従業員が仕事でストレスを感じる原因とは?企業におけるストレス対策とは

日本は「ストレス大国」と呼ばれることもあり、近年は企業においても仕事のストレスとの付き合い方が見直されています。国は一部の企業に対して「ストレスチェック制度」を義務化し、従業員のストレスケアおよびコントロールを呼びかけるようになりました。

そこで今回は、仕事でストレスを感じる原因や心身に与える影響、マネジメント層として実施すべき対策をご紹介します。従業員のストレスケアに悩んでいるご担当者は、ぜひ最後までご覧ください。

2022.12.12
コラム

1.仕事でストレスを感じる主な原因は?

一口に仕事のストレスといっても、その原因や感じ方には個人差があります。ここでは、仕事における代表的なストレス要因と、それぞれの特徴について解説します。

1)適切ではない仕事量や労働時間の長さ

無理のある仕事量や労働時間をストレスに感じ、モチベーションやパフォーマンスが低下する従業員も少なくありません。長すぎる労働時間は大きなストレス要因になります。従業員が仕事にやりがいを感じていても、身体的にも精神的にも疲労し、健康状態に悪影響を及ぼす場合があります。

終わらないタスクや連日の残業で、ストレス解消のために息抜きをしたいと考える一方、休日は疲れから1日中寝て過ごしてしまう人も少なくありません。このように、プライベートの時間が取れない状況も、社会人のストレス要因の一つです。

2)仕事の失敗に対して感じるプレッシャー

仕事の失敗に対するプレッシャーから、強いストレスを感じる場合があります。失敗の恐怖心が生み出すプレッシャーが非常に大きいタイプの人もいるので、注意が必要です。実際に失敗してしまった場合、責任感から自責の念を持ったり、自己肯定感が低下したりする可能性があります。上司から受ける注意がいつも以上に重圧となったり、つらく感じてしまうケースもあるのではないでしょうか。

もっとも危険なのは、失敗経験が精神的なトラウマになることです。トラウマによってさらに失敗が重なり、通常の業務さえこなせなくなるケースもあります。こうしたトラウマは、従業員のメンタルヘルスに深刻な問題を及ぼします。恒常的に心理的安全性を保ちやすい職場づくりに取り組むことにより、失敗に対してプレッシャーを感じづらい環境を作っていくことが重要です。

3)職場の習慣や作業環境

職場の習慣や作業環境に対してストレスを感じる従業員もいます。たとえば、一部の企業には「上司や周囲の人が退社するまで部下が帰宅しにくい」といったケースもあるのではないでしょうか。

企業によっては「グループ全員の仕事が終わるまで退社できない」「新入社員は始業時間よりも早めに出社する」といった習慣が残っていることもあるかもしれません。いずれも従業員のストレスにつながりやすい要因です。

また、仕事の作業環境もストレスと関係があります。例えば、オフィスが整理整頓されていない環境では、従業員の業務の生産性/モチベーションが落ちてしまうことも考えられます。こうした外的要因もまた、従業員のストレスとなりかねません。

従業員の生産性を高めるための環境を提供するのは、企業の務めです。適度な休憩はもちろん、企業は従業員に対して最適な環境で働いてもらうには何が必要かを考える必要があります。

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4)人間関係の問題

職場の人間関係がストレス要因となる可能性もあります。上司からの叱責や高圧的な態度のコミュニケーションによって強いストレスを感じる人も少なくありません。また、同僚や部下においては、仕事に対するモチベーションの低さや、マナーの悪さなどを不満に感じるケースもあります。さらには、同僚とのライバル関係や対立関係などもあり、人や立場によって人間関係が招くストレス要因は異なります。

2.仕事のストレスによって起こり得る心身の変化

仕事のストレスは、従業員の健康状態やメンタルヘルスに影響を及ぼします。以下でご紹介する心身のサインが見られた場合、気分転換のための休息も含めて従業員が心身ともに健全に働ける環境の提供を検討していくことが重要です。

1)食欲不振や体調不良

ストレスにより食欲不振や体調不良を招くおそれがあります。主な原因は、ストレス状態が続いたため、交感神経が優位の状態が続いていることです。このように自律神経のバランスが崩れると、慢性的な食欲不振に加えて、全身の倦怠感・動悸・頭痛・肩こりなどの症状が出るおそれがあります。

