社員のモチベーションを向上させる8の方法・施策とは?

企業が業績や生産性を向上させるためには、社員一人一人がモチベーションを高く保って仕事をしてもらうことは重要な要素です。では、どうすれば、社員一人一人のモチベーションが高まるのでしょうか。

この記事では、社員がモチベーションを高めるメリットやデメリット、モチベーションの理論を紹介したうえで、社員のモチベーションを高める8つの方法・施策を紹介していきます。

社員のモチベーションを高める施策は、一つの特効薬があるわけではありません。様々な施策や取り組み事例を知り、自社のおかれた状況に合わせ、試行錯誤しながら対応を検討していく必要があるでしょう。皆様の組織のモチベーション向上施策のヒントになれば幸いです。

2023.08.10
コラム

1.モチベーションとは

モチベーションとは、一般的に「動機づけ」とも言われています。ビジネスにおいては、主に「仕事への意欲を引き出す動機付け」と解釈されます。モチベーションは、目標達成を目指す原動力や、個々の主体性を発揮する源となります。そのため、企業の管理職や人事担当者は、社員一人一人のモチベーションを向上させ、事業戦略に生かす取り組みや施策が求められています。

モチベーションは、外発的動機付けと内発的動機付けに分けられます。

1)外発的動機付け

外発的動機付けは、内発的動機付けとは対照的な概念です。外発的動機付けとは、外部からの要因や報酬によって引き起こされる動機づけのことです。つまり、外部の刺激や報酬によって、人々が行動するようになることを指します。外発的動機付けは、何らかの目標や成果に対する報酬、評価を与えることで人々の行動を促すことができます。具体例としては、給与や昇進、賞金、賞罰制度などが外発的な要因として挙げられます。
外発的動機付けは一時的な効果はありますが、長期的な継続的な動機づけには限界があると言われています。特に、個人の興味や関心に合致しない場合は、モチベーションの低下や倦怠感を引き起こす可能性もあります。

2)内発的動機付け

これに対して、内発的動機付けとは、個人自身の関心や興味、喜びなど内部的な要因によって引き起こされる動機づけのことを指します。つまり、自己の内部から生まれる欲求や意欲に基づいて行動することを指します。内発的動機付けは、個人が活動に対して自発的に取り組むことを促し、持続的な意欲と取り組みを生み出す傾向があります。内発的動機付けの行動例としては、趣味や好きな活動に時間を費やすこと、自発的な成長や学習への関心、個人の価値観や信念に基づく行動などがあります。これらの要素は、個人の満足感や幸福感につながりやすいとされています。

2.社員のモチベーションを上げるメリットとは?

社員のモチベーションを上げるメリットとは何でしょうか?以下の5点が挙げられるでしょう。

1)生産性を高められるため

まず、社員のモチベーションが高まれば、以前よりも増して、社員が意欲的に業務に取り組むため、個人の生産性が高まり、その結果、企業としての生産性も高まると言われています。いわゆる企業の労働生産性が高まると言っても良いでしょう。

2)企業の成長につながるため

モチベーションが上がれば、社員の業務への関心度が高まり、その結果、業務品質や業務精度が上がり、企業の成長にもつながるという効果があります。生産性だけでなく、その品質が高まるというのも、社員のモチベーションを上がる大きなメリットといってよいでしょう。

3)離職率低下・定着率向上につながるため

モチベーション向上には、組織の離職率が低下し、社員の定着率を向上させるというメリットがあります。モチベーション高く仕事に取り組むことで、組織の目標やビジョンに共感し、組織への貢献意欲が高まります。よって、モチベーションが高まると、一般にエンゲージメント(愛社精神)も高まるという効果があると言われています。忠誠心が高い社員は、離職せずに長期間、組織に貢献する傾向があります。離職率が高く、定着率が悪い企業は、採用コストや業務品質という面で多大な課題を抱えることになりますから、モチベーションを高めることで、離職を防止し、長くとどまってもらうことは重要な取り組みと言えるでしょう。

4)採用コストを抑えられるため

社員のモチベーション向上は、採用コストがおさえられるという効果もあるでしょう。例えば、モチベーションが高まり、企業に対する愛社精神(エンゲージメント)が高まれば、社員自ら知人や友人に自社を勧めたり、社内のよい評判やレビューをSNSに投稿したりすることがあります。こうして、自発的に採用ブランドを上げられる企業は、採用のための広告費、つまり採用コストを削減することができるのです。

5)職場が活性化するため

社員のモチベーションは、他の同僚の社員や上司・部下にも波及すると言われています。例えば、一人の社員が積極的に周囲に声がけする、他のチームを助ける、自ら率先して意見を言うなどの行動が起こると、これにより、他の社員の行動にも良い影響を与えるとされます。ある意味、模範となる社員を真似ようとする社員が現れるのです。このプラスの相乗効果により、職場が活性化し、その結果、企業全体が活性化するといえるでしょう。

3.社員のモチベーションが下がるとどうなる?

