キャリアマネジメントとは?進め方や具体的施策などを解説

時代の変化に対応し、業績を上げていくためには、従業員のキャリアマネジメントを適切に行うことが大切です。キャリアマネジメントは、従業員の能力の底上げや優秀な人材の確保につながります。従業員にとっては、みずからの目指すキャリアを実現する方法を考え、実行することで、働き方の指針を得られるでしょう。

今回は、キャリアマネジメントの意味や進め方、具体的に企業が行うべき施策などを解説します。

2023.06.05
コラム

1.キャリアマネジメントとは将来のキャリアの目標達成に向けて実行すること

キャリアマネジメントとは、将来のキャリアの目標を定め、それを叶えるための計画を立てて実行していくことです。環境に任せてキャリアを築いていくのではなく、キャリア上の目標を自ら定め、達成のための道筋を考えながら計画的に実行していくことが、キャリアマネジメントを行う上で重要なポイントです。

なお、キャリアマネジメントと似た意味で使われる言葉に、キャリア自律があります。キャリア自律とは、自ら主体的に仕事の意味を見いだしながら、周囲の資源などを活用して学び続け、キャリアの開発に努めることです。

キャリア自律については、以下の記事をご覧ください。

2.キャリアマネジメントが重視されるようになった背景

キャリアマネジメントは、時代の変化とともに重視されるようになりました。キャリアマネジメントの必要性が高まる背景となった、ふたつの変化について解説します。

1)働き方改革による労働環境の変化

キャリアマネジメントが重視されるようになった背景のひとつとして、働き方改革による労働環境の変化が挙げられます。

新卒採用から定年まで、ひとつの企業に勤め続けるという従来の日本の働き方は、すでに過去のものになりつつあるといえるでしょう。個人の働き方の転機となったのは、2008年のリーマンショックです。多くの企業で倒産やリストラが起こり、これによって終身雇用という前提が崩れました。その後、インターネットの普及や働き方の変化により、近年では自宅での就業が以前に比べて容易になりました。隙間時間での副業のほか、起業する人々も増えています。

このような働く選択肢が増えている環境のなかで、企業が優秀な人材を採用するためには、能力に見合った従業員体験や報酬などのリターンを提示する必要があります。企業と個人の関係性の変化を捉え、得られる従業員体験を意識して働く環境を構築できるかが、人材獲得にもつながります。個人もまた、自身のキャリアマネジメントを行い、企業に選ばれ続ける人材になるための努力を重ねる必要があります。

近年の労働市場においては、「企業が個人を選ぶ」という従来の構造が、「企業と個人が選び選ばれる関係性」に向けて変化しつつあります。この流れとともに、個人のキャリア形成の重要性が高まっているのです。

2)社会の多様化

キャリアマネジメントが重視されるようになった背景として、社会の多様化も挙げられます。これにより、キャリアマネジメントは個人にとってだけでなく、企業にとっても重要な意味をもつものとなりました。

性別や年代、価値観の違いにとらわれることなく、幅広い人材の持つ力を活かすにあたっては、個人の特性を踏まえたキャリアマネジメントが必須です。従業員全員に画一的な教育を提供するだけでは、十分な育成をすることはできないでしょう。また、少子高齢化のなかで事業を拡大していくためにも、個人の力を最大限に発揮できる環境や支援を考える必要があります。

価値観が多様化する社会において、個人に合ったキャリアマネジメントは、一人ひとりの選択肢を増やすために必要不可欠な手段なのです。個人の選択肢を増やし多様な人材の活躍を促進することが、企業にとっての成長にもつながります。

3.キャリアマネジメントの進め方

キャリアマネジメントは、3つのステップに大別できます。着実にキャリアをマネジメントしていくために、いつ、何をすべきなのかを知っておきましょう。

0607pic.png

1)プランニングする

まずは自分の目標を定め、それを実現することに向けたキャリアの築き方を検討しましょう。
目標とは、将来なりたい自分の姿です。ありたい姿を考えた上で、そこに到達するにはどうすれば良いのか、これまでの経験や経歴、環境などを総合的に考えた上でプランニングをします。たとえ目標が同じでも、それぞれの人によって適した道筋は変わるはずです。自分にとって最適なプランを検討することが大切です。

2)能力を開発する

プランニングが完了したら、実際に計画を実行に移します。
プランを実現するためには、そのための能力を習得するために必要な行動を検討しなければなりません。研修へ参加したり資格の勉強をしたりするなど、具体的な行動計画を立てましょう。

また、実務経験を積むことも大切です。将来のために必要な経験が自社でできない場合は、どうすれば経験を積めるのかを検討し、実行することが大切です。例えば、社内で異動希望を出す、副業をする、ボランティアなどで経験を積む、転職するなど、さまざまな方法が考えられるはずです。

