オンボーディングとは?人事が知っておきたい基礎知識と施策の具体例

新人の早期戦力化は、多くの企業の悩みの種です。また、苦労して即戦力となる人材を中途採用したものの、職場に馴染めずに早期退職してしまうケースもあります。そんなときに導入を検討していただきたいのが、「オンボーディング」と呼ばれる施策です。新卒社員や中途入社者を上司や同僚がサポートし、人材の早期戦力化や離職防止を目指します。

今回は、オンボーディングの基礎知識や導入のメリット・デメリット、施策の進め方などを解説します。実施しやすい施策の具体例にも触れますので、人材育成に課題を抱える企業のご担当者様は、ぜひ参考にご一読ください。

2022.06.10
コラム

オンボーディング(on boarding)とは?

企業人事、特に育成の分野で耳にする機会の多いオンボーディングという言葉。新人 の早期戦力化のためには、オンボーディングの理解が欠かせません。最初に、言葉の意味や注目されている背景、メリット・デメリットなどをご紹介します。

オンボーディングの意味

オンボーディングとは、新卒社員や中途入社者に対する会社や組織への順応を促進する取り組みのこと。「新入社員研修」とほぼ同義であり、「船や飛行機などの乗り物に乗っている」という意味の「on-board」が由来の人事用語です。中途入社者の教育や配属替えの際にも実施され、組織として社員全体の成長を目指す研修プログラムを指します。

オンボーディングを実施する背景

オンボーディングは、新卒社員を含む新人の定着に有効とされています。新卒社員は早期離職率が高いことから、多くの企業で定着が課題となっています。2020年に厚生労働省が報告したデータでは、2019年入社3年以内の離職者は約3割。大学卒の離職率が32.8%、短大卒は43.0%、高校卒は39.5%、中学校卒は59.8%となっており、若手の定着率向上が経営課題として表面化しています。

【出典】「新規学卒者の離職状況」(厚生労働省)

オンボーディングの主な目的

  • 新卒社員や中途入社者の定着率向上

    オンボーディングは、新卒社員や中途入社者の早期活躍へ向けて、一律に行われる集合研修とは別に実施されます。個々が業務で必要となる知識や技術を提供したり、会社やチームにいち早く馴染めるようにサポートしたりすることで、結果として早期離職を抑えられます。

  • 即戦力になるまでの時間の短縮

    一般的なビジネスマナーから自社特有のルール、学生時代とのギャップなど、新卒社員はさまざまなことに順応しなければなりません。オンボーディングでは、継続的なサポートによって新卒社員がスムーズに職場に適応し、戦力になるまでの時間短縮を目指します。

  • 平等な教育機会の提供

    オンボーディングは、部署やチームごとの教育格差の防止も目的のひとつです。従来の人材育成手法は、入社後にオリエンテーションを行い、その後はOJTに任せるケースが一般的でした。

しかし、この方法では指導の質が教育担当者の能力に左右されやすくなります。オンボーディングを実践することで、人事部が先頭に立って体系的な教育プログラムを提供し、部署やトレーナーの違いによる教育格差を減らすことが可能です。

オンボーディングを実施するメリット

    • 採用コストの削減

      折角採用した新人が早期退職すると、採用にかけたコストが無駄になってしまいます。オンボーディングの実施で新人の離職率を下げることができれば、採用にかかるコストを削減可能です。

    • チームのパフォーマンス向上

      オンボーディングの実施を通して、新卒社員や中途入社者を即戦力化させることができると、チームのパフォーマンスや組織全体の生産性向上が期待できます。それは、売上や業績のアップにもつながります。そうした組織では、よりパフォーマンスを出せる人材が定着しやすくなります。

    • 従業員エンゲージメントの向上

      従業員エンゲージメントとは、個人が仕事を通じて組織との関係性や絆を深め、信頼し、成長しながら貢献していくこと示す概念です。

オンボーディングによる企業文化の理解や交流の活性化、サポート体制の確立は従業員エンゲージメントにも良い影響を与えます。会社に慣れることで入社後の早い段階でやりがいを見つけやすくなり、仕事に対するモチベーションアップや自主性の向上も期待できるでしょう。

オンボーディングのデメリット

オンボーディングを成功させるには、新人の受け入れまでに事前の準備が必要です。具体的には仕組みの設計やコンテンツの準備を行う必要があり、一定の時間とコストがかかります。また、全社的に取り組むためには既存社員の協力も不可欠です。

