな塊へと続く様相を呈しているのです。

悩める上司

企業にとって、大きな塊であるこの層の活性化は経営上の大きなインパクトとなります。次世代シニアやミドルへの会社の期待はやはり、"最も業績貢献を求める"ということでしょう。しかしながら、働く個人の状況は、管理職でない層ほど成長実感を得られず停滞を感じており、年金受給の不確かさも踏まえると、将来収入面の不安から所属組織に出来る限り居続けたいという心理が高いことが、リクルートワークス研究所の調査からも明らかになっています。さらに、「ポストオフ」や「職能給から職務給への転換」といったトレンドは、この世代の組織内キャリア形成のあり様に大きな変化を及ぼしています。
こうしたことが、企業期待と個人期待の間に大きなギャップを生み出すことに繋がっていると考えられます。

キーワードは"役割創造"

こうした状況を打開することはできないのでしょうか?
私はそのキーワードを"自ら役割を創造する"ことだと考えています。

大企業の一般的なホワイトカラーにとって、(新卒入社以来の)企業内で総合職としてキャリアを形成していく意識が高く、ポストを上げることだけが成功というのが従来のあり方でした。

しかし、"キャリアの折り返し"というこれからにおいては、「より活躍するための働き方・能力開発のあり方を、会社任せではなく自分自身で決め、組織内での役割をつくっていく意識」こそ、重要になってくるのではないでしょうか?彼らは入社以来約20年、組織内において一定の育成・熟達期間を経てきた存在ともいえます。だからこそ、自らの専門性を意識的に構築していくことが後半戦キャリアの有効な戦略となり、ひいては"キャリアの満足感"につながると考えます。

ミドル・シニア

ミドル期以降のキャリアの考え方

こうした戦略を進めていく上で、有効となる「キャリア形成のSTEP」と「理論」があります。

まず「キャリア形成のSTEP」については、法政大学大学院 政策創造学科教授 石山恒貴氏による"人事権"と"キャリア権"という考え方をご紹介します(石山,2011)。新卒から30代までの「専門領域探索期」においては、会社から与えられた異動機会や実務を通したスキル開発が有効です。これは、個人の側に効果的に能力開発するための情報や専門領域の方向性を定めるための情報(能力や適性など)が十分に蓄積されておらず、むしろこの時点では情報の質・量ともに組織側が優位な立場にあるからです。この時期が「人事権によるキャリア形成STEP」であり、特定企業内で幅広い専門性が蓄積されていきます。

一方、「専門領域確立期」に入ってくるミドル期以降において、さらなる専門領域の深耕には、もはや特定企業内の範囲ではなく、組織外の人々との交流をはじめとした「越境的能力開発」や「社内外の複数のメンターからのフィードバックによる自らの市場価値の認知」といったことが重要なファクターとなってきます。この時期が「キャリア権によるキャリア形成STEP」と呼び、組織の壁を超えた交流を通して、より深みと磨きがかかった専門性が蓄積されていきます。

こうした2つのSETPでのキャリア形成が有効であることを裏付ける理論が、 "バウンダリーレス・キャリア" (Arthur, 1994 ; Arthur and Rousseau,1996)です。 従来のキャリア研究は2つの前提(①組織とは安定的である ②組織とは本質的に階層的である)から、個人にとって組織階層の上位に到達することがキャリア目標であるという仮説に立脚していました。

これに対して、バウンダリーレス・キャリアは、
「組織は安定的でも階層的でもないという前提のキャリア」
「個人は、組織の境界線の中に閉じ込められている存在ではない」
という理論であり、社内外の学びと機会を活かすという、今の環境変化の中におかれているミドルや次世代シニアのキャリア開発に必要な考え方といえるのです。
この理論は、以下の3つの要素に立脚したキャリア形成が有効であると提唱しています。

  1. Knowing Why:価値観は何か?
  2. Knowing How:獲得すべきスキルは何か?
  3. Knowing Whom:どのような人脈を築くか?

働く環境が大きく変化している今日、多くのミドルや次世代シニアにとってのキャリア戦略はまさに、「役割創造ができる自分磨き」といえます。それも会社内に限定して捉えるのではなく、社外も視野にいれた学びの場、活動の場、交流の場、まさに"キャリアのサードプレイス"をつくること、そしてそこで磨いたことを社内の仕事に還流できることが重要です。

図1:E・H・シャイン(1978)のキャリア・コーン

キャリア形成は、階層上位に到達することだけではありません。キャリア・コーン(*図1)でいう、「中心性*」を目指すことも、ミドルが目指すべき姿でもあると考えます。

*組織の中の個人が、組織の核へ向かっていくキャリアの動き。
フォーマルな肩書きの上昇や異なる職能分野への異動を伴わなくても、その分野でより大きなリーダーシップを発揮するポジションへ進んでいくことなど。

このような戦略を進めていくために、まずは個人が自らの強み持ち味や仕事への内的価値を認識し、キャリア・ビジョンを描き、そして新たな能力開発テーマを明確に定めることがベースとなります。ミドルや次世代シニア層にこうした機会を提供することこそ、企業組織としてできる有効な支援の一つとなるのではないでしょうか?

お知らせ

弊社では、こうした支援プログラムとして、「ミドル向けキャリアデザインセミナー」を多くの企業様にご提供しています。その効果を実感できる場を設けておりますので、是非、人事担当の方々にご体験頂ければと思います。

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記事を書いた人

コンサルタント/野村 圭司
人がキャリア(仕事人生・全人生)においてイキイキできることをサポートする場やプログラムを、ライフワークスのユニークなタレント陣と協働して創り上げ、常に期待以上の価値を提供します。

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