失敗しないメンター制度とは?人材活用の重要性と課題解決方法とは

先輩社員が若手社員(新入社員)と1対1のペアになり、業務上のアドバイスやキャリア発達(形成)のサポートなど、幅広い成長支援をおこなう「メンター制度」。
人材の定着率を高めるための施策として多くの企業が取り入れているものの、「メンター制度の運用がうまくいっていない」「思うような効果が出ていない」と感じている人事担当者も少なくないようです。
本記事では、企業がメンター制度を活用して人材育成に取り組む重要性、メンター制度で失敗しないためのポイントについて、詳しく解説します。

2022.02.28
コラム

メンター制度とは?

メンター制度とは、若手社員(新入社員)の成長やキャリア形成を支援・促進し、早期離職を防止する(定着率を高める)ための制度です。

先輩社員をメンター、若手社員(新入社員)をメンティと呼び、メンターがメンティの相談役になり、仕事の悩みや課題を「対話」を通して解決に導きます。メンティのモチベーションを高めながらサポートすることがポイントです。

一般的には、OJTや上司による教育とは異なり、直属でない他部署の先輩社員という「斜めの関係性」にいる社員がメンターになります。そして、メンティの悩み、疑問、問題などを聞いて、励ましたり助言したりします。

メンター制度を人材育成に活用する重要性

DX化、グローバル化など、ビジネス環境の変化が激しい昨今は、いかにして若手を中心とした多様な人材の能力を活かすかが、企業の重要な経営課題となっています。

ところが、コロナ禍も影響し、社内コミュニケーションの不足による従業員エンゲージメントの低下、若手社員の離職に頭を悩ます企業が増えています。メンター制度によって、若手社員が社内で斜めの繋がりを持てれば、一人で悩みを抱えるリスクを減らすことができます。

自分をサポートしてくれる先輩が社内に増えることは心理的安全性につながります。ロールモデルとして憧れるような存在がメンターになれば、モチベーションの向上も期待できるでしょう。また、他部署への理解が深まれば社内でのキャリアを描きやすくなる効果もあります。

メンター制度はクロスコミュニケ―ションを促進します。他部署での話をヒントに仕事上の新たなアイデアの発露につながることが期待できます。

企業が生産性を高めていくためには、多様な人材を採用するだけでなく、人材育成に投資をする文化がある組織に転換していくことが必要です。その一環として、メンター制度を活用して多様な人材の活躍を支援する体制や、組織カルチャーを作っていくことが、年齢、性別、国籍などにかかわらず多くの人に活躍の場を提供することとなり、それが人材の定着を促すことにもつながるでしょう。

また、メンターというロールモデルの存在は若手の成長意欲を促します。メンターに悩みや課題をいつでも相談できることで安心感が生まれ、前向きなアドバイスによって成長スピードが加速します。結果として、早期の自律を見込むことができます。

先輩社員側も、メンターとして若手社員をサポートすることで、多様な考え方や課題解決スキルが身につき、精神的に成長することが期待できます。メンター自身のキャリアを再考するきっかけにもなるでしょう。

メンター制度は、企業と社員(メンター、メンティ)の三方に利点があり、うまく機能させれば、人材育成・人材活用に有効な施策となるでしょう。

「失敗しないメンター制度」に必要なこととは?

メンター制度の成功の鍵は「マッチング」「メンターへの教育」「成功事例の活用」の3点です。

メンターとメンティの「マッチング」を重視する

メンター制度は、メンターとメンティの相性次第でネガティブな結果を招くことがあります。そのため、事前のアンケートやヒアリングなどで、メンターとメンティ両者から必要な情報を収集した上で組み合わせを決めるなど、ミスマッチを防ぐ配慮が必要です。

マッチング方法には、両者の性格、年齢、バックグラウンド(経験・経歴)などを考慮した上で人事部が選定する「アサインメント方式」、数名のメンターの中からメンティの希望を聞き、組み合わせを選定する「ドラフト方式(ドラフト会議方式)」があります。

とはいえ、人間同士の相性は実際に交流してみないとわからない面があります。両者の相性が悪いままメンタリングを成功させることは極めて難しく、結果としてメンティは誰にも言い出せない悩みを抱え、モチベーションが下がることもありえます。

