ライフワークス 執行役員の佐々木です。
「これからは、上司が部下のキャリアも支援してください」
そう人事から求められたとき、現場の管理職はどのように感じるでしょうか。
もちろん、その重要性を理解し、前向きに取り組む上司もいます。
一方で、
「そこまで自分がやるのか」
「何を話せばいいか分からない」
「自分自身だってキャリアについてちゃんと考えたことがない」
という戸惑いが生まれるのも自然なことです。
私たちは、上司によるキャリア支援が難しい背景には、大きく3つの壁があると考えています。
■1つ目の壁――そもそも時間がない
一つ目は、非常に現実的な物理的な問題です。
現在の管理職には、自身の業務だけではなく、
業務管理、人材育成、評価、1on1、各種会議など、多くの役割があります。
そこにキャリア面談という新しい「対話の業務」が加わります。
キャリア面談の重要性を説明されても、
「また仕事が一つ増えた」
と受け止められてしまえば、形式的な実施になりやすいでしょう。
だからこそ人事は、
「キャリア面談をやってください」
と依頼するだけではなく、なぜこの対話がマネジメントに必要なのかまで上司に理解してもらう必要があります。
■2つ目の壁――キャリアについて学んだことがない
二つ目は、スキル・知識の問題です。
管理職だからといって、キャリアについて専門的に学んできたとは限りません。
部下のWillをどう捉えるのか。
強みやCanをどう見立てるのか。
本人の希望と組織からの期待をどうすり合わせるのか。
評価面談とキャリア面談は何が違うのか。
こうした知識を持たないまま、
「部下のキャリアを支援してください」
と言われても難しいのは当然です。
必要なのは、上司本人のセンスに任せることではなく、キャリアについての基本的な知識や対話の方法を学べる機会を用意することです。
■3つ目の壁――上司と部下で「キャリア観」が違う
そして、見落とされやすいのが世代間の問題です。
上司自身が若手だった頃には、
「会社がキャリアを用意してくれる」
「昇進して組織の中で上へ行くことが成功」
「一つの会社で長く働く」
といったキャリア観が比較的一般的だったかもしれません。
一方、現在の若手社員には、
「キャリアは自分でつくる」
「成長できるかどうかを重視する」
「社内だけでなく社外の選択肢も持つ」
といった価値観も広がっています。
上司世代に比較的多い伝統的なキャリア観と、若手世代に見られるバウンダリーレス/プロティアンなキャリア観の違いが存在します。
だからこそ、上司が自身のキャリア観を「当たり前」として部下に当てはめると、対話がかみ合わなくなる可能性があります。
■さらに難しい「年上部下」とのキャリア対話
世代間ギャップは、若手との間だけで起きるわけではありません。
組織の年齢構成が変わる中で、年下上司・年上部下の組み合わせも増えています。
年下上司は、
「人生の先輩にキャリアについて何を言えばいいのだろう」
「以前は自分より上の役職だった人なので、期待を伝えづらい」
と遠慮する。
一方、年上部下は、
「まだ役に立ちたいが、何を期待されているのか分からない」
「出しゃばらない方がいいのではないか」
と考える。
その結果、双方が遠慮して対話が減り、本人の役割がさらに曖昧になることがあります。
■上司を「やらない人」と決めつけない
キャリア面談が機能していないと、
「上司がキャリア支援の重要性を理解していない」
「管理職の意識を変えなければならない」
と考えてしまいがちです。
しかし上司側にも、
時間がない。
知識がない。
自分とは異なるキャリア観への戸惑いがある。
という事情があります。
だからこそ人事に必要なのは、上司に責任を押しつけることではありません。
キャリア支援の意味を理解してもらう。
必要な知識やフレームを提供する。
年代によって異なるキャリア課題を知ってもらう。
そして、上司が一人で抱え込まずに実践できる仕組みをつくる。
部下のキャリア支援を上司の「新しい負担」にするのか。
それとも、人と組織を成長させるマネジメントの一部として根づかせるのか。
その違いをつくるのは、上司個人の意識だけではなく、会社側の支援設計なのだと思います。
ライフワークスでは、キャリア面談の目的整理から、面談シート、上司・メンバー向け支援、運用定着まで、キャリア面談を「機能する対話の仕組み」にするためのご支援を行っています。貴社の状況や課題について、私たちと一緒に整理してみませんか?
著者:佐々木 淳
大学卒業後、一貫して人材業界で20年。主にIT業界やコンシューマサービス業界大手企業の採用コンサルティングを10年あまり手掛ける。その後、ライフワークスに入社。年代別のキャリア支援や、上司向け部下のキャリア開発支援などといったソフト面の施策企画提案に幅広く携わる。大手を中心に幅広い業界のクライアントに対するコンサルティング実績を持つ。
現在は、年間約200社のキャリア課題解決に向けた施策立案の責任者として従事。


