ジョブローテーションとは?メリットや効果を高めるポイントを解説

ジョブローテーションは、定期的に職場を異動したり、職務を変更したりする制度です。従業員のスキルアップや事業全体を見渡せる人材の育成のために、多くの企業がジョブローテーションを取り入れています。

この記事では、ジョブローテーションを実施する目的や導入のメリット・デメリット、さらに効果を高めるポイントについて解説します。

2023.09.25
コラム

1.ジョブローテーションとは、定期的な職場異動や職務変更をする制度のこと

ジョブローテーションとは、定期的に職場を異動したり、職務を変更したりする制度のことです。ジョブローテーションは、「さまざまな業務を経験しながら、従業員の能力開発を行う仕組み」の1つで、企業や法人で従業員の能力開発を促進するために導入されています。企業にはさまざまな部署や業務があり、多様な能力を持った人材が就業しています。ジョブローテーションを通じて、従業員は法人内の部署を異動し複数の業務を経験することができ、それを通して自身の能力を高やすくなるでしょう。

ジョブローテーションのスパンは、短い場合で半年、長い場合では数年にわたります。ジョブローテーションによって従業員の部署や職務を定期的に変更することで、従業員は企業や法人の各部署に蓄積されたノウハウを学び、新たなスキルや知識を身につけることができます。

2.ジョブローテーションの目的

ジョブローテーションには、従業員のスキルアップや企業の全体像を見渡せる従業員の育成、業務の属人化防止などの目的があります。
ここでは、ジョブローテーションを行う目的について解説します。

1)人材育成

人材育成は、ジョブローテーションの目的の1つです。
ジョブローテーションでは、新卒採用・中途採用にかかわらず、多様なバックボーンを持つ従業員に、企業や法人内のさまざまな職種や部署を経験させることができます。それによって、従業員は将来的にさまざまな業務に対応できる柔軟性を持つことが可能です。

また、企業全体の状況把握にも、ジョブローテーションは有効です。
企業や法人の事業規模が大きければ大きいほど、部署や職種の数も増えます。組織が成長し、事業を拡大するにつれ、新たな部門や職種の新設がしばしば行われます。従業員がそれらを含めたさまざまな部署で多様な職務を経験することで、企業の全体像を把握できる人材を育成することが可能です。

2)属人化の防止

ジョブローテーションを実施することで、業務の属人化の防止につながります。
仮に、特定の従業員だけがある業務に取り組んでいて、その従業員が退職した場合、業務の継続が困難になる可能性があります。しかし、ジョブローテーションを実施することで、業務を共有化するためのツール、マニュアルや引継書などが整備されるため、社内で業務の知見が共有されていきます。そのため、ジョブローテーションにより、従業員の退職による業務の中断ダメージを最小限に抑えることができるのです。

3.ジョブローテーションと人事異動との違い

ジョブローテーションと似た意味の言葉に「人事異動」があります。人事異動とは、組織内で従業員の配置転換や役職を与えることなどにより、従業員の組織の中での役割や地位、職務、勤務地などを変える制度のことです。人事異動は、一般的に組織の戦略にもとづいて行われます。例えば、特定の部署の強化や欠員補充、新たなプロジェクトの立ち上げ、部署の再編成など、組織内の人材の配置や組織の構造の変更が必要とされる場合に行われます。

一方、ジョブローテーションには、組織内での従業員の能力開発やキャリアパスの形成という目的があります。異なる部署や役割での経験を積むことで、従業員が多様なスキルや知識を獲得し、組織全体のパフォーマンス向上に寄与することが期待できます。さらに、異なる立場や視点からの経験を通じて、従業員の成長や組織の柔軟性も促進されます。つまり、ジョブローテーションは、人事異動に比べてより広義なものといえるでしょう。

4.ジョブローテーションのメリット

ジョブローテーションのメリットは、制度を導入する企業、従業員それぞれにあります。
ここでは、ジョブローテーションのメリットについて、企業側と従業員側の2つの観点から解説します。

1)企業側のメリット

ジョブローテーションによって得られる企業側のメリットには、どのようなことがあるのでしょうか。
ここでは、企業側の2つのメリットをご紹介します。

・セクショナリズムの予防

セクショナリズムを予防できる点は、ジョブローテーションのメリットです。
セクショナリズムとは、部署内で人間関係が固定化されることで従業員の視野が狭くなり、組織全体にとっての最適解を見つける視点が欠け、自分が所属する部署の利益や効率のみを優先してしまう現象のことです。このセクショナリズムが進行してしまうと、組織内のコミュニケーションや協力関係が悪化し、意思疎通やプロジェクトの進行に支障をきたす可能性があります。ジョブローテーションを行うことで、こうしたセクショナリズムが生まれることを予防できます。

・適材適所の人材配置

適材適所の人材配置ができる点も、ジョブローテーションのメリットです。
ジョブローテーションを行うことで、異なる部署や役職での経験を通じて、従業員の能力や適性を総合的に評価できます。これによって従業員の適性を見極めやすくなるだけでなく、能力開発も促進することができ、高精度な適材適所の人材配置が期待できます。

