生産性向上とは?取り組み方や業務効率化との違い、施策例を解説

社会での価値発揮をし続けることができる組織を目指す上で、重要な観点のひとつが「生産性向上」への取り組みです。私たちの働き方がテレワーク(在宅勤務)を取り入れたはじめとした多様な形に変化しているからこそ、自社の従業員の生産性について、改めて見直す必要があるかもしれません。

生産性向上の施策を行う前に、生産性向上が意味することや、生産性を向上すべき理由についての基礎から確認してみましょう。本記事では、生産性向上の意味や必要性、具体的に取り組むべき施策までご紹介します。

2022.12.26
コラム

1.生産性向上の意味

そもそも生産性向上とは、どのような取り組みのことを指すのでしょうか。人事部門のご担当者様へ向けて、施策を実施する前に理解しておきたい、ビジネスにおける生産性向上の意味を解説します。

1)資源を有効活用して大きな成果を生み出すこと

生産性とは、投入した経営資源(インプット)に対して得られた成果(アウトプット)の割合のことを指します。つまり、限られた経営資源からより多くの成果を生み出すことができれば、生産性が高い状態だといえるでしょう。

2)生産性の種類

生産性には種類があり、評価基準によって「労働生産性」や「資本生産性」に分けられます。このうち、職場の生産性向上を語る際に多く使われるのは、労働生産性のほうです。

労働生産性とは、会社で従業員1人あたりが生み出す成果を指標化したものを指します。数値化する際は、従業員が労働している1時間あたりにどれだけの成果を出しているかで算出するのが一般的です。さらに、労働生産性は「付加価値労働生産性」や「物的生産性」といった種類に分けられます。付加価値労働生産性は、従業員の仕事によって生み出された付加価値を表す指標です。高い付加価値額を提供するほど、企業は多くの利益を得られます。それに対して、物的生産性は従業員が商品・サービスを生産する効率を表します。

資本生産性とは、土地や設備などの資本に対して生み出された付加価値の割合を示す指標です。資本生産性に注目することで、企業が保有している資本がどのくらい効率的に稼働しているかを把握できます。

3)生産性向上と業務効率化の違い

「業務効率化」は、生産性向上とよく混同される言葉です。効率化とは、「ムリ・ムラ・ムダ」のある業務内容を改善するための施策を指します。施策では、主に従業員数の削減や業務時間の短縮、業務のコスト削減などが行われます。業務効率化は、生産性向上を達成する手段の一つであり生産性向上とは異なるものです。

2.なぜ生産性の向上が求められているのか

国内のビジネスシーンでは、近年多くの企業が生産性向上のために取り組んでいます。なぜ、生産性を向上させる必要があるのでしょうか。その背景にある5つの考え方をご紹介します。

1)日本の労働生産性における課題

労働生産性に関して、日本企業の国際競争力の低迷が懸念されています。日本の労働生産性は、先進各国と比較して低水準です。公益財団法人日本生産性本部が公表した「労働生産性の国際比較2021」のデータによると、日本における1時間あたりの労働生産性は49.5ドルでした。この数値は、OECD(経済協力開発機構)加盟38カ国中23位にあたります。OECDはヨーロッパ諸国を中心に日本やアメリカなどの先進国が加盟している国際機関であり、国際社会でも後れをとっている現状が窺えます。

【出典】:労働生産性の国際比較2021(公益財団法人日本生産性本部)

2)人手不足への対応

日本の労働人口は、少子高齢化により今後も減少し続けることが想定されています。すでに人材不足の問題が可視化され、採用市場では働き手を確保するための競争が激化している状況です。このように労働力が少なくなる中でも、企業は成果を創出しなければなりません。そのため、限られた労働者数でパフォーマンスを最大化できる生産性向上が求められているのです。

3)ワークライフバランスの改善

生産性向上の施策に取り組むと、従来よりも従業員の残業時間を減らせる可能性があります。残業が減ることで、現場の長時間労働が解消され、結果として個人のワークライフバランスが実現しやすくなるでしょう。働きやすい職場づくりに寄与し、従業員一人ひとりのモチベーションアップにつながる点でも、生産性向上が求められているのです。

4)コストの削減

現状のワークフローを見直し、業務にかける時間や工程を効率化すると、従業員の業務量が減り労働時間を短縮できます。労働時間の短縮は、残業代の抑制にもつながるので、コスト削減に効果的です。生産性を上げることで人件費を抑制できれば、経営において大きなメリットがあります。削減した分のコストは、労働環境の改善や新商品の開発など、さまざまな業務で有効活用できるでしょう。

5)大きな成果の出やすい業務に集中できる

生産性向上の施策で業務の棚卸しを行うと、リソース配分の最適化を推進できます。その理由は、力を入れるべき業務とそうでない業務を区別できるためです。重要性の高い業務にリソースを集中させれば、大きな成果をあげることにも繋がるでしょう。生産性を向上させることで、限りある資源を成果が期待できる業務に集中させましょう。

