アサーションとは?意味やスキルの特徴、トレーニング事例を解説
テレワークなどが推進された背景もあり、社員同士のコミュニケーションに課題を抱えている企業が少なくありません。近年では、ウィズコロナ時代のニューノーマルが浸透しコミュニケーションの手法が大きく変化した組織も多く存在します。日頃の業務連絡から会話まで、円滑なやり取りを実現する「アサーションスキル」の習得を目指しましょう。
本記事では、アサーションスキルの基礎知識から、トレーニング方法、企業にもたらす効果、実現方法まで解説します。一人ひとりの社員が適切な自己主張ができる組織を目指して、ぜひ施策をご検討ください。

アサーションスキルに関する基礎知識
初めに、「アサーション」の用語の意味や、自己主張の分類とそれぞれの特徴など、基礎知識をご紹介します。アサーションに注目して社員のスキルアップを目指しましょう。
アサーションとは?
「アサーション」とは、自分と相手の価値観を尊重しながら、対等な立場で主張や自己表現を行うコミュニケーションのことです。英語のassertionという言葉には「自己主張」という意味があります。アサーションは、アメリカで心理療法の一種である「行動療法」から生まれたコミュニケーション方法で、ビジネスシーンでも有効と考えられています。
社員にアサーションスキルがあれば、適切な伝え方でお互いに率直な意見を交わし、職場で円滑な対人関係を築きやすくなるのがメリットです。こうして社内コミュニケーションが活性化すれば、生産性が向上し、イノベーションが生まれやすい組織になります。
自己主張の種類
- アサーティブ
意見の主張を行いながらも、相手の立場・状況に配慮し、自分以外の意見も受け入れるコミュニケーションスタイルです。後述する「ノンアサーティブ」と「アグレッシブ」の、それぞれの長所を兼ね備えている点が特徴です。 - ノンアサーティブ(非主張型)
受動的なコミュニケーションスタイルです。自身の意見を主張するのが苦手で、相手の意見を受け入れる傾向にあります。その一方で、多様な立場の人に配慮したり、共感したりできる一面があるのも特徴です。 - アグレッシブ(攻撃型)
攻撃的なコミュニケーションスタイルです。自身の意見を主張しますが、相手の意見を考慮するのが苦手な傾向にあります。ただし、長所を生かせばリーダーシップを発揮するケースも多いといえます。
リーダーシップの詳細については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
→リーダーシップの種類と今求められるリーダーシップのスタイルとは
アサーションスキルを向上させるトレーニングの例
社員のアサーションスキルを向上させるには、フレームワークを活用するのがおすすめです。代表的なトレーニング方法として「DESC法」と「アイメッセージ」をご紹介します。
DESC法
アサーションスキルを複数のステップに分けて実践する手法です。DESC法では、以下の4つのステップがあります。
・描写(Describe)
・説明(Explain)
・提案(Specify/Suggest)
・選択(Choose)
上記の4つの単語から頭文字を取って「デスク法」と読みます。DESC法のステップでは、まず現状を伝えて、自分の意見を説明した上で、相手に解決策や代替案を提案し、最後に選択肢を示す手順となっています。
アイメッセージ
英語で「I message」と表記し、自分を主語にして伝える方法のことです。アイメッセージの反対に、相手を主語にした伝え方は「ユーメッセージ(You Message)」と呼ばれます。アイメッセージとユーメッセージの違いを、以下の具体例で確認してみましょう。
アイメッセージ:「期日までに資料を用意してもらえると助かります」
ユーメッセージ:「期日までに資料を用意してください」
アイメッセージで気持ちや考え方を表現した事例のほうが、より柔らかい印象になるのがわかるでしょう。同じ内容でも、言い方や書き方を少し変えるだけで、相手に判断を委ねるような伝え方になります。
アサーションスキルの習得で期待できる効果
なぜ社員にアサーションスキルを身に着けさせる必要性があるのでしょうか。ここでは、スキルの習得が社員のどのような成長につながるのか、企業が期待できる効果を解説します。
社内のコミュニケーションスキル向上
