ダイバーシティ実現のために企業が抱える課題とは?具体的な成功例と課題解決方法

近年、経営戦略の一環として「ダイバーシティ」を掲げる企業が増えてきました。
しかし、これまで「日本人男性」を中心とした同質性の高い組織だった日本企業が、多様な人材・価値観を受け入れるダイバーシティの取り組みを進めるなか、課題も浮上してきています。
本記事では、ダイバーシティをどのように企業価値向上につなげていくかというテーマについて、実際のダイバーシティ経営の成功例をもとに解決策をご紹介していきます。

2022.02.28
コラム

ダイバーシティとは?

ダイバーシティ(Diversity)とは、直訳すると「多様性」という意味です。ビジネス領域では、性別や年齢、人種・国籍、障がいの有無などのさまざまな違いを受け入れ、一人ひとりの能力を最大限引き出すことを指します。

「ダイバーシティ経営」「ダイバーシティ・インクルージョン」と表現されることもあります。

ダイバーシティ経営が必要な理由

日本は労働人口減少が加速しています。2005年まで1億人以上いた生産年齢人口(15~64歳)は2030年には6,773万人になると推計されており、約3,000万人減ります。これは、オーストラリアやヨーロッパ小国の人口に匹敵する数です。

人手不足はまったなしの状態であり、日本企業は今後、ジェンダー、年齢、国籍、文化的背景などにとらわれず、多様な人材の力を活かすことが必須でしょう。

現代は、VUCA時代と呼ばれるような予測不能な時代です。世界に目を向ければインド、アフリカの爆発的人口増加もあり、グローバル市場はさらに大きく変化していくでしょう。多様な人材が能力発揮できる環境を創り、企業としての新たな価値創造に繋げ、競争力を高め続けていくことが重要です。

ダイバーシティ実現で得られる効果・メリット

ダイバーシティ経営のメリットには以下があります。

優秀な人材の採用、定着に繋がる

多様な人材が活躍できる環境をつくるためには、制度や仕組みなどを見直すことが必要になります。軟な働き方の実現により定着率が上がるほか、外部の人材を引き寄せる魅力にもなります。

新しい発想からイノベーションが生まれる

多様な人材が集い、価値観がぶつかることによって、社内が活性化します。これまでにない発想・アイデアによる新製品・新サービスの開発にも期待が持てます。

モチベーションや貢献意欲が高まる

多様な人材が能力を発揮できる環境が整備されることで、社員全体のモチベーションが向上し、組織への貢献意欲向上にもつながります。

企業の評価が向上する

近年は、マッキンゼー&カンパニー、BCGなどが実施した世界的な調査により、ジェンダーや文化的な多様性(外国人比率)が高い企業は生産性が高く、イノベーションが起こりやすいという結果が公表されています。ダイバーシティ推進によりブランドイメージが向上し、取引先や国内外の投資家からの信頼を獲得できるでしょう。

ダイバーシティ実現へ、企業が抱える課題とその解決方法

ダイバーシティ推進の取り組みが本格化するなか「なかなか成果が上がらない」「取り組みが進まない」企業も増えています。主な課題と解決方法は以下のとおりです。

課題1/シニア社員の活躍

ボリュームゾーンでもあるシニア層の活躍・活用は、企業にとって喫緊の課題です。年功制度から成果を反映する制度への変更などとあわせて、シニア社員が自らキャリアを考える意識を持つ支援と、役割を発揮する機会づくりが大切です。

研修等を通して、シニア社員に企業の成長を支える人材として長く活躍してほしいという期待を伝え、「今さら」ではなく「今から」キャリアを自ら形成する意識を持ってもらうことが重要です。ここでは、活躍を促進できるように整備した制度と研修を効果的に連動させた事例をご紹介します。

事例:制度と意識醸成の研修を連動させ、50代社員の挑戦を後押し-「日清食品ホールディングス株式会社」

「年功主義」から「発揮能力主義」の人事制度への改革を進めるなか、特に非管理職シニア社員のモチベーション向上が図りづらいという課題がありました。その対策として、2018年度より「公募ポスト応募年齢制限(52歳まで)」において年齢・等級の制限を撤廃。あわせて営業部門のシニア社員向けにキャリア開発研修を実施しました。研修では、社内・社外両方を含む広い視野に立って自分の可能性を見つけてもらえるような要素を取り入れました。その結果として、研修受講者から5名が社内公募制度に応募し、選考を経て2名が新たな役割での活躍機会を獲得する成果につながっています。

対象 52歳以上の非管理職と営業職の社員(希望者)
内容 環境変化の認識、自身が提供できる価値の明確化、キャリア資産の棚卸し、社内外両方を含む視野での可能性の検討、キャリアの軸の言語化などを実施。その上でこれからのキャリア実現計画を立案しました。

本施策により、営業部門から物流部門の公募に応募し、新たな役割を得て挑戦し始めた方がいます。インタビュー記事は、こちらからご覧いただけます。
キャリア開発研修をきっかけに社内公募に応募。長年の営業経験で培った視点を未経験の流通業務で活かす

【関連情報】
シニア活躍事例集
そのほか、定年延長への対応、シニア社員へのキャリア研修・キャリアコンサルティング、職域開発などにご興味ある方は、以下の事例集をご活用ください。

課題2/女性の活躍・活用

女性活躍推進法に基づく取り組みをはじめ、業界ごと、企業ごとの実情に応じて取り組みを始めていくことが重要です。当事者だけではなく、意識の変革を組織全体で進めていくという発想で進めることが不可欠です。

