エンゲージメントとは?向上のための必要施策や測定方法などを解説

エンゲージメントは、従業員の組織や仕事に対する心理状態を表す言葉です。エンゲージメントを向上させることは職場の活性化につながるだけでなく、顧客満足度の向上や離職防止などにも効果が期待できるため、必要な施策やその測定方法が気になる方もいるでしょう。

今回は、エンゲージメント向上のために必要な施策やエンゲージメントを向上させるメリット、測定方法などを解説します。

2023.08.23
コラム

1.エンゲージメントとは従業員が組織に抱く信頼関係や愛着心のこと

「エンゲージメント(engagement)」という言葉は、さまざまなシーンにおける「つながり」や「関係性」「契約」といった意味を持ち、ビジネスやHR(Human Resources)領域においては、従業員が組織に対して抱く信頼関係や愛着心のことを指します。
また、会社に貢献したいという気持ちや、仕事・組織へ主体的に貢献しようとする意欲といった、従業員の心理状態を指す言葉として用いられることもあります。

2.エンゲージメントの向上が必要とされる背景

近年エンゲージメントが注目される理由は、大きく3つのポイントに分けられます。どのような背景があってエンゲージメントの向上が必要といわれているのかを見ていきましょう。

1)人材の流動化が進んでいる

エンゲージメントの向上が必要な背景のひとつとして、人材の流動化の進行が挙げられます。
若手を中心に、定年までひとつの組織で勤め続けるという従来の労働観を持つ人は減少しています。そのため企業にとっては、いかにして優秀な従業員に自社で活躍し続けてもらうかが喫緊の課題となっています。
従業員のエンゲージメントを高めることで自社への帰属意識が高くなると、離職リスクを下げることにもつながります。定着率の維持・向上という観点でも、エンゲージメントの向上に取り組む企業は増えているのです。

2)個人と組織の関係性が変化している

ITの発展やAIの活用、市場の国際化などにともない、消費者ニーズも多様化しています。こうした変動の激しい時代において社会で求められるためには、スキルや価値観をアップデートし、変化に柔軟に対応し続ける人材になることが求められています。個人が主体的に自らのキャリアを考え開発すること、つまりキャリア自律が、今まさに求められているのです。

その流れの中で、個人と組織の対等な関係性は、企業にとって重要な観点になりつつあります。個人にキャリア自律が求められるとともに、組織にはそうした自律した個人に選ばれる組織にすることが求められているのです。自律した個人にとってエンゲージメントが高い状態をつくることができれば、個人と組織のよりよい関係の先の、さらなる成果を目指していけるでしょう。

3)コミュニケーションの非対面化が進んでいる

エンゲージメントが必要とされるのは、コミュニケーションの非対面化が進んでいるからでもあります。
ここ数年のリモートワークの浸透により、コミュニケーションの非対面化が進みました。そうした状況に適切な対応がなされない状況が続いてしまうと、「自分は役割を果たせているだろうか」「正当な評価をもらえているのだろうか」といった従業員の不安や不満の原因となり、結果としてエンゲージメントの低下を招くことがあります。
こうしたことを要因とした離職や生産性の低下を生まないためにも、エンゲージメントの状態を把握することや、それを維持向上させる取り組みが重視されているのです。

3.エンゲージメント向上のために必要な施策

エンゲージメントを向上させるには、どのような施策が効果的なのでしょうか。
ここでは、エンゲージメント向上につながる7つの取り組みをご紹介します。

1)企業理念・ビジョンを浸透させる

エンゲージメント向上を考えるにあたり、企業の掲げる理念やビジョンの浸透が大切です。従業員がそれらを理解し共感できているほど、企業への貢献意識も強くなる傾向があるからです。
理念やビジョンの理解・共感とともに、自社の提供価値を従業員が明確に理解している状態をつくる必要もあるでしょう。例えばミーティングや社内報などを活用し、企業理念やビジョンを伝え続けることは効果的です。そのような形で、日常的に伝え続けることが、理念やビジョンの理解と浸透につながります。

2)納得性の高い人事評価制度を整え正しく運用する

正当な評価をしてもらえていない、という不安や不満はモチベーションの低下や離職を招きます。公平性の高い人事制度を整え、正しく運用することが重要になるのです。

例えば、成果から判断する成果評価だけでなく、企業理念やビジョンの体現度を見る情意評価や、成果に至るまでの遂行力を評価する能力評価などの多様な観点を評価基準に取り入れることも、納得性の高い評価制度にする方法のひとつです。
さらに、評価者が従業員一人ひとりに、評価の根拠を十分に説明することも大切です。
目標を立て、行動し、評価やフィードバックを受けて結果を次の成長に活かすサイクルを回し、従業員が納得して働いている状態を目指すことそのものの重要性を、評価者が理解し実践できるようにしましょう。

3)承認と称賛の文化をつくる

一人ひとりを尊重する企業では、個人は立場を問わず意見しやすく、組織は能力に応じて責任ある仕事を任せチャレンジを応援する文化が根付きやすいといえます。そうした環境が、個々の愛社精神につながるといえます。

努力や成果をきちんと称賛することで従業員の自尊心を高めることができます。個人のその組織における貢献や活躍が認められることは、その組織に対するエンゲージメントの向上にもつながります。社内表彰制度を設けるなど、従業員の意欲を引き出す取り組みを実施すると良いでしょう。

