人材開発支援助成金とは?概要や変更点、対象コースと助成額を解説

企業内での人材育成に取り組む際には、人材開発の費用捻出はひとつの悩みの種ではないでしょうか?

意外と知られていませんが「人材開発支援助成金」制度によって、条件を満たすと国からある程度の助成が得られる可能性があります。

例えば、「職業能力開発推進者」の選任と「事業内職業能力開発計画」の策定等を行えば、人材開発助成金が得られることが挙げられます。

人材育成を行うための資金に課題がある企業様は、
本記事にて、「人材開発支援助成金」の概要を理解していただくと実施できる施策の可能性が拡がるかもしれません。

2022.10.19
コラム

1 人材開発支援助成金とは

厚生労働省のHPによると、人材開発支援助成金は、「労働者の職業生活設計の全期間を通じて段階的かつ体系的な職業能力開発を効果的に促進するため、事業主等が雇用する労働者に対して職務に関連した専門的な知識及び技能の習得をさせるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度」と定義づけられています。

つまり、労働者の職業訓練開発について、国に対して提出した計画届の通り実施した際に、経費や訓練中の労働者賃金を一部助成する制度となります。

前提として、事業主は、 職業能力開発促進法内で「その雇用する労働者の多様な職業能力開発の機会の確保について配慮するものとする」と定められています。
また、労働者に関する職業能力の開発及び向上が段階的かつ体系的に行われるように「職業能力開発推進者」の選任と「事業内職業能力開発計画」の策定を事業主の努力義務としており、人材開発支援助成金を申請する際には上記2点の策定が必須となります。
詳細は以下をご覧ください。

参考引用:厚生労働省「人材開発支援助成金(特定訓練コース・一般訓練コース)のご案内」

なお、「職業能力開発推進者」とは、社内で職業能力開発の取組みを推進するキーパーソンです。
具体的には、事業内職業能力開発計画の作成・実施をするほか、職業能力開発に関する労働者への相談・指導 などを行います。また、平成30年7月の職業能力開発促進法施行規則等の改正によって、職業能力開発推進者を「キャリアコンサルタント等の職業能力開発推進者の業務を担当するための必要な能力を有する者」から選任するものと規定されました(施行期日:平成31年4月1日)

参考引用:厚生労働省「職業能力開発推進者には、専門的な知識・技術をもつキャリアコンサルタント等から選任しましょう!」

また、「事業内職業能力開発計画」とは、労働者の職業能力の開発及び向上を段階的かつ体系的に行うために事業主が作成する計画です。作成にあたっては、企業の経営者や管理者と従業員が対話を重ねることにより共通の認識を持つことが重要になります。
上記のステップを踏むことにより、より効果的な職業能力開発を行うことが可能になり、加えて従業員の自発的な学習・訓練の取組意欲が高まることが期待されます。

2.人材開発支援助成金とキャリアアップ助成金の違いとは

「人材開発支援助成金」と「キャリアアップ助成金」の違いに混同することがあります。
キャリアアップ助成金とは、「有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する制度」です。

つまり、企業が労働環境・労働条件を定めている制度を刷新する際に活用を検討するものとなります。
人材開発支援助成金とは別の制度ですが、あわせて知っておくと便利でしょう。

参考引用:厚生労働省「キャリアアップ助成金」

3 人材開発支援助成金の対象コースと助成額

人材開発支援助成金は、主に以下の8コースがあります。
雇用する労働者のキャリア形成を効果的に促進するため、職務に関連した専門的な知識及び技能を修得させるための職業訓練等を計画に沿って実施するほか、教育訓練休暇制度を適用した事業主等に対して助成する制度です。

I 特定訓練コース

雇用する正社員に対して、厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練、若年者への訓練、労働生産性向上に資する訓練等、訓練効果の高い10時間以上の訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成

II 一般訓練コース

雇用する正社員に対して、職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための20時間以上の訓練(特定訓練コースに該当しないもの)を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成

III 教育訓練休暇等付与コース

有給教育訓練休暇等制度を導入し、労働者が当該休暇を取得し、訓練を受けた場合に助成

IV 特別育成訓練コース

有期契約労働者等の人材育成に取り組んだ場合に助成

V 建設労働者認定訓練コース

・認定職業訓練または指導員訓練のうち建設関連の訓練

VI 建設労働者技能実習コース

・安全衛生法に基づく教習及び技能講習や特別教育

・能開法に規定する技能検定試験のための事前講習

・建設業法施行規則に規定する登録基幹技能者講習など

VII 障害者職業能力開発コース

・障害者職業能力開発訓練施設等の設置等

・障害者職業能力開発訓練運営費(人件費、教材費等)

Ⅷ 人への投資促進コース

デジタル人材・高度人材を育成する訓練、労働者が自発的に行う訓練、定額制訓練(サブスクリプション型)等を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成

