メンター制度とは?メリット・デメリット、行う際のポイントを解説

採用した新入社員が定着せず、早期離職してしまう課題を抱える企業が少なくありません。苦労して採用した社員の流出を防ぐためには、どのような仕組みを構築していけば良いのでしょうか。そこで注目したいのが、メンター制度です。先輩社員による業務上のアドバイスやキャリア発達(形成)のサポートなど、幅広い成長支援をすることが、組織への定着の一助となります。

今回は、メンターの役割や良いメンターの特徴、メンター制度のメリット・デメリット、メンタリング実施の際に押さえておくべきポイントなどを解説します。

2024.03.18
コラム

1.メンターの役割と必要性

初めにメンター制度の基礎知識として、メンターの役割や必要性、求められるスキルについてご紹介します。新たな制度の運用前に、基本を確認しておきましょう。

1)メンターとは?

メンター(Mentor)は日本語で「相談者」「助言者」という意味です。ビジネスシーンにおいては、新入社員に対して助言したり、相談にのったりする役割のことを指します。知識や経験が豊富な先輩社員がロールモデルとなって、若手社員を支援するのがメンターの主な目的です。メンターの指導を受ける側の若手社員や新人は「メンティー(Mentee)」と呼ばれます。また、上記のようにメンターがメンティーをサポートして指導するのは「メンタリング」という手法です。

メンター制度には、若手社員のキャリア開発に加えて、社内コミュニケーションを活性化させる効果が期待されています。メンターは仕事上のフォローに限らず、メンティーの精神的なサポートまでを担当します。入社直後で不安の多い時期、メンタル面でも支えがあると、新人が組織に定着しやすくなるでしょう。メンターとの関係性が構築されることが、慣れない仕事や環境に対する不安を解消する支えになり、新入社員の離職率の低減につながることも大きな特徴です。

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2)メンターに求められるスキル

メンターは具体的なスキルを身につける前に、まずはコミュニケーションの基本を押さえておくことが最も大切です。メンティーが安心して相談できるような態度・姿勢・心構えをマスターしましょう。これらのコミュニケーションの基本が、効果的なメンタリングの基盤となります。メンターとメンティーの信頼関係を醸成することが、より良いメンタリングへの早道です。

その上で、コミュニケーションにおいて身につけておきたいスキルとして、テキストコミュニケーションのスキルや、フィードバックスキルなどが挙げられます。テレワークの普及にともない、対面以外のコミュニケーションの機会が多くなりました。こうした背景から、テキストでやりとりする能力も重視されています。気づきを生むような質問を投げかけ、メンティー自身が答えを見つけられるようにしていくことが大切です。

3)メンタリングとOJT、コーチングの違い

メンタリングに似た意味の言葉として「OJT」と「コーチング」が挙げられます。OJT(On the Job Training)とは、実際の仕事を通じて業務内容や知識、技術を身につけさせる教育方法です。メンタリングと共通する部分もありますが、一般的にOJTには教わる側のメンタルケアという視点は含まれません。

一方のコーチングは、自発的行動を促進するコミュニケーション手法のことです。質問と傾聴を通して、本人から答えを導き出すという特徴があります。前述のメンタリングでは、メンターが人生の先輩やロールモデルとして、メンティーの課題に対してアドバイスや経験のシェアを行うのが特徴です。

このようなことをふまえて、メンタリング・OJT・コーチングのどれを取り入れるかは、状況に応じて使い分けると良いでしょう。

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4)メンターの役割

メンターの主な役割を端的にいうと、若手社員の相談役と指導係です。具体的には、メンティーに対して上司のように仕事を与えるのではなく、メンティーの手本となるように、メンティーとともに日々の業務に取り組んだり、アドバイスやコミュニケーションを通じて自発的な成長を促したりすることが役割となっています。

また、メンターは仕事面での相談役だけにとどまらず、プライベート面やメンタル面のサポート役でもあります。メンティーとの信頼関係を築いていきながら、メンティーの現在の状況や自身のスキル、目指すキャリアなどに合わせたアドバイスを行うことも、メンターの重要な仕事です。

