リスキリングとは?企業が取り組む必要性や導入するメリット

ビジネスシーンで求められるスキルは、時代の流れにともない刻々と変化を続けています。企業がこうした変化に対応するためにも、自社の従業員に新たなスキルの習得を促し、変化に対応可能な人材へと育てあげる必要があるでしょう。そこで人材育成へ取り入れたい施策の一つが「リスキリング」です。

リスキリングにはどのような特徴があり、ほかの手法とはどのような違いがあるのでしょうか。本記事では、リスキリングを導入するメリットや注意点、手順まで解説します。人材育成の参考にお役立てください。

2022.07.11
コラム

リスキリングとは?

初めに、人材育成で注目される「リスキリング」に関する基礎知識をご紹介します。自社の従業員のスキルアップを促し、社会で求められる知識や技術の習得を目指しましょう。

リスキリングの意味と定義

リスキリングとは、企業が今後必要となるスキルを従業員に習得させ、スキルアップを促すことです。経済産業省が公表する資料の定義によれば、リスキリングは「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」とされています。

そんなリスキリングは、一般的に「企業のデジタル人材育成」の文脈で使われることが多い用語です。その背景として、今後注目が高まるスキルとして、主にデジタル領域の技術が中心となっている日本企業の状況が挙げられます。本来はデジタル領域に限定された言葉ではないものの、近年のビジネスシーンの傾向として押さえておくと良いでしょう。

【参考】『第2回 デジタル時代の人材政策に関する検討会』開催資料(経済産業省)

リカレント教育やOJTとの違い

リスキリングと類似した人材育成の用語として「リカレント教育」や「OJT」が挙げられます。いずれも従業員のスキルアップを目指しますが、それぞれ異なる育成方法です。

リカレント教育は「個人が教育を受ける期間と就労する期間を繰り返すこと」を指します。学校教育から離れた社会人が改めて学び直しの機会を得て、ビジネスシーンで求められるスキルを向上できるのが特徴です。ニーズの高いデジタル領域の学習を望むケースも少なくありません。こうしたリカレント教育に対して、リスキリングに投資すべき理由を有するのは主に企業です。企業のみが責任を負うわけではないものの、学びが個人の利益に留まらないのは大きな違いといえるでしょう。また、仕事を続けながらスキルを習得する点でも、リカレント教育との違いがあります。

OJTは「既存の業務を遂行するための職場内訓練」を意味します。経験のある先輩社員が後輩社員を指導し、現場で必要な知識や具体的な仕事の進め方など、実践的なスキルを身に着けさせるのが特徴です。主に入社して間もない新入社員の育成で用いられ、実務の習得に有効だと考えられています。一方のリスキリングでは、既存の枠を超えた新しいスキルの習得を目指す点がOJTとの違いです。リスキリングは「OJTの延長である」と誤解されることがありますが、両者は習得するスキルが大きく異なります。

リスキリングの学習内容

リスキリングで具体的に学習する内容は企業によって異なります。その際、他社の導入事例からは具体的な学習内容を見つけづらいのが難点です。基本的に多くの企業はリスキリングでの学習内容の公表を避ける傾向にあります。その理由は、ライバル企業に情報を知られることが事業戦略上のリスクになるためです。

リスキリングの学習内容を検討するにあたり、経済産業省の「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」が一つの情報源となります。こちらは新たな雇用の創出が期待される分野において、経済産業大臣が学習プログラムを認定する制度です。認定対象とされている分野には一定の専門性や実践性などの価値が認められることから、企業内で学習内容を決める際の参考にできます。

【引用文:認定対象の分野】

①AI、IoT、データサイエンス、クラウド(デザイン思考、アジャイル開発等の新たな開発手法との組み合わせを含む)
②高度なセキュリティやネットワーク
③IT利活用(自動車モデルベース開発、自動運転、生産システムデジタル設計)

【出典】『第四次産業革命スキル習得講座認定制度』開催資料(経済産業省)

リスキリングの重要性

リスキリングは、従業員に自律的なキャリア形成を促す施策の一つです。刻々と変化し続ける社会のなかで企業が成長し、将来に生き残るための人材戦略においては、変化に適応できる人材の育成が重要となります。

従来、日本の企業が行ってきた社員研修は「会社から提供されるもの」というように、従業員にとって受動的な側面があったかもしれません。今後はこうした人材育成のあり方を見直し、従業員が主体的に自身のキャリアを考えることができる仕組み構築とそのための意識醸成の必要があるでしょう。

リスキリングをキャリア形成のひとつと捉えることができれば、従業員の可能性をも企業の資産と捉えることができます。リスキリングを積極的かつ継続的に取り入れて、変化の時代に対応できる組織づくりを実現しましょう。

企業にとってリスキリングが必要になる背景

ビジネスシーンでリスキリングが求められる背景には、DX推進が世の中に広まってきている状況があります。DX(デジタルトランスフォーメーション)とは「新しいデジタル技術を活用して、人々の生活をより良いものへと変革すること」です。企業のIT技術導入やデータ活用によって、これまでにない新商品やサービスが生まれ、さらには企業文化の改革にもつながると期待されています。

デジタル化が進む近年では、企業が新しい技術を活用せずに競争優位をつくることが難しくなっています。自社独自のアイデアをカタチにするためにも、リスキリングを通じて従業員に新しいスキルを習得させ、能力の再開発を支援する必要があるのです。

企業がリスキリングを導入するメリット

リスキリングは従業員のスキルアップを叶えるだけでなく、組織にも多くの成果をもたらすと考えられています。ここでは、リスキリングの導入で企業が期待できるメリットを解説します。