3.生産性向上を図るための施策

生産性を向上させるには、以下で取り上げる施策をヒントとしていただけますと幸いです。自社に適した手法で取り組むことで、生産性をさらに高められる可能性があります。最後に、生産性向上を図るために、有効とされている施策やアイデアをご紹介します。

1)無駄な業務の洗い出し

まずは、現状の業務量や業務工程を正確に把握することがポイントです。慣習的に続けられている重要度の低い業務や、簡略化できる業務、ITシステムによる自動化ができる業務を探してみましょう。課題が明確になったら、不要な業務プロセスを削減するために、業務改善を図ります。

2)ノンコア業務のアウトソーシング

無駄な業務の洗い出しによって、ノンコア業務の肥大化に気づける場合があります。事務処理をはじめとして、企業の利益に直結しない手間のかかるタスクがあれば、外部企業へのアウトソーシングも検討しましょう。ノンコア業務を整理すると、従業員が本来注力すべきコア業務にかける時間を大幅に増やせるようになります。

3)業務の標準化

業務をマニュアル化することで、属人化が解消され、誰が担当しても近い品質の成果物が完成しやすくなります。マニュアルがあれば仕事のミスが起きづらくなり、フォローにかかっていた時間も削減できるでしょう。また、マニュアルは新人研修や引き継ぎなどの場面でも活用できるので、人材育成の負担軽減も期待できるでしょう。
上司が傾聴の時間を定期的に設けることにより、個々のメンバーの状態や、全体としての組織の状態を把握することが可能になります。
対話の時間を設けることにより、部下にとっても「受け入れてもらえている」という実感が得られやすく、心理的安全性を担保することにも繋がります。

4)情報共有の仕組み作り

情報共有の不備により生産性が阻害されるおそれがあります。具体的には、リアルタイムで情報が得られず、従業員が速やかに動けないケースなどです。誰が何の仕事を担当しているか把握できなければ、マネジメント層が業務を的確に采配できません。従業員がオフィス外で勤務するテレワーク勤務の状態では同じオフィスにいつも集まって仕事をする場合と比べて、個々に入る情報量に差が出やすくなる場合があります。社内の情報の透明性をいかにして高めるかという課題は、働き方が多様になるなかで一層重要な検討テーマになるでしょう。解決策として、インターネットを介してリアルタイムで情報共有を行うアプリケーションを導入するのもおすすめです。

5)適材適所の人材配置と従業員のスキル向上/見直しを図る

生産性を向上するには、業務内容に対して求められるスキルを有する人材を配置することが必要だといえます。人材配置を考える際には、組織の事業プランと個々のキャリアプラン・適正・スキルをすり合わせながら、柔軟に選定することが重要です。従業員が適正なスキルを得ることで、仕事の効率を向上させることが、生産性向上へとつながります。

状況によっては、従業員に新たなスキルの習得を促すことも選択肢の一つです。自社の経営戦略に基づき、必要なスキルの洗い出しを行った際、従業員に新しいスキルを習得させる必要があると判断されるケースもあります。そこでリスキルが必要な理由や個々人への期待を説明した上でリスキリングの施策を実施すれば、企業全体の生産性向上に寄与する取り組みとしていくことができるでしょう。こうした従業員のスキル支援も視野に入れるようおすすめします。

6)従業員のモチベーション維持と向上

モチベーション高く仕事に取り組むことで、高い集中力やパフォーマンスが伴い、必然的に生産性も上がります。
モチベーション向上にも繋がる具体的な取り組みの事例として挙げられるのは、適切な人材配置と育成、働き方改革の推進、労働環境の改善、面談等を活用した定期的なキャリアプランのすり合わせなどの方法です。これらの施策によって、従業員が自分の能力を最大限に生かして働くことができる環境整備が進むと、意欲的に仕事へ取り組みやすくなります。

従業員のモチベーションについて、さらに詳しく知りたいご担当者様は、ぜひモチベーションについて説明した関連記事も併せてお読みください。

4.自社に適した施策で生産性向上を実現しましょう!

今回は、企業の生産性向上の意味や必要性に始まり、向上施策や手法まで解説しました。生産性が高い企業は、経営資源を活用しながら、大きな成果を生み出すことができます。現状、日本企業は世界的に見て労働生産性の水準が低いという課題を抱えています。生産性向上は、従業員にメリットをもたらすだけでなく、企業にもコスト削減や成果アップなど多くの効果が期待できるため、ぜひ取り組みを進めましょう。その際は、ご紹介した改善のアイデアを参考に、自社の状況に応じて適切な施策をご検討ください。

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この記事の編集担当

黄瀬 真理

黄瀬 真理

大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。

国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定

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