参考引用:厚生労働省「人材開発支援助成金」

なお、助成金額については、コースごとに異なりますので、詳細は厚労省のパンフレットをご参照ください。

4 人材開発支援助成金の支給対象とならないケース

人材開発支援助成金の支給対象とならないケースについても、知っておきましょう。以下3つの概要を解説します。

1)不正受給

  • 不正受給(偽りその他不正の行為により本来受けることのできない助成金の支給を受け、または受けようとすること)を行ってから5年以内(不支給措置期間)に支給申請をした、または、支給申請日後、支給決定日までに不正受給をした事業主及び事業主団体等
  • 助成金の不正受給が発覚した場合に行われる事業主名等の公表及び支給を受けた助成金の返還等について、承諾していない事業主及び事業主団体等
  • 申請事業主の不正受給に関与した場合に、名称等の公表及び申請事業主が返還すべき債務の連帯等があることを承諾していない訓練実施者が行う訓練について支給申請する場合
  • 過去に申請事業主の不正受給に関与し、不支給措置期間が適用されている訓練実施者が実施した訓練について支給申請する場合

2)雇用保険関係

  • 支給申請をした年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない事業主及び事業主団体等(支給申請の翌日から起算して2か月以内に納入を行った事業主及び事業主団体等を除く)
  • 支給申請日の前日の過去1年間に、労働関係法令の違反を行った事業主及び事業主団体等
  • 性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業、またはこれら営業の一部を受託する営業を行う事業主及び事業主団体等
  • 暴力団関係事業所の事業主及び事業主団体等
  • 事業主等又は事業主等の役員等が、破壊活動防止法第4条に規定する暴力主義的破壊活動を行った又は行う恐れがある団体等に属している場合
  • 支給申請日または支給決定日の時点で倒産している事業主及び事業主団体等
  • 練開始日、支給申請日及び支給決定日の時点において雇用保険適用事業所でない事業所

3)労働局またはハローワークによる支給要件の審査や、会計検査院による検査

  • 提出した書類に関して管轄労働局長の補正の求めに応じない事業主及び事業主団体等
  • 助成金の支給又は不支給の決定に係る審査に必要であると管轄労働局長が認める書類等を管轄労働局長の求めに応じ提出しない又は提示しない、または管轄労働局の実地調査に協力しない等、審査に協力しない事業主及び事業主団体等
  • 助成金の支給又は不支給の決定に係る審査に必要な書類等を整備、保管していない事業主及び事業主団体等

上記以外にも、必要な手続きを期日までに行わない場合や、要件を満たさない場合なども支給されません。以下、厚生労働省のパンフレットで詳細を確認しましょう。

参考:厚生労働省「人材開発支援助成金(特定訓練コース・一般訓練コース)のご案内」

5. 2022年4月からの変更点とは

令和4年度から見直されている、主な7点の内容についてご紹介します。

1)訓練施設の要件の変更
対象となる訓練施設から「事業主・事業主団体の設置する施設」の一部を除外します。
2)訓練講師の要件の変更
講師を招き、事業内で訓練を実施する場合に、新たに講師の該当要件が設置されます。また、これに伴い、新たに訓練計画提出時に「OFF-JT部外講師要件確認書」の提出が必要となります。
3)OJTの助成額変更など
OJTを実施した場合の助成額が定額制へ変わると同時に、OJT訓練指導者が1日に指導できる受講者を3名までとします。
4)対象訓練の統廃合
グローバル人材育成訓練が廃止され、特定分野認定実習併用職業訓練を認定実習併用職業訓練に統廃合されます。セルフ・キャリアドック制度導入の上乗せ措置(+15%)を廃止し、定期的なキャリアコンサルティング制度の規定が必須化されます。
5)「若年人材育成訓練」の対象労働者の変更
若年人材育成訓練(35歳未満を対象)の対象労働者の要件が変更されます。
6) 助成対象訓練の変更
対象訓練のうち「職業または職務の種類を問わず、職業人として共通して必要となる訓練」の取り扱いが変更されます。
7)計画届提出時の書類の変更
計画届提出時の書類が変更されます。

上記は概要になりますが、詳細は、以下のパンフレットをご覧ください。
参考引用:厚生労働省「令和4年度から人材開発支援助成金の見直しを行います」

6.まとめ

人材開発支援助成金を申請するためには、「職業能力開発推進者」の選任と「事業内職業能力開発計画」などを事前に定める必要があります。助成金を申請するために必要な内容ではありますが、今後企業がどのように人材育成に注力していくか、管理職や従業員と対話を重ねることにも意味があるのではないでしょうか。ぜひ、助成金を活用し、効果的な人材育成の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

人材育成の詳細については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
→人材育成の方法とポイント。社員のキャリア自律を支援するために。

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この記事の編集担当

黄瀬 真理

黄瀬 真理

大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。

国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定

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