管理職に向いていない人の7つの特徴とは。育成方法とは別キャリアパスの必要性。

働き方が多様化する時代、企業において多様なマネジメントが必要とされるなかで、管理職・上司の役割は、ますます重要になってきているのではないでしょうか。重要な役割である企業の管理職ですが、残念ながら、「私は管理職に向いていないのでは」と考える人も一定数いるかもしれません。

そのような方々の特徴を7つにまとめました。管理職に抜擢する前に、このような観点で適性を再考してみるとよいかもしれません。また、実際に管理職に向いていない方でも、その後の育成で管理職としての活躍を可能にする3つの視点をご紹介します。

これから管理職登用、育成の仕組み化をお考えの企業様も、ぜひヒントにしていただければと幸いです。

2023.04.27
コラム

1.管理職とは

管理職とは、一般に「指揮命令できる複数以上の部下を持ち、業務遂行について一定の権限を持つ人」を指します。多くのケースでは、数名から多いと8名程度のチームメンバーを統括し、課長職以上の役職を持つことが多いです。管理職は、管理職以下のプレーヤーと違い、部下を統率し、業績や結果に関して、一定の責任を負います。

管理職とリーダーはよく同一視されますが、管理職がリーダーと違うのは、部下の労働時間などの労務管理上の責任等、公に与えられている権限も持っているところです。リーダーは、プロジェクトやタスクを統率する立場ではありますが、公に与えられている管理職の権限を持っているとは必ずしも限りません。例えば、入社3年目の若手社員でも、プロジェクトのリーダーになることはあります。管理職が「マネジメント力」「管理力」を問われるのに対して、リーダーは、公に与えられている権限はなくとも、「メンバーを動かす人間力」を求められることが多いでしょう。

現代の管理職に求められる視点として重要なのは、ダイバーシティ・多様性を活かすという視点でしょう。様々な雇用形態、考え方、価値観の人をまとめ上げていく視点が必要です。そして、次に必要なのは、部下育成の視点でしょう。管理職は、自分だけではなく、チームメンバーを鼓舞し、メンバーを育成しながら組織としての成果を最大化する視点も必要となります。

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2.管理職に向いていない人の7つの特徴とは

職場には、管理職に昇格したものの、どうもその適性がない、向いていないと感じられる方もいるかもしれません。その特徴を以下7つのポイントにまとめてみましょう。

  1. リーダーシップ力がない
  2. 自己管理能力がない人
  3. コミュニケーション力が低い人
  4. 達成意欲がない人
  5. 柔軟性がない人
  6. 感情のコントロールが出来ない人
  7. ビジョンがない人

上記を順番に解説していきましょう。

1)リーダーシップ力のない人

例えば、自分の専門性に自信があるが故に、チームメンバーに仕事を渡さず、自分でやり切ってしまう人も向いていません。チームメンバー同士のすれ違いや、業務調整も含めて、メンバーの面倒を見るつもりがない方も向いていないでしょう。

2)自己管理能力のない人

管理職は、部下の労務管理から、業績管理まで幅広く「管理」する仕事でもあります。よって、自分自身のスケジュール管理やタスク管理に長けていることも重要です。これが出来ていない人が、他人を管理することは正直難しいと言えるでしょう。

3)コミュニケーション力の低い人

コミュニケーション能力には非常に広い意味が含まれますが、特に部下の話をしっかり傾聴する力、自分の思いを真っすぐに伝えられる力を持っている必要があるしょう。また、可能な限り、頻繁に部下の相談に乗り、コミュニケーションを取っていくことも厭わない方が向いていると言えるでしょう。よって、コミュニケーションを取ることの意義を理解しない管理職は、致命的とも言えるでしょう。

4)達成意欲のない人

管理職は、成果を求められます。会社の目標を達成しようとする意識が低い方は、向いていません。管理職が達成意欲を持たなければ、その意識の低さは、チームメンバー全体に伝播・波及してしまうでしょう。時に気が優しすぎる上司もいますが、業務やプロジェクトの達成意欲がない方、失敗を恐れて挑戦しない方は、チームメンバーの信頼を得ることが難しいリスクがあるでしょう。

5)柔軟性がない人

多様な部下をマネジメントする立場になると、様々な意見や考え方と接する場面があります。その際に、自分の意見を無理やりにでも押し通すようなやり方であると、部下やメンバーから信頼を失ってしまうでしょう。「こういった考え方もあるのではないか」「時にうまく行かないこともある」と柔軟に考え方を切り替えられない方でないと、管理職は務まらないでしょう。

6)感情のコントロールが出来ない人

感情のコントロールができない、例えば、すぐに怒る、不機嫌になるなど感情を表に出してしまう方の場合は、チームメンバーが管理職の顔色や機嫌などを伺うようになり、それ故に、良いアイデアが出てこない、業務が滞ってしまう可能性もあります。また、最悪のケースでは、部下がメンタル不調になるなど、二次的な被害も考えられます。どんなことが起こっても、冷静でいられること、感情のコントロールができることが必要でしょう。