2)従業員側のメリット

ジョブローテーションによって得られる従業員側のメリットには、どのようなことがあるのでしょうか。
ここでは、従業員側の2つのメリットをご紹介します。

・従業員の交流活性化

ジョブローテーションを実施すると、部署の垣根を越えた人事異動が定期的に行われることになるため、従業員の交流活性化が期待できます。
ジョブローテーションを実施しておくことで、人脈形成や人間関係の構築が社内で盛んになるため、結果的に、風通しの良い雰囲気で従業員が働くことできるようになるでしょう。例えば、部署が異なる社員・スタッフ同士がプロジェクトを作って仕事をする場合、スムーズに進めることができるなどのメリットもあるかもしれません。

・自身の能力を伸ばし活かせる

ジョブローテーションによって組織のさまざまな業務に携わることで、従業員は自身の適性や能力を理解することができます。そして、その適性や能力を生かせる職務に就きやすくなります。

例えば、ある従業員が営業の部署に所属している場合、ジョブローテーションによって営業以外の業務にも携わることができます。ジョブローテーションを行う中で、従業員は自分が営業だけでなく、マーケティングや人事などのほかの業務にも適性や興味を持っていることに気づくかもしれません。

5.ジョブローテーションのデメリット

ジョブローテーションには、メリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。
ここでは、ジョブローテーションのデメリットについて、企業側と従業員側の2つの観点から解説します。

1)企業側のデメリット

専門性が高い人材を育成しづらい点は、ジョブローテーションのデメリットです。
ジョブローテーションでは、従業員は数ヵ月もしくは数年といった期間で職場や職種を異動します。そのため、企業内で専門性の高いスペシャリストを早期に育成したい場合は、別の方法を検討したほうがよいでしょう。

また、ジョブローテーションには、従業員の複数回にわたる異動のたびに育成が必要となるというデメリットもあります。そのため、指導する側の人件費や、マニュアル作成の費用なども含めて、人材育成のためのコストが高くなります。その分、ジョブローテーションの対象となっていた従業員が離職してしまった場合、退職までにかけた人材育成コストに対する損失が大きくなってしまう点も、ジョブローテーションのデメリットです。

2)従業員側のデメリット

もし従業員がスペシャリスト志望で「1つの部署でスキルや専門性を高めたい」と考えている場合、ジョブローテーションという経験は回り道に感じるかもしれません。組織で事業を進めるためには、たとえスペシャリスト志望でも幅広い経験と視野を持つこと自体は有益なことです。ただ、従業員のキャリアプランとのすり合わせができていない状態でジョブローテーションを実施してしまうと、異動の意義を従業員自身が納得して理解できない可能性があります。その場合、従業員の業務に対する意欲の低下などネガティブな反応が起きかねません。

また、ジョブローテーションには、異動先での信頼関係の再構築や職場環境の変化への適応という課題も存在します。部署を異動することで、新しい部署ではゼロから信頼関係を再構築しなければなりません。新しい職場でのルールに適応する必要があることも、場合によっては負担となる場合があるでしょう。

6.ジョブローテーションの効果を高めるポイント

ジョブローテーションの効果を高めるためには、導入後もさまざまな取り組みを行うことが不可欠です。
ここでは、ジョブローテーションを導入した後に注意したいポイントをご紹介します。

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1)ジョブローテーションを行う目的を理解してもらう

ジョブローテーションによって専門性が身に付かなくなることを懸念する従業員もいるため、まずは本人にジョブローテーションの意義を納得してもらうことが大切です。
まずは会社側から従業員への期待を伝えましょう。ジョブローテーションが自身の将来にどのように役立つかを従業員本人が考えることが、ジョブローテーションを機会と捉え、前向きに向き合うことにつながります。

2)現場の受け入れ体制を整えておく

現場の受け入れ体制を整えておくことも、ジョブローテーションの効果を高めるポイントの1つです。
異動先でスムーズに従業員を受け入れるために、すみやかに業務を開始できるようなフォロー体制の構築や、わかりやすい業務マニュアルなどを準備しましょう。

3)異動する従業員への配慮を怠らない

ジョブローテーションの効果を高めるためには、異動する従業員への配慮を行うことも重要です。
例えば「期間に余裕を持って内示を行うこと」「引っ越しにかかる費用や手間を会社側がサポートすること」などが該当します。異動する従業員に幼い子供や要介護者がいる場合は、状況に合わせて個別に対応することも必要になります。

7.従業員の理解を促進し、ジョブローテーションを効果的に実施しよう

ジョブローテーションは、定期的に職場を異動したり、職務を変更したりする制度です。ジョブローテーションを通じて、企業は従業員の経験の幅を広げたり事業全体を見渡せる視野の広い人材の育成を行ったりすることができます。ジョブローテーションの効果を高めるためには、ジョブローテーションの目的を従業員に理解してもらうことや現場の受け入れ体制の整備、異動する従業員への配慮が必要です。

株式会社ライフワークスでは、従業員のキャリア開発を検討・実施する方に向け、さまざまなソリューションをご提供しています。一人ひとりがキャリアを考えることは、スキルや知識・経験を身に付けて成長することとも強く結び付いています。従業員が中長期的なキャリアを考え、モチベーション高く仕事をするにはどうしたら良いかなどのご相談にも乗っていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事の編集担当

黄瀬 真理

黄瀬 真理

大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。

国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定

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