ジョブクラフティングとは?研修方法やメリット・デメリットを解説

ジョブクラフティングとは、自分の働き方を主体的にデザインし、カスタマイズすることです。仕事をやらされ感ではなく、やりがいを見出すことで、意義深い仕事に変える方法です。働き方改革やキャリア自律など外部環境の急激な変化を追い風に、このジョブクラフティングが注目されています。ジョブクラフティングを企業研修に取り組むことで、自社の従業員のモチベーションが上がり、仕事の生産性も上がり、結果、従業員の離職率も減少するかもしれません。

本記事では、ジョブクラフティングについて、具体的な導入事例を交えながら、メリット・デメリットについて解説をしております。御社のジョブクラフティング導入の一助となれば幸いです。

2023.09.26
コラム

1.ジョブクラフティングとは

まず、ジョブクラフティングとは何でしょうか?その概要と背景を解説してまいります。

1)ジョブクラフティングの概要

ジョブクラフティングとは、簡単に言うと従業員の仕事に対する「やりがい」や「自律性」を高める方法です。2001年に米・ミシガン大学のジェーン・ダットン教授と米・イェール大学のエイミー・ウルゼスニウスキー教授により開発されました。

ジョブクラフティングは、従業員が主体性を持って仕事をするための人材育成法の一つとして注目されている考え方です。仕事を「やらされ感」でこなしていると、仕事への責任感やプロとしての意識を持ちにくく、生産性にマイナスの影響が及ぶとされています。

そこで、業務のやり方を工夫したり、仕事に対する考え方を見直したりと再設計することで、仕事に対する考え方にささやかな変化を与えます。このような小さな変化の積み重ねが経験となり、やがて仕事にやりがいや意義を感じられるような大きな変化をもたらすことができるとされています。

2)ジョブクラフティングが注目されている背景

では、なぜ今、ジョブクラフティングが注目されているのでしょうか?その背景としてはまず、終身雇用の崩壊が挙げられるのではないでしょうか。雇用形態が多様化し、自分のキャリアを自分でデザインする必要性が高まっていることが挙げられます。ジョブクラフティングは、キャリア自律を促すという観点からも重要な取り組みになるのです。

また、外部環境が著しく変化する現代では、仕事内容が著しく複雑化・曖昧化し、自分の役割・責任の範囲が曖昧になりがちという背景がありそうです。仕事範囲が曖昧であると、どの仕事が自分の仕事なのか曖昧になり、仕事に主体性を持つ範囲・対象がわかりにくく、混乱をきたすからです。

3)ジョブデザインとの違い

ジョブクラフティングとジョブデザインの違いは、「主体性」にあります。ジョブクラフティングは、従業員自身が自分の働き方をデザインし、カスタマイズする方法です。今ある仕事(ジョブ)について、意味づけを行い、前向きに取り組んでいただく、意識改革的な位置づけも大きいでしょう。

それに対して、ジョブデザインは、組織や上司が従業員にやりがいを持てるような仕事を与えることを指します。どちらも仕事のデザインに着目していますが、ジョブクラフティングは自発的でボトムアップ的な行動であり、ジョブデザインは、受動的でトップダウン的な行動に特徴があると言えるでしょう。

2.ジョブクラフティングのメリット

では、ジョブクラフティングのメリットとは何でしょうか?以下、メリットの7点を挙げてみましょう。

1)離職率の低下

自社の仕事に意味や意義を見いだすことで、離職率の低下が期待できます。もし、従業員が仕事=収入の手段として捉えているだけであれば、仕事にやりがいを見いだせず、転職してしまう可能性があるかもしれません。しかし、仕事に「意味・やりがい」を従業員が感じることで、従業員の離職率は相応に低下するものと期待されています。

2)仕事に対するモチベーションの向上

次に、今ある仕事・業務との向き合い方を見直すことで、仕事に対するモチベーションの向上が期待できるという点です。なんとなく、やらされ感で行う仕事と、自分から主体的に行う仕事では、そのモチベーション向上の効果は全く異なってくると言えるでしょう。

3)生産性の向上

次に生産性の向上です。従業員が仕事に前向きに取り組めると、業務は効率化し、かつ、その仕事に取り組む従業員のスキルアップの推進にもつながりやすくなります。従業員個人の生産性の向上は、最終的には会社全体の生産性の向上にもつながっていくでしょう。

4)新しいアイデアを生み出す機会の創出

新しいアイデア創出の機会も増えるでしょう。従業員の自主的な行動や発想を尊重することで、新しいアイデアを生み出す機会の創出が期待されます。

5)社内コミュニケーションの活性化

働く人々が主体的に行動できるようになることで、仕事上の情報交換など、従業員同士のコミュニケーションの活性化や交流増加が期待できるでしょう。

6)従業員満足度が高まる

日々の業務を主体的に取り組むことにより、業務の生産性があがり、他者から感謝され、従業員が「やりがい」を感じられるようになれば、従業員満足度が高まる可能性が高いでしょう。

7)リーダー育成に役立つ

主体的に仕事に取り組むことで、「自分の役割を理解し計画を立て、周囲と協力して推進する」といったリーダーに必須のスキルも身につくため、従業員のリーダー育成にも寄与するといわれています。

3.ジョブクラフティングができていないとどうなる?