では、逆に社員のモチベーションが下がると、どのような悪影響があるのでしょうか?また、どのようなデメリットがあるのでしょうか?4点挙げていきましょう。

1)生産性や品質が低下

まずは、社員のモチベーションが下がると、生産性や品質が低下していくことが考えられます。当然ながら、モチベーションが低い社員の業務品質は低く、業務に取り組むスピードは一般に遅くなります。こういった社員が増えれば、個人だけの問題ではなく、会社全体の生産性や品質低下につながってしまうでしょう。

2)ネガティブな発言が増え、社内の人間関係や雰囲気が悪化

モチベーションの低い社員は、ネガティブな発言が増え、社内の人間関係や雰囲気が悪化するリスクがあります。例えば、夜の飲み会で上司や会社の愚痴を言う、会社の将来を悲観する発言をする、などが該当します。このような社員のネガティブ発言が増えることで、周りの社員に悪い影響を及ぼすでしょう。

3)組織全体の士気が低下

一人一人のモチベーションの低下は、組織全体の士気の低下にもつながります。例えば、時間にルーズ、納期が遅れることに無頓着、離席が多い社員を見ると、行動を真似る社員がでるかもしれません。負の波及効果として、まるでデフレスパイラルのように、組織全体のモチベーション、士気が低下していく懸念があります。

4)離職率が上がり、採用コストが増加

社員のモチベーションが下がることで、離職者も増えると予測されます。例えば、モチベーションの低い社員は、社内の同僚などに愚痴や、ネガティブな情報を流布する可能性も高く、社員の離職像が懸念されます。また、SNSなどでネガティブな情報を発信するリスクも高く、企業の採用ブランディングに大きな損害を与える可能性もあります。このように、企業の採用コストが増加するというリスクがあるでしょう。

4.社員のモチベーションが上がらない原因とは?

では、社員のモチベーションが上がらない原因とは何でしょうか?以下の4つの不満・不安が根底にあると言われています。

1)会社(待遇・働き方)への不満

まず、会社(待遇・働き方)への不満が挙げられます。具体的には、会社の待遇・働き方・賃金などの不満です。これは、納得のいくもので無いと不満に繋がります。市場や同業他社、ないし、社内での成果に対して公平性が保たれ、満足できる水準にする必要があるでしょう。最近では、インターネットなどで、外部の報酬水準、ベネフィットが筒抜けになっており、社員が納得できる待遇・働き方に常にアップデートしておくことが必要でしょう。

2)人間関係への不満

次に、人間関係の不満です。人間関係と言っても多々ありますが、主には、上司、同僚、部下など、その不満の矛先は様々です。多少の人間関係の不満は、どの会社にも存在しがちで、「全くやる気のない上司がいる」「全く指示を聞いてくれない部下がいる」等のために、社員の仕事のモチベーションが下がるのは、よくあることです。

3)仕事に対する不満

「仕事そのもの」に対する不満もモチベーションが上がらない理由になるでしょう。例えば、「仕事が事務的で単調すぎる」、或いは逆に「難易度が高すぎてプレッシャーがある」などの質の問題もあるでしょう。あるいは、「仕事が少なすぎる、多すぎる」などの量の問題もあるかもしれません。いずれにせよ、仕事に関する不満は、動機づけ要因にも直結するため、見逃さずにしっかり対応していく必要がありそうです。

4)将来に対する不安

将来に対する不安も、社員のモチベーションが上がらない理由として挙げられるでしょう。会社や業界の将来が不安であると、仕事が手につかない他、転職の事を気にかけないといけないなど、仕事に身が入らないでしょう。将来に関しての会社展望を経営側が社員に伝えていく、個人の中長期的なキャリアについて話す機会があるなども大事になります。

5.社員のモチベーションを上げる4つのポイントとは?

