新人教育の目的とは?効果的な育成を行うためのポイント

業界・業種を問わず人材不足が進む現代では、採用した新人の教育に力を入れる重要性が増しています。しかし、実際には新人教育に苦戦する企業も多く、戦力化に時間がかかってしまったり、早期に退職してしまったりするケースも少なくありません。

今回は、新人教育の目的や効果的な育成を行うためのポイントを整理します。具体的な教育手法にも触れますので、新人教育に携わる人事部や研修のご担当者様はぜひ参考にしてください。

2023.01.16
コラム

1.新人教育の目的とは?

新人教育は、新人研修やメンター制度の活用など、企業ごとにさまざまな形で実施されています。そもそも、新人教育にはどのような目的や意味があるのでしょうか。最初に、新人教育の主な目的を解説します。

1) 新入社員が戦力となれるように育成する

新人は、会社に入った段階では仕事に必要な能力を習得していないケースがほとんどです。そのため、新人教育では仕事をする上で必要となるビジネススキルや知識を学んでもらい、新人を戦力化することを目的としています。新人を早い段階で戦力化できれば、従業員一人ひとりの業務量が平準化され、生産性や作業品質の向上が期待できます。

また、多くの新人は、入社時点では社会人としての一般的なビジネスマナーが身に付いていません。早期に現場で活躍できる人材へ育成するためにも、新人教育ではスキルや知識に加えてビジネスマナーを指導する必要があります。

2)早期離職を防止する

厚生労働省の調査結果によると、2020年度の新規大卒就職者の3年以内離職率は31.2%となっています。健全な企業運営を実現するには、新卒人材の早期離職を防ぐことが重要です。それは中長期的な視点での企業成長にもつながります。

新人の早期離職は、適切な人材教育によって防げる可能性があります。例えば、上司がサポートしながら成功体験を感じられる経験を早期に経験することが挙げられます。これにより、自己成長や仕事に対するやりがいを実感できるようになり、早すぎる時期の離職の防止に役立つでしょう。

また、新人の場合、「この職種で働きたい」「このスキルを身に付けたい」といったように、外的なキャリアに目が行きがちなケースもあります。自社で活躍し続ける人材を育てるには、「なぜ希望している職種に就きたいのか」について対話を行うなど、上司が定期的なキャリアの面談を行い新人のキャリア形成の支援を行うことも有効です。従業員が今後のキャリアについて考えながら、主体的に経験を積んでいく機会にもつながります。

【出典】新規学卒就職者の離職状況を公表します(厚生労働省)

1on1のような上司と部下で話せる定期的・継続的な時間を設けることにより、新人が抱えている問題を吸い上げやすい仕組みを作ることもあわせて重要です。

仕事のやりがいの詳細については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
→仕事のやりがいとは?従業員が感じる瞬間と自分で見つける方法

2.新人教育を行う上でのポイント

新人教育は、人材の早期戦力化に有効な手段です。しかし、伝え方が適切でないと新人のモチベーション低下や組織内の人間関係の悪化などにつながる可能性があります。続いては、新人教育を実践する際の指導側の心構えや注意点を解説します。

1)新人の心理的安全性を担保する

心理的安全性とは、同僚や上司など、周囲からの反応をおそれずに自然体のままで意見を伝えられる状態のことです。心理的安全性が確保されていないと、新人は不明点や不安を誰にも相談できなくなるリスクがあります。周りの力を借りられなくなってしまうと、知識や技術の習得スピードが遅くなるでしょう。報連相がスムーズにいかず、トラブルに発展するケースも想定されます。

新人の心理的安全性を確保するには、疑問やつまずきを早期に解決できる環境づくりが大切です。教育係はもちろん、先輩社員も積極的にコミュニケーションを取り、新人が普段から相談や質問をしやすい雰囲気をつくる必要があります。

2)業務内容の手順だけでなく目的や背景を伝える

業務の全体像がわからないと、社員はやりがいを感じづらい場合があります。そのため、人材育成では仕事内容や進め方だけでなく、業務の目的や背景を詳細に伝えることが重要です。業務を依頼した理由や将来どのようなことに役立つのかも明確に伝えることで、本人が仕事の意味を考えるきっかけを与えられると良いでしょう。