4)社内のコミュニケーションを改善する

組織内でともに働く仲間を信頼できることや、自社への愛着が持てることもエンゲージメント向上には欠かせません。社内のコミュニケーションをより良くし、従業員同士の信頼関係が育みやすい状態をつくることは、エンゲージメント向上につながる要素です。
社内コミュニケーションを活発化させるための具体的な取り組みとしては、従業員同士で贈り合う「サンクスカード」や定期的なランチミーティングなどの施策が挙げられます。リモートワークが中心の職場であれば、オンラインでの1on1ミーティングや、社内SNSの活用なども効果的な場合もあります。自社に合う方法を取り入れてみるのもよいでしょう。

5)上司のフィードバックスキルを高める

上司がフィードバックの目的や意義をきちんと理解した上で、そのスキルを高めることができれば、メンバーが将来に向けたキャリアの展望を描きやすくなり、エンゲージメント向上につながるでしょう。
管理職向けのフィードバック・評価面談研修を実施して、部下への評価の伝え方や、活用方法をアップデートするとよいでしょう。適切なフィードバックが、チーム全体のモチベーションや生産性の向上につながります。

6)従業員がワークライフバランスを整えられる環境づくりをする

基本的な部分ですが、従業員がきちんと休みを取れているか、長時間労働が常態化していないかといった点を常に確認しておくことが大切です。その上で、必要に応じて休日制度や勤務時間を見直しましょう。
ワークライフバランスを整えるための具体的な施策例としては、フレックスタイム制や有給休暇取得日を事前に決めておく計画的付与、ノー残業デーなどがあります。仕事とプライベートの適切なバランスは人によってさまざまです。個々の成果向上につながるバランスを自ら選択できる環境かどうかが、大事なポイントです。

7)キャリア開発を支援する

キャリア開発の支援を通じて従業員が成長を実感できれば、生産性の向上や組織への貢献意識の高まりが期待できます。従業員一人ひとりが自分の未来の姿を描くことができるようになれば、現在の仕事や組織へのコミットも上がるはずです。
さらに、会社がキャリア開発支援に真剣に取り組んでいることがわかると、従業員の人生を尊重する組織だという印象が従業員に伝わるというメリットもあります。このことが、結果としてエンゲージメント向上につながるのです。

キャリア開発支援のための具体的な施策としては、年代別や異動・昇進といった転機別の研修を通して気づきを得たり、個別のキャリアコンサルティング面談を通じて自身のキャリアについて深く考えたりするなどの方法があります。
また、能力開発支援や教育訓練休暇の付与、社内公募制度を整えるなど、ありたいキャリアの実現に向けた環境整備をすることもキャリア開発支援の一環だといえるでしょう。

4.エンゲージメントを向上させるメリット

エンゲージメントを向上させることで、具体的にどのようなメリットが得られるのでしょうか。
ここでは、エンゲージメントを向上させることで得られる3つのメリットについて説明します。

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1)職場の活性化につながる

職場の活性化につながる点は、エンゲージメントを向上させるメリットのひとつです。
職場が活性化すれば、自身の仕事だけでなく、組織をより良くするためにどのような取り組みが必要なのかを考える従業員の増加も期待できるでしょう。そうした自主性のある人材が増えることで、職場の生産性および業績の向上にもつながります。

2)顧客満足度が向上する

顧客満足度の向上も、エンゲージメントを高めるメリットです。
従業員のエンゲージメントが高いほど、会社の価値向上や業務改善に向けた提案や努力も積極的に行っている状態であるといえるでしょう。そのような従業員の働きが商品やサービスの品質向上につながり、結果的に顧客満足度を高めることにもつながります。組織の信頼度向上にもつながるでしょう。

3)離職防止につながる

従業員のエンゲージメントが高い状態を維持できれば、万が一、従業員から不満が出てきた場合も、組織と意見のすり合わせをしようとするなどの前向きなアクションにつながり、改善していける可能性が高まります。
エンゲージメントの維持・向上は、離職防止にもつながるのです。

5.エンゲージメントを測定するには?

組織のエンゲージメントを測定する方法のひとつに「エンゲージメントサーベイ」があります。
エンゲージメントサーベイとは社内調査のことで、組織の状態を可視化する診断ツールです。

調査結果から組織の状態が把握でき、組織が目指す姿とのギャップが見えてこれば、課題が明確になり、優先順位をつけて、効果的な施策を講じられるようになります。なお、実施した各種施策の効果検証のためにも、エンゲージメントサーベイは定期的に行うことが大切です。

6.エンゲージメント向上のためには組織の現状を把握することが大切

自社の状態を常に把握し、目標を明確にした上で課題を明らかにすることは、エンゲージメントの維持・向上やその先の価値発揮に向けて重要です。
また、エンゲージメント向上のための施策を検討する際は、外部の専門企業に相談するのもおすすめです。自社の状況に適した効果的な施策を講じることで、効率良く価値創造に向かっていくことができるでしょう。

株式会社ライフワークスでは、人事担当者様を対象に、従業員のキャリアに応じた会社ごとの課題を明確にし、その解決に向けたソリューションをご提案しています。戦略的エンゲージメントについてのセミナー内容をまとめた資料などもご提供しています。従業員のキャリアに関するテーマで、施策の壁打ちも可能です。ぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事の編集担当

黄瀬 真理

黄瀬 真理

大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。

国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定

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