従業員エンゲージメントとは?高めるメリットや方法などを解説

従業員エンゲージメントは、従業員の離職率の低下やモチベーションの向上、さらには企業の業績向上にも関わる重要な指標です。近年、国内でも広く認知されるようになり、従業員エンゲージメントの向上に取り組む企業が増えてきています。

今回は、従業員エンゲージメントの概要や注目を集める背景、従業員エンゲージメントを高めるメリット、具体的な方法などをご紹介します。

2023.10.20
コラム

1.従業員エンゲージメントとは、企業に対する自発的な貢献意欲を表す指標のこと

従業員エンゲージメントとは、従業員が企業に対して抱く自発的な貢献意欲を表す指標です。
企業は従業員エンゲージメントを測ることで、従業員が持つ企業への愛着や思い入れ、信頼度を知ることができます。当然のことながら、従業員エンゲージメントが高ければ高いほど、企業にとって良い状態であるといえます。

2.従業員エンゲージメントの3つの要素

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従業員エンゲージメントは3つの要素で構成されています。従業員エンゲージメントの向上にあたり、それぞれの構成要素を理解しておくことは重要です。
ここでは、これらの3つの要素について、それぞれ詳しく解説します。

1)理解度

理解度とは、従業員が企業のビジョンや方向性を具体的に理解した上で、企業を支持しているかどうかを示す要素です。
従業員の、会社の方針に対する理解度が高い状態であると、企業が目指す方向と従業員が進む方向が重なりやすくなります。するとそこから企業への共感が生まれやすくなり、次第に従業員が当事者意識を持てるようになります。理解度を高めるためには、企業側が明確な経営方針・理念を従業員に説明することが重要です。

2)共感度

共感度とは、従業員が組織の一員であることを実感し、企業の理念や同僚に対して共感しているかどうかを示す要素です。
共感度を高めるためには、日頃から社内コミュニケーションを活発にし、従業員への企業理念の周知などに対するフォロー体制の構築を図ることが大切です。従業員の共感度が高まると、企業としての一体感が生まれていくでしょう。

3)行動意欲

行動意欲とは、従業員が組織の成功に向けて、自発的に行動を起こしているかどうかを示す要素です。
従業員の行動意欲を高い水準で保つためには、従業員が日頃から「組織に必要とされている」と感じられる環境の構築が重要です。成果に対する適切な評価や納得感のあるフィードバックを定期的に行うようにしましょう。

3.従業員エンゲージメントが企業に注目される背景

従業員エンゲージメントが企業に注目される背景には、どのようなことが挙げられるのでしょうか。
ここでは、従業員エンゲージメントが企業に注目されるようになった4つの背景について、それぞれ解説します。

1)組織と個人の関係性の変化

従業員エンゲージメントが企業に注目されているのは、組織と個人の関係性の変化が背景にあります。
かつての日本では、終身雇用という言葉に象徴されるように、ひとつの企業に入社したら、部署異動や転勤をしながら出世し、定年まで勤め上げるキャリアパスが一般的でした。
しかしながら、近年の激しい社会変化において、企業側も、従業員側も、かつての終身雇用型のキャリアパスが難しくなっていることを理解しつつあります。重ねて、環境を自ら選択することが以前に比べて当たり前になってきている中で、企業側はどのようにして従業員の離職を防ぎ、そして優秀な人を採用するのかという観点を、より真剣に考えていかねばなりません。そのような背景もあり、従業員エンゲージメントに注目する企業が増えていったといえます。

2)画一的なマネジメントスタイルの限界

従業員エンゲージメントが注目を集める背景には、従来の画一的なマネジメントスタイルが時代に合わなくなりつつあることも挙げられます。
仕事や働き方の価値観が多様化すると、モチベーションの源泉も多様になります。上司の働き方やキャリアが、必ずしも部下にとってのロールモデルではない現代において、「上司の背中を見せることで部下を育てる」などといった画一的なマネジメントでは、部下はついてきません。そのため、従業員の多様な力を活かすためにはどのようなマネジメントが必要なのかで悩む企業や管理職が増えています。
そのような状況を測る尺度のひとつとして、従業員エンゲージメントに注目し始める企業が増加しているのです。

3)コミュニケーションの非対面化

従業員エンゲージメントが企業から注目されるのは、コロナ禍に伴ってリモートワークが推奨され、コミュニケーションの非対面化が加速したことも背景にあります。
従業員と企業側とのコミュニケーションが極端に少ない状況が続くことによって、従業員は「企業から必要とされているのだろうか」「自分は企業から正当に評価されているのだろうか」などの不安を抱きがちになり、少しずつ従業員エンゲージメントが低下することがあります。従業員の予期せぬ退職を生まないためにも、企業は日頃から従業員とのコミュニケーション量を減らさない工夫や努力が必要なのです。