企業は、メンターとメンティの関係性を常に観察し、途中からマッチングを変更できるような柔軟性のある制度設計をおこなうことが大切です。

「メンター制度で思うような効果が出ていない」「運用がうまくいっていない」と感じる企業は、自社のマッチング方法の見直しをすることが有効かもしれません。

メンターに必要な教育・研修を提供する

メンティのポテンシャルを引き出せるメンターを養成するためには、知識やノウハウを身につけるための研修が有効です。

まず、メンターに「メンターの目的や意義」を伝えることが重要です。メンター制度はメンティにだけでなく、メンターにとってコミュニケーション力、指導力の向上にもつながります。新たな仕事が増えたという受け取られ方をされないように、メンター経験を通して得られることや、期待していることを伝えましょう。

その上で、傾聴スキル、質問スキルをはじめ「メンティとどのように信頼関係を構築していくのか」「どうすれば課題解決まで誘導できるのか」など、メンタリングに必須のスキルを身につける研修を提供することが望ましいでしょう。

また「メンターの日常業務とメンタリング活動の両立に問題はないか」「メンターに負荷がかかりすぎていないか」「組織内でフォロー体制は整備されているか」などを定期的に確認し、メンターのケアを仕組化することも大切です。

成功している企業の事例を活用する

メンター制度を導入して成功している企業の事例を参考にして、そのノウハウを自社に合う形で取り入れていきましょう。

例えば「メンタリング・チェイン」という「メンタリングを受けたメンティが次代のメンターになる制度」を導入した企業では、メンタリングの輪が拡大し、社内でキャリア形成を相談し合う文化の醸成に成功したという事例があります。メンティの活躍を後押しすることができ、離職率低下にもつながっています。

成功事例を参考にし、メンター制度の実施体制を見直す際には、自社におけるメンター制度の目的に照らし合わせて考えることが大切です。

ライフワークスでは、メンター制度を女性活躍推進支援として取り入れた事例がいくつかあります。以下に2事例を紹介します。

事例1:5年目の女性総合職と女性管理職のメンタリングを実施 - 「G社」の事例

G社では、女性管理職比率の目標達成を目指し複数施策を実施するなか、女性総合職に「メンタリング制度」を導入しました。

  • 自身のキャリアについて真剣に考える結果になった
  • キャリア形成という観点でモデルとなる先輩と出会えた
  • プライベートも含めたキャリアプラン形成に非常に有効だった

など、肯定的な意見がメンティ側から多数あがり、女性総合職がキャリア開発に前向きになる成果が得られました。
関連記事はこちら:「G社」の導入事例

事例2:若手女性総合職へのメンタリング制度で在職率を改善 - 「株式会社日本政策金融公庫様」の事例

株式会社日本政策金融公庫様では、転勤時に離職する女性総合職が多く、女性総合職のみを対象にメンタリング制度を実施していました。しかしメンタリング制度についての社内理解があまり進まないという課題がありました。そのため、メンタリング制度の理解と活用を促す目的の「メンタリング研修」を導入しました。また、女性が育休後スムーズに復帰できるように「育休明け社員向け研修」を実施しています。

  • 若手女性総合職が、自らメンターに働きかけて情報を得るようになった
  • 男性総合職に比べて低かった在職率も、男性並みに改善した
  • 育休明け社員向け研修は、育児休業者と上司が長い目で復帰後のキャリアを考えて準備する意識づけのきっかけとなったなどの成果が得られました。

関連記事はこちら:「株式会社日本政策金融公庫様」の導入事例

まとめ

労働人口が減少するなか採用はますます難しくなっています。そのため、採用した後のフォロー体制と、今いる社員に能力を最大限発揮してもらう取り組みの両方が必要不可欠です。そのためには、メンター制度をはじめとした、「人材の可能性やパフォーマンスを最大化するため」の支援と、一人ひとりの社員への活躍機会の提供が重要になります。

メンター制度を導入し、先輩社員が若手社員(新入社員)をサポートし働きやすい環境をつくることで、人材育成やキャリア開発の重要性が根付きます。互いに相談できる風土が醸成されることは、組織全体のエンゲージメント向上に繋がるでしょう。周囲との関係性のなかでの継続的なキャリア開発ができる環境づくりは、社内を活性化させます。

現在のメンター制度の効果や運用に課題がある場合は、他社の成功事例をヒントに、メンターへの研修や、メンター選定プロセスを含めた仕組みの見直しをしていくとよいでしょう。

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