2.良いメンターに求められる5つの特徴

自社のメンターを選任する際は、どのような従業員に指導を任せるべきでしょうか。メンタリングの効果を高めるために、メンターに適した人材の5つの特徴を解説します。

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1)上下関係ではなく平等な目線で対話ができる

メンターを選任する際には、指導の際に命令・否定・説教をせず、対等なコミュニケーションができる人材を選びましょう。
メンターはメンティーの先輩という立場ではあるものの、あくまでも平等な目線で接することが求められるポジションです。相手と対話をする意識があるメンターは、メンティーとの信頼関係を築きやすいため、そのようなパーソナリティを持った人材を選ぶことが大切です。

2)組織について十分な理解がある

組織について十分な理解を持ったメンターを選ぶことも重要です。
メンターは、新たに組織の一員となるメンティーの、スムーズな定着を手助けします。自社の魅力を知ってもらうためには、メンター自身が会社の風土をよく理解していることが重要です。同様に、社内の人間関係を構築している人物であると安心できるでしょう。

3)相手を理解しようとする

メンタリングを成功させるには、常にメンティーを理解しようとする姿勢でいることがポイントです。一方的にアドバイスをする指導方法は適していません。メンティーの話をきちんと傾聴するためには、まず相手の悩みや質問をひととおり聞いた後で、自分が何を伝えるべきかを考える習慣づけが必要です。

4)仕事における実績や経験がある

メンターはメンティーのロールモデルとなる存在です。若手社員の成長後の目標であり続けるためにも、仕事における一定の実績やメンターとしてのスタンスが求められます。信頼できる従業員をメンターに採用することは、モチベーションの向上や信頼関係の構築に有効といえるでしょう。

5)積極的に人を育てようとする意欲がある

メンターはメンティーのキャリア形成に大きな影響を与えます。従って、担当者としての自覚を持ち、人を育てる意欲がある人材が適任です。企業の将来を担う若手社員を育てる役割の重要性を理解し、強い責任感を持つ人物を選任しましょう。

3.メンター制度のメリット・デメリット

最後に、メンター制度のメリットとデメリットを解説します。制度を運用する組織の視点のほか、メンター側とメンティー側それぞれの視点からも、メリット・デメリットをまとめました。メンター制度を導入する際は、ぜひ参考にしてみてください。

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1)組織のメリット、デメリット

企業が研修にメンター制度を導入すると、新入社員の即戦力化が促され、さらには組織の活性化を期待できます。社内のコミュニケーションが充実して活性化することは、より良い企業文化の醸成につながります。信頼できる人が社内にいれば、離職防止にも一役買ってくれることでしょう。一方で、メンターを選任する人事部門の負担や、相性が合う組み合わせをつくるハードルの高さには注意が必要です。

2)メンターのメリット、デメリット

メンターに選ばれた先輩社員は、メンティーの指導を通してさまざまな意味でのスキルアップが可能です。例えば、組織運営に欠かせないマネジメントの視点を身につけられます。有望な人材に成長のチャンスを与えられることもメリットのひとつです。ただし、業務との両立において、メンターの負担が大きくなりやすいという難点があります。

3)メンティーのメリット、デメリット

入社後の慣れない時期に手厚いフォローを受けられるメンター制度は、メンティーに大きな安心感をもたらします。業務上の知識やスキルに限らず、幅広い相談をできる体制が整えられていることで、早期の活躍も期待できるでしょう。一方で、こうした効果はメンターの質や組み合わせによる相性、取り組み方や進め方によって差が出やすい点が懸念されます。

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4.メンタリング実施の際の4つのポイント

実際にメンタリングを行う際には、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。ここでは、メンターがメンティーの指導をしたり、相談にのったりするにあたり注意すべき4つのポイントについて、それぞれ説明します。

1)命令や説教をしない

メンタリングを実施する際には、命令や説教をしないように心がけましょう。
メンタリングの目的は、メンティーの自発的な行動や成長を促すことです。メンターが一方的に命令したり、行動を強制したりしても、この目的は達成されません。メンティー自身が解決の糸口を見つけて行動を起こすためにも、対話やアドバイスを通じて信頼関係を築きながらサポートしていくことが大切です。
また、メンターがメンティーと対話する中では、プライベートな領域に踏み込むケースもあります。ハラスメントに行為にならないような注意も重要です。