では、社員のモチベーションを上げるにはどうすればよいでしょうか?4つのポイントを挙げてみましょう。

1)「低次の欲求」から満たす

マズローの欲求5段階説はご存じでしょうか?心理学者Abraham Maslowによって提唱された人間の欲求や動機づけに関する理論です。この理論は、人間の欲求は、階層的に低次から高次の順番で満たされるという考えに基づいています。低次の欲求から順番に満たしていくという方法が考えられるでしょう。マズローの欲求5段階説の各段階を低次の欲求から説明します。

①生理的欲求
食物、水、睡眠、性的欲求など、生きるために必要な基本的な根源的欲求です。これらの欲求は、生存に直接関係しています。

②安全欲求
身体的な安全性、居住環境の安全性、雇用の安定性、健康な家族関係など、安全の欲求となります。安全な状況や予測可能な環境は、個人に安心感を提供します。

③所属欲求
友情、家族、愛情、所属、社会的なつながりなど、他者との関係を求める欲求となります。人間は社会的な動物であり、他の人々とのつながりや所属感を必要とします。

④尊厳欲求
自己評価や他者からの評価、成功や成果による自己尊重、名声、地位など、個人の自尊心と尊敬の欲求があります。人は自己実現へのステップを踏む前に、自分の価値を認めてもらうことを求めます。

⑤自己実現欲求
個人の最上位の欲求です。自分の能力の実現や目的の達成、個別性の発展、創造性の追求など、自己の成長と個性の追求に関する欲求です。自己実現の欲求は、他の全ての欲求が満たされた後に出現すると考えられています。

2)「不満を取り除く」「満足度を高める」の両面で考える

ハーズバーグの二要因理論はご存じでしょうか?ハーズバーグの2要因論は、心理学者Frederick Herzbergによって提唱された動機づけに関する理論です。この理論は、仕事の満足度と不満足度に影響を与える要因を2つのカテゴリーに分けて説明します。

①衛生要因
衛生要因は、仕事環境や条件に焦点を当てています。これらの要因が不十分である場合、社員は不満を感じる可能性がありますが、一定以上を増やしても満足感が高まらないとされています。具体的な衛生要因には、給与、労働条件、職場の安全性などが含まれます。これらの要因が満たされていない場合、社員は不満を抱える可能性がありますが、一方で、それが満たされたからと言って、十分な満足感をもたらすわけではありません。

②動機づけ要因
動機づけ要因は、仕事自体に関連する要素に焦点を当てています。これらの要因が満たされると、社員は仕事に対する満足感とやりがいを感じます。具体的な動機づけ要因には、達成感、成長の機会、裁量権、業務上の評価などが含まれます。これらの要因が備わっていると、社員は仕事に情熱を注ぎ、高いパフォーマンスを発揮する可能性があります。

ハーズバーグの二要因論は、社員の動機づけと満足度を向上させるために、衛生要因を充足しつつ、同時に動機づけ要因を強化することの両方が重要であるとしています。満足度を高めるためには、衛生要因を最低限の水準以上に保ち、同時に動機づけ要因を重視して仕事の意義や成果につなげる必要があります。

3)「内発的」「外発的」の両軸で動機づけを考える

先に述べた通り、内発的動機付けは、個人自身の関心や喜び、興味などに基づいて行動する動機づけのことを指します。一方、外発的動機付けとは、外部からの要因や報酬によって引き起こされる動機づけのことです。
この両軸を満たしていくことも動機づけとしては、必要な観点でしょう。

4)社員満足度を調査する

また、社員満足度調査を実施するのも大事なポイントです。モチベーションの理論からのアプローチも大事ですが、まさに現場にいる社員の声を聴き、実態に合った対策を取ることが大事です。例えば、満足を与えていると思っていた人事施策やベネフィットについて、意外にも、社員満足度は高くないということがあり得るでしょう。逆に「意外な要素が、社員の満足度を高めている」など、社内担当者が思いもよらない結果がでることもあります。社員満足度調査は年1回以上行い、定期的に社員の満足度を調査することをお勧めします。

6.社員のモチベーションを上げる8つの方法・施策とは?