社員がアサーションスキルを習得すると、業務上で立場の異なる人と円滑に意見を交わすコミュニケーション能力が身に付きます。なぜなら、相手の感情や背景などに配慮した伝え方ができるようになるためです。
社内には多様な役割や状況の人がいるため、自分の意見を伝えるのが難しい場面もあります。人によっては我慢や無理をしてストレスを溜め込んでしまうこともあるでしょう。そこでアサーティブコミュニケーションを定着させれば、風通しの良い企業風土が作られます。社内の風通しが良くなることで、生産性・エンゲージメントの向上にもつながります。
職場の人間関係のリスク対策
多くの企業でハラスメントのリスクが課題となっています。アサーションを意識したコミュニケーションは、信頼関係の構築に役立つことから、人間関係のリスク対策にも効果的です。ハラスメントは主に上司・部下間など、立場の異なる関係性で問題が発生しやすいと考えられています。互いを理解しながら意見を交わせる環境ができれば、結果として適切なコミュニケーションの実現につながるでしょう。
なお、職場で起こり得るハラスメントの中でも、周囲からの発見が遅れやすいといわれるのが「モラルハラスメント(モラハラ)」です。以下の記事では、上司・部下間以外の関係性でも発生するモラルハラスメントについて詳しく解説しています。アサーションに関連する知識であるため、ぜひお読みください。
取引先への提案や交渉技術のアップ
アサーティブコミュニケーションは、社外の顧客対応においても有効です。自分と取引先が互いを尊重する誠実なコミュニケーションができるようになることから、取引先との関係性を良好に保つ上でも効果的だと考えられています。
自社の社員にアサーションスキルがあれば、自分の意見や主張を取引先へ一方的に押し付けるような事態を避けられます。反対に、相手から一方的に要求を受ける事態の回避にもつながるでしょう。
職場でアサーティブコミュニケーションを実現するポイント
職場でアサーティブコミュニケーションを取り入れるには、どのような方法を採用し、どのような取り組み方をするべきでしょうか。最後に、施策を成功へ導くコツをご紹介します。
社員研修にアサーショントレーニングを取り入れる
まずはコミュニケーションスキルを向上させる目的で社員研修を実施し、アサーティブコミュニケーションの基本を定着させましょう。講座などの座学を通して、社員にアサーションの重要性から理解させることが大切です。また、理論を学習するだけでなく、グループワークやロールプレイングで具体的な実践方法を学ぶことも重要といえます。
社員が主体的に学習して、日頃のコミュニケーション改善に生かせれば、組織として心理的安全性を高めることにもつながります。一人ひとりの社員が安心して発言できる職場環境があると、チームの生産性を高められる点にも注目です。
以下の記事では、チームのコミュニケーションに関して知っておきたい「心理的安全性」の基礎知識を解説しています。ぜひアサーショントレーニングの施策と併せてご検討ください。
スキル向上のための取り組みを継続的に行う
社員にアサーションスキルが身に付くまでは一定の期間が必要となるのが注意点です。コミュニケーションには失敗がつきものであると捉え、改善を繰り返し継続的に取り組みましょう。
たとえば、よくある失敗として「自分の意見を主張した際に攻撃的・否定的に聞こえてしまった」といったケースがあります。上司の助けも借りながら、該当する社員が原因を分析して改善へ取り組み続けられると理想的です。
社員のアサーションスキル習得を推進しましょう
アサーションスキルの基礎知識から実現方法までお伝えしました。組織の働き方を見直してより良い成果をあげるためには、円滑なコミュニケーションが重要なポイントとなります。コミュニケーションを強化することは、組織の生産性向上にも役立ちます。アサーティブなコミュニケーションには、組織の力を高める効果があるといえるでしょう。今回ご紹介した情報を、ぜひ組織のマネジメントにお役立てください。
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この記事の編集担当

黄瀬 真理
大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。
国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定
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