では逆に、ジョブクラフティングができていないとどうなるのでしょう?次の3点が危惧されます。

1)離職率に影響する

ジョブクラフティングができていないと、従業員の離職率に影響する可能性があります。仕事に主体的に取り組めないことで、従業員は仕事にやりがいを見いだせず、仕事を継続するのが、次第に苦痛になってくるかもしれません。これにより、離職する従業員が増えるリスクがあります。

2)従業員の仕事に対するモチベーションが低下する

従業員の仕事に対するモチベーションが低下するリスクがあります。仕事の意味づけが曖昧なまま、やらされ感で仕事をすることは、仕事に対するモチベーション低下につながっていくでしょう。一度下がったモチベーションを上げることは非常に難しいため、ジョブクラフティングに取り組むことが肝要になります。

3)従業員満足度が低下する

従業員の会社や仕事に対する満足度が低下することも考えられます。モチベーションが上がらなければ、次第に、従業員満足度も低下します。

4.ジョブクライフティングのデメリット

では、逆にジョブクラフティングを実施する事のデメリットはあるのでしょうか?
以下2点が考えられます。

1)従業員にとってストレスとなる

ジョブクラフティングは従業員主体で行うため、会社側からその意義や具体的な進め方を正しく伝えないと「どうしたら良いのかわからない」「何かしなければ」などと、不安や焦りを感じる従業員が出てくる可能性があります。人事部門などが、ジョブクラフティングの意義と進め方を伝えるガイダンスを行い、従業員を支援していくことが重要になるでしょう。

2)仕事が属人化してしまう

ジョブクラフティングでは「自分らしい仕事」が重視されますが、これが行き過ぎてしまうと「仕事の属人化」が起きてしまうリスクがあります。「自分らしい仕事」として、主体的に取り組み、モチベーションが高まるのは良いことですが、jobクラフティングを正しく理解していないと、自分でないとわからないやり方で仕事を構築してしまうことも発生しかねません。そうなると、その仕事は、その人しかわからない仕事になり、属人化してしまうでしょう。

5.ジョブクラフティングのやり方

では具体的なジョブクラフティングのやり方について解説していきましょう。

1)STEP1 業務内容をすべて洗い出す

まず、業務内容を全て洗い出す必要があります。特に、退屈な作業、つまらないと思っている業務こそ、細かく書きだす必要があります。

2)STEP2 仕事の目的や動機、自身の強みなどの自己分析

次に、仕事の目的や動機、自分自身の強みなどを自己分析し、仕事で活かすことのできていないスキルや特技を書きだし、可視化し、自分自身を見つめなおす必要があるでしょう。自分が活かせていないスキルや特技を活かせる方法を考えるのも、ジョブクラフティングの重要なステップです。

3)STEP3 仕事の捉え方の見直し

ここで仕事の捉え方の見直しを行います。自分自身にとっての仕事の意味や意義、会社や社会への貢献度を見直すことが重要です。

4)STEP4 仕事の内容や方法と人間関係の見直し

最後に、仕事の内容や方法のみならず、人間関係の見直しも必要です。退屈に思える作業でも誰かの役に立っているのではないか、つまらないと思っている仕事でも、自身の強みを活かすことで誰かにとって面白い仕事になっているのではないかという観点もあるからです。
これらをもってすべての仕事をとらえ直すのです。

6.ジョブクラフティングにおける3つの重要な視点

ジョブクラフティングにおける3つの重要な視点があります。それは、以下の3点です。

1)作業クラフティング

この具体事例としては、「追加すべき業務や削除すべき業務を見極めて、仕事の内容を充実させる」「細かな業務の必要性を見極めて、仕事の進め方を工夫する」というものです。

2)人間関係クラフティング

この具体的な事例としては、「仕事でかかわる人への接し方を丁寧に見直す」「コミュニケーションを工夫して良好な人間関係を築く」などがあります。

3)認知クラフティング

この具体的な事例としては「仕事の内容や質を見つめ直す」「社会的な側面から自身の業務がどのような価値を持っているのかを考えてみる」などがあります。

7.ジョブクラフティングの注意点

ジョブクラフティングの注意点としては、以下4つを挙げてみましょう。

1)従業員の自主性を尊重し、主体性を発揮できる機会をつくる

まず、ジョブクラフティング自体、人事部門や上司から強制的に進めてしまっては、従業員の自主性をつぶしてしまい、逆効果になってしまいます。あくまで、従業員が主体で、従業員に考えてもらう機会を提供し、人事部門や上司はあくまでサポート役に徹するのが良いでしょう。