具体的に、現場の観点から社員のモチベーションを上げる8つの方法・施策を見ていきましょう。

1)待遇・職場環境を見直す

まず、待遇や職場環境を見直すことです。上述の理論(二要因論)だと、衛生要因にはあたりますが、あえて社員の不満に繋げないためには、納得感のいく待遇・職場環境を提供することは何より大事なことです。処遇面では、外部公平性と内部公平性があります。外部公平性は、同じ業界や市場の水準の待遇の給与や報酬になっているかどうかです。内部公平性は、同じ会社の同じような仕事、パフォーマンスの社員と比べ、不公平な待遇になっていないかとなります。外部とも内部とも大事な観点であり、これを意識して、待遇や職場環境を見直すことが必要でしょう。

2)公正な人事制度へ改善する

公正な人事制度へ改善することは、社員のモチベーション向上につながります。例えば、評価制度において、他人と比べて公正でない、納得がいない、腹落ちがしない制度であれば、当然社員のモチベーションは低下します。社員サーベイなどを実施し、社員は人事制度をどう評価しているのか?課題はないのか?についてしっかり把握し、公正な人事制度への改善を重ねる必要があるでしょう。

3)インセンティブを設定する

次にインセンティブを設定する方法があります。これは金銭的報酬と、非金銭的報酬に分けられるでしょう。例えば、昇給・ボーナスなどお金に関わるインセンティブは金銭的報酬ですが、社員に渡されるサンクスカードや、お客様や上司から言われる「有難う」という言葉は非金銭的なインセンティブとなります。

また、ショートターム・インセンティブ(STI)と、ロングターム・インセンティブ(LTI)という観点もあります。前者は、比較的短期の成果や業績で支払われる賞与が該当しますが、後者は、長く期間での成果に対して支払われる退職金や勤続表彰金などが挙げられるでしょう。

これらの区分を理解し、両者がバランスよく、社員に提供できる仕組みがあると良いでしょう。

4)期待・役割を明確に伝える

次に上司が部下に対して、期待や、役割を明確に伝えることも、社員にとって重要なモチベーション・ファクターです。敢えて、役割や期待を明確にせず、阿吽の呼吸で仕事を進める組織もまだまだ多いですが、しっかり一人一人に役割を明確に与えて、期待値を伝える方が、社員の自律や参画意識を向上させ、士気が上がると言われています。

5)挑戦を促せるような制度・環境をつくる

挑戦を促せるような制度・環境をつくることも大事でしょう。例えば、新規プロジェクトへの公募制度、社内ベンチャー制度、手上げ制の選抜研修などです。挑戦したいと思っている社員のそのやる気を消滅させずに、しっかり活かす制度を社内に持っておきたいものです。

6)企業のビジョンや方針を伝える

本人の期待・役割に加え、働く企業としてのビジョンや方針をしっかり伝えていくことは、エンゲージメント向上にもつながり、ひいては、本人のモチベーション向上にもつながるでしょう。社是や、社訓などを手帳にして配る、定期的なミーティングで、会社のビジョンや方針を伝える機会などを持ち、今、会社は「何を目指そうとしているか」が、社員にとって明確になることが大事でしょう。

7)社員と定期的に面談を行う

昨今は実施率が高いとされる社員面談、1on1を定期的に行うことが必要でしょう。定期的に上司が部下の悩み事や、課題をしっかり聴いて、相談に乗ることや、期待や役割を定期的に伝える機会を持つことは、社員のモチベーション向上に必要な取り組みです。

8)キャリア研修を実施する

最後にキャリア研修を実施するという方法があります。キャリア研修は、定年が近くなってから、その後のセカンドキャリアを考える研修としての位置付けがまだまだ多いですが、若いうちから、自分のキャリアを考えることも有効な取り組みです。社員がモヤモヤしている目標を再確認し、モチベーションを取り戻す効果もあります。特に、キャリア支援の有資格者や専門講師と、自分自身の今までのキャリアを掘り下げ、価値観・興味・能力を再確認し、目指すキャリアビジョンを設定するというプロセスを踏むことで、よりクリアに目指すべき方向が分かり、モチベーションを高めることに寄与しそうです。

7.まとめ

社員のモチベーション向上が、企業にプラスの効果を及ぼすことは間違いありません。では、そのモチベーションの仕組みはどうなっているのか?どうすれば、そのモチベーションを高めることができるのか?その仕組みをご理解いただき、具体的な施策を実行する必要があるでしょう。

この記事の編集担当

黄瀬 真理

黄瀬 真理

大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。

国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定

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