なぜ女性管理職比率は上がらないのか?――『本人の意欲』ではなく、キャリア形成プロセスから考える

2026.09.04
コラム

ライフワークス 執行役員の佐々木です。

女性活躍推進に取り組む企業の人事担当者の方々から、こんな声を伺うことがあります。

「産休・育休や時短勤務など、制度はかなり整ってきた。それでも女性管理職比率がなかなか上がらない」

「管理職候補となる女性社員が、思うように育ってこない」

「本人に聞いても、管理職にはなりたくないと言われてしまう」

女性が長く働き続けられる環境は、この10年ほどで大きく整備されてきました。

それでも、管理職登用や役割拡大といった「活躍・成長」の場面では、まだ男女差が残っています。

なぜなのでしょうか。

私たちは、この問題を「女性本人の意欲」だけで捉えると、本質を見誤ってしまう可能性があると考えています。

■女性活躍推進は「働き続けられる」から次の段階へ

これまで女性活躍推進では、

産休・育休制度、短時間勤務、復職支援、柔軟な働き方など、

「働き続けられる環境を整えること」

が重要なテーマでした。

これはもちろん、今後も欠かすことのできない土台です。

一方で、働き続けられるようになっただけでは、必ずしも活躍領域が広がるわけではありません。

これからより重要になるのは、

仕事経験を積む。

役割を広げる。

上司とキャリアについて対話する。

リーダーシップを発揮する機会を持つ。

管理職候補として育成される。

といった、

「働きながら成長できる環境」

をつくることではないでしょうか。

女性活躍推進の論点は、「辞めずに働けるか」から、「働きながらどのように成長し、活躍領域を広げられるか」へ移りつつあります。

■同じスタートでも、その後の経験は同じだろうか

例えば、同じ会社に、同じ採用基準で総合職として入社した男女がいたとします。

入社時点では、大きな能力差はありません。

ところが5年、10年、15年と時間が経つと、管理職候補となる人材の男女比に差が生まれている。

ここで、

「女性は管理職志向が低いから」

と結論づける前に、一度その途中経過を見てみる必要があります。

どの部署に配属されたか。

どんな仕事を任されたか。

難しい案件やプロジェクトを経験したか。

リーダー役を担ったか。

後輩育成や意思決定を経験したか。

上司からどの程度の期待を伝えられてきたか。

こうした一つひとつの仕事経験は、長いキャリアの中では小さな違いに見えるかもしれません。

しかし、その小さな違いが積み重なることで、10年後、15年後には大きな経験差になって表れる可能性があります。

つまり、女性管理職比率の問題を考える際には、

「登用する段階」だけではなく、「そこに至るまでのキャリア形成プロセス」

を見る必要があります。

■無意識の「配慮」が、経験機会の差を生んでいないか

経験機会の差は、誰かが意図的につくっているとは限りません。

むしろ、善意や配慮から生まれることがあります。

例えば、

「育児中だから、この大変なプロジェクトは任せない方がいいだろう」

「本人が管理職になりたいと言うまで、無理に勧めない方がいい」

「負荷が高くなりそうだから、今回は別の人に任せよう」

こうした判断には、本人を大切にしたいという気持ちが含まれていることも多いでしょう。

しかし、それが繰り返されると、

重要案件を経験しない。

リーダー役を経験しない。

意思決定や部下育成を経験しない。

結果として、数年後には、

「まだ経験が足りないので、管理職候補には早い」

という評価につながることがあります。

つまり、

思い込みや配慮
→ アサインの差
→ 経験機会の差
→ 能力認識の差
→ 登用の差

という連鎖が起きる可能性があるのです。

■「管理職になりたくない」は、本当に出発点なのか

女性社員本人から、

「管理職にはなりたくありません」

と言われることもあります。

もちろん、その意思は尊重されるべきです。

すべての社員が管理職を目指す必要はありません。

一方で、その言葉がどのような経験の中で形成されたのかについては、丁寧に考える必要があります。

「自分には務まらないと思う」

「経験が足りない」

「仕事と家庭を両立できるイメージがない」

「今の管理職のような働き方はしたくない」

「役職ではない形で貢献したい」

同じ「管理職になりたくない」という言葉でも、その背景は一人ひとり違います。

特に、

必要な仕事経験を積む機会が少なかった結果として、

「自分にはできない」

と感じているのであれば、

それを本人の意欲だけの問題として捉えることはできません。

重要なのは、本人の意思を尊重しながら、

「その意思が、どのような経験や環境の中で形成されたのか」

まで見ていくことだと思います。

■女性本人を「変える」ことから始めない

女性管理職比率を高めようとすると、

「女性社員の意識を変えよう」

「もっと管理職を目指してもらおう」

と、本人への働きかけに意識が向きがちです。

もちろん、本人が自分の強みやキャリアについて考える機会は必要です。

しかし、それだけでは十分ではありません。

本人が成長できる仕事を任される。

上司から期待を伝えられる。

少し背伸びした役割に挑戦する。

その経験を振り返り、自分自身の強みや成長として認識する。

そうした仕事経験の積み重ねによって、

「私にもできるかもしれない」

という感覚が育っていきます。

その先に、管理職という役割が本人にとって現実的な選択肢の一つとして見えてくる。

私たちは、その順番が重要だと考えています。

■女性管理職比率向上の前に、経験機会を見直す

女性管理職比率は、女性活躍推進を考えるうえで重要な指標の一つです。

ただし、比率だけを追いかけても、その手前にあるキャリア形成プロセスが変わらなければ、持続的な候補者育成にはつながりません。

貴社では、女性社員に対して、

性別にかかわらず成長につながる仕事経験を提供できているでしょうか。

本人の状況を確認する前に、「配慮」という名のもとで機会を狭めてはいないでしょうか。

本人の「なりたくない」という言葉を、その背景まで含めて理解できているでしょうか。

女性管理職比率が上がらないとき、

「どうすれば女性に管理職を目指してもらえるか」

という問いから少し離れて、

「管理職候補になるまでに、どのような仕事経験を積める環境になっているか」

という問いから、自社の女性活躍推進を見直してみてもよいのではないでしょうか。

ライフワークスでは、女性社員の活躍やキャリア形成、女性管理職候補の育成について、多くの企業をご支援しています。貴社の女性活躍推進における課題や、今後の取り組みについて、私たちと一緒に整理してみませんか?

著者:佐々木 淳

佐々木淳大学卒業後、一貫して人材業界で20年。主にIT業界やコンシューマサービス業界大手企業の採用コンサルティングを10年あまり手掛ける。その後、ライフワークスに入社。年代別のキャリア支援や、上司向け部下のキャリア開発支援などといったソフト面の施策企画提案に幅広く携わる。大手を中心に幅広い業界のクライアントに対するコンサルティング実績を持つ。
現在は、年間約200社のキャリア課題解決に向けた施策立案の責任者として従事。

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