人材育成に向けた研修とは?種類や進め方、成功のポイントなどを解説

会社が従業員に対して行う研修のひとつに、人材育成に向けた研修があります。人材育成に向けた研修は社内で行われることも社外に委託することもありますが、いずれにせよ、目的は会社の目標達成に必要な人材の育成です。まずは、会社の目標と現状のギャップがどこにあるのかを確認し、課題を見つけるところから始めましょう。

今回は、人材育成に向けた研修の種類や具体的な進め方、成功のためのポイントなどを詳しく解説します。

2023.07.11
コラム

1.人材育成の目的

人材育成の目的は、会社の経営目標を達成することです。
会社を構成する従業員一人ひとりが、経営目標の達成につながるスキルを保有していることは、組織にとって重要なポイントです。このスキルの保有のために重要なのが人材育成です。一人ひとりの能力向上を通して、組織全体の生産性向上や組織力アップを目指しましょう。

そのための人材育成の方法のひとつが研修です。会社の経営目標達成につながるよう、従業員に必要なスキルや経験などの習得を目的として行います。人材育成の研修は、人材開発のための研修と混同されることもあります。しかしながら人材開発の研修は、ビジネススキルや業務に対するモチベーションを高めるために実施し、仕事の質を高めることを目的に行う研修です。

人材育成に向けた研修の種類

人材育成に向けた研修は、対象となる人材別にカテゴライズできます。対象となる人材に、必要な内容を網羅した教育を適切なタイミングで与えることが大切です。
ここでは、新入社員、中堅社員、管理職のそれぞれに対して、どのような研修を行うべきなのかをご紹介します。

1)新入社員研修

新入社員研修とは、新入社員に対して行う、社会人としての基礎的なマナーや知識、マインドを育てるための研修です。
社会人として最低限知っておくべき基礎知識や、学生から社会人になるにあたってのマインドチェンジは、すべての新入社員に共通して必要な要素です。新入社員研修では、今後の働き方や社会人として求められる振る舞いを伝えます。

また、近年では、SNSの使い方やデジタル化された業務データの扱い方についても学ぶ必要があります。新入社員が何気なく行ったことで会社全体のブランドが毀損されるようなことがないよう、何に注意すべきなのか、どんな事態を引き起こし得るのかを教えましょう。

内定から担当部署への配属が完了するまでの間に、下記のタイミングで研修を行うのが一般的です。

<内定から担当部署への配属完了までの流れ>

  1. 内定
  2. 内定研修(職場見学、ビジネスマナー、自社理解など)
  3. 入社
  4. 導入研修(ビジネスマナー、セルフマネジメント、ロジカルシンキングなど)
  5. 担当部署への配属
  6. OJT研修(業務の実践など)
  7. フォローアップ研修(不安解消、目標達成状況の確認など)

新入社員同士の横のつながりを作ったり、切磋琢磨したりするために、ロールプレイングの要素を取り入れた研修を織り交ぜるのも効果的です。座学のみでは聞き流してしまう内容も、実践を意識してできる研修なら身に付きやすいでしょう。

2)中堅社員研修

中堅社員研修とは、将来管理職になることを期待される中堅社員に対して、社員と管理職の間に立って調整を行う役割を担うためのスキルや能力を身に付けさせる研修です。

入社して間もない社員は、自分の成績を上げることや目標を達成することに主眼を置いて働きます。一方、中堅社員には、周囲のメンバーに管理職の意向を伝えたり、意見をまとめたりする能力が求められます。そのため、管理職と社員の橋渡し役としての能力が期待されます。まずは、中堅社員として何を求められているのか、役割の正しい把握から始める必要があるでしょう。

中堅社員研修では、下記のような学習を行うことが多くあります。

<中堅社員研修で行う内容(一例)>

  • 役割認識やマインドチェンジのための研修
  • 部下へのコーチングのための研修
  • リーダーシップ研修
  • 問題発見・解決のための研修
  • プレゼンテーション研修
  • コミュニケーション研修

3)管理職のマネジメント研修

管理職のマネジメント研修とは、会社内で一定の権限を持つ従業員である管理職に対して、部下のマネジメントや経営に関する知識などについて学習させるための研修です。

また、昨今、働く人やその価値観が多様化するなかで、管理職に求められるものも年々変化しています。変容していく社会の価値観に対して常にアンテナを張り、絶えず知識をアップデートしていくことも求められるでしょう。