男女雇用機会均等法以降、多くの業界で女性活用が進みました。しかし、管理職の女性比率は諸外国に比べてかなり低い数値です。また、近年、企業が女性の管理職登用に熱心になったものの、取り組みの進捗状況は様々です。

  • 女性管理職のロールモデルが少なくイメージがわかない
  • 自信の無さや漠然とした不安から積極的な役割発揮に躊躇してしまう

というよくある課題について、どのように対策すればよいでしょうか?
ここでは、女性活躍支援の事例をご紹介します。

事例1:女性活躍推進に向けた委員会の設置、育児休業制度の拡充 - 住友化学株式会社

2010年に女性活躍推進やワーク・ライフ・バランスの推進について、労使双方で意見交換をする委員会を設置。「女性リーダー創生塾」「メンター制度」などを実施するほか、事業所内保育所の設置、育児休業期間の拡充に取り組みました。
2019年の社内意識調査では77.2%が「当社では出産・育児や介護をするうえで、働きやすい制度や環境が整備されている」と回答。2020年には、男性社員の育児休業取得率60%を超え、2021年時点の課長職以上の女性比率は6.3%に上昇しています。

関連記事はこちら:「住友化学株式会社」の事例

事例2:スーパーフレックスと在宅勤務制度の併用 - アサヒグループホールディングス株式会社

2014年時点ですでに女性離職率 1.03%、既婚率 49%、ワーキングマザー率 31%と女性が働きやすい環境は整っていたものの、役員・管理職比率が低いという課題がありました。2015 年より「女性リーダー研修」「スーパーフレックスと在宅勤務制度の併用制度」を開始。男女を対象としたダイバーシティに関する情報発信サイトを開設しました。取り組みの結果、2020年時点で女性管理職比率15.5%、女性社内役員1名、女性社外役員2名という成果につながっています。

関連記事はこちら:「アサヒグループホールディングス株式会社」の事例

事例3:異業種交流会

各企業から選ばれた30歳前後の女性社員が、他社の女性社員との交流を通して、リーダーとしてのキャリアビジョンを得ることを目的とした、交流会の取り組みです。
各企業では、視野の拡大やリーダーとしての一段高い視点の獲得を期待して、異業種交流会に参加する女性社員を選定。他社の女性社員とのディスカッションを通して視野が広がり、その刺激がキャリアを前向きに考えるきっかけになったという成果に繋がりました。

関連記事はこちら:異業種交流会の事例

課題3/障がい者・外国人の活躍

ダイバーシティとは障がいの有無、国籍の違いによらず従業員に能力を発揮してもらうことも意味します。特に日本ではこれまで就職弱者になりがちだった障がい者、外国人層に、まだまだ力を活かせる人材が多数存在すると言えます。他社に先がけて採用し、力を発揮してもらう環境づくりをすることが、企業の競争力向上につながるでしょう。

テクノロジーの進歩により、障がい者が担当できる業務範囲は広がっています。また、グローバル化によって、中小企業であっても、世界の競合企業と戦わなくてはならないのはご存知のとおりです。ここでは、障がい者・外国人の活躍促進した事例をご紹介します。

事例1:障がい者の適性に見合った業務創出で収益性向上を実現 - コクヨ株式会社

昔から障がい者雇用に熱心に取り組んでいましたが、近年は雇用自体が目的化するという課題がありました。対策として、個々の障がい者の特性や状態、スキルや資質に応じて適切な業務を任せ、更なる能力発揮が期待される場合には、新たな業務に挑戦してもらうなどを行いました。あわせて、学び直しのためのフレックス勤務の適用や在宅勤務の導入など、柔軟な勤務形態や制度を導入しました。
その結果、ユニークな新製品の開発が生まれるなどの成果が見え始めています。自身の能力やスキルに応じた業務で活躍する場を得られたことで、障がい者自身のモチベーションが高まったという効果もあり、個人の業務範囲が拡大しつつあります。

関連記事はこちら:「コクヨ株式会社」の事例

事例2:社内での公用語を英語に、外国人採用などで世界と勝負する企業へ - 楽天株式会社

2010年から社内公用語を英語に統一。あわせて国籍や文化、性別などダイバーシティに配慮した環境の整備を進めてきました。その結果、世界中から優秀な人材を採用でき、2014年入社の開発職の8割以上は外国籍です。社内には、国籍問わず積極的にコミュニケーションをとるカルチャーが醸成されました。海外グループ企業との一体感が増し、世界各国の企業との競争に、一丸となって挑める体制が整いました。

関連記事はこちら:「楽天株式会社」の事例
(引用:mitsucari「外国人採用における企業事例とは?成功した事例から学びを得よう」) 

まとめ

人材の採用や育成、企業の成長に必要不可欠といわれるダイバーシティ。国籍、ジェンダー、価値観などの多様な人材が組織で力を発揮するダイバーシティを推進することには様々なメリットがあります。

一方、新たな経営方針を進めれば課題も浮上します。ダイバーシティを進める上での課題を適切に捉えながら、制度変更、社員の意識醸成、仕組みづくりをおこなっていきましょう。

そのためには、経営がダイバーシティにコミットし、リーダーシップを発揮することが重要です。ダイバーシティ経営を推進する企業として社外にメッセージや取り組み事例を発信しましょう。また、社内でもダイバーシティ経営を進める目的や意義を共有することが大切です。社内外に一貫したメッセージを発信し続け、取り組み続けることが、ダイバーシティ経営の成功につながります。

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