採用コストを削減できる

リスキリングで従業員のスキルアップを促せば、新しいスキルを持つ人材を採用する負担を減らせる可能性があります。多くの企業がDX推進へ取り組むなか、データサイエンティストやAIエンジニアなど、先端分野の知識や技術を持つ人材の確保が急務となりました。こうした人材は希少性があるため採用難度が高く、コストがかかりやすい傾向にあります。そこで、人材育成で従業員にスキルを習得させる方法も注目されているのです。

業務の効率化につながる

従業員がリスキリングにより習得したスキルを活用すれば、既存の業務フローが改善され、業務効率化の効果が期待できます。たとえば、これまで人が行っていた入力作業をIT活用により全自動化すれば、社内のリソースをより付加価値の高い業務へと有効活用できるでしょう。これまでの働き方を見直し、生産性を高められる可能性があります。

従業員のエンゲージメント向上につながる

リスキリングを通してスキルアップを果たした従業員は、視野が拡がり新しい視点や考え方を持てるようになる傾向があります。自身の成長を実感し、モチベーションが高まるのも大きなメリットです。さらには、成長の機会を用意した企業に対して、従業員のエンゲージメントが向上することや、業務の生産性にも良い影響がもたらされることがメリットだと考えられています。

従業員のキャリアに良い影響を与える

リスキリングでの学びを通して実現できることが増えると、従業員のキャリアの選択肢が拡大します。これまでの経験を違う形で活かしたり、より幅広い業務に携わったりなど、多様なポジションでの活躍が期待できるようになるでしょう。そのためにも、リスキリングを実施する際は従業員一人ひとりのキャリア展望を踏まえた学習内容を提供すると、より効果的です。

企業がリスキリングを導入する際の注意点

企業が人材育成にリスキリングを導入するにあたっての、注意点を解説します。

リスキリングの導入によって、社内の担当部署や現場には少なからず負担がかかります。こうした負担を考慮し、無理なく施策に取り組める体制を整えておくと安心です。たとえば、リスキリングの施策では学習内容選定や学習計画策定、その後の効果測定などが行われます。各プロセスで場合により社外のリソースを活用しながら、できるだけ社内の負担を抑えられるよう考慮しましょう。

リスキリングの学習内容は、自社にとって新たな領域であることから、内製化が難しい部分もあります。特に教材作成などのステップでは、既存業務に関連する知識や経験が活かしづらいため、スムーズな進行が難しいケースも珍しくありません。社外リソースの利用も含めて、方法を検討するようおすすめします。

企業がリスキリングを導入する手順

企業が人材育成にリスキリングを導入するには、どのような流れで施策へ取り組むべきでしょうか。最後に、企業がリスキリングを導入する手順についてお伝えします。

Step1.目指す人材像や必要スキルを分析する

初めに、自社の経営戦略や事業戦略に基づき、課題や必要スキルの洗い出しを行います。リスキリングの実施にあたり、従業員の現状を把握するには、スキルを可視化(データベース化)しましょう。自社のデータ分析には専門的なツールを活用するのも一つの手です。外部の人材マネジメントツールの利用も含めて検討するようおすすめします。

Step2.リスキリングの目的や目標を定める

リスキリングの効果や進捗状況を可視化するために、目的や目標を定めます。そこで重要なのが、従業員に対して目的や目標の説明を行うことです。

従業員からの理解を得るには、説明の段階に力を入れる必要があります。自社でリスキリングを実施する意図や社会的な背景について、従業員の理解が不足してしまうと、施策の成果が出づらくなることも。企業側からの指示に従うだけの状態を避けるためにも、事前に目的や目標を共有する機会を設けましょう。

リスキリングでは、従業員が既存の業務に加えて新たなスキルを習得することになり、負担を感じやすいといえます。企業側のメリットだけでなく、従業員側のメリットについても理解を促し、従業員自身が、自らの中長期的なキャリア形成に取り込む意識を持つことが大切です。

Step3.学習用の教材を作成する

リスキリングの学習内容に合わせて教材を作成しましょう。人事部門でのコンテンツ作成が難しい場合には、専門のサービスにアウトソーシングするなど、社外リソースの活用も検討するとよいでしょう。特にデジタル領域の学習内容には、業界・業種を問わずに共通する部分が多くあり、外部でも自社に適したコンテンツを探しやすいといえます。

コンテンツの種類には、社員研修やオンライン講座のほかに、eラーニングや社会人大学といった選択肢もあります。自社の人材育成の方針に適した方法を探索しましょう。

Step4.実践と継続を管理する

リスキリングでの学習を続けるにあたって、企業側が定期的な機会を継続して提供することがポイントです。また、自社にリスキリングの意識と取り組みが定着した後も、定期的にコンテンツの見直しを行います。従業員の反応や意見を得るために、毎回の受講後はアンケートを実施し、改善の取り組みへ役立てると良いでしょう。

なお、リスキリングの実施時間を決めるときは、従業員の意見を参考にスケジューリングを行います。その際は、就業時間外で実施すると従業員の不満が高まることもあるため、業務の合間で都合のつきやすいタイミングを選ぶのが理想的です。

リスキリングを導入して変化に強い組織づくりを

ここまで、リスキリングの基礎知識や、企業や従業員にとっての導入メリット、注意点や導入手順について解説しました。リスキリングでの学習内容は、デジタル領域のスキルに限らず、社会で求められる幅広いスキルが対象となります。習得すべきスキルは企業によって異なるため、自社に必要な知識や技術を明らかにしたうえで施策に取り組みましょう。その際は、社外のリソースを活用して担当者の負担を減らすことや、定期的に教材を見直してブラッシュアップすることなどがポイントです。ぜひ、変化に強い組織づくりにお役立てください。

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