1on1ミーティングとは?話すことや質問例、目的と効果を高めるやり方

現在、社員の主体性やモチベーションをアップさせる施策の重要性が高まっています。主体性のある社員が増えることで、部下の成長促進やエンゲージメント向上、オリジナリティが高いアイデアの創出などが期待できるためです。社員の主体性を引き出すために有効な手段の一つが、「1on1ミーティング」です。今回は、1on1ミーティングの意義やメリット・デメリット、効果を高めるコツなどを徹底解説します。1on1ミーティングの活用を考えている人事・経営者様は、ぜひ参考にご一読ください。

2022.05.30
コラム

1on1ミーティングとは?

1on1ミーティングとは、上司(マネージャー)と部下が定期的に実施する1対1の面談のことです。人材育成を促進するマネジメント手法として注目を集めています。まずは1on1ミーティングの実施目的や人事評価面談との違い、メリット・デメリットなどを解説します。

1on1ミーティングの目的

1on1ミーティングの主な目的は、部下の成長のサポートにあります。目標やそれに対する成果の確認が目的ではありません。1on1では、部下が不安に感じていることやキャリアに対する中長期的なビジョンについてなど、幅広いテーマで上司と話し合います。それを通して、より自律的・主体的に仕事を進められる状態や、本来備えているポテンシャルを最大限に発揮できる状態を目指します。上司と部下の双方が1on1の目的を理解していないと、目標管理や進捗確認の場になりやすく、1on1を「意味がない」時間だと感じてしまう場合があるため、注意が必要です。また、必ずしも対面で行う必要はなく、リモートワークやテレワークを導入している場合はオンラインツールを活用しての実施も可能です。

1on1ミーティングと人事評価面談の違い

1on1ミーティングは上司と部下の1対1で行うため、人事評価面談と混同されがちです。しかし、1on1ミーティングでは、評価や判断を行いません。両者は目的や頻度、話す内容や話す姿勢の観点において違いがあります。具体的な違いを以下の表にまとめました。

1on1ミーティング 人事評価面談
目的 部下の成長を支援すること 部下の目標を管理・評価すること
話す内容

プライベートやキャリアまで広いテーマでの話
中長期的な視点を含む

目標や成果の話
短期的な話に限定
話す姿勢 部下から話を引き出す 上司から話を伝える
役割 メンバー:主体者、相談者
上司:理解者、伴走者、アドバイザー
メンバー:報告者
上司:管理者、評価者
関係性 メンバーと上司はフラットな関係性 メンバーと上司は上下の関係性
頻度 週1回~月1回(上司と部下で自由に設定) 年1回~2回(評価のタイミングで実施)

まず、1on1ミーティングの目的が部下の成長促進やモチベーション向上にあるのに対して、人事評価面談は目標の設定や そこに対する 評価が主目的です。1on1ミーティングではメンバーが主体者・上司が伴走者の役割を担いますが、人事評価面談においてメンバーは報告者・上司は管理者の役割です。

次に、会話の内容にも違いがあります。1on1ミーティングでは業務上の悩みや課題はもちろん、業務外やキャリアに関する話題、雑談を交えるケースも少なくありません。一方、人事評価面談は評価制度と密接に結びついており、目標や成果に関する内容が中心です。前者は中長期的な視点での対話を含むのに対して、後者は短期的な話に限定される傾向にあります。

また、1on1ミーティングではメンバーと上司がフラットな関係であるのに対して、人事評価面談で両者は上下関係にあります。こうした関係性の違いから、1on1ミーティングでは双方向のコミュニケーションが生まれやすく、部下が自ら気づく機会となったり上司の考え方にも変化をもたらしたりします。

さらに、1on1ミーティングは頻度や日時、場所などを上司と部下で自由に決められるのも特徴です。一般的には、1回あたり15〜30分の短い時間で、週1回~月1回の頻度で行います。人事評価面談は評価のタイミングで実施されるため、年に1〜2回とスケジュールが事前に決められています。