2)仕事が属人化しないようフィードバックの機会を設ける

次に仕事が属人化しないように、フィードバックの機会を設けるのも大事な取り組みです。例えば、先ほどの3つの視点のジョブクラフティングを参考に、仕事をどのように捉えて進めているのか、上司も知っておく必要があるでしょう。もしも属人化が進むようなら、進め方の軌道修正も必要です。

3)チームワークが重要な業務においては効果が発揮されにくい

チームワークが重要な業務によっては効果が発揮されにくいので、注意する必要があります。ジョブクラフティングはどちらかというと個人タスクに適しています。あくまで、自分の主体的な取り組みになるので、多くの人数を巻き込むと非常に複雑になってしまいますし、考えがまとまらないことがあります。

4)従業員の目標や仕事を見つめ直した結果を共有できる場を設ける

最後に、従業員の目標や仕事を見つめ直した結果を共有できる場を設けることが大事になってきます。従業員の目標や仕事を見つめなおした結果を、他の従業員に共有することで、他の従業員のジョブクラフティングに対する取り組み意欲も増し、相乗効果が見込めるでしょう。

8.ジョブクラフティングの要素を研修に取り入れるには

では、いよいよ、ジョブクラフティングを研修に取り組みたいと考えた場合、どうすればよいでしょう。

1)はじめに

まず、ジョブクラフティング研修の全体像、概要を整理しましょう。どのように研修全体を構築するのか、全体像を考えることが必要です。

2)研修の目的

次に目的です。なぜ、ジョブクラフティングに取り組むのか。その目的が明確でないと、成果もはかれません。どのような課題があり、何を目指すのかを明確にしましょう。

3)研修の進め方

いよいよ研修実施にあたっては、研修の受講者に全体概要と目的を伝えたうえで、あくまで従業員が主体的に取り組むことの大切さを伝えましょう。どちらかというと、座学中心ではなく、ワーク中心が良いでしょう。自分自身で仕事の振り返りを行うリフレクション時間を設けるほか、他人の意見も聞いてみるグループワークを導入してもいいかもしれません。

9.ジョブクラフティングの具体事例

では、ジョブクラフティングを実際に行っているケース、企業はあるのでしょうか?具体事例を挙げてみましょう。

1)東京ディズニーランドの清掃員のケース

ジョブクラフティングの導入事例として、よく紹介されるのが掃除スタッフです。「東京ディズニーリゾート」のケースを取り上げましょう。東京ディズニーリゾートのスタッフは、お客様に夢や魔法を提供するというミッションに共感しています。掃除係のスタッフも、自分の仕事を「来場者をおもてなしする一員」と捉え、お客様とのコミュニケーションや笑顔を大切にしています。単に掃除をするという労働としてではなく、仕事にポジティブな意義づけを行っているのです。

2)ホテルの清掃員のケース

自分の掃除する部屋に小さなメモやお菓子を置いて、宿泊客とのつながりを感じるようにするという工夫があります。このようなことで、ホテルの清掃スタッフは、直接、ゲストとコミュニケーションや御礼の言葉を受け取ることができ、自分の仕事とお客様とのつながりを感じられるのです。

3)給与明細にお客様の声

毎月もらう給与明細や、毎回従業員の目に届く掲示板に、「お客様からの御礼の声」を掲載する企業もあるようです。これにより、お客様と接点のないバックオフィスのスタッフも、自分の仕事とお客様とのつながりを感じられ、自分の仕事を捉え直すきっかけになることがあるのです。

4)グーグルのケース

グーグルは、従業員に自分の時間の20%を自分が情熱を持っているプロジェクトに使うことを許可しています。グーグルの20%ルールとしても有名です。これは、彼らに自分の興味やスキルに合わせて主体的にタスクを変える機会を与え、新しい製品やサービスを革新することができます。これも、一つのジョブクラフティングと言ってよいでしょう。

10.ジョブクラフティングの重要性

外部環境はますます不安定で不確実な状況になりつつあります。また、個人の価値観もこれに伴い、多様化が加速しています。このような環境において、従業員が主体的に仕事への向き合い方を変え、楽しくやりがいを持って働くためにジョブクラフティングはますます重要となってくるでしょう。

忙しい日常の中で、一人の個人が自発的に意識することは難しいかもしれません。だからこそ企業が仕組みや研修のなかに取り組むことで、ジョブクラフティングの概念を従業員に伝えていく意義があるでしょう。

この記事の編集担当

黄瀬 真理

黄瀬 真理

大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。

国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定

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