2)話した内容を他言しない

メンタリングの際にメンティーと話した内容は、絶対に他言してはいけません。
メンタリングでメンティーから聞き出す内容には、仕事やプライベートに関するさまざまなものがあります。その中には、他人に知られたくないものや、周囲の耳に入るとメンティーの人間関係や立場に影響を与えてしまう可能性があるものもあります。
メンティーとの信頼関係を損なわないためにも、メンタリングで話した内容は原則他言せず、第三者に伝える場合はメンティーの同意を得た上で行いましょう。

3)個人の違いを理解、許容する

メンタリングを実施する際には、個人の違いを理解・許容することも大切です。
メンティーはそれぞれ悩みを解決するための物事の考え方などが異なり、価値観や成長速度にも個人差があります。アドバイスを受けてすぐに行動に移せる人もいれば、実行までに時間がかかる人もいるでしょう。
そのためメンターは、個人の違いを踏まえてメンタリングを行うことが求められます。メンター自身の価値観や思考・行動のパターンに当てはめてアドバイスをするのではなく、あくまでメンティー一人ひとりの行動や思考を考慮したサポートを行うことが大切です。

4)評価と関連付けない

メンタリングを実施する際には、メンティーと話した内容とメンティーに対する人事評価を関連付けないことも重要です。
多くの企業において、メンターは、他部署の先輩社員などのメンティーの評価には関係ない立場の社員が選ばれます。しかしながら、万が一、メンティーがメンターに話した内容がメンティーの所属部署の上司に漏れてしまって人事評価に関連付けられることがあると、メンターに対してだけでなく所属部署や会社への信用も失われてしまいます。そのため、メンタリングの内容と人事評価は必ず切り離して行うようにしましょう。

5.メンター制度の強みを生かすことで、効果的な人材育成を行いましょう

今回は、メンター制度を支える先輩社員であるメンターについて徹底解説しました。メンターが入社後に適切なサポートを提供すると、若手社員が組織に定着しやすくなります。さらには、組織に人材育成やキャリア開発の重要性が根付き、組織活性化の観点でも良い影響がもたらされます。そうすることで、社内に相談しやすい風土が醸成され、組織全体のエンゲージメント向上にもつながるでしょう。メンターの選任は難度が高く、メンター自身への負担も多くなる場合がありますが、適切に運用できれば大きな効果を期待できます。そのため、まずはご紹介したメンター制度のメリットを活かす人材育成の制度を整えていくことが大切です。

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6.よくある質問

1)メンターとはどんな人?

メンター(Mentor)は「相談者」「助言者」という意味を持ち、ビジネスにおいては新入社員や若手社員に対してアドバイスをしたり、相談にのったりする役割を持ちます。知識や経験が豊富な先輩社員がロールモデルとなり、新入社員や若手社員(メンティー)をサポートしていきます。
また、メンターはメンティーの仕事面のフォローに限らず、精神面のサポートも担当します。組織や仕事に対するメンティーの不安を解消するだけでなく、新入・若手社員の離職率を低減するのも、メンターの役割です。

2)良いメンターとは?

良いメンターとは、メンティーから信頼される人間性や実績、経験を持つ人材です。メンティーとの信頼関係を築くためにも、まずは社内全体での人間関係を構築できている人材が適任といえます。なおかつ、メンタリングに対する理解度と責任感が高く、新入社員や若手社員の成長に意欲的なメンターが良いメンターといえます。

3)メンターに必要なスキルは?

メンターは相手と平等な視点で対話をして信頼関係を築ける、命令や否定、説教をせずに対等なコミュニケーションができる人物が適しています。また、メンティーにとっての目標となるためにも、仕事における実績や経験があり、積極的に人材育成をしようとする意欲の強い、責任感のある人物も理想的です。さらに、組織のことをよく理解し、社内の人間関係を構築している人材であれば安心できます。

この記事の編集担当

黄瀬 真理

黄瀬 真理

大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。

国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定

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