女性部下への「配慮」が成長機会を奪っていないか――必要なのはフェア×ケア

2026.09.08
コラム

ライフワークス 執行役員の佐々木です。

女性活躍推進について企業の方々とお話ししていると、管理職や上司の方から、こんな声を聞くことがあります。

「育児中で大変そうなので、あえて負荷の高い仕事は任せないようにしている」

「本人も忙しそうなので、リーダー役は別の人にお願いした」

「無理をさせたくないので、出張や難易度の高い案件は外している」

こうした関わりには、部下への気遣いや善意があることも少なくありません。

実際、上司として部下の事情に目を配り、無理が生じないように配慮することは大切です。

一方で、女性活躍推進という観点から見ると、ここに一つ考えておきたいことがあります。

それは、

その「配慮」が、結果として成長機会を狭めていないだろうか。

ということです。

■配慮そのものが問題なのではない

まず前提として、私たちは「配慮してはいけない」と言いたいわけではありません。

仕事と育児や介護の両立、体調や家庭状況への理解、働き方への柔軟な対応は、これからの組織にとって欠かせない視点です。

実際、部下一人ひとりの状況を無視して、

「機会は平等だから、全員同じ条件で同じように頑張って」

とするだけでは、現実にはうまくいきません。

だからこそ、部下の状況に目を向けること自体は重要です。

問題は、その配慮が、

「この人には難しい仕事は任せない方がよいだろう」
「今は挑戦よりも無理をさせない方がよいだろう」

という判断に固定化されてしまうことです。

■善意の配慮が、成長機会の差を生むことがある

女性活躍推進において難しいのは、機会の差が明確な差別意識だけから生まれるわけではない、という点です。

むしろ、

「大変そうだから外しておこう」

「本人が望んでいないかもしれないから、あえて勧めないでおこう」

「家庭との両立を考えると、この案件は厳しいだろう」

といった、上司の善意や思いやりの中から生まれることがあります。

しかし、こうした判断が積み重なるとどうなるでしょうか。

重要案件を経験しない。

リーダー役を経験しない。

周囲を巻き込みながら成果を出す機会が少ない。

意思決定や調整、部下育成といった経験も積みにくい。

その結果、数年後には、

「まだ管理職に必要な経験が足りない」

「本人もあまり自信がなさそうだ」

という状態になりやすくなります。

つまり、配慮は一見すると本人を守っているようでいて、長い目で見ると、

挑戦機会の差
→ 経験機会の差
→ 自己効力感の差
→ 管理職候補者層の差

につながる可能性があるのです。

■「フェア」だけでも不十分、「ケア」だけでも不十分

では、こうした事態を防ぐにはどうすればよいのでしょうか。

ここで大切なのが、フェア×ケアという考え方です。

まず「フェア」とは、性別や家庭状況だけを理由に、最初から機会を狭めないことです。

難しい案件。
リーダー役。
部門横断プロジェクト。
意思決定や育成を伴う役割。

こうした成長につながる機会を、

「この人は難しそうだから」と上司が先回りして外さない。

これがフェアの視点です。

一方で、「ケア」とは、一人ひとりの事情や不安、置かれている状況を丁寧に見て、必要な支援を考えることです。

例えば、

「この役割に挑戦するうえで、不安なことは何か」

「どんなサポートがあればやれそうか」

「役割の持ち方や進め方をどう工夫すればよいか」

を一緒に考える。

これがケアの視点です。

つまり、

フェアだけだと、事情を無視して機会を押し付けることになりかねません。

ケアだけだと、機会そのものを遠ざけてしまうことがあります。

だから必要なのは、どちらか一方ではなく、フェア×ケアなのです。

■大切なのは「任せるか、任せないか」の二択にしないこと

上司の関わりでありがちなのが、

「今の状況なら任せない方がいい」

「いや、機会平等のために任せるべきだ」

と、二者択一になってしまうことです。

しかし実際には、その間にさまざまな選択肢があります。

