MBOとは?意味やOKRとの違い、メリットデメリットをわかりやすく解説

MBOとは、日本では一般的に「目標管理制度」とも呼ばれており
重要な経営戦略、人事戦略の一つとされています。

MBO制度について、
「導入しているものの、上手くいっている実感がない」
「逆に部下のモチベーションが悪化してしまった 」
とお感じの人事の方もいらっしゃるかもしれません。
今一度、メリット、デメリットを整理・検討したうえで、MBOを効果的に実現するヒントと流れを掴んでいただくために、本記事をご活用いただけますと幸いです。

2022.11.16
コラム

1.MBOとは何か?

MBOとはManagement by Objectives(目標による管理)の略で、日本では「目標管理」とも呼ばれます。 個人またはグループごとに設定した目標の達成度を個人で管理する方法であり、経営学者であるピーター・ドラッカー氏によって提唱された概念です。

混同される「MBO」として、経済関連用語としての「MBO」という言葉もあります。
「マネジメントバイアウト(Management Buyout)」と呼ばれるMBOは、大企業の事業拡大や、中小企業の事業承継を目的に行われます。具体的には、企業の経営陣が、既存株主から自社の株式や事業を買収(M&A)して、オーナーとなる行為のことを指します。この企業買収のMBOと、目標管理制度のMBOは別の意味になります。

2.MBOとOKRの違い

よくMBOと比較されるOKRとは何でしょうか。この2つの違いと特徴を解説いたします。OKRとは、「Objectives and Key Results」の略称で、「達成目標(Objectives)」と、目標の達成度を測る「主要な成果(Key Results)」を設定することによって企業やチーム、個人が、全力で同じ重要課題に取り組めるようにする目標管理手法です。米国のインテルやGoogleなど有名企業が導入したことで、一気に注目を集めました。
そのため、人材育成に効果的に取り組む大前提として、企業としての人材育成ビジョンと、そのための「目標設定」が必要になるでしょう。また、これにとどまらず、キャリア自律が重要と言われている今、社員個人のキャリア目標とすりあわせながら施策を進めていくことが望ましいでしょう。

MBOは、部下が上司とすり合わせながら自ら目標を設定します。上司はその目標を部門目標などと連携させながら達成に向けて助けていきます。両者の大きな違いとして、MBOでは「個々」のパフォーマンスに注目する一方、OKRでは企業やチームで目標を共有し、企業やチームの達成に向けてプロセスを進めます。重要課題に向けて目線を同じくして取り組めるようになる目標管理手法です。
さらに、OKRは評価や給与と紐付けなくてもよい目標設定です。そのため、MBOのデメリットをOKRで補うことも可能でしょう。

レビューのタイミングにも違いがあります。MBOのレビューのタイミングは年に1回、または半年に1回なのに対して、OKRは、月に1回もしくは四半期に1回のペースでフィードバックを行い、より細かいサイクルでの達成を目指す仕組みです。
ここまでの内容について、以下の比較表も参考としてください。

<MBOとOKR比較表>

用語 主体 目的 レビュー
MBO 個人 社員の業績向上 年に1回ないし半年1回のペース
OKR 企業・チーム 企業のアグレッシブな目標達成 月に1回もしくは四半期に1回のペース

3.MBOのメリットとデメリット

MBOのメリットは、次の3点が挙げられるでしょう。

1) 企業の事業目的にアラインした成果が期待できる
MBOでは上司からの一方的な指示ではなく、個人が組織の目標をふまえて自身で考えた目標を上司やリーダーとすり合わせます。そのため個人は「やらされ感」がなくなり、組織の成功に貢献する意識を持ちやすくなります。それは個々人の意欲的な取り組みにも繋がるでしょう。

2) 従業員のモチベーションが向上する
自ら意思決定して目標を設定することで、個々のモチベーション向上の可能性を高めることができます。目標設定の際に上司とすり合わせ「自分にできそうだ」と思える目標にすることが大切です。適切な目標の設定をすることで、従業員のモチベーションアップや成長に繋がることが期待できるでしょう。

3) 従業員の人材育成に寄与する
MBOにおいての目標は数値などの客観的なもので設定されます。そのため、評価の透明性が保ちやすくなります。従業員は、何を基準に評価されているかが分かると、結果に納得することができます。評価・フィードバックを更に次の目標設定に活かすことで、従業員の能力やスキルを着実に向上させるプロセスをふむことができるのも、MBOの良さと言えるでしょう。

MBOのデメリットとリスクとして、次の3点が挙げられるでしょう。

1) 目標設定が曖昧になり、スキームが形骸化する
ありがちなのは、目標設定が曖昧なままになる、或いは期の途中で環境が変わっても目標の調整をしないままで目標が形骸化したまま業務が遂行され続けてしまう事例です。また、上位層で事業目標が具体化されるのが遅れると、個々の従業員の目標がなかなか立てられないなどの問題が発生します。そうすると、せっかくMBO制度があっても、事業全体の目標達成に向けた活用がしにくくなってしまいます。

2) 単なるノルマ管理となり、社員にとってプレッシャーになる
目標設定が、売り上げ目標など単純なノルマの付与となってしまう場合、やりがいどころか、逆にプレッシャーやストレスになるという事例です。これでは、目標設定が従業員のやる気を削ぐことになるリスクがあります。
このようにならないために、適切に目標設定することは勿論のこと、上司と部下での目標進捗管理のMTGを定期的に行い、取り組み方を見直すなどして、達成に向けた取り組みを前向きに進めていけるようにしましょう。

3) 結果が人事評価や報酬に反映されず、従業員のモチベーション悪化につながる
従業員が目標を達成した際、従業員の給与・賞与などへの反映がほとんどない場合は、従業員のモチベーション悪化につながる恐れがあります。目標達成と適正な報酬とが連動するように設計することに加えて、会社側は従業員に人事制度や給与制度自体について従業員に説明の機会を設けることも必要です。

仕事のやりがいの詳細については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
→仕事のやりがいとは?従業員が感じる瞬間と自分で見つける方法

4.MBOを効果的に実施するには

MBOを有効に、かつ成功裏に実施するにはどうしたらいいのでしょうか?そのためのポイントを2つ紹介します。

1) 制度の目的についての理解促進
まず、MBOを実施することやその意義について、現場が理解できるように説明の機会を設けることが大切です。人事制度に詳しい外部専門家などから説明をしてもらうのも良いでしょう。従業員が制度について理解した状態で制度運用をすることが何より大事です。

2) 管理職(上司)の、部下育成スキル向上
MBOの運用においては、目標設定とその後の進捗を上司とどうすり合わせるかが重要になります。
目標設定にあたっては部下から意見を引き出したり、提案を反映したりしながら、目標をすり合わせていきましょう。更に期の途中でも面談の機会を設け、目標達成に向けた取り組みのなかで部下が得られる能力やキャリア機会などにもふれながら、目標への意味づけを行うことも大切です。このようなMBOを活用した部下の支援に向けて、上司が部下育成のスキルを向上させることが必要となるでしょう。

5.まとめ

人事制度は、従業員のスキル能力の価値発揮向上を通して経営目的の実現を図るために、全体として一貫性のある整合した人事管理を行うための仕組みです。様々な制度のメリット、デメリットを十分に検討したうえで自社のありたい姿にフィットする制度を構築しより強い組織にしていくことで、企業価値の向上に繋げることが重要ではないでしょうか。本記事が少しでも参考となれば幸いです。

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この記事の編集担当

黄瀬 真理

黄瀬 真理

大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。

国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定

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