女性社員の「管理職になりたくない」をどう捉えるか――意思を尊重しながら、背景にある経験と環境を見る

2026.09.07
コラム

ライフワークス 執行役員の佐々木です。

女性管理職比率の向上に取り組む企業の人事担当者や管理職の方から、よく聞く言葉があります。

「本人に聞いても、管理職にはなりたくないと言うんです」

本人がそう言っているのであれば、その意思を尊重すべき。

もちろん、それは大切な前提です。

すべての社員が管理職を目指す必要はありませんし、会社が本人の意思を無視して「管理職になりなさい」と迫ることが女性活躍推進でもありません。

一方で、私たちはもう一つ大切な視点があると考えています。

それは、

「管理職になりたくない」という言葉が、どのような経験や環境の中で形成されたものなのか。

そこまで丁寧に見ていくことです。

■「管理職になりたくない」の背景は一つではない

一口に「管理職になりたくない」と言っても、その背景は人によって異なります。

例えば、

「自分には管理職は務まらないと思う」

という自己効力感の問題かもしれません。

あるいは、

「まだ必要な経験を積めていない」

という経験不足かもしれません。

「仕事と家庭を両立できるイメージが持てない」

という不安の場合もあります。

さらには、

「今の管理職のような働き方はしたくない」

という、現在見えている管理職像への違和感かもしれません。

もちろん、

「責任や役職ではなく、専門性を高めることで貢献したい」

という本人自身の価値観である場合もあります。

同じ「管理職になりたくない」という言葉でも、その意味は決して同じではありません。

だからこそ大切なのは、本人の意思を否定することではなく、

その意思が何によって形づくられているのかを、一緒に考えること

ではないでしょうか。

■「自分にはできない」は、本当に能力の問題なのか

特に注意したいのが、

「私にはまだ無理です」

「自分には能力が足りません」

という言葉です。

実際には、周囲から見れば十分な実績がある。

上司からも評価されている。

次の役割を期待されるだけの力もある。

それでも本人自身は、

「たまたまうまくいっただけ」

「自分にはまだ足りない」

「期待に応えられなかったらどうしよう」

と捉えていることがあります。

こうした「実力があっても、自分にはまだ足りないと挑戦をためらう」状態を、インポスター症候群という観点からも説明できます。ただし、これは当然ながら女性全員に当てはまるものではなく、大きな個人差があります。

ここで重要なのは、

本人が「できない」と感じていることと、実際に能力がないことは同じではない

ということです。

そして、その認識は本人だけの中でつくられるわけでもありません。

■経験機会が少なければ、「できる」と思うことも難しい

前回のコラムでは、女性管理職比率の差を見るときには、登用時点だけではなく、それまでの仕事経験を見る必要があるとお伝えしました。

重要案件を任されたか。

リーダー役を経験したか。

意思決定や調整を経験したか。

後輩育成を担ったか。

そうした経験の蓄積が少なければ、

「自分は管理職としてやっていける」

という感覚を持ちにくいのは、ある意味自然なことです。

さらに、

本人が「私にはまだ難しい」と感じる。

上司も「本人が不安そうだから、もう少し待とう」と配慮する。

その結果、挑戦機会が減る。

経験が増えないので、本人はますます「やはり私にはまだ無理だ」と感じる。

この循環が起きることがあります。

つまり、

「本人に自信がないから任せない」ことが、さらに自信を持ちにくい状態をつくってしまう

可能性があるのです。

■本人の意思を尊重するとは、「そこで対話を終えること」ではない

では、上司や人事はどうすればよいのでしょうか。

私は、

「管理職になりたくない」

と言われたときに、

「分かりました。では管理職候補から外します」

とすぐに結論を出すことだけが、本人の意思を尊重することではないと思っています。

例えば、

「管理職のどんなところに、魅力を感じにくいですか」

「どんなところが不安ですか」

「今後、どんな形で力を発揮していきたいですか」

「もしこういう支援や働き方があったら、見え方は変わりますか」

と対話してみる。

その結果、

「やはり私は専門性を高める道を選びたい」

ということであれば、それも尊重すべきキャリア選択です。

一方で、

「今見えている管理職像しか知らなかった」

「経験がなくて不安だった」

「両立できないと思い込んでいた」

ということが分かれば、会社や上司ができる支援も変わってきます。

意思を尊重することと、その意思の背景を丁寧に理解することは、矛盾しません。

むしろ後者があってこそ、本人が納得してキャリアを選択できるのではないでしょうか。

■「管理職になりたいですか?」だけを聞かない

女性管理職候補を育成するとき、

「管理職になりたいですか?」

という問いだけでは、少し早すぎるのかもしれません。

まず考えたいのは、

本人はどんな仕事にやりがいを感じるのか。

どんな強みを持っているのか。

今後、どんな形で組織に貢献したいのか。

どんな経験をまだ積めていないのか。

どんな不安や制約があるのか。

そして、その人なりの強みや価値観を生かした先に、

管理職という役割も選択肢の一つとして存在する。

そんな順番の方が自然ではないでしょうか。

女性活躍推進の目的は、女性社員に管理職を「目指させる」ことではありません。

一人ひとりが、自分の強みや価値観を理解し、必要な経験を積み、

「自分にもできる」

と思える状態をつくること。

そのうえで、管理職を含めたさまざまなキャリアの選択肢から、自ら選べる状態をつくることです。

「管理職になりたくない」という言葉を聞いたとき。

それを否定する必要はありません。

ただ、

「なぜそう思うのだろう」

と、もう一歩だけ対話を続けてみる。

そこから、その人自身のキャリアの可能性が広がることもあるのではないでしょうか。

ライフワークスでは、女性社員の活躍やキャリア形成、女性管理職候補の育成について、多くの企業をご支援しています。貴社の女性活躍推進における課題や、今後の取り組みについて、私たちと一緒に整理してみませんか?

著者:佐々木 淳

佐々木淳大学卒業後、一貫して人材業界で20年。主にIT業界やコンシューマサービス業界大手企業の採用コンサルティングを10年あまり手掛ける。その後、ライフワークスに入社。年代別のキャリア支援や、上司向け部下のキャリア開発支援などといったソフト面の施策企画提案に幅広く携わる。大手を中心に幅広い業界のクライアントに対するコンサルティング実績を持つ。
現在は、年間約200社のキャリア課題解決に向けた施策立案の責任者として従事。

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