7)ビジョンがない人

自分自身なりのありたい姿を持ち、どのようなビジョンで、なにをどう達成していくのか、具体的な熱意やビジョンがない方は、部下を鼓舞することが出来ず、管理職に向いていないと言えるでしょう。

管理職に向いている、いない、の見極めのヒントとしては、上記7つの観点を当てはめてみましょう。候補者について、上記項目の多くが当てはまるなら、管理職への登用やその時期を考え直す必要もありそうです。

また、上記の他に、もう一つの見極めの要素として、PM理論を紹介しましょう。PM理論とは、リーダーに求められる行動特性を示したものです。具体的には、リーダーの特性を2つの軸、4つの状態に分類したものです。ここで、P機能とは、具体的には目標達成機能(Performance)を意味し、M機能とは、集団維持機能(Maintenance)を意味します。マトリクスでまとめると、以下の4分類となります。

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この理論を参考に「管理職に向いていない人」を考えると、「pm型」(目標達成機能も集団維持機能も弱い)という事になるでしょうか。目標達成(パフォーマンス)も弱く、集団も維持できない方は、やはり管理職に向いていないと言えるのでしょう。

3.管理職に向いていない人の3つの育成方法とは

実際に管理職に向いていない人がいたとしたら、どのように育成、対応していったらよいでしょう?おすすめとしては、次のような方法があるでしょう。

  1. 管理職研修を実施する
  2. スーパーバイザーまたはコーチをつける
  3. 管理職のネットワークを作る

上記を順番に解説していきましょう。

1)管理職研修を実施する

適性がない、向いていないと感じられる管理職の方も、研修を受講することで、その能力・適性を上げることができるかもしれません。ポイントとしては、管理職として必要な経営の知識、部下管理の知識と同時に、部下と接する際のコミュニケーションスキル訓練など、必要な要素を整理し、漏れないように研修に盛り込むのが良いでしょう。

管理職に向いていないと思われる対象者もしっかり研修を受講させることで、管理職の素養を身に着けられる可能性も十分にあるでしょう。

特に転職して入社したての管理職の方は、まだ社内の組織や制度、就業環境の知識がありません。管理職の研修を受講せずに、「向いていない」という適性を判断してしまうのも早とちりかもしれません。自社なりの管理職研修を受講してもらうのが良いでしょう。

なお、以下の厚生労働省のプロジェクトも参考にされると良いでしょう。

(参考引用:厚生労働省「企業のマネジメント力を支える人材育成強化プロジェクト」

2)スーパーバイザーまたはコーチをつける

管理職に向いていない方は、もしかしたら、自分自身で気付いていないかもしれません。
また、上記のような管理職研修を受講しても、その効果は長く続かないかもしれません。
そこで、管理職にコーチをつけるのも良い方法です。管理職本人が出来ていると思っている事、出来ていないと思っている事について、コーチの力を借りて内省し、振り返ることで、管理職として成長していくことも期待できます。

3)管理職のネットワークを作る

最後に、管理職同士の悩みや、情報を交換するネットワークを作るのも一手でしょう。管理職になると、経営層からの圧力や、部下からの要望の多さで押しつぶされてしまうこともあります。そこで、同じ昇格年の管理職同士の懇親会、情報交換会を開催し、交流を深め、課題の共有と改善を目指します。

4.別キャリアパスの必要性について

また、会社としては期待したいが上記育成対策をもってしても、管理職に向いてないという方は、別のキャリアパスを準備することも検するのもひとつの方法でしょう。専門職コースの創設と運用、非管理職の活躍推進です。

1)専門職コースの創設と運用

まず、管理職といえども、部下を持たず、専門能力の発揮に集中してもらうキャリアパスです。マネジメントは苦手だけど、専門性はあるという熟練者、スペシャリスト向けです。こちらのコースを人事制度に創設し、運用していくというものです。留意点としては、通常の部下有りの管理職との処遇差をどのようにしていくかという観点を整理し、納得できるよう説明する必要があるでしょう。業績への貢献度も踏まえ、慎重に判断すべきでしょう。

2)非管理職の活躍促進

次に非管理職の活躍促進です。一人の管理職という管理者に全て委ねてしまうのではなく、非管理職含めたメンバー全体でカバーしていくと言うものです。管理職の補佐ができる課長補佐や、副リーダーを設置することも必要でしょう。逆にマネジメントを志向する若手社員に対して、若手のうちから補佐的立場を経験させるというキャリアパスを用意することは企業にとっても、本人にとってもメリットとなるでしょう。そのようなマネジメントの一翼を担う課長補佐や副リーダーにも、しっかり人事上の報酬を与えていくことも重要でしょう。

5.まとめ

管理職という役割は、多様な力を活かした価値発揮が必要となる多くの企業において、ますます重要となってくるでしょう。管理職に向いていない方の特徴を捉えることは重要です。また、管理職に向いていないと思われる方にも、まずはしっかり育成の機会を提供していくと同時に、専門コースの設置や、非管理職の活躍を促進していく仕組みも同時に必要となるでしょう。

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この記事の編集担当

黄瀬 真理

黄瀬 真理

大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。

国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定

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