50代後半のキャリア

50代のキャリアの転機の一つが「定年」です。特に50代後半となるとこの人生の節目どうしても意識してしまい、場合によっては適応がうまく行かないということもあります。このコラムでは、コンサルタントの松田が企業、そして働く個人の視点から50代後半のキャリアについてお伝えします。

2015.08.03
コラム

こんにちは、コンサルタントの松田です。
私の友人(62歳)が、大学院で臨床心理学を学んでいます。彼の修士論文のテーマが「サラリーマンの定年前・定年後のキャリア意識」だと聞いたので、大変興味を持っているところです。60代にして学び続ける姿勢に学ぶところが大きいのはもちろんですが、「定年前・定年後のキャリア意識」というテーマが、ミドル・シニア社員研修を扱うコンサルタントである私の守備範囲と見事に重なります。そこで私自身も、「定年前・定年後のキャリア」について、少しまとめてみることにしました。

「定年前」と言うと、定年を目前にした1~2年をイメージする人が多いかと思いますが、今回は50代後半キャリアから始めて、広く捉えて考えていきます。

企業と個人、それぞれの立場から

雇用延長制度や年金の支給時期繰り下がりにより、多くの人が65歳まで働く時代になりつつあります。50代後半の始まりを55歳と考えるなら、さらに10年間働かなくてはなりません。55歳の社員の顔ぶれを思い出したときに、あと10年働けるであろう社員はどのくらいいるでしょうか。対応策が必要であると思った企業様から、10年間働き続けるための仕掛けとして、研修の依頼を頂戴しています。その内容は、ライフプランやマネープランはもちろんですが、仕事について深く考える時間を取ることが多いことが、傾向として見受けられます。

50代後半社員に対して、仕事について考えるときのキーワードは、「職域開発」です。しかし、50代後半社員に対して闇雲に「職域開発」と言ったところで、そうそう実践できるものではありません。企業の側としては、人材育成のテーマが「高付加価値の人材の確保・創造」である以上、50代後半社員という一定数の世代を除いて考えることはできません。そんな社員と企業の間にある溝を埋めるためには、社員が組織に必要とされる役割を主体的に考えること、さらに進めるなら、自分の役割を自分で「創造する」ことが必要ではないでしょうか。

社員に役割の創造を求めるときには、「生涯キャリア」の視点を持ってもらうことが、企業と社員の間にある溝を埋める際に、大きな助けになると思います。これまでも「働くこと」は、「幸せや生きがい」と深く関係すると考えられてきました。この先、70歳まで就業する時代も見えて来た中で、「働くこと」が人生に占める割合はさらに広がることでしょう。だからこそ、短期的な視点ではなく、より長い期間で考える必要があるのです。

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以上を総じて言えること、それはまさに藤原和博氏の言う「坂の上の坂」の世界です。ミドル・シニア人材を多く抱える企業では、このような特性を理解した上で、現在の課題を見極め、これらの世代に対峙する方法を模索していく必要があります。そして、ミドル・シニア世代の人たち自身も、変化の潮流にただ流されるさけではなく、うまく渡り合っていくための自律性が必要です。ミドル・シニア人材のキャリアは、企業と個人双方の取り組みによって形成されていく、そのことを私は強く感じています。

自分自身の課題として

先日、高齢社会研究で日本の第一人者である、東京大学の秋山弘子教授のセミナーに参加してきました。その中で秋山先生は、長寿社会の課題として、「個人の長寿化」と「人口の高齢化」という、2つの課題を挙げていらっしゃいました。そして、「個人の長寿化」により、「多様な人生設計が可能」となりますが、その結果ロールモデルが見つからないことが特徴であるとおっしゃっていました。

ロールモデル不在だからこそ、50代後半世代の人々は、自らロールモデルになる気概を持つことが必要です。そのことを前向きに捉えて、いざ取り組むのであれば、早いに越したことはありません。私自身もシニア世代ですので、ロールモデルを意識して業務に取組んでいるところです。

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