リカレント教育とは?メリット・デメリットやリスキリングとの違い

人生100年時代と言われている今、リカレント教育、リスキリング、学び直しなど、学びに関するテーマが注目されています。これからの時代は、学びに終わりはなく、「常に学び続ける」 心構えが必要でしょう。

リカレント教育のメリットやデメリット、具体事例を知って、個人のキャリアや組織の人材戦略に活かすことが、これからの時代には重要です。

組織としてリカレント教育を導入する場合は、社員一人一人のキャリア意識を醸成する支援もあわせて考えることが重要な観点でしょう。

先行きが見えない時代だからこそ、自社のリカレント教育について今一度整理し、考えてみてはどうでしょうか。以下の情報が、お役に立てば幸いです。

2022.09.20
コラム

リカレント教育とは

リカレント教育とは、「学校教育からいったん離れたあとも、それぞれのタイミングで学び直し、仕事で求められる能力を磨き続けていく社会人の学び」を意味します。厚生労働省では、経済産業省・文部科学省等と連携して、学び直しのきっかけともなるキャリア相談や学びにかかる費用の支援などに取り組んでいます。

【参考引用:厚生労働省

リカレント教育とリスキリングの違い

「リカレント教育」と混同しがちな言葉・概念として、「リスキリング」があります。近年は、特にデジタル化と同時に生まれる新しい仕事に適応したり、デジタルを活用して仕事の進め方を大幅に変えたりしながら、事業の成長や業務の効率化等を図っていくことがリスキリングの目的です。そのために企業が主導して、人材戦略として従業員に学びなおしの機会を与えることが「リスキリング」です。

一方で、「リカレント教育」は「就労と教育を交互に繰り返しながら、本人が主体的に学び直しを行い、新たなスキルや知識を習得すること」であり、時には離職中に学習することも想定されています。例えば、本人が、自主勉強のために休暇制度を活用し、大学のプログラムに参加して、その後に職場に復職するなどの方法もリカレント教育でしょう。「リカレント教育」は、自己啓発やスキルアップを目的としています。

リカレント教育が必要とされる背景

リカレント教育の重要性がなぜ増しているかの背景・理由については、以下3つがあるでしょう。

1) VUCAという激動時代

VUCAとは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った略称で、技術革新などにより未来の予測が難しくなる環境を意味します。このような先行きが全く見えない時代が到来すると、今ある知識・スキルがすぐに陳腐化し、使い物にならなくなってしまいます。「ライフステージごとに常に学びなおしをする」ことで、変化に対応する姿勢が問われているのです。

2) 人生100年時代

人生100年時代と言われています。今後、平均寿命が延び少子高齢化となる日本では、一旦定年となった後も、健康である限り何かしらの形で仕事に就く人が多い時代になっていく可能性があります。年齢に関わらず、自分自身のスキルや経験、持ち味を活かせるように市場環境にアンテナを張り、自らで社会に必要とされる人材になる心構えが大切になります。

3) 終身雇用時代の終焉

日本企業特有の終身雇用制度はある意味、崩壊したと言われています。従業員が定年になるまで社員を雇い続けることが当たり前の時代は終わったと言えるでしょう。一人一人が自らの人生やキャリアに責任を持って、人生を歩んでいく必要があります。このような時代には、主体的に学び続け、教育訓練を受けるなど、時代が求める人材に自らアップデートしていくことが重要になってくるのです。

リカレント教育メリット・デメリットとは

リカレント教育、のメリット・デメリットを具体的に徹底解説しましょう。

1) リカレント教育のメリット

リカレント教育のメリットとは何でしょうか?学びなおしの導入により、従業員の視野が拡がり新しい視点や考え方を持てるようになるメリットが挙げられます。スキルアップすることで自分らしいキャリアを歩むための選択肢が増えるというメリットがありそうです。自分にとってのメリットがあることに従業員が気づけば、企業が学びの場を提供する環境について、従業員エンゲージメントが向上することも期待できるのではないでしょうか。