自律神経による体調不良は、内科などを受診しても検査で原因を特定するのが難しいとされます。そのため、医師から精神科の受診を勧められて、初めて精神的な不調が発覚するケースも少なくありません。

2)睡眠の質の低下

ストレスは睡眠の質にも影響を及ぼすと考えられています。目が冴えて寝つきが悪い、睡眠中に目が覚める、といった症状が現れるケースもあります。睡眠の質が低下すると、日々の疲れをしっかりとリセットして、リフレッシュすることができません。

また、睡眠不足により仕事中の集中力や注意力が低下するのは、言うまでもないでしょう。常に眠そうにしていたり、ケアレスミスを頻発したりする傾向にある従業員は、睡眠の悩みを抱えている可能性があります。

3)不安定な精神状態

ストレスは人の精神状態にも悪影響をもたらします。心や体が限界を迎えている状態で、仕事のやる気が低下したり、人間関係が億劫になったり、些細な言葉で感情的になったりする人もいます。慢性的なストレス過多は、適応障害やうつ病の引き金にもなりかねません。仕事を続けるのが困難になるため、早急にストレス軽減に努め、休息を取らせる必要があるでしょう。

3.企業が取り組みたい従業員のストレスマネジメント

ストレスマネジメントとは、ストレスと上手に付き合う方法を知り、適切に対処することです。従業員の休職や離職防止につながるほか、生産性向上が期待できます。働く本人だけではなく、企業も従業員のストレスマネジメントに取り組むと良いでしょう。

1)従業員が抱えているストレスを把握する

従業員のストレスを把握するには、ストレスチェックが有効です。「ストレスチェック制度」とは、従業員の心理的な負担を把握するための取り組みをいいます。従業員のメンタルヘルス不調を防止するため、平成27年12月に厚生労働省が義務化しました。労働者数50人以上の企業は、ストレスチェックの実施が義務付けられています。

本制度により、企業が従業員のストレス状態を把握するとともに、従業員自身が自分の精神状態を確認できるのがメリットです。結果を集計・分析することで、ストレスとの上手な付き合い方や考え方、行動指標を提案できるでしょう。なお、従業員のストレス状態に問題がある場合、企業は医師による面接指導などを実施する義務があります。

【出典】:ストレスチェック制度について(厚生労働省)

2)仕事の内容や労働時間を適切に管理する

企業は仕事内容や労働時間を適切に管理し、ストレスが溜まりにくい職場環境を提供することが重要です。従業員の仕事量や残業状況は、毎月確認しましょう。過度な量の仕事を抱えている従業員や、所定外労働時間が長い従業員を発見しやすくなります。

メンバー一人ひとりの状況確認は、直属の上司や管理職の仕事となります。相手の健康状態に異変が見られる場合には、どのような点が問題となっているか把握し、早急に改善しなければなりません。また、そのような状態になる前に、部下との日頃の対話のなかで早期発見することが理想的でしょう。

3)上司や管理職が定期的な面談を行う

ストレス要因や解消法に関しては、人それぞれ異なります。したがって、企業は従業員一人ひとりのタイプや働き方を考慮し、適切に対応しなければなりません。その手段として、定期的に上司と部下の1on1ミーティングを行うことが挙げられるでしょう。
上司が傾聴の時間を定期的に設けることにより、個々のメンバーの状態や、全体としての組織の状態を把握することが可能になります。
対話の時間を設けることにより、部下にとっても「受け入れてもらえている」という実感が得られやすく、心理的安全性を担保することにも繋がります。

4)ストレスを抱える従業員のサポート体制を整える

仕事のストレスについて社内で気軽に相談して解決できるよう、匿名で利用可能な窓口や、産業医に相談する窓口を設置することがおすすめです。産業医などの専門家につなぐことで、検査やカウンセリングなどの対処法も検討しやすくなります。積極的に従業員のストレス対策を図りましょう。

4.仕事のストレスは企業がコントロールする時代へ

厚生労働省によりストレスチェック制度が義務化されたことからも窺えるように、従業員のストレスは、企業がケアしていくことが必要不可欠となりました。ストレスは仕事のモチベーションを低下させるだけでなく、心身の不調や精神疾患を招くおそれがあります。心身の不調を訴える従業員が増えてしまうと、組織としての生産性は落ちてしまいます。従業員がストレスにうまく対処して働けるよう、適切な労働環境を整備することが大切です。

この記事の編集担当

黄瀬 真理

黄瀬 真理

大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。

国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定

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