Off-JTとは?メリットやうまく活用するためのポイントなどを解説

企業における人材育成の方法にはいくつか種類がありますが、近年、注目を集めているのが「Off-JT」です。
日本企業では、先輩や上長から教育や実務を通して直接仕事を覚える「OJT」が一般的でしたが、昨今はOJTとは対になる要素を持つ、Off-JTを組み合わせた人材育成に力を注ぐ企業が増えています。

当記事では、Off-JTとはどのような人材育成方法なのか、OJTとの違いや実施するメリット、うまく活用するためのポイントなどを解説します。

2023.11.24
コラム

1.Off-JTとは?

Off-JTは「Off the Job Training」の略称で「職場外研修」とも呼ばれ、オフィスなど、職場とは離れた場所でセミナーや研修を行う人材育成方法を指します。
職場の外で、ビジネスに関する基礎的な考え方や体系的な理論を学習することで、配属後、スムーズに業務に取り組めるようになることを目指す人材育成方法です。

Off-JTの代表的な研修は、新入社員研修や管理職研修、ビジネスマナーに関する研修などが挙げられます。
また、職種別に、特定の専門技術に特化したプログラムが用意されている場合もあります。

1)Off-JTが必要な理由

Off-JTが必要と言われる理由は、Off-JTを通して必要な知識やスキルを体系的に身につけることができれば、仕事の基礎を固められるからです。受講者にとって必要な知識やスキルだけに絞って学習させることもできるため、現場の教育コストも抑えられ、受講者はより効率的に現場で学びを得られます。

また、従来の人材育成方法であるOJT(On the Job Training)は、現場で直接的に仕事を覚えることが重視されてきました。しかし、このOJTだけでは必要な知識やスキルのすべてをカバーすることは難しいのが現実です。また、教育担当者によって研修の質にもバラつきが生じやすいなど、どうしても属人的になってしまいがちな点もデメリットといえるでしょう。

その点、Off-JTはまとまった知識やスキルを体系的に学べるため、OJTのデメリットをカバーすることができます。さらに、昨今はコロナ禍によってリモートワークが普及し、対面で仕事を教えることが難しい場合も多くなりました。eラーニングやウェビナー形式など、オンライン研修を実施できるOff-JTは、こうした課題の解決策にもなっています。

2)Off-JTの種類

Off-JTは、大きく「集合型研修」と「eラーニング」の2種類に分けられます。それぞれの特徴やメリット・デメリットを確認しておきましょう。

・集合型研修

集合型研修は、受講者が特定の場所に集まり、講師による講義を聴講する形式の研修です。
メリットは、研修の目的に合わせて、必要な社員に対して必要な研修を行える点にあります。また、同じ場所で同時に研修できるため、社員同士で内容を振り返ったり、ディスカッションやシミュレーションをしたりすることで、学んだことが定着しやすくなります。
デメリットは、大人数で受講するケースが多いため、受動的な研修になりがちという点です。グループごとにディスカッションする時間などを設けて、能動的に学べる研修にする必要があるでしょう。

・eラーニング

eラーニングは、Web上で配信される動画を視聴する研修形式です。
メリットは、会場費や登壇する講師にかかるコストを削減できる点です。オンラインのため、受講者一人ひとりに合った場所と時間に受講でき、一度動画や資料を作成すれば使い回すことができます。
デメリットは、受講者のモチベーションを高い状態で維持しにくい点です。基本的には一人で受講するケースが多く、自主性を求められる学習体系となるため、eラーニングの達成度を人事評価の対象に組み込むなど、モチベーション低下を避けるための取り組みが求められるでしょう。

2.OJTとOff-JTの違い

OJTとOff-JTには、人材育成の方法、コスト、効果に違いがあります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

■OJTとOff-JTの違い

OJTOFF-JT
育成方法 実際の業務をこなしながら学ぶ 講義形式などで行う
育成コスト ・社内で完結するため、金銭的コストはほとんどかからない
・現場で上司が直接指導するため、時間的なコストが発生する
・外部の講師を招いて研修を行うため、金銭的なコストがかかる
・研修を外部に委託するため、時間的なコストは削減できる
育成効果 ・即戦力となる人材が育ちやすい
・学んだ知識を実務に活かしやすい
・専門性を高めやすい
・体系的に学ぶことで、効率的にスキルアップできる

・育成方法

OJTは、職場で先輩や上長の教育とともに、実際の業務をこなしながら学びを得ていきます。特に営業職のOJTでは、外回りやコミュニケーションといった現場での経験を重視する傾向があります。OJTを推進するために、先輩社員がメンターとなり、密接な指導を行うための体制づくりに取り組む企業も少なくありません。

一方、Off-JTは、専門家の作成したカリキュラムを基に、講義形式などで行われる人材育成方法です。また、OJTとは違い、現場と離れた場所で研修が行われます。対面形式で行う場合もあれば、eラーニングで行うケースもあり、企業の方針や環境に応じて柔軟なかたちで研修することが可能です。

・育成コスト

OJTは社内で完結するため、金銭的コストはほとんどかかりません。しかし、現場で上司が直接指導するため、時間的なコストが発生します。

Off-JTは外部の講師などを招いて研修を行うため、金銭的なコストがかかります。一方、研修を外部に委託するため、時間的なコストが削減できます。

・育成効果

OJTは現場で仕事のノウハウを直接学べるため、即戦力となる人材が育ちやすい傾向があります。また、アウトプットの機会も多いため、学んだ知識を実務に活かす方法が身につきやすくなるでしょう。