3)内省と行動を継続する

キャリアプランニングと能力開発、経験の蓄積を通して、キャリアの構築を進めます。

キャリアプランニングや能力開発は、一度で終わるものではありません。状況に応じてプランの見直しや学び直し、新たなスキルの習熟を継続することが大切です。キャリアマネジメントは、生涯を通して行っていくべきものです。定期的にキャリアプランと現状を見直し、行動を継続していきましょう。

4.組織内キャリアマネジメントとは企業が従業員に行うキャリアマネジメントのこと

組織内キャリアマネジメントは、企業が従業員に対して行うキャリアマネジメントです。人材の育成や開発を目的としており、従業員のキャリア支援にもつながります。
組織内キャリアマネジメントにおいては、従業員の転機が起こったタイミングでキャリアを改めて考えさせるケースが一般的です。

昇進や育児休業からの復帰時などのタイミングでキャリアマネジメントを行うことで、従業員が未来のビジョンを明確にしやすくなるでしょう。今後の働き方や、積むべき経験、習得すべきスキルなどがはっきりすれば、仕事も前向きに取り組みやすくなります。

5.組織内キャリアマネジメントの具体的な施策

組織内キャリアマネジメントの考え方は、企業主導のキャリア形成支援から、従業員が自ら自身のキャリアを描き行動することの支援に変化しつつあります。従業員個人が自らのキャリアに向き合うだけではなく、従業員と企業がキャリアについてのすり合わせを行い、キャリアビジョンの実現を図っていくことが大切です。

ここでは、組織内キャリアマネジメントの具体的な施策を4点ご紹介します。

1)異動、配置換え

組織内キャリアマネジメントの施策としては、従業員の異動が挙げられます。
これまでとは異なる部署の仕事を知ることで、事業を多面的に見られるようになるでしょう。新しい仕事に挑戦することは、スキルの幅を広げたり、自分の強みを発見したりする上でも役立ちます。

また、それぞれの従業員のキャリアプランや適性に応じた配置換えも、組織内キャリアマネジメントの施策のひとつです。適切な配置換えを行うことで、強みを発揮し成果創出や生産性向上などの効果が期待できます。

2)研修

研修も組織内キャリアマネジメントの施策のひとつです。特定のスキルを習得する目的だけでなく、キャリアについて考える場を提供するためにも有効です。

キャリアの考え方を知るための研修や、役職や年代に応じて求められる役割についての研修、グループワークによる仲間からのフィードバックなどを通して、自分のキャリアや目指す将来像について改めて考えてみましょう。研修という場を活用して、立ち止まってキャリアについて考えることで、目標を持ちやすくなるはずです。

3)面談

組織内キャリアマネジメントの施策には、面談も含まれます。
組織が従業員に対して期待している役割と、従業員が目指すキャリアとのすり合わせは、面談を活用することで実施できます。

面談は、あくまでも企業と従業員双方の考えをすり合わせる場です。従業員のキャリアを組織の都合が良いようにコントロールするために設けるものではありません。組織側が期待していることを押し付けるのではなく、従業員のありたい姿を聞いた上で、お互いにとって最適なあり方を模索していくことが大切です。

対話がうまく機能することで、従業員は自らのありたい姿に向けて、納得してキャリアを築きやすくなるでしょう。個人の成長は企業全体の成長に寄与しますし、企業と従業員の結びつきの強化にもつながります。

4)スキル習得支援

スキル習得の支援も、組織内キャリアマネジメントの施策のひとつです。
目標とするキャリアに必要なスキル習得支援制度を提供することで、従業員一人ひとりの能力の底上げや、キャリアプラン実現の後押しを行うことができます。企業が実施するスキル習得支援の一例としては、下記のようなものが挙げられます。

<スキル習得支援の一例>

  • eラーニングの受講支援
  • 参考書などの購入補助
  • セミナーへの参加支援
  • 一定時間、別部署の仕事を体験できる制度、など

6.働き方や社会の変化に伴い、適切なキャリアマネジメントを行うことが大切

社会や働き方が変化していく中で、企業が画一的に従業員のキャリアをマネジメントするという従来のやり方は通用しなくなっています。従業員一人ひとりがみずからのキャリアマネジメントを意識し、企業の目指す方向性とすり合わせていくことが重要です。自社にとってのキャリアマネジメントのあり方を検討・実施していくことが、企業全体の成長や従業員との結びつきの強化につながるでしょう。

株式会社ライフワークスでは、20代からシニアまでの各世代や、女性活躍推進、管理職向けなど、課題に合わせた「キャリア開発研修」をご提供しています。キャリア開発研修は、企業で働く社員(従業員)一人ひとりの、自律的キャリア形成を支援する方法の一つです。社員のキャリア課題を持つ方は、是非ライフワークスのキャリア開発研修をご覧ください。

この記事の編集担当

黄瀬 真理

黄瀬 真理

大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。

国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定

おすすめ記事

コラムの一覧へ戻る