例えば、

役割は任せるが、進め方の相談頻度を増やす。

一人で抱え込まなくて済むように、周囲の支援体制を整える。

全部をいきなり任せるのではなく、一部から挑戦してもらう。

業務量の優先順位を整理して、挑戦のための余白をつくる。

このように、成長機会を確保しながら、現実的に挑戦できる条件を整えることができます。

重要なのは、

「配慮するから任せない」ではなく、「配慮しながら任せる」

という発想です。

■上司に求められる4つの関わり

女性部下の成長機会を広げていくうえで、上司にはいくつか重要な役割があります。

一つ目は、見立てることです。

本人の現在地、強み、これから伸ばしたい力、そして仕事外の状況も含めて、その人の状態を丁寧に把握する。

二つ目は、任せることです。

少し背伸びした役割や成長につながる仕事を、意図的に経験してもらう。

三つ目は、支えることです。

丸投げするのではなく、必要な支援や相談機会、周囲との調整を通じて、挑戦を継続できる状態をつくる。

四つ目は、意味づけることです。

経験の結果だけを見るのではなく、

「今回の仕事で、あなたのこういう力が発揮されていた」

「この経験が、次の役割につながっている」

と、本人の成長や強みとして言語化して返す。

この「意味づけ」があることで、本人の中に

「私にもできるかもしれない」

という自己効力感が育っていきます。資料でも、女性部下の挑戦と成長を支える上司の役割として、「見立てる・任せる・支える・意味づける」を整理しています。

■女性活躍推進は「守ること」だけでは進まない

女性活躍推進というと、ともすると「無理をさせない」「働きやすくする」といった観点に意識が向きがちです。

もちろん、それらは大切です。

ただ、それだけでは、

「長く働けるが、役割は広がらない」

状態になってしまうかもしれません。

本当に必要なのは、

安心して働けることと、成長できることの両立です。

つまり、

守ることと、挑戦の機会をつくることの両立

です。

そのためには、上司が善意の配慮だけで判断するのではなく、

「この人の可能性を狭めていないか」

「支援があれば挑戦できるのではないか」

という視点を持つことが欠かせません。

■必要なのは「フェアかケアか」ではなく「フェア×ケア」

女性部下への関わりを考えるとき、

「平等に機会を与えるべきか」

「事情に配慮して無理をさせないべきか」

という二項対立に陥りがちです。

しかし、女性活躍推進を前に進めるために必要なのは、そのどちらかを選ぶことではありません。

性別や家庭状況だけで可能性を狭めず、成長機会はフェアに開く。

そのうえで、一人ひとりの状況や不安を踏まえながら、挑戦できるように支える。

このフェア×ケアの視点があって初めて、女性社員は「守られる側」ではなく、自分らしく成長し、役割を広げていける存在になっていきます。

女性活躍推進とは、女性社員に管理職を目指すよう促すことだけではありません。

その前提として、

挑戦する機会があり、支えられながら成長し、「私にもできる」と思える経験を積めること。

その環境をつくることこそが、企業や上司に求められているのではないでしょうか。

ライフワークスでは、女性社員の活躍やキャリア形成、女性管理職候補の育成について、多くの企業をご支援しています。貴社の女性活躍推進における課題や、今後の取り組みについて、私たちと一緒に整理してみませんか?

著者:佐々木 淳

佐々木淳大学卒業後、一貫して人材業界で20年。主にIT業界やコンシューマサービス業界大手企業の採用コンサルティングを10年あまり手掛ける。その後、ライフワークスに入社。年代別のキャリア支援や、上司向け部下のキャリア開発支援などといったソフト面の施策企画提案に幅広く携わる。大手を中心に幅広い業界のクライアントに対するコンサルティング実績を持つ。
現在は、年間約200社のキャリア課題解決に向けた施策立案の責任者として従事。

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