4.従業員エンゲージメントに似た言葉との違い

従業員エンゲージメントを正しく理解するには、混同されがちな言葉との違いをしっかりと把握することが大切です。
ここでは、いくつかの類似用語との相違点について、それぞれ説明します。

1)従業員満足度との違い

従業員満足度は、企業が従業員にとって居心地の良い空間であるか否かを示す指標です。ただし、あくまで従業員満足度は、仕事内容や職場、上司、企業自体などに対して、総合的な観点で満足しているか否かを測る指標です。一方、従業員エンゲージメントは、企業に対して自発的に貢献しようとする意思を指す指標である、という点に違いがあります。従業員満足度を高めることによって、従業員の定着率の向上はできるかもしれませんが、従業員満足度が高いからといって、企業の業績などが向上するわけではない点に注意が必要です。

2)モチベーションとの違い

モチベーションとは、従業員の動機づけを意味する言葉です。
従業員エンゲージメントは企業に対して自発的に貢献しようとする意思を指す指標であるのに対し、モチベーションは、従業員の心理状態全般を指すという点に違いがあります。仮に従業員のモチベーションが高く、仕事へのやる気に満ちあふれていても、必ずしも企業への愛着を持っているとは限りません。仕事は好きだけど、会社は好きではない、という状態も想定されうるのです。

3)忠誠心との違い

忠誠心はロイヤルティと訳され、上下関係に伴うつながりの強さを指す言葉です。かつての日本においては、伝統的に企業側の立場が強かったため、従業員の力が弱かった日本においては忠誠心が重視される傾向にありました。しかしながら、企業において忠誠心を重視しすぎてしまうと、企業と従業員の間に明確な上下関係ができてしまい、従業員自身の自発的な判断力や想像力が育たないというデメリットがありました。
一方、従業員エンゲージメントは企業に対して自発的に貢献しようとする意思を指す指標であり、企業と従業員との関係性において、両者は大きく異なるといえます。

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5.従業員エンゲージメントを高めるメリット

従業員エンゲージメントを高めることで、企業はどのようなメリットを得られるのでしょうか。
ここでは、従業員エンゲージメントを高める5つのメリットについて、それぞれ詳しく説明します。

1)個人の活性化

従業員エンゲージメントを高めるメリットは、従業員一人ひとりの活性化につながる点です。
従業員エンゲージメントが高まることで、一人ひとりが仕事にやりがいを感じやすくなります。従業員は働く意義を感じることができると、企業への貢献に努めるようになります。その中で、新しいことや困難なことでもチャレンジするようになるでしょう。また、モチベーションの高い状況が続けば、離職率が低下し、人材流出に歯止めをかけることも可能です。

2)組織の活性化

組織の活性化につながる点は、従業員エンゲージメントを高めるメリットのひとつです。
従業員エンゲージメントを上げることで従業員の組織に対する信頼度が上がり、従業員一人ひとりが自発的かつ積極的に仕事に取り組むようになります。併せて同僚との信頼関係も生まれやすくなるため、チームとしての力が増し、結果的に組織の活性化につながるのです。

3)業績の向上

業績の向上につながる点も、従業員エンゲージメントを高めるメリットです。
従業員エンゲージメントを高めることで、従業員一人ひとりが、自分の仕事に誇りを持って積極的に取り組めるようになります。そうすることで、企業が提供する商品やサービスの品質向上、最終的には企業全体の業績向上も期待できるでしょう。
なお、2018年に経済産業省が発表した「企業の戦略的人事機能の強化に関する調査(経営力強化に向けた人材マネジメントに関する提言および先進企業事例)」においても、従業員エンゲージメントのスコアが高い企業は、離職率や品質上の欠陥の割合が低く、業績指標が高いことなどが示されています。

4)顧客満足度の向上

顧客満足度の向上につながる点も、従業員エンゲージメントを高めるメリットです。
先述のとおり、従業員エンゲージメントを高めることで商品やサービスの品質が向上すれば、顧客満足度の向上にも直結します。また、顧客が企業に抱く信頼度も次第に高まっていくことでしょう。

5)離職率の低下

従業員エンゲージメントを高めることで、離職率を低下させる効果も期待できます。
転職を含めた退職の引き金になるのは、「仕事にやりがいを感じない」「経営方針に共感できない」などの不満要素です。従業員エンゲージメントを高めることによって、企業に対して自発的に貢献しようとする意思が高まれば自ずとこれらの不満が払拭され、帰属意識を高めることにつながるのです。