この導入事例もチェック
→ヤフー株式会社 主体的な成長・キャリア開発と各種人事施策をかけあわせ、組織価値の最大化を目指す

1on1ミーティングのメリット・期待できる効果

  • 部下との信頼関係が深まる
    1on1ミーティングを導入するとお互いの過去の経験や考え方、価値観を知る機会になるため、上司と部下の相互理解が進みます。両者の信頼関係が深まれば、業務上の相談に対する抵抗感が減ります。そうすることで、問題の早期発見と解決につながるでしょう。また、上司と部下の信頼関係が構築されることで仕事や会社に対するエンゲージメントが高まり、結果として離職率低下に繋がるのもメリットです。
  • 部下のモチベーションが高まる
    1on1ミーティングは日頃の感謝や期待を伝える機会になるため、部下のモチベーション向上が期待できます。部下の「自分にできる」という自己効力感を高められ、積極的・自発的に仕事に取り組んでもらいやすくなります。また、1on1ミーティングを通じて部下の本音を引き出すことで、部下のWILL(やりたいこと)を理解する機会になるのも魅力です。部下がやりがいを持って働ける環境を提供しやすくなるでしょう。
  • 持続的な人材育成につながる
    1on1ミーティングは、部下に現状の振り返りの習慣を身につけてもらうツールとしても効果的です。業務上の成功体験や失敗体験を振り返ることで課題を可視化し、上司のアドバイスを今後の業務に活かすことで「経験→振り返り→実践→成長」の良いサイクルが生まれ、自律的なキャリア形成や持続的な人材育成につながります。また、振り返りで気づいた点をチームに共有すれば、組織全体の生産性向上も見込めます。このような好循環は経験学習モデルと呼ばれ、チームビルディングやナレッジマネジメントにも活かしていけます。

仕事のやりがいの詳細については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
→仕事のやりがいとは?従業員が感じる瞬間と自分で見つける方法

1on1ミーティングのデメリット・注意点

1on1ミーティングはメリットだけではなく、取り組み方次第でデメリットも存在します。

  • 現場の負担が増える
    1on1ミーティングは定期的に開催する必要があるため、取り組み当初は現場の時間的な負担が増える一面があります。特に上司は、部下の人数分だけ時間をかける必要があり、通常業務を圧迫することに不満を感じるケースも少なくありません。そのため、1on1ミーティングを導入する場合は、同時に業務の効率化への着手と、目的や意義に対する理解が欠かせません。
  • やり方を間違えると部下との信頼関係が損なわれるおそれがある
    上司が「1on1ミーティングの目的を正しく把握していない」など、コツを掴めない場合は一方的な意見や価値観を押し付ける場になってしまい、部下が不信感を持つリスクがあります。1on1ミーティングの目的を上司に理解してもらうのはもちろん、ティーチングやコーチング、フィードバックというスキルの理解や習得をするための研修を事前に実施するのも有効です。
  • 効果が数値に表れにくい
    1on1ミーティングは、最初から「効果が測りにくいもの」だと理解しておく必要があります。そもそも1on1ミーティングは、部下の自主性や主体性を育成するために実施するものであり、目に見える数値を目標に定めない場合がほとんどです。定量的な効果が見えないからと1on1ミーティングが職場に浸透する前にやめてしまうと、上記目的も達成できません。長期的な視点を大切に継続的にミーティングを行い、メンバーの変化が少しずつ表れ始めるのを待つことが大切です。

1on1ミーティングの効果を高める5つの方法

1on1ミーティングを社内に定着させ効果を最大化するには、上司はどのような点を意識すれば良いのでしょうか。ここでは5つの方法をご紹介します。

1) 実施する目的や目指す状態を共有する

1on1ミーティングを実施する場合は、目的や意義を明確にし、事前に共有することが重要です。共有が不十分だと部下にも「余計な仕事が増えた」と感じさせる可能性があり、1on1ミーティングの効果が薄れてしまうおそれがあります。部下の積極的な参加を促すには、一緒に目的や目指す状態を決めることで納得感やモチベーションを高めるのも良いでしょう。

