OJTとは?意味や目的、効果的な実施方法や指導法、研修について解説

OJTは、多くの企業の新入社員研修でも採用されている、ビジネスシーンでよく知られたトレーニング方法です。上司や教育担当者がトレーナーとなり、現場で実践的な訓練を積ませます。新入社員の即戦力化に有効な手法ですが、指導法を誤ってしまうと、OJTで期待できる効果を十分に得られないことがあります。

本記事では、そんなOJTを効果的に実施するための3つのポイントを解説します。新入社員育成を任されている企業の人事担当者様は、ぜひお役立てください。

2022.06.22
コラム

OJTの定義

初めに、人材育成の手法のなかでも代表的な「OJT」について解説します。指導法の特徴や、集合研修の「OFF-JT」との違いについても触れるため、基本を確認しておきましょう。

OJTとは

OJTとは「On the Job Training」の略称であり、職場内で実施される実践型の職業訓練のことを指します。現場で実務に携わりながら、マンツーマン指導で必要なスキルや知識を身につけさせるのが、教育方法の特徴です。トレーナーの役割を担うのは、上司や同じ部署の教育担当者である先輩社員などです。指導者が初めにやり方のお手本を見せてから、次にトレーニーが実践するというサイクルを繰り返すことが、OJTの基本的な取り組み方です。OJTによる研修では、実際の業務内容を教わりながら仕事の流れに慣れたり、働くうえでの心構えを身に着けたりすることが重視されます。

OJTとOFF-JTの違い

OJTとは「On the Job OJTの反対の意味を持つOFF-JTは、「Off the Job Training」の略称です。OJTが実践型の職業訓練であるのに対して、OFF-JTは職場を離れた学習のことを指します。たとえば、セミナーや研修などの座学のほか、ロールプレイングなどの研修内容はOFF-JTに該当します。なお、ロールプレイングとは、実際のケースを想定して従業員に多様な役割を演じさせ、問題の解決方法を会得させる学習法です。OFF-JTによる研修では、社会人としてのルールや業務に対しての基礎知識を身につけることが重視されます。

OJTのメリットとデメリット

なぜ、OJTによる研修は新入社員に有効な育成方法として多くの企業で採用されているのでしょうか。また、OJTの研修方法ではどのような問題点に注意すべきでしょうか。ここでは、人事担当者が押さえておきたいOJTのメリット・デメリットをご紹介します。

メリット

  • 新入社員の戦力アップ
    OJTは現場で実践的な訓練を積む仕組みとなっているため、新入社員が即戦力になりやすい点で注目されています。新入社員は、課題解決力などのスキルを上げることによって、仕事に対するモチベーションを向上させやすくなるでしょう。また、早期から現場で組織の一員として業務に貢献している実感が湧きやすいので、組織への定着を促す効果も期待できます。
  • 教育担当者(トレーナー)の成長と育成ノウハウの蓄積
    OJTの教育手法を採用すると、教育担当者(トレーナー)は多くの新入社員が業務で苦戦する箇所を把握できるようになるため、教育担当者(トレーナー)自身の成長にもつながります。さらには、指導を担当する中堅社員や管理職は、新人教育のノウハウが年々アップデートされていきます。採用時に現場へ意見を求めれば、次回の募集ではどのような人材を採用するべきか、判断の参考になるでしょう。
  • 即時のフィードバック実施
    OJTの教育訓練ではフィードバックまでのタイムラグが少ないのが特徴です。教育担当者(トレーナー)はその場で部下や後輩へ必要事項や注意点を共有して、効率的に教えることができます。指導を受ける側の新入社員(トレーニー)にとっても、自分の行動を忘れないうちに具体的なフィードバックを得られるので、内容を理解して改善しやすくなるでしょう。こうした背景からOJTは効率良くインプット・アウトプットできる手法といえます。
  • 既存社員との人間関係の構築
    OJTを通して教育担当者(トレーナー)と新入社員(トレーニー)が職場でともに働くと、コミュニケーションを取る機会を増やせます。面談やミーティング以外の場面でも気軽に質問や相談ができるので、社内コミュニケーションの活性化につながるというメリットもあります。初期段階での信頼関係の構築やコミュニケーション量の確保は、以降のモチベーション維持やチームの協調性にも関係するといわれ、部下育成で重要なポイントです。
  • 座学では伝えきれないスキルの伝達
    OJTでは、座学やロールプレイングでは伝えきれない、実践的なシチュエーションだからこそ身につくスキルまで教えられます。たとえば、マニュアルや資料のみではカバーできない、経験によるコツや応用的なスキルなどはその一つです。OJTのプログラムは、こうした重要性の高い知識やスキルを効率良く教えるのに最適な手法だと考えられています。