管理職のマネジメント研修では、下記のようなプログラムで学習を行います。

<管理職のマネジメント研修で行う内容(一例)>

  • 管理職研修
  • リーダーシップ研修
  • マネジメント研修
  • ダイバーシティ研修

3.人材育成に向けた研修の設計方法

ここで前提を考えてみましょう。研修を実施する前に、まずは人材育成の方針を定めることが大切です。その上で、掲げた方針に沿って、目指す目標や、そこに向けた施策など、人材育成に向けて必要なことを総合的に整理します。研修を行う場合の設計方法を下記のフロー図をもとに説明します。

まずは誰に、どのような研修を実施すべきなのかを検討し、目的に応じた内容を決定しましょう。
ここでは、人材育成の研修の設計方法について6つのステップに分けて解説します。

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1)研修の目的を明確にする

研修は課題解決のために行うものです。そこで、まずは自社が抱える課題を明確にします。
そのためには、会社の方針や目標と、現状のギャップを確認する必要があります。どのようなギャップがあり、なぜギャップが発生しているのかがわかれば、目標達成を妨げている原因も見えてくるはずです。これが、自社の持つ課題です。

課題が明らかになったら、研修を活用してどのように課題を解決するのかを考えます。
当たり前のことですが、ただ研修を実施するのみでは、課題を解決することはできません。課題解決につながる第一歩として、研修をどのような目的で行い、どういった成果を狙うのかをあらかじめ明確にしておくことが必要です。

2)研修担当者を決定する

研修の目的を明確にしたら、次は研修担当者を決定しましょう。
研修を行う際は、スケジュールの調整や対象者の選定、研修内容の企画などを行う担当者を決めなければいけません。これは、研修を社内の従業員のみで企画して実施する場合も、研修会社に外部委託する場合も同一です。

3)研修の手法を決定する

研修担当者が決まったら、次は研修の目的や従業員が抱える課題に合わせて、適切な研修方法を決定しましょう。
例えば、現場で実務を学ぶOJTと、座学で知識を身に付けるOFF-JTでは、適した対象者や学習内容が異なります。新入社員研修や管理職研修などはOFF-JTが適していますが、中途採用者を対象とした実務研修にはOJTが効果的です。

4)具体的な研修内容を決定する

研修の目的と参加者のレベルに合わせて、具体的な研修内容を決めます。
研修の難易度は、簡単すぎても意味がありませんが、難しすぎると参加者が理解できずにモチベーションの低下を招くおそれがあります。難しい内容はワークを取り入れてわかりやすく解説する、興味を持ちやすい説明を行うといった工夫も効果的です。参加者の現状を把握した上で、慎重に検討しましょう。

5)研修を実施する

研修内容を決定したら、いよいよ研修を実施します。
研修を行う際は、まず、研修の目的や狙いを参加者に理解してもらうことが重要です。事前に目的などの案内をしていたとしても、全員が理解・納得しているとは限りません。そのため、研修前に、これからの時間が何のために設けられているのかを伝えることが大切です。こうすることにより、参加者が同じ目的に向かって学べるようになります。

目的意識の重要性は、OJTであっても同様です。これから行う業務が何のために行われるのか、どのような業務をこなせるようになってほしいのかを最初に明らかにしておくことが重要です。

また、研修中は、参加者が無理なく学んでいけるよう、タイムマネジメントなどを行うことが大切です。予定したカリキュラムを無理なく進めるとともに、参加者が置き去りにされることがないように目を配り、必要なサポートを行うことも重要です。OJTでも、教わる側の不安や不明点をそのままにしないよう、注意して進めましょう。

6)研修を振り返る

研修を行った後は、必ず振り返りの時間を設けましょう。
研修を実施しただけで終了してしまうと、学んだことがその場限りになってしまう可能性があります。研修参加者が研修を通じてどのようなことを学んだのか、振り返りの時間を設けることが大切です。外部から教えられた知識をあらためて自分の言葉で発信したり活用したりすることで理解を深めることができ、また研修で気づいた課題や課題解決のために何をすべきかを考えることで、今後につなげやすくなります。

同時に、研修実施者も報告書を作成します。次の研修をより良いものにするために、研修内容と参加者の反応、改善点などをまとめておくことが大切です。

4.適切な人材育成が会社の目標達成につながる

会社の業績を底上げし、目標を達成するためには、効果的に人材育成を進めることが重要です。まずは、自社の目標達成を妨げる課題が何なのかを確認し、それをクリアするための人材とはどんな人物なのかを検討するところから始めましょう。人材の成長は会社の成長に直結します。会社の目指すビジョンを叶えるために、計画的に人材育成を行っていくことが大切です。

株式会社ライフワークスでは、従業員のキャリアにおける課題を明確にし、解決に向けたソリューションをご提案しています。
ぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事の編集担当

黄瀬 真理

黄瀬 真理

大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。

国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定

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