ライフワークス 執行役員の佐々木です。
人的資本経営の重要性が高まる中、多くの企業で「キャリア自律」を掲げた施策が進んでいます。
キャリア研修を実施する。
1on1やキャリア面談を導入する。
社内公募や自己申告制度を整える。
企業側の支援策は、以前に比べて格段に増えてきました。
一方、人事の方々とお話ししていると、
「施策は用意しているのに、社員がなかなか主体的に活用してくれない」
というご相談も少なくありません。
社員側からは、
「キャリアは会社が決めるものでは?」
「特に話すこともない」
「忙しくて、それどころではない」
「今のままでいい」
といった反応が返ってくることもあります。
なぜ、キャリア自律はなかなか社員の"自分ごと"にならないのでしょうか。
■「キャリアを考えよう」だけでは、自分の人生の話にならない
一つの理由は、「キャリア」という言葉自体が抽象的だからだと私たちは考えています。
会社から、
「これからは自律的にキャリアを考えてください」
と言われても、
何を考えればよいのか。
なぜ今考える必要があるのか。
自分の生活とどう関係するのか。
そこまで理解できなければ、会社側からのメッセージとして受け止められてしまいます。
特に興味深いのは、年代によってキャリアに対する反応が異なることです。
若手では、将来への焦りから短期的な判断に寄りやすい。
中堅では、仕事や子育てなどに追われ、将来を考える余白を失いやすい。
ミドルシニアでは、定年や役割変化を前に、将来を悲観的に捉えたり、会社任せになったりしやすい。
表面に出る行動は違います。
しかし、その奥には共通して、
「これから自分は大丈夫なのだろうか」
という漠然とした不安があります。
■漠然とした不安を「取り組むべき課題」に変える
不安は、曖昧なままでは行動につながりません。
そこで一つの補助線として活用できるのが、マネープランです。
今後どのようなライフイベントがあるのか。
どの程度の収入や支出が想定されるのか。
いつまで、どのように働きたいのか。
自分の人生を時間軸で見通してみることで、漠然としていた将来が少しずつ具体的になります。
すると、
「今後このくらいの生活を実現したい」
という話から、
「では、どのように働き続ける必要があるのか」
「どんな力を身につける必要があるのか」
「今の会社でどんな経験を積むべきなのか」
というキャリアの問いが生まれてきます。
つまり、マネーそのものを目的にするのではありません。
生活やお金を入口として、キャリアを自分の人生の話に変える。
ここに、キャリア自律支援としてマネープランを活用する意味があります。
■キャリアとマネーは、人生設計の両輪
「キャリア」と「マネー」は、企業の人事施策では別々に扱われることが多いテーマです。
キャリアは人材開発。
マネーは福利厚生や定年前教育。
そんな位置づけが一般的かもしれません。
しかし、社員の人生から見れば、この二つは切り離せません。
どう働くかは、どう暮らすかに影響します。
同時に、
どう暮らしたいかが、どう働くかを考える前提にもなります。
キャリアプランとマネープランは、本来ライフプランという一つの人生設計の中に存在しています。
だからこそ、マネープランは定年前の社員だけに必要なものではありません。
若手にも、中堅にも、ミドルシニアにも、それぞれ異なる意味があります。
■マネープランを「福利厚生」から「人材開発」へ
私たちは、マネープラン支援を単なる金融知識の提供にとどめる必要はないと考えています。
重要なのは、
「いくら貯めるべきか」
だけを学ぶことではありません。
自分の将来を見通した結果として、
「では、自分はこれからどう働き、どう成長していくのか」
まで考えることです。
若手なら、中長期的な視点を持つことで、目の前の環境だけを理由にキャリアを判断しない。
中堅なら、生活設計と今後の役割・成長を接続する。
ミドルシニアなら、定年後を「会社が用意するもの」ではなく、自分自身が選択するキャリアとして考える。
マネープランは、キャリア自律そのものではありません。
しかし、社員がキャリアを自分の人生の問題として捉えるための、非常に有効な「補助線」になり得ます。
キャリア自律を促そうとしても、社員の反応がいまひとつ変わらない。
そんな時には、
「もっとキャリアについて考えてもらうにはどうするか」
だけではなく、
「社員が自分の人生を具体的に考える入口をつくれているか」
という視点から、施策を見直してみてもよいのではないでしょうか。
ライフワークスでは、キャリアコンサルタント資格とファイナンシャルプランナー資格を併せ持つ講師陣が、お客様の社員のキャリア自律を促進する研修に登壇しています。貴社の状況や課題について、私たちと一緒に整理してみませんか?
著者:佐々木 淳
大学卒業後、一貫して人材業界で20年。主にIT業界やコンシューマサービス業界大手企業の採用コンサルティングを10年あまり手掛ける。その後、ライフワークスに入社。年代別のキャリア支援や、上司向け部下のキャリア開発支援などといったソフト面の施策企画提案に幅広く携わる。大手を中心に幅広い業界のクライアントに対するコンサルティング実績を持つ。
現在は、年間約200社のキャリア課題解決に向けた施策立案の責任者として従事。