3)業務へのフィードバックを積極的に行う

新人の視点では、任された業務をどの程度こなせているのか、自分では理解が難しい可能性があります。そのため、新人教育のプロセスにおいて本人に業務を任せた場合は、フィードバックを積極的に行うことが大切です。

フィードバックを実施する際は、できたことにフォーカスして伝えるようにしましょう。業務経験が十分ではない新人が失敗するのは当たり前です。その中で成長した部分やできるようになった点を評価することで、新人のモチベーション向上につながります。

一方、できなかった部分に関しては、今後につながるような伝え方を意識することが重要です。原因だけでなく改善に向けたステップやコツについて会話をしながら、再チャレンジの機会に繋げていくるのが良いでしょう。

4)新人の仕事に対する価値観を把握する

働き方が多様化する現代では、頭ごなしに組織側の価値観を一方的に共有しようとしても伝わりきらない可能性があります。新人教育においても、新人の価値観に寄り添いながら、仕事の指示を出したり、組織の価値観を伝えたりすることがポイントとなります。
キャリア理論では、その人にとって重要で、譲れない価値観や欲求などのことを「キャリアアンカー」と呼びます。具体的には「自分の仕事を通じて世の中を良くしたい」、「出世したい」、「難題を乗り越えて達成感を味わいたい」など、周囲の変化に影響されない自分の軸となる考え方のことです。新人社員の価値観や大事にしたいことを理解した上で働きかけることで、新人が自分なりに現在の仕事への意味づけをできるようになります。

3.新人教育に用いられる手法

新人教育では、学ぶ内容や目的に応じて複数の教育手法を組み合わせるのがおすすめです。こちらでは、新人教育に用いられる主な手法を3つご紹介します。

1)マニュアルを使った指導

仕事内容の体系的な理解や業務手順の確認など、繰り返し学習が必要な部分に関しては、マニュアルを使った指導が効果的です。新人教育にマニュアルを用いることで、新人教育の効率化や均一化、指導者の負担軽減に役立ちます。

また、マニュアル化によって口頭での説明ではわかりづらい工程やノウハウを可視化できることもメリットです。例えば、画像や動画を載せたマニュアルを用意しておけば、要点を視覚的に把握できるようになり、理解度のアップが期待できます。

ただし、マニュアル作成には手間や時間がかかる点や、定期的な更新が必要となるデメリットもあります。

2)OJT(職場内研修)

OJTとは、現場で教育担当者から業務スキルを学ぶ教育方法のことです。実務を通した実戦形式の研修により、具体的な業務スキルを学べる利点があります。また、新人の成長スピードに応じたカリキュラムを作成しやすい特徴もあります。研修内容が実際の仕事に直結しているため、OJT終了後は即戦力としての活躍が期待できます。

3)Off-JT(職場外研修)

Off-JTとは、職場外でビジネスの基本や専門的な知識、業務内容を学ぶ教育訓練のことです。OJTとは異なり座学やグループワークでの研修が中心となっており、職務現場から離れて仕事に必要とされる能力を養います。新入社員研修やビジネスマナー研修などが代表例です。実施形式は企業ごとに分かれており、外部の研修会社に委託するケースもあれば、社内で集合研修を行う場合もあります。

また、新型コロナウイルスの影響や進捗管理の効率化を目的として、eラーニングでOff-JTを実施する企業も少なくありません。eラーニングとは、パソコンやスマホを活用したオンラインでの学習形態を指す言葉です。

OJTの詳細については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
→OJTは意味がない?目的やメリット、効果的に行うための3つのポイント

4.新人教育のやり方を見直して企業の持続的な発展に役立てよう

今回は、新人教育の目的や実施する際に意識すると良い項目、具体的な手法についてお伝えしました。新人教育は、企業が成長し続ける上で重要性の高いプロセスです。教育内容はもちろん、担当者の教え方や研修の方法を適宜見直し、新人教育の効果を最大化しましょう。

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この記事の編集担当

黄瀬 真理

黄瀬 真理

大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。

国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定

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