Off-JTは階層別や職種別に研修を行えるため、専門性の高い教育を行うことができます。教育内容にムラが生まれにくく、知識やスキルを体系的に学べるため、効率的なスキルアップが可能です。

3.Off-JTのメリット

Off-JTの人材育成方法を採用することで、具体的にどのようなメリットが期待できるのでしょうか。OJTと比較しながら見ていきましょう。

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1)体系的な知識を習得できる

Off-JTのメリットのひとつは、体系的に業務に必要な知識やスキルを習得できる点です。現場で直接学ぶOJTの場合、発生した業務ベースで教育を受けることもあるため、場当たり的な内容になってしまうケースも珍しくありません。
その点、Off-JTであれば本来学ぶべき順番で、もれなく必要な知識やスキルを学習できます。

2)育成効果の均一化が期待できる

Off-JTは複数の社員に対して一斉に実施できるため、育成効果を均一化しやすいというメリットもあります。どの受講者も、その業務に関して必要な知識や考え方などを、順序立てて学習することができます。

実際に業務を進めながら先輩社員や上長がアドバイスやサポートを行うOJTの場合、マンツーマン形式になる傾向が強く、先輩社員や上長の育成スキルによって、研修の質や後輩の成長度にもバラつきが生じます。
その点、Off-JTでは同じ内容を一人の講師が複数の受講者に同時に教えるため、研修を受けた社員の習熟度に大きな差が生じる心配もないでしょう。

3)現場の負担を軽減できる

基本的に、Off-JTでは外部の講師にセミナーや研修を依頼します。従来のOJTでは、同じ職場内の先輩社員や上長が業務をこなしながら、育成カリキュラムの作成や指導に時間を割かなければなりませんでした。それもOff-JTなら基礎的な教育を外部委託したり、配属前にビジネスマナーや基礎知識を習得させたりしておくことができるため、現場社員の負担を大きく軽減できます。
また、社内に対応できる従業員が少ない専門的な分野の指導や教育については、外部のセミナーや研修を利用することで、より学習度を深めることができるでしょう。

4)横のつながりを広げられる

Off-JTの研修ではワークショップやチーム作業を行うこともあります。そのため、受講者同士の交流の機会にもなります。新入社員向けのビジネスマナー研修や管理職向けの研修など、階層ごとのセミナーもあるため、同じ階層同士の社員のつながりを広げられます。横のつながりを拡大させれば、職場の安定感向上やチームワークの強化も期待できるでしょう。

4.Off-JTのデメリット

Off-JTを活用するには、デメリットも理解しておく必要があります。ここでは注意すべき点を確認しておきましょう。

1)効果が見えにくい可能性がある

セミナーや研修のテーマによっては、短期的には効果が見えにくい点がデメリットです。Off-JTの必要性が疑問視され、人材育成にかけられる時間や予算を減らされてしまう可能性もあるため、長い目で見た成長計画をきちんと示すか、実務と直結した内容のOff-JTをうまく組み合わせて、短期的にも長期的にも効果を感じられるような育成計画を立てる必要があるでしょう。

2)参加者の意識の醸成が難しい

Off-JTは基本的に座学形式で行われるため、受講者が受動的になりやすいこともデメリットといえます。講師が受講者へ一方的に情報を発信するだけの場になってしまうケースがあり、受講者が聞いているだけ、その場に参加しているだけ、となってしまうと高い効果が見込めません。
セミナーや研修の内容を工夫したり、ワークショップやチーム作業も組み込んだり、参加者が意識を高く持って受講できるように配慮する必要があるでしょう。

3)コストがかかる

Off-JTは、従来のOJTと比べてコストや時間がかかることがデメリットとして挙げられます。しかし、本来人材育成は長期的な目線で実施されるため、Off-JTにかかるコストは先行投資と捉える必要があるでしょう。特に外部機関にセミナーや研修を委託した場合はその費用も発生するため、実施前に予算を立て、十分に検討することが重要です。

5.Off-JTをうまく活用するポイント

企業ではOff-JTをどのように活用すればいいのでしょうか。次の2つのポイントを踏まえておくようにしてください。

1)学んだことをOJTで実践するためのサイクルをつくる

Off-JTを活用するポイントは、習得した知識やスキルをOJTで実践し、不足した部分があればOff-JTで補う、というサイクルを作ることです。Off-JTで知識やスキルを学んでも、それを実務で発揮できなければ意味がありません。それぞれのデメリットを補う形で育成を進めていきましょう。

2)自己啓発を促す仕組みをつくる

Off-JTもOJTも、参加者が教育を受けるという点において、どちらも受け身になります。社員の成長を引き出すためにも、自発的に学ぼうとする姿勢を促す仕組みづくりが求められます。
セミナーや研修を受けながらインプットとアウトプットができる場を設け、社員自らが学ぶ場も与えることで、教育の効果がより高まります。

自己啓発促進につながる取り組みとしては、学習スペースの提供や資格取得の推進制度などがあります。業務に関わる資格取得をサポートする制度を導入できれば、相乗効果も期待できるでしょう。

6.Off-JTとOJTをうまく連携させて質の高い人材育成を実現しよう

Off-JTは、社員の仕事の土台を形成するための重要な人材育成方法です。適切な教育によって知識やスキルを底上げすることは、サービスや業務の質を担保することにもつながります。
Off-JTをOJTと上手に連携させることができれば、自社の成長や業績向上にも貢献してくれる、企業にとって有用な人材を育成できるでしょう。自社の人材育成方法を見直し、必要な要素は何かを洗い出して改善に役立ててみてください。

この記事の編集担当

黄瀬 真理

黄瀬 真理

大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。

国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定

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