ライフワークス 執行役員の佐々木です。
近年、多くの企業で「複線型キャリア」が導入され、管理職だけでなく、専門職としてのキャリアパスも用意されるようになってきました。多様な人材がそれぞれの強みを活かして活躍するためには、望ましい方向性と言えるでしょう。
一方で、現場の実態を見ていると、この複線型キャリアが必ずしも機能しているとは言い難い状況も見受けられます。特に40代においては、キャリアの方向性を見出せず、いわば「漂流」しているような状態に陥るケースが少なくありません。
なぜこのようなことが起きるのでしょうか。
■40代は"キャリアの分水嶺"
一般的に、新卒で入社してからの20年ほどは、会社から与えられる役割や機会を通じて成長していく期間です。
一方で40代以降は、それまでに培った経験や強みをもとに、自らの価値を発揮していくことが求められるフェーズに入ります。言い換えれば、「組織に委ねるキャリア」から「自ら選び、創っていくキャリア」への転換点です。
そしてこの転換は、単なる意識の問題ではなく、残りの組織内キャリアが20年前後となる中で、どのように価値を発揮していくかを現実的に考えざるを得ない、非常に実務的な意思決定でもあります。
しかし、この重要なタイミングにおいて、多くの人が明確な選択をできていないのが実態です。
■管理職にも専門職にも進みにくい現実
40代のキャリアは、大きく「マネジメント」と「スペシャリスト」という二つの方向性に分かれるとされています。しかし実際には、どちらも選びにくい状況が生まれています。
まずマネジメントについては、近年その難易度が大きく高まっています。ハラスメントへの配慮、メンバーの多様化、変化の激しい事業環境への対応など、求められる役割は拡大し続けています。その結果、現場では「大変そうだ」「板挟みになる」といった印象が強くなり、意欲的に目指す対象になりにくくなっている側面があります。
一方で、スペシャリストについても同様に課題があります。多くの企業で専門職制度は存在するものの、「どのような経験や能力を積めばそこに到達できるのか」というプロセスが明確に定義されていないケースが少なくありません。結果として、スペシャリストは"結果としてなるもの"であって、意図的に目指すキャリアとしては機能しにくい状況にあります。
■本質的な問題は「選択できないこと」ではない
ここで重要なのは、40代のキャリア問題の本質は単に「選べないこと」ではないという点です。より本質的には、"キャリアを選択するための意思決定そのものが成立していない"ことにあります。
マネジメントについては、負荷や難しさに関する情報は多く存在する一方で、その役割を通じて得られる成長や価値については十分に整理されていない。スペシャリストについては、そもそも判断基準や到達イメージが曖昧であり、何をもって選択すればよいのかが分からない。つまり、どちらの選択肢も「意思決定に必要な材料」が不足しているのです。
その結果、「選ばない」という選択がなされ、これまでと同じ働き方を続けることになります。そして気づいたときには、キャリアの選択余地が狭まり、「こんなはずではなかった」と感じる状況に至ってしまうのです。
■複線型キャリアを機能させるために
では、複線型キャリアを実効性のあるものにするためには、何が求められるのでしょうか。ポイントは、「選択肢を用意すること」そのものではなく、"意思決定が成立する状態を設計すること"にあります。
具体的には、三つの視点が重要です。
一つ目は、マネジメントの再定義です。
その難しさだけでなく、得られる経験や成長、裁量といった価値を整理し、意思決定に必要な情報として提示することが求められます。
二つ目は、スペシャリストの定義の明確化です。
専門技術に限らず、課題設定力や関係構築力といったジェネラルスキルも含め、どのような価値を発揮する人材をスペシャリストとするのかを言語化し、そこに至るプロセスを示す必要があります。
三つ目は、本人が意思決定する機会の設計です。
自らの価値観や強みと向き合い、どの方向に進むのかを考える機会を、企業として意図的に提供することが重要です。
複線型キャリアは、多様な人材が活躍するための有効な仕組みです。しかし、その前提となる「選択の仕組み」が整っていなければ、かえってキャリアの不確実性を高めてしまう可能性もあります。40代という重要な節目において、キャリアを「なんとなく続けるもの」から「意図的に選ぶもの」へと転換する。そのための設計が、今あらためて求められているのではないでしょうか。
「複線型キャリア」という制度を用意しても、中身が伴わない状況は、人事担当者の皆様にとっても非常にもどかしい問題ではないでしょうか。
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著者:佐々木 淳
大学卒業後、一貫して人材業界で20年。主にIT業界やコンシューマサービス業界大手企業の採用コンサルティングを10年あまり手掛ける。その後、ライフワークスに入社。年代別のキャリア支援や、上司向け部下のキャリア開発支援などといったソフト面の施策企画提案に幅広く携わる。大手を中心に幅広い業界のクライアントに対するコンサルティング実績を持つ。
現在は、年間約200社のキャリア課題解決に向けた施策立案の責任者として従事。