一方、海外と違い、日本のリカレント教育への取り組みは、遅れていると言われています。転職を繰り返し、自らキャリア形成していくキャリア志向の強い海外では、常に「学びなおし」の意識が個人に定着しています。自らキャリアアップしていくためには、自分自身を磨いていくしかないからです。例えば、MBAなど経営学修士コースへの参加も若い方だけではなく、高齢になってからの参加も見られるようです。キャリアコンサルティングやコーチングを自らお金を払って受ける方が多いのも海外の特徴です。一方、日本の場合は、終身雇用の文化の元、一人一人がそこまでキャリアに問題意識を持たなくても、定年まで生涯、会社が面倒を見てくれる時代が長く続きました。こういった背景もあり、一人一人が自分事化として「学びなおし」を意識するニーズ、必要性が少なかったのでしょう。

2) リカレント教育のデメリット

リカレント教育のデメリットを挙げるとすれば、企業視点では、追加コストがかかるという点でしょう。大規模な企業であればあるほど、新しいスキルを、数百人、数千人規模に身に着けさせるには、研修コストも時間コストも多くかかります。個人の側から見ても同様で、リカレント教育のための受講費用面の個人負担は大きな課題になるでしょう。このような背景から、助成金などを積極利用も有効です。

ここで考えたいのが、上記のコストをどう捉えるか、という点です。負担やデメリットと捉えてしまうのは適切ではないかもしれません。世界比較をすると、日本の人材育成投資の状況は、芳しくありません。例えば、厚生労働省の報告レポートによれば、「我が国の GDP に占める企業の能力開発費の割合は、米国・フランス・ドイツ・イタリア・英国と比較し、突出して低い水準にあり、経年的にも低下していることから、労働者の人的資本が十分に蓄積されず、ひいては労働生産性の向上を阻害する要因となる懸念がある」と結論付けられています。GDPに占める企業の能力開発費の割合(1995年~2014年までの統計)は、多くの先進国で1%~2%で推移しているのに対して、日本は0.1~0.4%と低水準になっており年々低迷しているのです。

【参考引用:厚生労働省

リカレント教育の具体例

それでは、リカレント教育の具体例はどういった分野があるのでしょうか?さまざまなものがありますが、今回は主な3つの例を解説、紹介していきます。

1) デジタルリテラシー

デジタル技術を活用して、ビジネスモデルをよりよい内容に変革することが求められるなか、デジタルリテラシーの習得は非常に大切です。ITツールの基本的な使い方を学ぶことはもちろん、データや情報を、判断し活用していく能力が重視されています。DXやIoTなどの新しいテクノロジーを正しく活用し、必要な情報を見極め、思考し、新しい価値を生み出す力、イノベーションを起こす力を身につけます。

2) ビジネス基礎力

ロジカルシンキングの基礎、企画書の作り方、ビジネスライティングなど、ビジネスの現場での基盤となるスキルを身につけます。今までのビジネス専門性をより磨くという選択肢もあります。例えば、「社労士」「キャリアコンサルタント」「中小企業診断士」などの資格取得です。社会人生活で培った知識を体系的に整理し、専門家として生かしたい場合は、有効な選択肢と言えるでしょう。

3) 語学力

これからの時代は、ますますグローバル化していきます。英語だけでなく、中国語や他の言語なども学びなおし、強化するという選択肢が上げられるでしょう。語学学校の講座を受講し、一から語学の学びなおしをするのも良いでしょう。

まとめ

リカレント教育とは、「学校教育からいったん離れたあとも、それぞれのタイミングで学び直し、仕事で求められる能力を磨き続けていく社会人の学び」を意味します。従業員が学び直し、その成果を発揮し、長く充実し、活躍し続けるためには、企業側が率先して学び直しに活用できる休職・復職といった制度の整備を推進することもポイントの一つです。こうした制度が運用実施されれば、リカレント教育の成果を得て社内に還元する流れができ、個人が成長し、それが組織の成長にも繋がるでしょう。

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この記事の編集担当

黄瀬 真理

黄瀬 真理

大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。

国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定

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