6.従業員エンゲージメントを高める方法

従業員エンゲージメントを高めるために具体的に行える施策としては、主に下記の7つがあります。
ここでは、これらの方法について、順番に解説していきます。

1)企業理念やビジョンを浸透させる

企業理念やビジョン浸透に努めることが、従業員エンゲージメントの向上につながります。
従業員が企業の方向性を理解し、共感を抱いているほど、従業員が持つ企業への貢献意欲は強くなります。そのため、企業が掲げる理念やビジョンを明確にし、常日頃から従業員への浸透を念頭において、伝えることが大切です。

2)従業員が納得できる人事評価制度を取り入れる

従業員エンゲージメントを高めるためには、従業員が納得できる人事評価制度を取り入れることも大切です。
どれだけ働いても正当な評価を得られない職場では、組織に貢献しようというモチベーションも湧きません。そのため企業側は、自社の人事制度が公平性・透明性の高い制度になっているか、また従業員が納得のいく運用ができているかなどを確認し、必要に応じて定期的な改善を図ることが有効です。

3)承認・称賛の文化をつくる

企業内に承認・称賛の文化をつくることで、従業員エンゲージメントを高めることができます。
「一個人として、尊重されている」と従業員が強く感じることができればできるほど、企業側からの期待に応えたいという気持ちが高まり、企業への貢献意欲も増幅するでしょう。
このような企業文化を形成するためには、上司は部下の意見をすぐに否定するのではなく、まずは受け止め、良いことはどんどん承認するという姿勢を取ることが大切です。また、社長賞やMVPなどの社内表彰を行うことも効果的です。

4)キャリア開発を支援する

従業員のキャリア開発支援は、従業員エンゲージメントの向上にもつながります。
自己の成長を実感できる職場であれば、「もっとここで働きたい、貢献したい」という気持ちが生まれやすいといえます。そのため、企業が従業員一人ひとりの成長を支援することは、従業員エンゲージメントの向上を狙う上で効果的なのです。また、新人研修はもちろんのこと、キャリアデザイン研修や階層別研修など、従業員のキャリア開発に役立つ研修を定期的に開催することも大切です。

5)社内コミュニケーションを活性化させる

従業員エンゲージメントを高めるには、社内コミュニケーションを活性化させることも大切です。
従業員同士が互いに、「いっしょに働いているけど、人となりはよくわからない」などと感じている状態では、同僚を信頼できず、組織への愛着も持ちづらいでしょう。そのため、従業員同士の関係性向上を目的とした社内コミュニケーションを活発にさせることが重要なのです。具体的な施策としては、感謝の気持ちを送り合うサンクスカードや定期的なランチミーティング、社内SNSの有効活用などが効果的でしょう。

6)上司のフィードバック能力を高める

上司のフィードバック能力が高まることで、従業員エンゲージメントも向上します。
従業員が「正当に評価されている」と感じられるか否かは、日頃の上司から部下へのコミュニケーションや伝え方などが左右します。そのため、上司一人ひとりがフィードバックの重要性を理解し、スキルを高めることが大切なのです。
具体的には、管理職に向けた評価面談研修などもひとつの手段であり、そうすることで上司のマネジメントスキルの向上にもつながるでしょう。

7)働き方の選択肢を増やす

従業員エンゲージメントを高めるためには、働き方の選択肢を増やすことも大切です。
価値観が多様化する今、育児や介護、また大学院・MBAなどのさまざまな場所での学び、副業などと両立しやすい環境が企業に求められています。残業の削減に加えて、フレックスタイム制導入などによる勤務時間の見直し、有給休暇の計画的な付与、ノー残業デーといった施策を通じて、働き方の選択肢を増やすことが重要です。このように従業員が働く環境を整えることが、結果的に従業員エンゲージメントの向上にもつながるのです。

7.適切な施策を行いながら、従業員エンゲージメントを高めよう

従業員エンゲージメントは、従業員が企業に対して抱く自発的な貢献意欲を表す指標です。理解度、共感度、行動意欲の3つの要素からなる従業員エンゲージメントを高めることで、企業は個人や組織全体を活性化でき、顧客満足度の向上や離職率の低下などにもつなげることができます。従業員エンゲージメントを高めるためには、企業理念やビジョンを浸透させたり、適切な人事評価制度を設置したり、働き方の選択肢を増やしたりするなどの施策を実施しなければなりません。従業員エンゲージメントを高めるためには、企業の状況に合った適切な施策を行うことが重要です。

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この記事の編集担当

黄瀬 真理

黄瀬 真理

大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。

国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定

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