2) 独自のネーミングを付ける

部下が参加しやすい雰囲気を作るには、独自のネーミングを付けるのがおすすめです。言葉から得る認識や思い浮かべるイメージは、部下の姿勢やモチベーションに影響します。初回に部下と一緒に話し合って決めると納得感が高まるでしょう。ネガティブな印象を受けやすい例としては、「定例面談」「定期相談」「個人面談」などが挙げられます。反対にポジティブで参加しやすい印象を受ける名前には、「ユアタイム」「頭と心の整理タイム」「(部下の名前)の時間」などがあります。1on1ミーティングの内容や目的に応じて適切なネーミングは異なりますが、部下が参加しやすくなる名前を選ぶことが大切です。

3) 意識的に傾聴の時間を増やす

1on1ミーティングを実施する上司側には、意識的に傾聴をする能力が求められます。傾聴とは、部下の話に対して肯定的な関心を寄せながら、丁寧に耳を傾けて共感や理解を示す姿勢を指します。単に話を聞いたり自分の関心事だけ質問したりすることではありません。一方的な指導ではなく「興味を持って話を聞いてくれている」姿勢を示すことで、部下の本音を引き出しやすくなるでしょう。手軽な手法には「うなずき」「あいづち」「繰り返し」「言い換え」などがあります。

4) アクション管理を行う

1on1ミーティングの最後には、次回までに実行するアクションを一緒に決め、次回は前回決めたアクションの振り返りを最初に行いましょう。部下も上司も1on1ミーティングの効果を実感しやすくなり、有意義な時間となります。アクションの具体例には、「○○さんに紹介された書籍を読み、次回で感想を共有する」などが挙げられます。

5) いつでも読み返せる記録を残す

1on1ミーティングで話した内容は、メモやクラウドツールを活用して記録しておくのがおすすめです。ログを残すことで過去の内容を確認しながらミーティングを実施でき、認識の食い違いを予防できます。また、上司はメモをもとに次回の準備ができる、部下はミーティング内容を振り返ることで自身が成長を自覚するための材料になるなどのメリットもあります。

1on1ミーティングのテーマと質問の具体例

1on1ミーティングを実施する際、アジェンダ(議題・テーマ)の設定に困ることがあります。そこで、最後に1on1ミーティングで効果的なテーマと質問の具体例をご紹介します。1on1ミーティングの事前準備にお役立てください。

業務上の困りごとについて

  • 取り上げるメリット
    業務上の困りごとに関する話題は、1on1ミーティングの基本的なアジェンダです。部下が仕事で直面している悩みや課題を引き出すことで、解決の手助けができます。部下のモチベーション低下を防止し、パフォーマンス向上が期待できるというメリットもあります。対話を通じてヒントや解決策を提示し、答えに導くのが理想です。
  • テーマの例
    テーマの例には、「うまく進んでいない業務と原因」「同僚やチームに対して感じていること」「決定した方針に関する具体的な理由や背景」などが挙げられます。漠然とした不安や悩みを問うのではなく、業務や人間関係などある程度テーマを絞るのがポイントです。
  • 質問の例
    以下は質問の一例です。

    ✳︎行動を止めているものは何ですか?
    ✳︎うまくいかない理由を2つ挙げてみませんか?
    ✳︎解決したらどのような状態になりそうですか?

部下の中には、自分が抱える悩みや不安を上司に打ち明けにくいと感じる方もいます。そのため、上司の質問に部下が答えやすくなるよう工夫する必要があります。

プライベートについて

  • 取り上げるメリット
    部下との信頼関係を深めるには、プライベートや業務外のことをテーマにするのも良いでしょう。業務との関係性が薄い内容や自分が興味のある内容であれば、部下も気軽に話しやすいのがメリットです。また、ミーティングを始める際のアイスブレイクにも活用できます。
  • テーマの例
    プライベートに関するテーマは、「プライベートの趣味について」「週末の過ごし方」「最近感動したこと」などがおすすめです。部下から話題を振られた際、自己開示ができるテーマにしておくとより信頼関係が深まります。
  • 質問の例
    プライベートなテーマでミーティングをする際の質問例をご紹介します。