オンボーディングには、職場全体で新人を受け入れるアプローチを行い、既存メンバーと新メンバーを短期間で統合させていく目的があります。社内でこうした目的を説明し、丁寧に理解を得ていくことが大切です。

オンボーディングを成功させるための4つのプロセス

ここでは、オンボーディングを実践する際のプロセスを4つに分けてご紹介します。オンボーディングの効果を最大限発揮し、入社後早期に活躍できる人材の育成に向けて、できる限り早く取り組みを検討・開始できるとよいでしょう。

Step1.目標の設定

まずは新卒社員や中途入社者の課題を整理したうえで、オンボーディングの目標設定を行いましょう。目標は配属先の部署や自社が求める人材によっても異なります。例えば、「早い段階で中長期的を見据えたキャリアのイメージを自分で描けるようになること(キャリア自律)を目指す」などが挙げられます。明確な目標を設定してメンバーと認識を合わせることが大切です。

Step2.実施環境の準備

オンボーディングには既存社員の協力が欠かせません。新卒社員や中途入社者を受け入れる環境を整えましょう。チームのパフォーマンスを高め、オンボーディングにも有効な施策として、1on1(ワンオンワン)やメンター制度などが挙げられます。

1on1とは、上司が部下の成長支援を目的に行う個人面談のこと。上司が部下の相談役となることで、部下の主体性やモチベーション向上を目指すマネジメント手法です。また、メンター制度とは、年齢の近い年上の先輩社員や、社歴の近い先輩社員が新人をサポートする制度を指します。

Step3.計画の作成と実施

オンボーディングは、継続して行うことで即戦力化や離職防止の効果を上げやすい傾向にあります。入社前、入社当日、入社後〇〇カ月と長期的なプランを立てて実行しましょう。計画を作成したら、新人の配属先となる現場と連携しながら、内容のすり合わせをすることも必要です。計画の担当者やタイミングごとの達成目標を決めるとスムーズに進められます。

Step4.振り返りと見直し

施策の実施後は、設定した目標に達しているかを振り返りましょう。計画していた目標と実際の結果に差があった場合は、プランの見直し・修正を行います。施策に問題がなかったか、PDCAを回しながら振り返ることが大切です。PDCAとは、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」の頭文字を取った単語。計画から改善というサイクルを繰り返して継続的に業務改善を行う方法を指します。

今すぐできるオンボーディングの具体例3選

オンボーディングは、自社の企業文化や働き方に合わせて適切な方法を見つける必要があります。ここでは、実践しやすい施策を具体的に3つご紹介します。

メンター制度の導入

メンター制度では、サポートをするメンターとサポートを受けるメンティーに分かれて、仕事の悩みや課題について対話を通して解決を目指します。新人の戦力化や離職率の低減、組織における横のつながりの強化、社風や企業風土の定着などの効果が期待できるため、オンボーディングの第一歩として多くの企業で導入されています。類似した仕組みのOJTとは異なり、人間関係の悩みやキャリアに関する不安など、業務以外の点もフォローするのが特徴です。

歓迎会の実施

定期的な社内会食やランチ会を実施し、コミュニケーション機会を増やすのも良い方法です。新型コロナウイルスの影響でリモートワークやテレワークを導入している場合は、リモート歓迎会などオンラインでイベントを開催するのも良いでしょう。雑談の機会が生まれることで気軽に話せる関係性が構築され、困りごとがある場合に新人が先輩や上司に相談しやすくなります。

質問窓口の設置

業務に必要な知識やスキルを効率的に身に付けられる環境を構築するためには、質問窓口を設置するのが効果的です。専用ツールを活用し、オンライン上に質問用のチャットを設けるとスムーズです。新人が不自由なく利用できるよう、情報をまとめたマニュアルを作成すると良いでしょう。マニュアルはわかりやすい場所に置き、いつでも自由に見られるようにすることが大切です。また、知識の定着度を確認するために、eラーニングによる自己学習やテストを取り入れている企業もあります。

「オンボーディングで新人からベテランまで活躍できる職場環境を目指そう」

今回は、オンボーディングの概要や導入のメリット・デメリット、具体的な施策などをお伝えしました。オンボーディングは新人の人材育成手法として注目されがちですが、上司や同僚を含む職場全体で新人を受け入れるアプローチを行うことで、既存メンバーと新メンバーが短期間で融合し、組織全体の生産性向上に寄与するという効果があります。メンター役の先輩社員や上司に考え方の変化をもたらすケースも多く、双方にメリットがあります。オンボーディングの取り組みを進めて、新人の早期戦力化や離職防止、ベテラン社員の自発的な成長につなげましょう。

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