デメリット

  • 教育担当者(トレーナー)の能力によって指導の質に差が出る
    OJTの効果は、担当者の経験値や知識によって指導内容にムラが生じやすいのが難点です。教育担当者(トレーナー)個人の指導力不足が原因で、人材開発に失敗する可能性も考えられます。ただし、こうしたデメリットは事前にOJT計画書を作成することで防ぎやすくなります。ぜひ後述する計画書の活用をご検討ください。
  • 知識を体系的に学びづらい
    OJTでは実際の業務を通して学ぶので、教育が局所的かつ短期的になるリスクがあります。指導内容が現場任せになり、リーダーや教育担当者(トレーナー)に負担が集中してしまうことも。会社全体での管理やフォローが疎かになる事態を避けるためにも、教育制度の成功へ向けて組織的に取り組みましょう。

OJTをより効果的に実施するための3つのポイント

OJTの育成手法による効果を最大化するには、「意図的」「継続的」「計画的」の3つのポイントが重要となります。新人研修による戦力化やスキルアップを推進するために、以下の要素や留意点を意識して、成果につながる研修を実施しましょう。

放置せずに意図的にOJTを行う

OJTとは育成の手法であり、トレーニーを放置して自主的に学んでもらうこととは異なります。教育担当者(トレーナー)は対象者の放置を避けて、意図的に育成を行うよう心がけましょう。

指導の際は、相手への伝え方次第で印象が大きく変わり、新入社員(トレーニー)のモチベーションの維持に違いが出ます。具体例を挙げると、「やっておいて」と言われた新入社員(トレーニー)は放置されたように感じ、一人で作業を済ませなければいけないと受け取るおそれがあります。一方で、「やってみよう」と言われた新入社員(トレーニー)は、必要に応じて先輩社員の助けを得られると感じられるでしょう。

OJTにおける指導を放置と捉えられないようにするためには、以下の「Show→Tell→Do→Check」のフローをたどるのがポイントです。

Show:お手本を見せて手順を伝える
Tell:注意点やコツを口頭で伝える
Do:実際にやってもらう
Check:評価や改善点をフィードバックする

トレーニーがPDCAサイクルを回し、改善を繰り返しながら次のステップへと進めるように、教育担当者(トレーナー)がしっかりと見守りを行いましょう。

継続的に行う

企業内にOJTを取り入れたら、その後は継続的に施策を実行し、一度きりの実施とならないように注意が必要です。一般的に、OJTは継続することで新入社員(トレーニー)の育成効果を上げやすいと考えられているためです。繁忙期や人手不足などを理由に育成に時間がかけられない場合は、OJTの実施が単発になってしまうおそれがあります。リソース不足が懸念される際には、社内全体でバックアップをするといった対策が必要です。

事前にOJT計画書を作成する

OJT実施時は、あらかじめOJT計画書を作成して、新入社員(トレーニー)を放置しない体制を整備しましょう。OJT計画書を作成しないと、トレーニーが単発で発生した業務を場当たり的に行う働き方が続きやすく、全体の業務説明が疎かになりがちです。OJT計画書は教育担当者(トレーナー)が新入社員(トレーニー)の理解度を把握する基準にもなるため、ぜひ作成をご検討ください。

OJT計画書の活用法

OJTの取り組みを成功させるには、自社の育成計画に即した「OJT計画書」を作成することが大切です。新入社員(トレーニー)研修に期待される研修効果を十分に引き出し、能力開発の目標達成へと導くために、OJT計画書を適切に活用しましょう。

達成目標と実施計画を明確に記載する

OJT計画書の書き方では、まず目標設定が重要となります。特に、どのようなスキルを身につけさせるかを示す「達成目標」と、どれくらいの期間を使ってOJTを行うかを示す「実施期間」は、必ず記載しましょう。行き当たりばったりの育成にならないためにも、まずはこれらの項目の設定が必須です。

フィードバックを実施する

OJT計画書を作成することに加えて、計画書に沿って新入社員(トレーニー)が成長できているのか、定期的なフィードバックを行うのもポイントです。その際は、新入社員(トレーニー)側に着目するだけでなく、教育担当者(トレーナー)側の評価方法や指導方法も設定しましょう。指導者へのフィードバックが、OJTにおける指導の質や生産性を高めることにつながります。

計画に改善点が見つかればブラッシュアップをする

一度作成した計画書は、OJTを実施して改善点が見つかった場合、内容を柔軟に修正すると良いでしょう。繰り返しのブラッシュアップで、自社に適したOJT計画書に仕上がります。OJTの質が向上し、育成ノウハウを構築しやすくなるでしょう。既存社員の業務効率化やコスト削減に寄与する可能性もあります。

OJTによる新人研修を成功へ導くために

今回は、OJTの目的やメリット、効果的に行うための3つのポイントについて解説しました。OJTは新入社員(トレーニー)を即戦力として育成するのに適した指導法です。効果的に実施するには、事前に自社に適したOJT計画書を作成し、教育担当者(トレーナー)側が「意図的」「継続的」「計画的」に施策へ取り組むことが重要です。また、人材育成へのフィードバックやブラッシュアップを繰り返し、改善を重ねることでさらに効果を高められます。本コラムでお伝えした情報を参考に、現状の教育制度を改めて見直してみてはいかがでしょうか。

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この記事の編集担当

黄瀬 真理

黄瀬 真理

大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。

国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定

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