    ✳︎何をしているときが一番楽しいですか?
    ✳︎最近気になったニュースはありますか?
    ✳︎ハマっている趣味について教えてください

部下との良好な関係性を構築するには、あえてフランクな口調で質問するのも有効です。ただし、ハラスメントにならないよう注意する必要があります。

健康状態について

  • 取り上げるメリット
    部下の健康管理も上司の業務です。しかし、周囲に人がいる状況では話しにくいケースもあるため、1on1ミーティングで取り上げるのが良いでしょう。特にメンタル面の不調をいち早く把握し、解決に向けて相談に乗ることで離職防止につながります。また、定期的なミーティングで心身の不調を確認していれば、業務量の調整や人員の再配置なども可能になります。
  • テーマの例
    健康状態に関するテーマは、「ストレスを感じる業務について」「心身の悩みについて」「職場の人間関係について」などが代表例です。心身の状態はパフォーマンスに影響しやすいため、問題がない場合でもミーティングをする際は毎回確認しておきましょう。
  • 質問の例
    健康状態を尋ねたい場合の質問例はこちらです。

    ✳︎最近しっかりと眠れていますか?
    ✳︎体調に変化はないですか?
    ✳︎業務を家に持ち帰っていませんか?

健康状態の把握と併せて、不調をきたしている場合はその要因も確認できるのが理想です。ただし、センシティブな内容を含む可能性があるため、質問の仕方を工夫しましょう。

将来のキャリアについて

  • 取り上げるメリット
    1on1ミーティングは、部下の将来に関する展望を聞き、キャリア開発に活かす場としても有用です。部下が目指すキャリアを深掘りすることで、モチベーションの向上や離職率の低下が期待できます。また、キャリアデザインが漠然としている社員には、上司が強みや弱みをフィードバックすることが自身のキャリアを考えるきっかけになります。
  • テーマの例
    将来のキャリアに関するテーマ例は、「数年後のキャリア像について」「理想のキャリアを実現するために必要なこと」「チャレンジしたい仕事についてとその理由」などが代表的です。1on1ミーティングを通じて、部下が自身のキャリア設計を見つめ直せるテーマを選ぶのが良いでしょう
  • 質問の例
    キャリアに関する内容をテーマにする場合は、以下のような質問が有用です。

    ✳︎やりがいを感じている仕事はありますか?
    ✳︎10年後の自分にどのようなイメージを持っていますか?
    ✳︎自分の強みや弱みはどこにあると思いますか?

短期的な目標や日常業務に関する内容だけでなく、中長期的なビジョンをキャッチアップすることで部下のモチベーション向上につながります。

1on1は部下の成長を広く目的とした面談ですが、1on1のなかには、「伴走者として」部下のキャリアを支援するというテーマが多分に含まれていることが多くあります。マネジメント研修においては、部下とのコミュニケーション手法や、評価・フィードバック手法を学ぶことがメインとなっているなか、「どのようにキャリアを支援したらよいのか」という悩みを、管理職が抱えることがよくあります。

キャリアを支援するにあたっては、まずは「伴走者として」管理職がどういう存在であるべきかを理解し、その上で部下にどういう投げかけをすべきかを理解することが大切になります。キャリアの切り口での面談(キャリア面談)についての資料を以下にご案内します。

今回は、1on1ミーティングの目的や期待できる効果、テーマごとの質問例などをお伝えしました。1on1ミーティングは、部下やチームの主体性の向上に役立つ手法です。しかし、目的の共有が不十分だったり、導入期間が短すぎたりすると十分な効果を発揮できない可能性があります。中長期的な視点で施策を実施し、組織全体の成長を実現しましょう。

「1on1ミーティングを実践して組織全体の成長につなげよう」

今回は、1on1ミーティングの目的や期待できる効果、テーマごとの質問例などをお伝えしました。1on1ミーティングは、部下やチームの主体性の向上に役立つ手法です。しかし、目的の共有が不十分だったり、導入期間が短すぎたりすると十分な効果を発揮できない可能性があります。中長期的な視点で施策を実施し、組織全体の成長を実現しましょう。

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この記事の編集担当

黄瀬 真理

黄瀬 真理

大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。

国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定

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